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キノの旅ss「奴隷の国」

2017/12/12 13:01 | キノの旅 | コメント(0)
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/12/11(月) 22:56:43.01 ID:lxvmXycz0

 草原の中の一本道を、旅荷物を満載した一台のモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。

 運転手は若い人間だった。歳にして十代中頃。長い枯葉色のコートを太もものところで巻き付けている。

「次に行く国はねぇ、エルメス」

 運転手が言った。

「次に行く国は? キノ」

 エルメスと呼ばれたモトラドが、それに尋ねる。

「奴隷制度がある国らしいよ」

 キノと呼ばれた旅人が答えた。

「へぇ。でも旅人のキノには関係ないんじゃない?」

「そうともいえない。奴隷がいるってことは、国内に不満を抱えている人たちを一定数抱えているわけだから、反乱や革命に注意しなくってはいけない。それになにより、奴隷商人が横行していれば、自分の身も危ない」

「なるほど。そこはキノがバババーンちゅどーんだね」

「国の中だからね。派手にはできないよ」

 キノの視線の先、緑色の丘を越えた向こうに、灰色の線が、つまりは城壁が見えた。


【キノの旅ss】批評家たちの国―This is Mine!―

2017/10/28 14:08 | キノの旅 | コメント(0)
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/27(金) 23:58:41.20 ID:4x5EU2uH0

「こんにちは!」

 キノが声をかけても、入国審査官の男は椅子に座ったまま本を読みふけっていた。

「あのー、すみません!」

「おっちゃん! 職務放棄だよ! そんなんだとキノがおっちゃんを撃ち殺して不法入国して大暴れしちゃうよー」

 エルメスが声を上げ、入国審査官はようやく顔を上げた。

「いやぁ、すみませんねぇ。我が国に入国される方は一か月ぶりなもので、つい油断しちゃってました」

 男は読みかけのページに指を挟んだまま受付までやってくる。『アニアの冒険』というタイトルだった。

「いえ、こちらこそ読書の邪魔をしてしまったみたいで申し訳ありません。ボクはキノで、こっちは相棒のエルメス。給養と観光で3日間の入国を希望します」

「はいはい、承りました。パースエイダー(注・パースエイダーは銃器)の保有は認められていますので、そのままお持ちいただいて結構ですよ。では我が国の滞在をお楽しみください」

 審査官は書類にちょこちょこと記入しただけで城門を開けると、すぐに読書に戻ってしまった。

「……行こうか、エルメス」

「相当読書に夢中になってるみたいだねぇ。これがお師匠さんだったら国が大変なことになっちゃうのに。普段外敵ってやつだよ」

「油断大敵?」

「そうそれ」

「まあ、師匠なら……」