TOP > アイドルマスター > 亜美「亜美が、ずっと兄ちゃんのそばにいてあげるよー!」

亜美「亜美が、ずっと兄ちゃんのそばにいてあげるよー!」

1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:03:43.27 ID:KSLXr0yA0

エンターキーを気持ち大げさに押して、この書類は完成。
今日の仕事のノルマも達成だ。やったぜ俺。

首を回すと骨がバキバキと音を立てる。最近肩と首のダメージが激しい。
ふと首ポキはマジヤバイマジ危険という噂が存在するのを思い出し、俺はすぐに首を回すのを止めた。

大きく伸びをしてから、チラリと向こう側を見る。

我が765プロ所属アイドルである女の子達が作る集団の中に、男が一人。

アイツは765プロの三人目のプロデューサー。
俺の後輩にあたる男だ。

ヤツは現在見ての通りのハーレム状態の主。

オマケにそのハーレム人員はアイドルときてやがる。
これほどの贅沢がこの世に存在するのだろうか。

あのアイドル達のファンにこの現実を知らせてやろうか。間違いなく即座にアイツは抹殺されるだろう。
ところが俺はあまりバイオレンスなものはNGなので、ここは勘弁してやることにする。

それにしても、この差は一体なんなんだ。
俺だってプロデューサーなのに……。アイドル達との付き合いもアイツより一年以上は長いのに……。

いいや。コーヒーでも飲もう。


2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:04:21.04 ID:KSLXr0yA0

淹れたてのコーヒー。
それが入ったコップを置き、暫く冷ましてからゆっくりと飲むのが俺流だ。
猫舌の俺が出来立てのコーヒーなんかすすったらもんどりうっちゃうから。

早く冷めろと念を込めながらカップを手で仰いでやる。もちろん何の効果も期待できないけど。
まあこういうのはアレだ。儀式的なもんだから。

このなんとも言えない暇なひととき。
普段だったらまったり楽しむこともできたんだけど、今日はちょっと気分がブルーだ。
瞬きする度にさっきの光景が脳裏にフラッシュバックしてきやがる。

そもそもおかしいんだ。
担当したアイドル全員が気づけばアイツに惚れてるとか、絶対におかしい。

その上もっと言っちまうと、アイツは同僚の女性プロデューサーと事務員のハートもちゃっかり頂いてしまっている。
さらにぶちまけちゃうと、裏方であるその二人の女性は二人ともアイドル達に負けないくらいに美人ときている。
……っつか、二人とも元アイドルだ。

一体何者なんだあの男。アレか。アイドルハンターか。
そのハンティングテクを俺にも少し伝授してくれ。頼む。


3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:05:29.92 ID:KSLXr0yA0

一応俺とアイドル達の名誉の為に弁明しておく。

別にアイドル達が俺の事を無視したりしている訳じゃない。
あの子達はそれぞれ皆個性的だけど、そんなことするようなつまらん人間じゃない。
仕事に対しても二人三脚。移動中にはアイドルの子をくだらない話をできるくらいには打ち解けている。
俺とアイドル達の関係は中々良好と言える。

だけど違うんだ。
奴のそれとは違うんだ。
ラブとライクの決定的なこの差に、俺はもう打ちのめされそうです。


誰も俺と目があった時に顔を赤らめたりはしない。


誰も俺と話すときにキラキラと輝いちゃいない。


誰も俺には本当の心を打ち明けてはくれない。


仕事以外での余計な干渉は殆どない。
理想的なアイドルとプロデューサーの関係だろ?

アイドル達から見た俺の印象は……「気のいいオジサン」ってとこか?
出来ればまだ「お兄さん」と呼んで欲しいけれども……流石に厳しいかな。


4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:06:41.17 ID:KSLXr0yA0

亜美「あっ、兄ちゃん。ここにいたの」

そろそろオッケーかなと俺がコーヒーカップを手にとったちょうどその時だった。
この事務所唯一の例外のご登場だ。

P「おう、亜美か。亜美こそどうしたんだ?」

亜美「どうもこうもないわ。アナタに会いに来た……。それだけよ」

P「そっかそっか」

亜美「華麗に受け流したね」

ズズズ……と、慎重にコーヒーをすする。
うん、いい塩梅だ。

P「何か用か?」

亜美「用がなくっちゃ話しかけちゃいけないの~?」

兄ちゃんもクールになったね~。と、亜美がからかう様に笑ってみせる。

P「何を言う。俺は元々クールキャラを全面に押し出しているってのに」

亜美「あはは~。そのギャグ超面白いね~!」

P「ギャグのつもりはさらさら無かったんだけども……」


5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:08:39.84 ID:KSLXr0yA0

P「……で、亜美はホントにどうしたんだ?あっち行かなくていいのか?亜美、楽しいの好きだろ」

亜美「う~ん……。なんていうか……。なんとも言えないんだけど……。あっちの兄ちゃんの近くにいると、
皆いつもよりも明るいんだけど、どことな~くピリピリもしてる気がするんだよね~」

ああ、皆ハンターの目をしてるからなぁ。
普段大人しい雪歩でさえ、アイツの前では意外にも積極的だ。
うーん。恋する乙女って分からん。

亜美は……。真美と違ってまだまだ子供っぽいな。まだそういうことにピンときてなさそう。
思春期はもうちょい先ってとこか。ここに来て双子に差が生まれてきたね。
わざわざ俺なんかのトコに来るくらいだからな……。

少しだけ気分が落ち込む俺を、亜美はめざとく見つける。

亜美「おやぁ?兄ちゃんなんだか寂しそうじゃない?」

P「この年になると男は少なからず憂いを帯びてくるものなのですよ」

亜美「そんな可哀想な兄ちゃんを、亜美が優しく慰めてあげるよ!ホラ、胸に飛び込んでくるんだー!」

両手を俺に向けて広げる亜美。
いいんだな?ホントだな?後悔しないな?

俺はグっと膝をかがめて飛び込み用意万端。
あとはカウントだけだ。行きます!スリー、ツー……。

亜美「ちょっ、兄ちゃんマジな跳躍体勢!流石にちょっと怖いよ!」

P「まあ冗談ですよっと」

……言っておくが、本当に冗談だったんだからな。マジだぞ。信じてくれよ。
コレは俺の社会人としての生命に関わる重大な問題だからな。何度でも念を押させてもらう。


6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:09:20.68 ID:KSLXr0yA0

P「さってと……。そろそろ仕事に戻るかなー」

亜美「あ……まだお仕事終わってなかったんだね」

P「いや今日のノルマは終わったんさ。後はまあ時間もあるし。ちょいちょいと」

亜美「なるほど。実は結構ヒマってことですな!」

P「まあ……うん……ヒマですね。やること特に無いです今」

亜美「じゃあさ!じゃあさ!ヒマだったんならさ!亜美と一緒に一狩り行こうぜ!」

P「おっ。いいねえ。やってやろうじゃん」

亜美「ぐっふっふっふ~。仕事場にゲーム持ち込むなんて、兄ちゃんも意外とワルよのぅ……」

P「いえいえ、亜美殿には敵いませぬ……」

P&亜美「ぐっふふふふ…………」

P「よし。んじゃこのコーヒー飲み終わったらそっち向かうから、先に行っててくれ」

亜美「了解ー!奥の部屋で待ってるよ~!」


7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:10:23.11 ID:KSLXr0yA0

元気良く飛び出していく亜美を見送ってから、手元のコーヒーをくいっとあおる。

うーん……。ちょっと亜美と長く話しすぎたかな。
冷めすぎた。微妙にぬるい。失敗した。

少しだけ渋い顔をしながら俺は残ったコーヒーを一気に喉へ流し込んだ。

さて、そんじゃ亜美のところへ向かいましょう。


8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:11:09.80 ID:KSLXr0yA0

美希「ハニー!今度のオフ、ミキと一緒に映画行こーよ!」

後輩P「おいおい……。美希はオフでも、俺は仕事があるんだよ」

美希「むぅー……。なら律子に任せればいいの」

律子「何言ってんの」

春香「プロデューサーさん!私、そういえばクッキー焼いてきたんでした!食べませんか?」

後輩P「おっ、春香のクッキーは美味いからなぁ。楽しみだよ」

給湯室を出ると、未だにあの連中がイチャコラしているのが目に入った。

あそこだ!あそこにいるのが全世界の男の敵!早急に抹[ピーーー]べし!

と、こんな調子で密かに呪詛を心の中で詠唱しながら集団の脇をすいっと通り抜ける。
誰も俺の方を見ない。気づいてない……?

ある意味無視されるよりも心にくる。虚しいね。眼中にもないっつーのは。


9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:12:11.83 ID:KSLXr0yA0

アイツが来る前まではこんな痛い程の疎外感なんか感じたこと無かった。
毎日の仕事は忙しかったけれど楽しかった。
まあ、現状つまらないっつったらそれはそれで言い過ぎなんだけども。

アイツは……。

アイツは、俺が一年かけて作り上げたもんをたったの四ヶ月足らずで全部奪い取っていきやがった。
……いや、奪い取ったは俺の恨みによる事実改ざんになっちゃうな。

自然と765プロがアイツを中心として回るようになっていた。
自然と皆がアイツの元に集まるようになっていた。
俺は気づけば半分蚊帳の外だった。
初めて会った時は正直何だか頼りないヤツだなあと思ったもんだけどね。

伊織に雪歩に千早。

彼女たちには正直苦労させられた。
距離を縮めるのにかなり時間がかかったなあ。

それをアイツは一ヶ月ちょいで懐柔ですよ。ふざけてるな。

美希なんか……。
俺の言うことはロクに聞かなかったのに……。
なんだよハニーって。
8ヶ月かけて「そこの人」から「プロデューサー」にやっと昇格出来た俺の立場はどうなる。


10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:14:04.66 ID:KSLXr0yA0

ブツブツと頭の中で愚痴をぶちまけていたおかげで、亜美が待つ部屋へ行くのに予想外の時間がかかった。
よっぽど俺はダラダラと歩いていたんだろう。

ソファに座ってゲーム機を操作していた亜美は、俺の姿を見つけるとぶーっと口を尖らせてみせる。

亜美「兄ちゃん遅いよー。何やってたの?」

P「あー、ちょっとな。ごめんごめん」

亜美「早く行こうよー!亜美はもう準備万端だよん」

P「ちょい待ってくれって。えと……亜美はまた大剣か」

亜美「身の丈よりも大きな剣を振るって巨大なモンスターに挑む美人女戦士……かっくいー!」

P「亜美さんのキャラクターアフロのマッチョじゃないですか」

亜美「心は乙女なのだ!」

P「気ぃ持ち悪ぃ!」


11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:15:39.85 ID:KSLXr0yA0

亜美「兄ちゃん兄ちゃん!そっち行ったよ!」

P「任しとけっ」

ゲーム画面では巨大なドラゴンが俺のキャラクターに向かってちょうど突進してきている所だった。
その攻撃をひらりとかわし、首の辺りを切りつける。

画面が切り替わって勝利のファンファーレ。
よっしゃ。勝った。

亜美「あー、兄ちゃん。ラストはカッコいい必殺技で締めないと駄目っしょ」

P「そんなシステムこのゲームにないやん」

亜美「兄ちゃんが叫ぶんだ!」

P「リアルでやるのか。痛々しいな」

亜美「ほい。技名カモン!」

P「…………サ、サンダーブレイド」

亜美「小学生並みのネーミングセンスだね」

P「童心を忘れない純粋な心の持ち主ということですね」

亜美「あっ、逆鱗が出た!やったよ兄ちゃん!」

P「えっ、スルーしちゃんだ」

へーい!と亜美は手をあげる。
へい。と俺はそれに合わせてハイタッチ。

亜美「これで新しい装備が作れるよ~」

ふんふ~んと鼻歌を歌いながら、亜美はご機嫌顔だ。

……亜美と一緒にいると、気分が軽くなる。

今の俺には、ありがたい。


12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:17:59.06 ID:KSLXr0yA0

無言の部屋に、俺と亜美のゲーム機から流れる戦闘BGMとボタン音が響く。

ちらりと亜美の様子を見る。それはそれは真剣そのものだ。食い入るように画面を見ている。

俺も、このモンスターには気を抜くことは許されない。
攻撃を交わし、交わし、予備動作の時に一発切り込んで……と。
……ん、チャンス到来か!

P「そこだ亜美!頼んだ!」

亜美「任せといてよ!どりゃー!」

掛け声とゲーム内のキャラの掛け声が見事にシンクロする。

亜美「……や、やった……!」

P「おう。お疲れさん」

亜美「やっと倒せたよーっ!ありがとう兄ちゃん!」

P「ちょっ、抱きつくなって!」

それはマズイって亜美さん。いやいやホントに。

亜美「真美と協力しても駄目だったんだよー!やっぱ兄ちゃん流石だねっ!」

そういって亜美はニカッと笑った。

その笑顔はさながら太陽のようで。眩しくて。
やっぱ何度見ても可愛いと思う。うん。深い意味はないよ。

P「分かったから分かったから。とりあえず離してくれよ」

亜美「おっと、ごめんよ兄ちゃん」


13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:20:09.28 ID:KSLXr0yA0

離れた亜美は俺の顔を見るなり、

亜美「むふふー。兄ちゃん顔赤いよー?亜美のセクシーボデーに悩殺されちゃった?」

などとのたまうので。

P「何言ってんだ中学生」

亜美「あう……」

とりあえずおでこをピシッとチョップしてやる事にする。

亜美「もう。ツレないなあ兄ちゃんは」

P「もしツレるような事があれば大問題だよ。社会から抹殺されちゃうよ俺」

亜美「恋に年の差なんてカンケーないっしょ!ほれほれー」

そう言って亜美はカモンカモンと俺を煽ってくるので。

P「チョーシに乗らない中学生」

亜美「あうぅ……」

とりあえずおでこをペシッとチョップしてやる事にする。


16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:24:53.57 ID:KSLXr0yA0

亜美「おおっと失礼。ウチの子の充電がそろそろレッドゾーン突入のようだ……。
   すぐに充電器を取ってくる……。暫し待たれよ……」

P「おkおk」

亜美「軽すぎっしょ!乗ってよ兄ちゃん!」

P「ソーリーアンドソーリー」

亜美「それじゃあちょっと行ってくるねー」

なるほど。今度は俺がスルーされる番ってわけだ。

亜美「亜美がいなくて寂しさのあまり号泣しちゃ駄目だよ」

P「大丈夫さ。双海亜美は俺の心の中で生き続けるから。永遠に」

亜美「なんか亜美が星になったみたいだね」


17: ありがとう。さっそくやってみました 2012/08/10(金) 16:27:46.51 ID:KSLXr0yA0

亜美は……元気だなあ。本当に元気だ。

今の765プロ内で、俺に対して最も好意的に接してくれるのが亜美。
それはもちろん、亜美にとっての俺が特別って訳じゃあなくて。

亜美から見たら、俺も765プロの仲間の一人なんだろう。
その枠組みに俺を入れてくれている事が、俺にとっては物凄くありがたい。

あのモテ男との格差に落ち込んだ時は、亜美の無邪気な笑顔に助けられてきた。
亜美を見てると、亜美と一緒にいると、ツライ事とか全部吹っ飛んじゃんだよな。
周りにいる人を元気に出来るのが双海亜美だ。アイドルの鏡だね。

あと。

あと少しして、亜美が真美に追いついてもう少し精神的に大人になったら……。

皆と同じように、アイツに恋をしてしまうんだろうか。
俺の事なんか見向きもしなくなっちゃうんだろうか。
俺にはもう、とびっきりの笑顔を見せてくれなくなってしまうのだろうか。

…………ヤだなあ。


18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:29:30.71 ID:KSLXr0yA0

亜美「おっ待たせー!いやぁ。この充電器のヤツ、恥ずかしがって中々姿を見せなくって……」

モヤモヤと考えていると、亜美がいつもの様に元気良く帰還してくる。
……が、すぐにその表情を曇らせた。

亜美「どしたの?兄ちゃん」

P「え?何が」

きょとんと俺が答えると、亜美は指で俺の顔を指差し。

亜美「涙、出てるよ」

P「え、嘘!?」

げっ、マジじゃん。

慌てて目元に触れてみると、確かに湿った感触。コレは間違いなく涙だ。
……冗談だろ俺……。情けなさすぎるぞ……。


19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:31:45.20 ID:KSLXr0yA0

亜美「兄ちゃんホントにどうしたの?大丈夫?亜美、何かしちゃった?」

P「な、なんでも無いよ。ホントに」

亜美「なんでも無くないよ。兄ちゃんの顔見れば亜美だってすぐに分かるよ。……兄ちゃん。なんかあったの?」

俺から亜美が離れていっちまう未来を思い浮かべて悲しみの涙を流していましたー……。
って、言えるかこんな事。気持ち悪ぃな俺。

それにしても……。ちょっと意外だなあ。
亜美の事だから、こういう時にも明るくからかってくるもんとばかり思ってたけど。

……なんでこいつはこんなに心配してくれてんだよ。チクショウ。

あ、やべ。
目頭が熱くなってきた。
最近ウチの涙腺ったらめっきり仕事しないんです。どうしたらいいでしょう?


20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:34:35.87 ID:KSLXr0yA0

思いもよらなかった亜美の優しさに、俺の涙腺は完全崩壊を起こした。
気づけば、無表情のままバカみたいにぼろぼろ涙を流してた。

亜美「兄……ちゃん?」

P「あれ?ホントにどうしたんだろ……俺。ホントに……」

ついに喉元が熱くなる。
声がだんだんと涙声に近づいていくのを感じて、俺はすぐに口を閉ざした。
表情が歪むのを見られたくなくて、両手で顔をおおった。

その時。

何も言わずに亜美は優しく俺の頭をぎゅっと抱きしめてくれた。
亜美の匂い、亜美の体温に包まれて、俺はついに折れた。

端から見れば相当にアウトな状況だったに違いない。
違いない……けど。

俺はそのまま亜美の優しさに甘えて、亜美の体に支えられるがまま、
声は上げずに、そのまま涙を流し続けた。


21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:40:00.18 ID:KSLXr0yA0

涙の発作が収まって、俺は顔を上げて腫らした目で亜美を見た。
亜美は何も言わずに、俺の隣に腰掛けてくる。

ぽつりぽつりと、俺は気づけば心の中まで亜美に預けようとしていた。
中学生の女の子に。大の大人が。

全く。どこまでも情けなくなる話だ。

P「亜美は……。俺と一緒にいて楽しいか?」

亜美「どしてそんなこと言うのさ」

P「俺は……寂しい」

P「俺なんかいなくても765プロはしっかりやっていける。律子と……アイツで。ちゃんとこの765プロは回っていける。
 皆……。俺がいなくても……。皆……」


気にも止めないんじゃないか。


口にしたこの言葉は掠れて声にならなかった。
けど、隣りの亜美にはしかと聞こえていたようで。

亜美「そんなこと……。そんなこと……」

亜美「無いよ!無い!絶対に無いよ!!どーして!……どーしてそんな……そんな……悲しい事言うのさ!!」

いい?よく聞いててよ兄ちゃん。
と、亜美は俺の顔をしっかり見据えて続ける。


22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:42:55.74 ID:KSLXr0yA0

亜美「亜美は兄ちゃんがいなくなると寂しい!寂しいよ!そんなのイヤだ!
   兄ちゃんと一緒に遊ぶの楽しいもん!亜美は兄ちゃんと一緒にもっと遊びたいよ!」

亜美の言葉が俺の心に突き刺さる。

なんて嬉しいことを言ってくれるんだろう本当に。
本当に……亜美は良い子だ。

P「そっか……。そっか。ありがとな、亜美」

そう言って俺は亜美の頭にポンと軽く手を乗せた。

P「でも……さ。やっぱ皆に好かれるアイツを見てると……。敵わねえっつかね。なんか……切なくなったワケよ」

今までボロクソに言ってきたけど……。

アイツはホントに良いヤツだ。

マメで、誠実で、何よりどこまでも優しい。どこまでもお人好しなヤツ。
その気配りはアイドルのみならず、事務員、先輩女性プロデューサー、そして、俺にも及ぶ。
オマケに仕事も人並み以上にこなすときたもんだ。

分かっちまう。
アイツがあそこまで人に好かれる理由が。

そして分かっちまう。
俺とあいつとの決定的な差が。

アイツに当たろうにも、当たれる訳ない。当たる様な所なんてないのだから。
所詮は俺自身の中で生まれた、どうしようもない嫉妬心ってヤツ。
認めたくなかった。直視したくなかった。自分はそんなつまんない人間じゃないと信じたかった。

ただそれだけの事だった。


24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:45:35.00 ID:KSLXr0yA0

亜美「ああ~。みーんなあの兄ちゃんの事大好きだからね~。……特別な意味で」

P「あ、やっぱ亜美でも分かるか?分かるよなぁやっぱり……」

亜美「うん。よく真美から相談も受けてるしね」

P「…………亜美は……?どうなんだ?」

亜美「亜美は……。まだよく分かんないや」

P「あっ、やっぱり?」

亜美「やっぱりって……。兄ちゃん結構失礼だね」

P「え?ああ、ごめんごめん」

ふーんだ。と亜美は拗ねた素振りを一瞬見せる。

亜美「実はね……。あずさお姉ちゃんに聞いてみたんだー。”人を好きになるってどういうコトなの?”ってさ」

P「ふぅん。そんな事があったのか?」

亜美「うん。なんだか真美に置いてかれちゃったような気がしてさ」

P「あずささんは何て?」

亜美「”そうねえ……。その人とずっと一緒にいたいなぁって思うこと……かしら?”だってー」

P「へぇ。なるほど……」


26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:50:10.44 ID:KSLXr0yA0

亜美「でも、でもさ」

P「どうした?」

亜美「それなら亜美は、皆とず~っと一緒にいたいよ。……ひょっとして亜美、恋多き女ってヤツ?」

P「……ははは。そっかそっか」

やっぱり亜美はどこまでも純粋だった。どこまでも眩しくて、輝いていて。
そんな亜美の光に照らされた俺は。

もう、どうでもいいかな。

こんな事で悩んでても、アホらし。
前も言っているように、アイドルとプロデューサーとしての関係から見れば、俺はかなり理想的な立ち位置にいる。
亜美みたいに、俺を慕ってくれるアイドルだって……いる。

何を悩むことがあろうか。

これ以上何も望むまい。

これからもいつも通りだ。
俺の担当するアイドル達を上へ上へと連れて行くだけ。
例え彼女たちが俺の事をなんとも思っていなくとも、

それが、俺の仕事だし。

少なくとも、亜美と一緒にいる時くらいは、こんな事考えるのはよそうか。
思いっきり亜美の放つ光を浴びようじゃないの。


27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 16:54:26.63 ID:KSLXr0yA0

亜美「兄ちゃんは?」

P「はっ?」

突然亜美に話しかけられた俺は、ひどく間抜けな声を漏らした。
……恥ずかしい。

亜美「兄ちゃんはどう思う?そのー……」

P「ああ、人を好きになるってことか」

こくこくと頷く亜美。

そーだなぁ……。

P「一緒にいると、心の底から明るくなれる……って感じかな?幸せになれるっつか、なんつーか」

うーむ……。うまく言えない。

亜美「なるほどねぃ……はっ!またもや亜美が恋多き女に!」

亜美「うえーん兄ちゃーん!亜美はとんだ尻軽女だったよ~」

P「コラ、どこで覚えたそんな言葉!」


28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 17:00:16.91 ID:KSLXr0yA0

亜美「やっぱり亜美にはまだ分かんないや」

P「ま、その内亜美にも来るよ。そのー……初恋ってヤツ」

亜美「ほうほう。それは楽しみですなぁ……。あ、そだー、ちなみに兄ちゃんの初恋っていつ?いつ?」

P「高二」

亜美「遅!」

P「ほっとけ!大変だったんだぞ。一時は自分がゲイなんじゃないかと本気で悩んだ時期も……」

亜美「でさでさー。どんな人だったのー?」

P「えー……言わなきゃ駄目か?」

亜美「ダメー!」

確かあの人は……。

底抜けに明るくって、誰にでも分け隔てなく優しくて、学年一輝いてて。

そう、皆のアイドルだったな。そういえば。

P「亜美みたいな人だったよ」

亜美「えー何それー?ひょっとして遠まわしに愛のコクハクってやつ?」

P「かもな」

亜美「そーだねえ……。兄ちゃんがもう少しいい男になったらもらってあげてもいいよ!」

P「そっかそっか。じゃあ頑張るよ」


29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 17:10:20.81 ID:KSLXr0yA0

亜美「なるべく急ぐんだよー。亜美は人気者だから、モタモタしてると他の男に取られちゃうぜー!」

P「それは非常に困るな」

亜美「それに、亜美の気分も変わっちゃうかも」

P「マジか。猶予はどれくらいですかね」

亜美「亜美がトップアイドルになるまでだねー。亜美のジツリョクなら、あっと言う前だよ!」

P「そりゃ大変だ。急がないといけないな」

亜美「でもまー、亜美がいないと兄ちゃん寂しくって泣いちゃうしなー」

P「ああ。毎日枕をびしょ濡れにする事になるだろうよ」

亜美「全くぅ……。兄ちゃんは寂しんぼだなぁ……仕方ない」

亜美「じゃあさ、それなら……さ!」


30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 17:12:43.83 ID:KSLXr0yA0

亜美「亜美が、ずっと兄ちゃんの側にいてあげるよー!」

P「おう。是非ともよろしくお願いします」


32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 17:15:05.50 ID:KSLXr0yA0

短いですがこれで終わりです。

ありがとうございました!


36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/08/10(金) 17:27:40.63 ID:R9MDWAnDO

亜美可愛かった
Pの立ち位置が新鮮だったな
乙乙





『アイドルマスター』カテゴリの最新記事

おすすめ記事

コメントの投稿