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【ぼく勉】成幸 「武元うるかの好きな人」

899: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:33:15 ID:aVLVUSo6

………………一ノ瀬学園 図書室

うるか 「む……ええっと、これは……」

うるか 「…… “私はトムのことをよく知りませんが、エミは彼のことをよく知っています” かな?」

成幸 「おお、正解だぞうるか。すごいな。基本的な引っかけ問題には引っかからなくなってきたな」

成幸 「前までのお前だったら、後半を “エミのことなら知っています” って訳してただろうからな」

うるか 「うん! 前に教えてもらった、主語に○をつける訓練を繰り返したらわかるようになったんだ!」

成幸 「すごいぞ、うるか。ちゃんと勉強してる証拠だな。偉い偉い」

うるか 「えへへ~」

うるか 「……あっ、そろそろ水泳部の練習だ! じゃあ成幸、あたし行くね!」

成幸 「おう。今日出した宿題、次までにやってこいよ。水泳の方もがんばれよー!」

うるか 「まっかせなさーい!」

タタタタ……


900: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:33:57 ID:aVLVUSo6

文乃 「うるかちゃん元気だねぇ。苦手な勉強をしながら、部活までがんばって……」

理珠 「あの元気は分けてもらいたいです。一体どこから湧き上がってくるのでしょうか」

成幸 「さて、なんだろうな」

成幸 (ひょっとしたら、例の “好きな人” がいるからなのかな、なんて……)

成幸 (ガラにもないこと考えちまったな。恥ずかしい)

成幸 「さ、お前たちも残りの問題がんばれよ。今日は大量に用意しておいたからな」

文乃&理珠 「「はーい……」」

成幸 「……ん? これは、筆箱……? うるかのか」

成幸 「ったく、うるかの奴、忘れていきやがったな。仕方ない……」

成幸 「ふたりで問題やっててくれ。俺はうるかに筆箱届けてくるから」


901: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:34:51 ID:aVLVUSo6

………………

成幸 (まったく。うるかの奴……)

成幸 (色々やることがあって注意力散漫になってるんだろうな)

成幸 「まぁ、仕方ないよな……――」


  「――どうせ、仕方ないとか思ってるんでしょ。もー」


成幸 「ん……? 海原と川瀬、と、うるか……?」

うるか 「だって仕方ないんだもーん! 何やったって気づかないしさー!」

海原 「そりゃー、言わなきゃ気づかないって」

川瀬 「いい加減さ、向こうが気づいてくれるって幻想を捨てなよ」

うるか 「むぅ……。そんなの分かってるけどさぁ……」

成幸 (何の話をしてるんだか分からんが、話しかけづらいな……)

うるか 「好きだって言えるなら、苦労はないよ……」

成幸 「!?」 (こ、これは……)

成幸 (恋バナ!?)


902: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:35:45 ID:aVLVUSo6

成幸 (ま、まずい……さすがにこれを盗み聞きしてたら、最低すぎる。さっさと退散しないと……)

海原 「でもいつまでも片思いしてたら辛いでしょーに」

うるか 「そうだけど……でも、向こうにも迷惑だろうし……」

川瀬 「もっと自分に自信持ちなよ。あんた、可愛いんだからさ」

海原 「陽真くんにタイプとか聞いてもらおっか? 陽真くんカレと仲いいし……」

成幸 (な、なんだって!? うるかの好きな人は、小林と仲が良いのか……)

成幸 (ひょっとして、俺も知ってる奴か……?)


―――― 『あたしの好きな人……とある情報によるといつもおっぱいばっかり見てるらしくて……』

―――― 『だからその……大きく見せられるセクシー系がいいのかなーとかなんとか……』


成幸 (いや、待て! そんな最低男、俺の友達にはいな――)

川瀬 「――っていうか、もう直接唯我に聞いてしまえば話は早いんだけどな」

成幸 「!?」

うるか 「もー! だから何度も言ってるけど、それができたら苦労はないんだってばー!」

成幸 (ま、まさか……!!)


903: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:37:05 ID:aVLVUSo6

成幸 (俺の名前が出るくらい、俺と仲が良い奴!)

成幸 (なおかつ、小林とも仲が良い奴……!!)

成幸 (そして、胸ばっかり見るような最低な奴……!!!)

成幸 (そんな奴、ひとりしかいないじゃないか……!)

タタタタタタ……

川瀬 「ん……?」

うるか 「どしたん、川っち?」

川瀬 「いや、いまその角に誰かいるような気がしたんだが……」

うるか 「へ!? 今の話誰かに聞かれたの!?」

海原 「うーん、いや、誰もいないよ?」

川瀬 「……だな。気のせいだったみたいだ」

海原 「まぁ、今さらうるかのこと誰かに聞かれたところで、みんな知ってるだろうけどね」

うるか 「あたしが成幸のこと好きってそんなに有名なの!?」

川瀬 「……恋愛まったく興味ない奴以外、見てりゃ気づくっての」


904: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:38:18 ID:aVLVUSo6

………………

成幸 「………………」

ドキドキドキ……

成幸 (と、とんでもないことを聞いてしまった……)

成幸 (まさか、うるかの好きな人が、あいつだったなんて……)


―――― 『陽真くんにタイプとか聞いてもらおっか? 陽真くんカレと仲いいし……』

―――― 『っていうか、もう直接唯我に聞いてしまえば話は早いんだけどな』


成幸 (俺と小林の名前が出てたってことは、俺たちふたりとと仲が良い奴……)

成幸 (そして、胸に興味津々のスケベな男……。そんなの、あいつしかいないじゃないか……)



成幸 「大森……ッ」 ギリッ



成幸 (……盗み聞きをしてしまったようなものだから、これは胸の中にしまっておかないと)


905: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:41:31 ID:aVLVUSo6

成幸 「………………」

成幸 (……いや、しかし。うるかの好きな人だぞ。つまり……)


―――― 『あたしの好きな人…… とある情報によるといつもおっぱいばっかり見てるらしくて……』

―――― ((最低男じゃないか!!!))


成幸 (……うん)

成幸 (『教育係』 として、このままにしておいていいのか?)

成幸 (もし大森とのことで、うるかが受験を失敗したりしたら大変だ)

成幸 (俺はうるかの 『教育係』 だから。あくまで、『教育係』 として)

成幸 (……あいつがうるかに相応しいのか、しっかりと見極める!!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (……っと、その前に、師匠に相談しておくか)

成幸 (師匠になら、うるかのことを話しても大丈夫だろ)


906: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:42:23 ID:aVLVUSo6

………………立ち食いそば屋

文乃 「えっ……? うるかちゃんの好きな人がわかった?」

文乃 (……勉強会が終わった後、話があると言われて来てみれば……またとんでもないことを言い出したよ)

成幸 「そうなんだよ。人の話だから、あまりペラペラ喋りたくはないんだが、お前にだけは相談に乗ってもらいたくてさ」

文乃 (……すごい) ドキドキ (成幸くん、とうとううるかちゃんの気持ちに気づいて……――)

成幸 「――それが、相手がどうやら、うちのクラスの大森みたいなんだ」

文乃 「……は?」

成幸 「だろ!? 俺も聞いたときはそんな反応だったよ! なんであいつなんだ?」

文乃 (……いや、むしろきみに “は?” なんだけど) キリキリキリ……

文乃 (どうしてそんなわけのわからない勘違いをするんだろう。胃が痛いなぁ……)

成幸 「お前も知ってのとおり、あいつはノリで生きてるし、人に迷惑をかけることもしばしばだ」

成幸 「しかも、人の盗み撮りを勝手にSNSにアップするような奴だ」

成幸 「……いや、わかってる。俺だって友達のことを悪く言ったりしたくはない」

成幸 「大森にいいところがあることも知ってる。あいつは決して悪い奴じゃない」

成幸 「……けど、不安なんだ。うるかは騙されてるんじゃないかって。何か勘違いをしてるんじゃないかって」


907: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:44:24 ID:aVLVUSo6

文乃 (もう完全にパパ目線だよ、成幸くん……。うるかちゃんはきみの娘さんかな?)

文乃 (わたしやりっちゃんのことも同じように娘みたいに思ってるのかな……?)

ズキッ

文乃 (……じゃなくて、えっと、この勘違いをどうしたらいいか、だよね)

成幸 「それでな、俺は、大森がうるかに相応しいのかこの目で確かめようと思うんだ」

文乃 「へ……?」

成幸 「お節介なのは分かってる。うるかにとってはありがた迷惑な話だろう。それでも……」

成幸 「うるかのことが心配で心配で……」

文乃 (だからきみはうるかちゃんのお父さんかな?)

文乃 「……っていうか、うるかちゃんが大森くんのことを好きっていうのは本当なの?」

成幸 「確実だ。俺はたしかに、海原と川瀬が話しているのを聞いたんだからな」

文乃 (絶対きみが勘違いしてるだけだよ、なんて言うわけにもいかないしなぁ……)

文乃 (もう意志は決まってるみたいだ。今さらわたしが何を言ったところで変わらないだろう)

文乃 (だったらわざわざわたしに相談に来ないでほしいんだよなぁ……)

成幸 「それで、明日、大森の行動を見極めてみようと思うんだ」


908: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:45:34 ID:aVLVUSo6

文乃 「へ? 見極める?」

成幸 「もちろん、うるかが誰のことを好きになるかは自由だ」

成幸 「でも、もしうるかが確実に不幸になると分かっていたら、俺は恨まれてもいい。全力で止める」

成幸 「明日は、その見極めをしようと思う。一日、大森を行動を注視しようと思うんだ」

文乃 「はぁ」

成幸 「幸い俺はあいつの友達だし、クラスも一緒だ。授業が別になるとき以外は監視できる」

文乃 (監視しなきゃいけないような間柄は果たして友達と言えるのかな……)

成幸 「明日、古橋にも協力してもらうことがあるかもしれない。そのときはお願いできるか?」

文乃 「うーん……まぁ、それは構わないけど、そもそもわたしは……」

文乃 「……うるかちゃん、別の男の子のことが好きなんじゃないかなー、なんて思うんだけど」

成幸 「……? なんでそう思うんだ? うるかの好きな人を知ってるのか?」

文乃 (知ってるよ! っていうかきみだよ!!) ハァ (……なんて、言えたら苦労しないよね)

文乃 「ううん。知らないよ。なんとなくそう思っただけ。明日は協力してあげるから、何かあったら言ってね」

成幸 「本当か!? 助かるよ、古橋!」

文乃 (……うーん。さて、一体どうしたものかなぁ)


909: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:46:20 ID:aVLVUSo6

………………翌日 朝

成幸 (……さぁ、はりきって大森の行動を監視するぞ!)

成幸 (あいつが悪い奴じゃないのは俺もよく分かってる。でも、うるかの恋人に相応しいかどうかは、また別の話だ)

ジーーーーーッ

大森 「……? どうかしたか、唯我? 俺の顔になんかついてる?」

成幸 「何もない。気にするな」

ジーーーーーッ

大森 「いや、気にするなって言われてもな……」

大森 「まぁいいや。そういや唯我、この前サンドイッチで買ってもらったHな本すごく良かったぜ!」

大森 「今度お前にも貸してやるよ」

成幸 「いらんわ! お前は本当にろくでもないことしか言わないのな!?」

大森 「えーっ、なんだよ。せっかくあの幸せを共有してやろうと思ったのに……」

成幸 (やっぱりこいつがうるかに相応しいとは到底思えないぞ!!)

小林 (……成ちゃん、今日は一体何をやってるんだろう)


910: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:47:12 ID:aVLVUSo6

………………昼休み

大森 「おー! 今日も唯我の弁当うまそうだな」

成幸 「毎度言ってる気がするが、やらんからな」

大森 「いいじゃねぇかよー、少しくらいよー。可愛い妹ちゃんが作った弁当っていう幸せを少しは俺に分けてくれよ」

成幸 (そしてこれだ。人の弁当をかすめ取ろうとする食い意地の悪さと、人の妹を引け目なく “可愛い” などという軽薄さ」

成幸 (……まぁ、もちろん、俺が弁当がない日にオカズを分けてくれたりもする良い奴ではあるが)

成幸 (俺の友達として相応しいかじゃない。うるかの想い人として相応しいかだ。厳しくいくぞ)


………………物陰

文乃 (……うーん、成幸くんが心配で来てみたけど、本当に大森くんをじろじろ見てるよ)

文乃 (どうやって勘違いだって気づかせてあげたらいいんだろ……)

キリキリキリ……

文乃 (……胃が痛いなぁ)

  「あれ? 文乃っち、教室の前でどしたん?」

文乃 「わひゃっ!? う、うるかちゃん!?」

うるか 「そ、そんな驚かなくても……」


911: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:48:16 ID:aVLVUSo6

文乃 「ご、ごめんごめん。B組に何か用事?」

うるか 「うん。ちょっと英語で成幸に聞きたいところがあってさー」

うるか 「旅は道連れってことで、文乃っちも一緒行こー」 ガシッ

文乃 「えっ!? いや、あの、うるかちゃん……!」

うるか 「よー、成幸ー。勉強教わりに来たぜーっ」

成幸 「う、うるか!? と古橋も!?」

大森 「うお……相変わらずいいご身分だな、唯我……」

大森 「この学校のお姫様ふたりが尋ねてきてくれるなんて、うらやましいぞ、ちくしょー!」

成幸 (この野郎……! お前はそのうちのひとりから好かれてるんだぞ!?)

成幸 (なんて言うわけにもいかないし。もどかしい……!)

小林 「ほら、大森。邪魔になっちゃうから向こういくよ」

小林 「じゃ、武元も古橋さんも、ごゆっくり」


912: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:49:03 ID:aVLVUSo6

うるか 「あっ……こばやんも大森っちもあっち行っちゃった」

うるか 「なんか申し訳ないことしちゃったな」 シュン

成幸 (!? 大森が去った瞬間、少し悲しそうな顔を……!?)

成幸 (もう疑問を挟む余地はないな! うるかは完全に、大森のことが好きなんだ……)

うるか (成幸、せっかく男同士楽しそうにお昼食べてたのに、邪魔しちゃったよ)

うるか (……重い女とか、面倒くさい女とか、思われてないかな) ズーン

文乃 (……わたし自分のクラスに帰ってもいいかな)

成幸 「……で? 勉強って、何を教わりに来たんだ?」

うるか 「あっ……えっとね、昨日指定された問題は全部解いてきたから、早く答え合わせしたくて……」

うるか 「ごめんね。本当は次の勉強会までまで待ってれば良かったんだけど……。今日は部活だし……」

うるか 「がんばったから、早く成幸に見てもらいたくて……えへへっ……」

文乃 (おおう……こんなラブラブビームを放ってるんだから、さすがの成幸くんも……)

成幸 「おお、そうか。偉いぞ、うるか。じゃあ見させてもらうな」

文乃 (まぁ気づくわけがないよねきみが) ビキビキ


913: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:49:45 ID:aVLVUSo6

………………放課後 いつもの場所

成幸 「もう確定だ。やはり、うるかは大森の奴のことが好きなんだ」

文乃 (きみは本当に、一体どこに目をつけてるのかな?)

文乃 (……なんかもう、わたしが気を回すことじゃない気がするよ)

成幸 「と、いうことで、もう直接大森を呼び出して問いただすことにした」

文乃 「へっ? 問いただすって、何を? まさか変なことを伝える気じゃ……」

成幸 「安心しろ、古橋。さすがに俺も野暮なことはしない」

成幸 「これで最後だ。あいつの覚悟を問う。あいつがうるかに相応しい男か直接見極めてやるんだ」

文乃 (将来成幸くんに娘さんができて、成長して結婚する段になったら、彼氏は大変だろうな……)

文乃 (っていうか、水希ちゃんが結婚するときもこんなことしそう……。いや、絶対するね。彼は)

文乃 「……まぁ、好きにしたらいいんじゃないかな」

成幸 「おう。ってことで、大森に教室で待ってるように言ってあるから、俺行くな!」

タタタタタ……

文乃 「行っちゃった……」 (はぁ、まったくもう……)

文乃 「ほっとくわけには、いかないよね……」


914: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:50:27 ID:aVLVUSo6

………………3-B教室

ガラッ

大森 「ん? おー、唯我。呼び出しておいて消えるからどうかしたのかと思ったぞ」

成幸 「……ああ。待たせて悪かったな」

成幸 「とりあえず座ってくれ。話がある」

大森 「なんだよ、改まって。なんか顔が怖いぜ?」

成幸 (……そう。にわかには信じられないが、海原と川瀬の話、そして今日のうるかの反応から、)

成幸 (うるかが好きな男は、間違いなくこいつだ……!!)

成幸 (密室で先輩に迫られるのに興味があって、俺と古橋の盗み撮りをSNSに無断でアップするような、こいつだ……!!)

大森 「で? どうかしたのか、唯我?」

成幸 「……ああ。いくつか聞きたいことがあるんだ」

大森 「聞きたいこと? なんだ?」

成幸 「……お前、付き合ってる女子とかいるの?」

大森 「………………」

大森 「……逆に聞きたいんだけど、俺にいると思う?」


915: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:51:38 ID:aVLVUSo6

成幸 (……まぁ、そうだよな)

大森 「おい唯我、お前ひょっとして俺をからかうために残らせたのか?」

成幸 「違う。まだ続きがある。じゃあ、お前は好きな人とかはいるのか?」

大森 「へ……?」

大森 「……なんか意外だな。唯我ってそのテの話嫌いなんだと思ってた」

成幸 「嫌いじゃない。苦手なだけだ」 ジロッ 「……答えられるなら答えてくれ」

大森 「んー、まぁ、気になる女の子というか、きれいとかかわいいとか思う女の子は大勢いるが」

大森 「特定の誰か、ってのはないかなー。俺はほら、誰でもウェルカムだし?」

成幸 「………………」 イラッ

成幸 「……そうか。じゃあ、最後に聞かせてくれ」

成幸 「お前は、武元うるかのことをどう思ってる?」

大森 「は……? “人魚姫” のこと?」

成幸 「………………」

大森 「……えっと、質問の意図がまったく見えないけど、そうだな……」

大森 「かわいいとは、思うぜ? 日焼けも健康的でいいと思うし……」


916: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:52:26 ID:aVLVUSo6

成幸 「そ、そうか……」

ズキッ

成幸 (んっ……なんだ? そう答えてくれることを期待していたのに……)

成幸 (どうして、息苦しいんだ? どうして、胸が痛いんだ……?)

大森 「急になんだ? お前今日変だぞ? ほら、これやるよ」

スッ

大森 「体調大丈夫か? せっかくずっと勉強がんばってきたんだから、この時期に体調崩すなよ?」

成幸 「えっ……? 缶コーヒー、俺に……?」

大森 「今日、唯我の様子が変だったからさ。温まれよ」

大森 「お前が来るのが遅いから、ちょっとぬるくなっちまってるけどな」

成幸 「大森……。わるい。ありがとう」

大森 「気にすんなよ。二学期期末の試験範囲も頼むぜー?」

成幸 (こいつは、そうだ……。根は悪い奴じゃない。気遣いもできる……)

成幸 (少しうるさくて、面倒くさい奴ではあるけど……でも……間違いなく、良い奴だ)

成幸 (こいつのことを穿った見方をしていた自分が、恥ずかしい……)


917: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:54:12 ID:aVLVUSo6

大森 「……んで? なんだっけ? “人魚姫” の話だっけ?」

成幸 「あ、いや……それはもういい。忘れてくれ」

成幸 (あとはもうなるようになってもらおう。うるかの気持ちをどう受け取るかはこいつ次第だ……)

成幸 (俺は 『教育係』 として出過ぎたマネをせず、ただ眺めていよう……――)

大森 「―― “人魚姫” 、日焼けも健康的だし、スタイルもいいし、何より胸が大きくていいよなー!」

成幸 「………………」 ビキッ 「……は?」

大森 「えっ? そういうこと聞いてたんじゃねーの?」

大森 「でも、あくまで俺の好みだけど、顔は “眠り姫” の方が好みなんだよな」

成幸 「………………」

大森 「でもなぁ、“眠り姫” は胸が小さいしなぁ……」

大森 「その辺が悩みどころだよな! 唯我はどう思う?」

成幸 「………………」

ニコッ

成幸 「……うん。とりあえず、正座」


918: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:55:55 ID:aVLVUSo6

大森 「へ……?」

成幸 「うん。正座。早く。ハリーアップ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

大森 「唯我、なんか怒って――」

成幸 「正座」

大森 「……はい」 ピシッ

成幸 「……なぁ、大森。俺はお前の友達だ。だから言うぞ?」

成幸 「女子の好みの話をするのは大いに結構だ。ただなぁ」

成幸 「人がコンプレックスに思ってる身体的特徴をどうこう言うのは、最低だと思うぞ?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

大森 (あ、これ、ほんとに怒ってるやつだ)

大森 「わ、悪い。たしかにその通りだな……。俺も目が横線一本とか言われたら嫌だわ……」

成幸 「うん。分かってくれたならいい」

成幸 「……コーヒー、ご馳走様。今日は呼び出して悪かったな」

大森 「い、いや、いいよ」 アセアセ 「気にしなくて大丈夫」


919: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:56:29 ID:aVLVUSo6

成幸 「……じゃあ、俺行くから」

大森 「お、おう。じゃあ、また明日な、唯我」

成幸 「おう」

成幸 (……当人たちに任せようと思ったが、そういうわけにいかなくなった)

成幸 (今のこいつにうるかは任せられん!!)

成幸 (こいつが成長して、もう少し大人になったら考えてやらんでもないが、今はダメだ!)

成幸 「大森」

大森 「……は、はい!」 ビクッ

成幸 「今のお前にはうるかは渡せん」

大森 「へ……?」

タタタタタ……

大森 「行っちゃった……? けど、なんで、“人魚姫” ……?」

大森 「一体なんだったんだ……?」


920: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:57:34 ID:aVLVUSo6

………………教室外 少し前

文乃 (……心配になって聞き耳を立ててみれば)


―――― 『でも、あくまで俺の好みだけど、顔は “眠り姫” の方が好みなんだよな』

―――― 『でもなぁ、“眠り姫” は胸が小さいしなぁ……』


文乃 (なぜわたしがとばっちりでダメージを受けなくちゃいけないんだろう……) ズーン

文乃 (はぁ……――)


  成幸 「――女子の好みの話をするのは大いに結構だ。ただなぁ」

  成幸 「人がコンプレックスに思ってる身体的特徴をどうこう言うのは、最低だと思うぞ?」


文乃 「へ……?」

文乃 (成幸くんの声……怒ってる……?)

文乃 「……成幸くん。うるかちゃんだけじゃなくて、わたしのことも、」

文乃 「……わたしのことも、そうやって守ってくれるんだ」 カァアアアア……

文乃 「えへへ……///」


921: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/27(土) 23:58:07 ID:aVLVUSo6

………………夕方 正門前

うるか 「……あっ、成幸ー!」

成幸 「おう。悪いな。急にメール送ったりして」

うるか 「いいよ。っていうか、部活終わるまで待たせちゃってごめんね」


 『部活が終わったら会えないか? 話があるんだ』

 『正門前で待ってる』


うるか (急にあんなメールが来たから、しょーじきビックリしたけど……)

ドキドキドキドキ……

うるか (話ってなんだろ?)

成幸 「……あのさ、うるか。今から言うことは、お前にとって、すごく不快なことかもしれない」

うるか 「へ?」

成幸 「大きなお世話かもしれない。ひょっとしたらお前は俺のことを嫌うかもしれない」

成幸 「ただ、俺はお前の 『教育係』 として、友達として、言っておかなくちゃと思うんだ」

成幸 「……聞いてくれるか?」


922: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:01:27 ID:Tnw.rbtQ

うるか (な、なんの話だろ……)

うるか 「そこまで言ったなら、言ってよ。気になるし……」

成幸 「わかった。じゃあ、言うな」

うるか 「う、うん……」

ドキドキドキドキ……

成幸 「あのな、うるか……」



成幸 「お前の好きな人、偶然知ってしまったんだ」



うるか 「………………」

うるか 「へ……?」

うるか 「へぇええええええええええええええええええええ!!??」


923: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:02:09 ID:Tnw.rbtQ

成幸 「すまん! 本当に偶然知ってしまったんだ! ごめん!」

うるか 「う、うそでしょ!? ほんとに!?」 カァアアア…… 「ほんとのほんとに!?」

成幸 「本当だよ。すまん……」

うるか 「……ま、マジかぁー……」

うるか (う、うそうそうそ!? どうすんの!? どうしたらいいの!?)

うるか (あたしが成幸のこと好きだってバレたってことだよね!?)

うるか 「ま、待って!? じゃあ、それを知って、成幸は……」

うるか 「……な、成幸は、どうしたいって、思うの?」

成幸 「………………」

成幸 「……悪い。俺は、正直、やめておいたほうがいいと思う」

うるか 「っ……」 ズキッ

うるか 「なっ……なんで、そう思うの?」

成幸 「お前はすごい奴だ。水泳だけじゃない。家事だって完ぺきだし、料理だってプロレベルだ」

成幸 「勉強だって最近がんばってるだろ? 昨日出した宿題を今日の昼に持ってきやがって……」

成幸 「……お前はすごいよ。だからこそ、今のお前と、今のあいつじゃ、釣り合わないと、俺は思う」


924: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:02:55 ID:Tnw.rbtQ

うるか 「………………」

うるか (ん……?)

うるか (あいつ……?)

成幸 「もちろんわかってる! こんなの俺の一方的で独善的な考えだ!」

成幸 「恋愛ってのはそういう単純なことで決まるわけじゃないことも、なんとなくわかる!」

成幸 「でも、俺は……お前みたいなすごい奴に、今の軽率なあいつと付き合うようなことはしてほしくないんだ……」

うるか 「ち、ちょっと待って、成幸……――」

成幸 「――そうだ、俺の勝手な偽善だ。お前にとってはありがた迷惑……いや、ただの迷惑かもしれない」

うるか 「いや、だから、成幸――」

成幸 「――それでも俺は! 嫌なんだ。だから、あいつがもう少し成長して、お前に相応しい男になるまで待って――」

うるか 「――うん。ちょっと話聞いてくれる? 成幸?」 ニコッ

成幸 「へ……?」

うるか 「まずはっきりさせたいんだけど、あたしの好きな人って、誰?」

成幸 「えっ……? いや、だって、そんなのお前が一番……――」

うるか 「――うん。そういうのいいから。教えて?」


925: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:03:50 ID:Tnw.rbtQ

成幸 「え、あ、えっと……大森、だろ?」

うるか 「………………」

うるか (……ようやくナットクできたってゆーか、なんとゆーか……)

ヘナヘナヘナ……

うるか (焦って損したよ。よく考えたら、成幸が自分で気づくわけないか……)


―――― 『お前の好きな奴って…… 俺……?』

―――― 『そんなわけないじゃん! 何言ってんのもーっ!!』


うるか (……あたし、一回否定しちゃってるしね)

うるか (もう一回気づいてくれるほど成幸がするどかったら、あたいしもこんな苦労してないよね)

成幸 「お、おい、うるか? どうした?」

うるか 「……気が抜けたの。成幸は成幸だな、って」

成幸 「へ? へ? どういうことだ?」

うるか 「……あたしの好きな人、大森っちじゃないよ?」

成幸 「えっ……」


926: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:04:38 ID:Tnw.rbtQ

成幸 「………………」

カァアアアア……

成幸 (お、おいいいいいいいいいい!? マジで!? マジか!?)

成幸 (ま、待て待て待て!! つまり俺は……)


―――― 『お前の好きな奴って…… 俺……?』

―――― 『そんなわけないじゃん! 何言ってんのもーっ!!』


成幸 (あのときのようなアホな勘違いをまたしてしまったってことか……!?)

成幸 (恥ずかしいなんてレベルじゃないぞこれは!? そういえば、大森にも余計なことを……)


―――― 『今のお前にはうるかは渡せん』


成幸 (かっこつけて何言ってんの俺!? アホなのか!? いやアホなんだけど!!)

成幸 (何が “うるかは渡せん” だよ!? 穴があったら潜り込んでフタをしたい!!)

ヌォオオオオオ………………


927: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:05:13 ID:Tnw.rbtQ

成幸 「………………」

成幸 「……すまん、うるか。忘れてくれ」

成幸 「俺の早とちりだ。俺はアホだ」

うるか 「い、いいよ。何か知らないけど、勘違いしちゃったんだよね」

うるか 「べつに気にしてないから。ね?」

成幸 「うぅ……お前の優しさが心に沁みるよ。ありがとう……」

うるか 「……成幸、あたしが大森っちのこと好きだと勘違いして、わざわざあたしを呼び出したの?」

成幸 「……そうだよ。お前が心配になってさ」

成幸 「友達の俺が言うのもなんだが、あいつはスケベだし、マナーが悪いときもあるし……」

成幸 「もちろん悪い奴ではないし、いいところもたくさんあるけど、それでも……」

成幸 「……もしお前があいつのことを好きなら、『教育係』 として色々と忠告しておこうかと思ってな」

成幸 「傲慢なことをしようとした罰が当たったのかもしれん。恥ずかしい……」

うるか 「そっか……」

うるか 「……成幸、あたしのこと心配してくれたんだ?」


928: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:05:44 ID:Tnw.rbtQ

成幸 「? そりゃ当たり前だろ。お前とは中学の頃からの付き合いだし、」

成幸 「俺はお前の 『教育係』 だからな」

うるか (……そっか)

うるか (成幸、あたしが他の男の子のこと好きって思い込んでて、その相手を勘違いして……)

うるか (あたしのこと、心配してくれたんだ……)

カァアアアア……

うるか (今はまだキョーイク係として、かもしれないけど、)

うるか (あたしのこと、少なくとも大森っちには任せられないって思ってくれたんだ)

うるか 「えへへ……」

成幸 「? どうして笑ってるんだ?」

うるか 「……えへへへ、内緒」

成幸 「なんだそりゃ……?」

うるか (あたしのこと、“渡したくない” って、思ってくれたんだ……)

うるか (……嬉しいな)


929: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:06:47 ID:Tnw.rbtQ

うるか 「ねえ、成幸」

成幸 「うん?」

うるか 「もう二度と、成幸がそーいう勘違いしないように、いま約束するね?」

成幸 「約束?」

うるか 「うんっ!」

ニコッ

うるか 「あたし、好きな人に告白する前に、絶対に成幸からアドバイスもらうから!」

うるか 「……だから、安心してていいよ。当分は、成幸のそばに、『生徒』 としていてあげるから」

成幸 「な、なんだそりゃ……?」

うるか 「えへへ……」

うるか (……いつか、絶対)

うるか (『生徒』 としてじゃない。ひとりの女子として)

うるか (……隣に行くからねっ、成幸!)


おわり


930: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:07:38 ID:Tnw.rbtQ

………………幕間1 「ガルガル期」

成幸 (……そもそも、前回も今回も、水泳部のせいで勘違いすることになったんだ)

成幸 (これからは、水泳部の連中の言うことを真に受けないようにしよう)

海原 「あっ、唯我くーん。なんかうるかが探してたよー? また和訳をチェックしてほしいんだってー」

成幸 「ほ、本当か!? うそじゃないだろうな!?」 ガルルルッ

川瀬 「……おい、小林。唯我の奴、今度は一体どうしたんだ?」

小林 「俺に聞かれてもなぁ……」

滝沢先生 「お、唯我、ちょうどいいところに」

滝沢先生 「水泳の補習点足しといたから、無事体育の単位出るぞ。良かったな」

成幸 「本当ですか!? うそじゃないでしょうね!?」 ガルルルルッ

滝沢先生 「……おい小林。こいつ一体どうしたんだ?」

小林 「だから分かりませんってば……」

小林 (……成ちゃんが壊れるとみんな俺に説明を求めにくるから困るんだよなぁ)

小林 (っていうか、朝から大森の姿が見えないけど、どこ行ったんだろ)


931: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/28(日) 00:08:33 ID:Tnw.rbtQ

………………幕間2 「身体的特徴の誹謗中傷ダメ絶対」

大森 「むーっ! むーっ! むーーーーっ!」

鹿島 「あらあら、無駄ですよ、大森さん。この時間、体育館裏には誰も来ませんから」 ニコッ

蝶野 「古橋姫を悲しませるような暴言を吐いたと聞いたっス。無事に帰れると思わないでくださいっス」

猪森 「ふふ、さて、手始めにどれからやってやろうかな。ふふふ……安心しろ? 全部間違いなく痛いから」

大森 「むーっ! むーっ!」

大森 (助けてー! 唯我ー! 古橋さーーん!!)



おわり





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