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【ぼく勉】成幸 「キスと呼べない何か」

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:10:57 ID:nfKWg1KI

………………昼休み 一ノ瀬学園 3-B教室

大森 「なぁなぁ、一学期に唯我がキスしただの何だのって話あったじゃん?」

成幸 「………………」

成幸 (……こいつほんっっっとロクでもねーことしか言わないな!!)

成幸 「……そういえばそんなこともあったな。どうでも良すぎて忘れてたが」

大森 「結局噂もなくなっちゃって、俺としては不完全燃焼というかなんというか」

成幸 「っていうかお前が廊下で大声上げて走り回ったせいで噂になったんだけどな!?」

大森 「でもキスはしたんだろ?」

成幸 「………………」

プイッ

成幸 「……黙秘権を行使する」

小林 (それもう自白してるようなもんだけどね、成ちゃん)


2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:14:16 ID:nfKWg1KI

大森 「いいじゃねぇかよ、唯我。ゲロっちまえって」

大森 「ここだけの秘密にしておいてやるからさ……」

成幸 「そのお前の言葉をどうやったら信じられるのか教えてほしいな」

成幸 「っつーか、何で急にそんな話を始めたんだよ」

大森 「いやー、この際はっきりさせておきたくてさー」

ズイッ

大森 「……キスの相手って古橋さんなんだろ?」 コソッ

成幸 「古橋!? 何で!?」 コソッ

大森 「いや、夏休みに一緒にお泊まりするくらいの仲だったら、あの時期にキスしててもおかしくはないかな、って」 コソッ

成幸 「意外と理性的な判断だな! っていうかお前それ言いふらしたりしてないだろうな!」 コソッ

大森 「するわけねーだろ! あの盗撮騒動のせいで、俺がどんなひどい目に遭ったか……」 ガタガタブルブル

大森 「で!? どうなんだ!? お前のキスの相手は古橋さんなのか!?」

小林 (どうでもいいけど……)

小林 (ふたりともヒートアップしすぎて、途中から俺にダダ漏れだからね、声)


3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:39:36 ID:nfKWg1KI

成幸 「なっ……そ、そんなわけ……――」

ハッ

成幸 (待てよ。ここで否定してしまったら、こいつのことだ)

成幸 (俺と仲の良い女子全員の名前を順々に出してくる可能性が高い!)

成幸 (緒方の名前が出た瞬間、俺はきっと……)


―――― 『ただの接触事故…… ですからね』


成幸 (絶対動揺を見せてしまう……!!)

成幸 (そうしたら、俺と緒方がキスをしたことがバレてしまって、あいつに迷惑をかけてしまう……!)

大森 「……? 唯我? どうしたんだよ、違うなら違うと……」

成幸 「……の、ノーコメント、だ」

大森 「……!?」 ガーン


4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:40:18 ID:nfKWg1KI

………………廊下

理珠 「昨日も勉強が捗りました。長文読解の精度も上がってきた気がします」

うるか 「あたしもだよリズりん。昨日の宿題八割正解しちゃったー」

理珠 「む……。やりますね、うるかさん。私も負けませんよ」

うるか (えへへ、成幸褒めてくれるかな~) ニヤニヤ

理珠 (成幸さん、何と言ってくれるでしょうか……) ポワポワ

「うわぁあああああああん!!!」

うるか 「……? あれ、向こうから走ってくるの、大森っちだ」

うるか 「おーい、大森っちー、どうした――」


大森 「――――唯我のヤロー!! やっぱりキスの相手は古橋さんかよぉおおお!!」 ビュン


うるか 「………………」

理珠 「………………」

うるか&理珠 「「……え?」」


5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:41:09 ID:nfKWg1KI

………………放課後 3-A教室

ヒソヒソ……ヤッパリ……マジカヨー……

文乃 「……?」

文乃 (どうしたんだろ? 今日はなんか、みんなの様子がおかしいような……)

鹿島 「あの~、古橋さん?」

文乃 「? 何かな、鹿島さん」

鹿島 「唐突ではありますが~、いま校内で古橋さんに関して噂が流れているのをご存知ですか~?」

文乃 「噂?」 ジロリ 「……また変なことしたんじゃないよね?」

鹿島 「誓って、私たちは何もしておりません~」

文乃 「……で、噂って何?」

鹿島 「……では、耳をお借りして」 コソッ

鹿島 (……唯我成幸さんと、古橋さんが、キスをされたのではないかと、そういう噂です)

文乃 「………………」

文乃 「……はぁあああ!?!?」


6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:42:07 ID:nfKWg1KI

文乃 「ど、どこの馬の骨なのかな!? そんな噂を流したのは!?」

鹿島 「どうも、唯我成幸さんのお友達の、大森奏さんのようですね~」

文乃 (またお前か!!! だよ大森くん!!)

男子1 「うおー! マジかよー!」

男子2 「一学期の噂は本当だったのかー!」

男子3 「俺たちのアイドル “眠り姫” をー! 唯我のヤロー!!」

鹿島 「……とまぁこんな風に、噂はしっかりと広まってしまっていまして~」

鹿島 「一応古橋さんのお耳に入れておいた方がいいかと思った次第です~」

文乃 「ご、誤解だよ! わたしは成幸くんときっ……キスなんかしてないよ!!」

鹿島 「………………」 プイッ

文乃 「……ど、どうして顔を赤くして目を逸らすのかな鹿島さん!?」

鹿島 「いえ、だって……」 ポッ 「お泊まりもしているのですから、キスくらい今さら……と」

文乃 「アレも誤解だって話したよね!?」


7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:43:11 ID:nfKWg1KI

文乃 「っていうか、誰かに聞かれたら誤解だって伝えてね!?」

文乃 「わたし、本当に成幸くんとき……キスなんかしてないからね!?」

鹿島 「……古橋さんがそう望むのなら吝かではありませんが」

鹿島 (とはいえ、誤解であろうとなかろうと、噂が広まるのは悪いことではない)

鹿島 (……そのまま立ち消えるならそれでよし。しばらく静観しましょうかね)

文乃 「こうしちゃいられないよ。成幸くんとお話しなきゃ……!!」

タタタタ……

猪森 「……どうだい、鹿島さん。唯我くんのキスの相手は、本当に古橋姫かい?」

鹿島 「どうでしょうねぇ~。うそをついているようには見えなかったですが……」

ゾクゾクッ

鹿島 「……正直、照れて焦る古橋姫が尊みが深すぎてそれどころではなかったといいますか」

猪森&蝶野 「「すごくわかる」」


8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:44:10 ID:nfKWg1KI

………………いつもの場所

成幸 「すまん!」

文乃 「……う、うん。開口一番謝られてこっちもどう対応したらいいかわからないんだけど、」

文乃 「一体何があったのか教えてもらってもいいかな?」

成幸 「……ああ。そうだな」

成幸 「昼休みに、大森のバカが一学期のキスの噂を蒸し返してきてさ、」

文乃 「うん」

成幸 「で、あの旅館でのことを知ってる大森が、俺のキスの相手は古橋だろう、って言い出してさ、」

文乃 「……うんうん」

成幸 「で、俺が否定しなかったら大森が涙を流して走り出した」

文乃 「ちょっと待って」

文乃 「……何で否定しないの!?」

成幸 「いや、だって……。お前を否定しちゃったら、いずれ、どんどん追求されて……」

成幸 「……本当のキスの相手がバレると思ったから」

成幸 「ノーコメントって言っただけで、大森があんなに反応すると思わなくてさ……」


9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:45:09 ID:nfKWg1KI

成幸 「いや、そもそもキスっていうか、アレはただの事故なんだけど」

文乃 「………………」

ジロリ

文乃 「……なるほど。つまり、きみはきみの本当のキスの相手のために、わたしを売ったわけだね?」

成幸 「うっ……」 ズキッ 「そんなつもりはなかったが、結果的にそうなってしまったかもしれん……」

成幸 「本当にすまん! 古橋!」

文乃 「……はぁ。冗談だよ、成幸くん。きみがそんなに器用な人じゃないって知ってるよ」

文乃 「でも、つまりきみのキスの相手は、大森くんが知ってる相手ってこと、か」

成幸 「っ……」 ギクッ

文乃 「なおかつわたしも知ってる人、かな?」

成幸 「………………」 ギクギクッ

文乃 「……ま、わたしは追求なんて野暮なことはしないから安心してよ」

成幸 「すまん。助かる……」


10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:45:51 ID:nfKWg1KI

文乃 「人の噂も七十五日。わたしたちがいつも通りにしてれば、みんなすぐに忘れるよ」

成幸 「古橋がそう言ってくれるとありがたいよ。悪い」

成幸 「……っと、もうこんな時間か。緒方とうるかが図書室で待ってるな。行こうぜ、古橋」

文乃 「うん。そうだね――」

――カツッ

文乃 「あっ……」 グラッ

成幸 「……っと」 ポスッ

ギュッ……

文乃 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「……だ、大丈夫か、古橋?」

文乃 「う、うん。ちょととつまずいちゃって……」


11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:46:27 ID:nfKWg1KI

ドキドキドキドキ……

文乃 (あ、あれ、何でだろ……)

文乃 (前もたしか、足をもつれさせたわたしを成幸くんが受け止めてくれて……)

文乃 (そのときは……)


―――― 『わわわっ ご ごめんね唯我君っ!』

―――― 『い いや 気をつけてな』


文乃 (お互いすぐに離れて、それでおしまいだったのに……)

文乃 (なんで、わたし……)

文乃 (離れなくちゃって思ってるのに、身体が動かないんだろ)

成幸 「ふ、古橋? どうしたんだ?」

文乃 (これって……)

文乃 (あのときと一緒なんだ)

文乃 (旅館で、同じ布団で寝たとき……)

文乃 (身体を預けてしまったあのときと、一緒なんだ……)


12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:47:12 ID:nfKWg1KI

ガサッ……

成幸&文乃 「「えっ……」」

理珠 「………………」

うるか 「………………」

文乃 「り、りっちゃん!? うるかちゃん!?」

うるか 「あ、あはは……あ、えっと……ふたりが遅いから、探しに来たんだけど……」

うるか 「ひょっとしてお邪魔だったかなー、なんて……」

理珠 「う、噂は、本当だったのですね、文乃……」

理珠 「おふたりは、そういう関係だったのですか……」

文乃 「!? ち、違うよ! 誤解だよ!?」

成幸 「そうだ! 誤解だぞ! 俺たちは何も……!」

うるか 「だ、抱き合ったまま言われても、説得力がないってゆーか……」

成幸 「あっ……!?」  文乃 「ち、違うんだよこれは!?」 バババッ

理珠 「……行きましょう、うるかさん。私たちはお邪魔虫のようですから」

文乃 「ち、ちょっと待ってりっちゃーん!!」


13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:47:53 ID:nfKWg1KI

………………

理珠 「……なるほど。話は分かりました」

うるか 「つまり、大森っちの早とちりなんだね。よかった……」 ホッ

成幸 「すまん。お前たちにまで迷惑をかけたみたいだな……」

うるか 「べつに迷惑とかではないけど……」 ニヘラ

文乃 (表情に出しすぎだようるかちゃん……)

理珠 「………………」

理珠 「……あの、成幸さん」 コソッ

成幸 「ん?」 コソッ

理珠 「……その、キス、って」 コソッ 「あのときのアレ、ですよね……」

成幸 「ん……まぁ、そうだけど……」 コソッ

成幸 「……ごめんな。お前にも迷惑かけて」 コソッ

理珠 「いえ、それは、お互い様なので……」 コソッ


14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:48:43 ID:nfKWg1KI

うるか 「ふたりとも、コソコソ何話してんのー?」

理珠 「な、なんでもありませんっ」

理珠 「オホン。とにかく、文乃の言うとおり、人の噂なんてすぐになくなります」

理珠 「我々は気にせず、いつも通り勉強に励むだけです」

成幸 「うん。その通りだな。勝手な噂で俺たちの成績が下がったりしたらそれこそコトだ」

成幸 「俺たちは気にせず勉強をがんばろ――」

――ピンポンパンポン

真冬 『3年B組、唯我成幸くん。生徒指導室、桐須のところまで来なさい』

真冬 『……大至急、来なさい』 ギリッ

ブツッ……

成幸 「………………」 (あまり深く考えなくても分かる)

成幸 (最後に歯ぎしりの音も聞こえたし……桐須先生は)

成幸 (俺に激怒している……!!)


15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:49:34 ID:nfKWg1KI

………………生徒指導室

真冬 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 (こっ、怖えぇええええええええええ!!)

成幸 (俺、生きてこの部屋を出ることが出来るのか!?)

真冬 「……なぜ呼び出されたかはわかるわね、唯我くん」

成幸 「え、えっと……ひょっとして、今、流れている噂について、ですか……?」

真冬 「そうね。あなたが古橋さんとキスをしたという噂についてだわ」

成幸 「すっ、ストレートに言わないでください……」

真冬 「照れている場合ではないわ。現状、教師陣はバカな子どもの噂話程度に捉えているけれど、」

真冬 「唯我くん、あなたは以前にもろくでもない噂が流れたわね?」

真冬 「そういうことが重なると、VIP推薦を目指すあなたにとって良くないというのは分かるわね?」

成幸 「それは……はい。その通りだと思います」

成幸 「でも、先生! 信じてください! 俺はキスなんてしてないんです!」

真冬 「……きみがそう言うのならそうなのでしょう。私は信じるわ」


16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:50:37 ID:nfKWg1KI

成幸 「先生……」 ジーン

真冬 「とはいえ、私が信じたところでどうなるものでもないのよ」

真冬 「また学園長の耳に入ったりしたらコトだもの」

真冬 「……以前、緒方さんとの “接触事故” のときでそれは思い知っているわね?」

成幸 「……そうですね。あのときの学園長は面倒くさかったです……」

真冬 「今回は根も葉もない噂。それに、古橋さんも否定をしている」

真冬 「噂はすぐに収束するでしょう」

真冬 「ただし、今後も同じようなことが起こると、VIP推薦が遠のく可能性があるわ」

真冬 「それを肝に銘じておきなさい」

成幸 「は、はい! わかりました!」

真冬 「……以上よ。呼び出して悪かったわね」

成幸 「えっ……?」

真冬 「? どうかしたかしら?」

成幸 「いえ、もっと怒られるかと思ったから……」


17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:51:22 ID:nfKWg1KI

真冬 「……あなたが悪くないというのは、考えるまでもなく分かることだもの」

真冬 「あなたが悪くない現状、あなたを怒ることに教育的効果があるとは思えないわ」

成幸 「……じゃあ、先生は」

成幸 「俺を心配して、俺に注意を促すために呼び出してくれたんですか……?」

真冬 「……!?」

真冬 「なっ、何を……! 私は、べつに……ただ、教師としての責務を全うしただけであって……」

真冬 「誤解! 私はべつに、きみのことを心配したりなんて……」

成幸 「先生……」 キラキラキラ 「やっぱり先生は良い人です! ありがとうございます!」

真冬 「だ、だから違うと言っているわ!」

真冬 「まったく……」 プンプン

真冬 「……早く戻ってあげなさい。あの子たちがあなたを待っているでしょう」

成幸 「はい! では、失礼します! 桐須先生、また明日!」

バタン

真冬 「……まったく。調子が狂うわ」 クスッ 「あなたこそ、本当に」

真冬 「良い子なんだから」


18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:52:08 ID:nfKWg1KI

………………帰路

成幸 「………………」

うるか 「………………」

成幸 (……古橋と緒方と別れ、うるかとふたりきりになったわけだが、)

成幸 (なぜだか知らないがめちゃくちゃ気まずい!!)

成幸 (いつもの活発なうるかからは考えられないくらいアンニュイな表情だし)

成幸 (言葉数も少ないし……)

成幸 (……俺、何かしてしまっただろうか)

うるか 「………………」

うるか 「……ねえ、成幸」

成幸 「っ……」 ビクッ 「な、なんだ?」

うるか 「……今日の話の続きをしても、いい?」

成幸 「今日の話……?」

うるか 「キス……」 ギュッ 「……の、話」

成幸 「!? い、いや……」 アセアセ 「っていうか、何で俺の手を掴んだんだ……?」


19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:52:48 ID:nfKWg1KI

うるか 「……逃がしたくないから」

成幸 「に、逃げねーよ……」

うるか 「逃げるよ。いつだってはぐらかされるんだから」

ジッ

うるか 「……ねえ、成幸。答えて。教えて」

うるか 「成幸は、誰とキスをしたの?」

成幸 「っ……」

成幸 「……いや、それは……ごめん」

成幸 「言えないよ」

うるか 「んっ……。そっか……」

成幸 「た、ただ、勘違いしないでくれ! 前も言ったけど、あれはただの事故だ!」

成幸 「偶然、こう、ぶつかってしまっただけで、キスとは到底呼べないような――」


うるか 「――……事故だったなら、相手、言えるんじゃないの?」


成幸 「えっ……」


20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:53:58 ID:nfKWg1KI

うるか 「………………」

成幸 「……えっと、それは……。相手の名誉のため、というか、なんというか……」

成幸 「俺は……」

うるか 「………………」

クスッ

うるか 「……なんて、ね。ごめんね、意地悪言って」

うるか 「教えてくれなくていいよ。成幸のキスの相手なんて、ぜんっぜんキョーミないし」

成幸 「なっ……」 ハァ 「……お前なぁ」

うるか 「ごめんごめん。でもちょっとだけ気になったんだ」

うるか 「奥手の成幸にキスをさせるような女の子って、どんな子なんだろう、って」

成幸 「いや、だからあれはただの事故で……」

うるか 「……じゃ、あたしこっちだから! また明日ね、成幸!」

タタタタ……

成幸 「人の話聞けよ! ……あー、もう。行っちまったか」

成幸 「一体なんだったんだ、うるかの奴。少し様子が変だったような……」


21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:54:31 ID:nfKWg1KI

………………

うるか 「………………」

タタタタ……

うるか 「……っ」

グスッ

うるか 「……いいもん」

うるか 「あたしが成幸のファーストキスの相手じゃなくたって」

うるか 「いいもん!」

うるか 「最後にあたしが、成幸の隣にいられれば、それで!」

うるか 「あたしはそれでいいんだもん!」

うるか 「いい……えぐっ……いいんだもん……ぐすっ……」

うるか 「……負けないから」

うるか 「あたし、絶対負けないから……!」


22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:55:43 ID:nfKWg1KI

………………

理珠 「………………」

理珠 「……私とのことを、正直に説明したらいいのに、なぜそうしないのでしょうか」

理珠 「キス……」


―――― 『いいか緒方!』

―――― 『キスというのは女子にとって…… いや男子にとっても神聖なものでなくてはならんのだ!!』

―――― 『今日みたいに軽々しくしようとするなど言語道断!! 必ずいつか後悔することになるんだぞ! 必ずだ!』


理珠 (……キスは、神聖なもの。男子にとっても、女子にとっても)

理珠 「……だから、なのでしょうか」

理珠 「成幸さんは、たとえ事故であったとしても、キスをしてしまった私を気遣って……?」

理珠 「私のために、キスの相手を誤魔化してくれているのでしょうか」

カァアアアア……

理珠 (ふ、不可解です……。なぜ、頬がこんなに熱くなるのでしょうか)

理珠 (なぜ、こんなにも、鼓動が激しくなるのでしょう……)


23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:56:20 ID:nfKWg1KI

………………

文乃 「………………」

文乃 「……成幸くんのキスの相手、かぁ」


―――― 『かっこいいよなぁ 古橋は』

―――― 『苦手なものを克服してまで追いかけたい夢があるのって やぱかっこいいよ』

―――― 『いつか君が本当にやりたいことを見つけた時は お姉ちゃんが全力で応援するからね  「成幸くん」』


文乃 「でも、わたしなんて、同じ布団で寝て、同じ布団の中で、抱きしめられて……」

ハッ

文乃 (わ、わたしは何を言ってるの!? っていうか、何考えてるの!?)

文乃 (わたし、誰かも分からない成幸くんのキスの相手に……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (……対抗意識を燃やしてる……?)

文乃 (い、意味わからないよ。わたしは、べつに……何も……)

文乃 (成幸くんと、何もないんだから……)


24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:56:51 ID:nfKWg1KI

………………

成幸 「……はぁ」

成幸 (結局あいつらにも、桐須先生にも迷惑かけて、いいとこないなぁ、俺)

成幸 「………………」

成幸 (……キス、かぁ)

成幸 「ま、俺には関係ない話だな」

成幸 「いつかあいつらも、そういう相手ができて、そういうこと、するんだろうな」

成幸 「結婚式とか、『教育係』 なんて肩書きで呼ばれたりしてな」 クスッ

ズキッ

成幸 「っ……」 (……なんで)

成幸 (なんで、そんなことを想像しただけで……胸が痛むんだ?)

成幸 「……関係ない」

成幸 「俺は、あいつらのことなんて、なんとも……」

成幸 「……なんとも、思ってない、から」

おわり


25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/07(水) 21:57:24 ID:nfKWg1KI

………………幕間 「キス」

あすみ 「……ああ? キスぅ?」

うるか 「うん! 小美浪先輩なら経験ほーふそうだから!」

うるか 「キスのこと教えてくれるかな、って!」

あすみ 「……ん、まぁ、そりゃ、アタシはお前の言うとおり、経験ありすぎて困っちまうくらいだが」

あすみ 「………………」

あすみ 「……なぁ、武元。アタシは経験者だからこそ言うが、」

あすみ 「キスは、実際に経験して知った方がいいと思うんだ」

うるか 「!?」

あすみ 「……だから、お前のためにアタシは何も言わない。お前はがんばって、自分で経験して、知れ」

うるか 「さすが先輩! タメになるー!」

うるか 「よーし! あたしがんばるかんねー!」

あすみ 「………………」 (……ふぅ。武元が単純で助かった)

おわり





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