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【ぼく勉】理珠 「愛してます」

33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:13:39 ID:yfJ2n.4k

………………緒方家

理珠 「………………」

イライライライラ……

理珠 (……単純明快なゲームだったはずです)

理珠 (ただ成幸さんに、“愛してる” と言うだけのゲーム……)

理珠 (それなのに、私は……)


―――― 『あ……あいしししししししししししししししし』

―――― 『緒方さんがバグった!!』

―――― 『今度はまた別のイミで壊れたレコーダーに!!』


理珠 「なぜ、そんな簡単なこともできなかったのでしょうか……」

ブツブツブツ……

親父さん (理珠たま、機嫌が悪いなぁ。何かあったのかなぁ……)

親父さん (でも、イラついてる理珠たまもキュートだなぁ……) キュンキュン


34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:14:12 ID:yfJ2n.4k

理珠 (なんにせよ、このまま済ますのは私のゲーマーとしてのプライドが許しません)

理珠 (大前提となるゲームの開始すらできず敗北するとは、なんと情けない……)

理珠 「……負けません」

理珠 「なんとかして、成幸さんに “愛してる” と言ってやります!!」

親父さん 「!?」 ゴフッ 「理珠たま!? いま、パパ聞き間違いしちゃったかな!?」

親父さん 「理珠たま今、センセイに “愛してる” とかなんとか……」

理珠 「はい? ええ、言いましたけど、それが何か?」

親父さん 「り、理珠たまとセンセイは、もうそういう関係なのかい……?」

理珠 (そういう関係? 気軽にゲームをする関係ということでしょうか?)

理珠 「ええ、そうですね。そういう関係ですが、それが何か?」

親父さん 「!!」 ガーン!!!!

親父さん 「お、おのれ……センセイ……!!」 ギリッ

理珠 「まぁそれはそれとして、また私の部屋を勝手に覗いてましたね」

理珠 「お父さん、今後一週間半径3m接近禁止です」

親父さん 「!? そ、それだけは勘弁してくれー! 理珠たまー!」


35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:14:59 ID:yfJ2n.4k

………………翌日 一ノ瀬学園

成幸 「……つまりこの五段活用は、現代文法での五段活用とは少し違うわけだな」

理珠 「ふむふむ……」

成幸 「ただここで注意しなきゃならんのが、文章の流れによって活用法が変わる点だ」

成幸 「俺のオススメは、特殊な文法を用いる作品は丸暗記してしまうことだな」

成幸 「そうすれば、わざわざ特殊な活用について考えるリソースを必要としない」

成幸 「基本の活用だけしっかりと覚えて、数種の作品については別個に活用を覚えよう」

理珠 「わかりました。ありがとうございます、成幸さん」 ペコリ

成幸 「? なんだよ、改まって。変な奴だな」 クスクス

理珠 (……ふふふ。成幸さん、油断していますね)

理珠 (普段から親愛の情をしっかりと表しておけば、“愛してる” と言うことなど造作もないはず!)

理珠 (これはそのための布石です……!)

理珠 「いえ、成幸さんにはいつも勉強を教えていただいて、本当に感謝していますから」

理珠 「……いつも、本当にありがとうございます」

成幸 「そ、そうか? なんか、改めてそう言われると照れるな……」


36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:15:35 ID:yfJ2n.4k

うるか 「むっ……」

うるか 「あ、あたしも! いつも成幸には、ホント感謝してもしきれないよ!」

うるか 「いつもありがとね、成幸っ」

成幸 「お、おう。どういたしまして……」 テレテレ

文乃 「………………」

文乃 (……突然どうしたというのかな。うるかちゃんはともかくりっちゃんは)

理珠 「………………」 フンスフンス

文乃 (言葉とは裏腹に、成幸くんのことを好戦的な目で見ているし、気合いも入ってるように見える……)

文乃 (嫌な予感がするなぁ……)

文乃 「……ん、まぁ、わたしももちろん、成幸くんには感謝してるんだよ」

文乃 「いつもありがとうね、成幸くん」

成幸 「あ、ああ……/// 今日は一体どうしたんだ」

文乃 (人の気も知らないで照れてるなぁ、成幸くん……)


37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:16:09 ID:yfJ2n.4k

理珠 (むぅ……文乃もうるかさんも、私に言葉をかぶせてきましたね)

理珠 (私の意図を察しているのでしょうか。一人勝ちは許さない、と……)

理珠 (しかし、負けません!)

理珠 「……わ、私が一番感謝していますよ。なにせ私は、成幸さんのことを……あっ……」

成幸 「?」

理珠 「あ、あい……あい………………」

プシュー

理珠 「はぅ……///」

成幸 「なぜ急にオーバーヒートした!? 大丈夫か緒方!?」

理珠 (や、やはり、“愛してる” の言葉はなぜか言えません……)

理珠 (ですが、きっとですが、私がこれを自然に言えたとき、私は成幸さんに初めて勝利できる気がします)

うるか 「リズりんだいじょーぶ?」

理珠 「え、ええ……。すみません。少し休んでいることにします」

文乃 「………………」

文乃 (……うーん。また嵐の予感だよ……)


38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:16:55 ID:yfJ2n.4k

………………立ち食いそば屋

成幸 「……悪い、古橋。付き合ってもらっちゃって」

文乃 「べつにいいけど、ふたりだけで話がしたいって、一体どうしたの?」

成幸 「いや、今日の緒方の様子についてなんだけどさ……」

成幸 「……あいつ、今日一日ずっと変だっただろ?」

成幸 「そのせいで、今日終わらせたかった範囲が全然終わってないんだよ」

ズーン……

成幸 「前に小テストの点数が落ちたときに比べればマシだけど、これがずっと続くようだと……」

文乃 「おおう……」 (成幸くん凹んでるなぁ……)

文乃 (まぁ、たしかに今日のりっちゃんは、成幸くんに何かを言いかけてはオーバーヒートする、っていうのを繰り返してたし、)

文乃 (あのままじゃ、受験勉強に支障を来しちゃうよね)

成幸 「なぁ、古橋。緒方の様子がおかしかった理由、心当たりはあるか?」

文乃 「うーん……」 (そんなの、決まりきってるじゃない)

文乃 (絶対、きみのことに決まってるよ)

文乃 (……なんて、言うわけにはいかないもんね)


39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:17:29 ID:yfJ2n.4k

文乃 「……心当たりとかはないけど、このままじゃ困っちゃうもんね」

文乃 「いいよ。わたしがりっちゃんに聞いてあげる。今日は一体どうしたのか」

文乃 「りっちゃんが元に戻らないと、『教育係』 の成幸くんは不安だよね」

成幸 「本当か!? 助かるよ、古橋……」

成幸 「正直、俺は女子の気持ちなんて分からないし、今日も急に感謝されたりして……」

成幸 「悪い気はしなかったけど、ちょっと怖かったんだ……」

文乃 (うん。こっちとしてはあまりにも鈍すぎるきみの方が怖いと言いたいところなんだけどね)

文乃 「まぁ、本当なら女心の練習問題にするところだけど」

文乃 「お姉ちゃんが聞いてあげる。感謝してよね、成幸くん」

成幸 「ああ。本当に助かるよ。ありがとう、文乃姉ちゃん」


40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:18:25 ID:yfJ2n.4k

………………緒方うどん

ガラガラガラ……

理珠 「いらっしゃいませ……って、文乃?」

文乃 「や、りっちゃん。さっきぶり。久々にここのうどんが食べたくってさ。来ちゃった」

理珠 「わざわざお店に来なくても、うどんくらい学校に持って行きますよ」

文乃 「いや、さすがにそれに毎度甘えるわけにはいかないからね」

文乃 「……いま、お客さん少ないね。もしよかったら、一緒のテーブルで食べない?」

理珠 「たぶん大丈夫だと思います。ちょっと父に聞いてきます!」

パタパタパタ……

文乃 (変な様子はないなぁ。やっぱり成幸くんの前だけで様子がおかしくなってるみたい)

文乃 (ってことは、考えるまでもなく、恋愛がらみのことだよね)

文乃 (はぁ……。楽しいは楽しいけど、気が重いなぁ)

文乃 (うるかちゃんといいりっちゃんといい、愛が重たいからなぁ……)


41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:19:02 ID:yfJ2n.4k

………………

文乃 「……うん。やっぱりお店で食べるうどんはひと味違うね」 ズルズルズル……

理珠 「そう言っていただけると嬉しいです。やはり作りたては違いますね」 ズルズルズル……

文乃 「ごめんね。バイト中なのに、晩ご飯に付き合わせて」

文乃 (……とはいえ、ダイエット中なのに、わたしはさっきそばを食べてきたばかりだけど)

文乃 (もしこれで太ったりしたら成幸くん、絶対つねるからね)

理珠 「いえ、私もそろそろ晩ご飯休憩のつもりでしたから。ちょうどよかったです」

文乃 「……実はね、少し話があって来たんだ」

理珠 「話?」

文乃 「うん。今日、りっちゃん、様子がおかしかったからさ」

文乃 「急に成幸くんに改まった態度を取ったかと思ったら、突然顔を真っ赤にしたり……」

文乃 「今日は一体どうしたの?」

理珠 「そ、それは……」

文乃 「………………」 ジーッ


42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:19:35 ID:yfJ2n.4k

理珠 「……わ、笑いませんか?」

文乃 「笑ったりしないよ」

理珠 「絶対?」

文乃 「絶対」

理珠 「……うぅ」

文乃 (ふふふ、りっちゃん、かわいいなぁ)

文乃 (大方、勘違いか何かで、成幸くんのことを変に意識してるんだろうなぁ)

文乃 (いっそのこと、紗和子ちゃんみたいに少し誘導してあげようかなぁ……)

理珠 「実は、その……」

文乃 「うん」

理珠 「成幸さんにですね……」

文乃 「うんうん」

理珠 「…… “愛してる” と言いたくてですね……」

文乃 「………………」

文乃 「……うん?」


43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:20:25 ID:yfJ2n.4k

文乃 (ち、ちょっと待って!?)

文乃 (さっきまで微笑ましい気持ちでいたのに、とんでもないことを聞いてしまったよ!?)

理珠 「……よ、よかったです。(ゲームに負けたくらいでムキになって)文乃に笑われるかと思っていたから……」

文乃 (笑えるかぁあああああああああああ!! だよ!!)

文乃 「わ、笑えるわけないじゃん! いつから!? いつからなのりっちゃん!?」

理珠 「? いつから、とは?」

文乃 「いつからそうなの!? いつからその言葉を成幸くんに言いたくなったの!?」

理珠 「……そんなの、決まってます。先日、昼休みにゲームをしたときからですよ」


―――― 『あ……あいしししししししししししししししし』

―――― 『緒方さんがバグった!!』

―――― 『今度はまた別のイミで壊れたレコーダーに!!』

―――― ((フフ…… かわいいなぁりっちゃん……))


文乃 (あのときかぁあああああああああ!!)

文乃 「あのときのゲームで、とうとう成幸くんへの気持ちに気づいちゃったの、りっちゃん!?」


44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:20:59 ID:yfJ2n.4k

理珠 (成幸さんへの気持ちに気づいた……?)

理珠 「え、ええ。まぁ、そうですね。(成幸さんに)負けたくないという確固たる気持ちが生まれました」

文乃 「そ、そっか。そうなんだね……。(うるかちゃんに)負けたくないと思っちゃったんだね……」

文乃 「あ、もちろん分かってると思うけど、わたしは大丈夫だからね? りっちゃんの敵じゃないからね?」

理珠 「? いえ、文乃にもいつか絶対に勝ちますけど。このまま負けっぱなしでいるつもりはありません」

文乃 「!?」 (わ、わたしも敵認定されてたの!?)

文乃 「……オホン。まぁ、それは置いておくとして」

ドキドキドキ……

文乃 「りっちゃん、分かってるの? それを言ったら、今までの関係ではいられなくなるんだよ?」

理珠 「ええ。もちろん、関係性は変わるでしょう」

理珠 「負け続けだった私が、ようやく成幸さんに並び立つことになるわけです」

文乃 (負け続け……? ひょっとしてりっちゃんって、今までも意外と恋愛してきたのかな……?)

文乃 (成幸くんは、りっちゃんにとって、初めて隣に立ちたいと思えた男の子なのかな)

文乃 「……そっか。それが分かってるなら、わたしはもう何も言わないよ」

文乃 「がんばってね、りっちゃん!」


45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:22:17 ID:yfJ2n.4k

理珠 「………………」 ジーッ

文乃 「りっちゃん? どうかしたの?」

理珠 「……いえ。文乃はそれでいいのかな、と思いまして」

文乃 「へ……?」

理珠 「文乃はそれでいいのですか? わたしを応援するだけで、本当に」

文乃 「っ……」

ドキドキドキ……

文乃 「わっ、わたしはべつに、だって……成幸くんのことなんて……」

理珠 「悔しくはないのですか? 私はすごく悔しいです。だから、挑戦するんです……」

理珠 「文乃だって同じはずです。(成幸さんに)勝ちたいとは思わないのですか?」

文乃 「だってわたしは、りっちゃんとは違うもん。べつに、成幸くんにどうとか、そういうのは……」

文乃 (なんでそんな意地悪なことを言うのさ、りっちゃん。わたしが、友達の好きな子のことを、好きになるはずないじゃない)

ズキッ

文乃 (わたしはいいんだよ……。りっちゃんやうるかちゃんががんばってくれれば、それで……)

文乃 「……わたしには、そういうの、ないから」


46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:23:08 ID:yfJ2n.4k

理珠 「そうですか。わかりました。それなら、結構です」

理珠 「ですが、私は行きますよ。明日は無理でも、明後日……いえ、一週間以内には、必ず……」

理珠 「成幸さんに “愛してる” と言って見せます!」

文乃 「……うん」

文乃 (ああ、りっちゃんはすごいな。もう決めてるんだ)

文乃 (まっすぐな目をして、成幸くんに言うんだろうな……)

文乃 (自分の気持ちを、まっすぐ……)

ズキズキ……

文乃 (……何で、こんなに胸が痛いんだろう)

文乃 (どうして……)

理珠 「……文乃? どうかしましたか? 表情が暗いですが」

文乃 「へ……? う、ううん。なんでもないよ」

文乃 「えへへ、うどん、美味しかったよ。ごちそうさま」

文乃 「じゃあ、いつまでもお店にいたら迷惑だろうから、わたしもう帰るね」

文乃 「りっちゃん、また明日。お父さんとお母さんにもよろしくね」


47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:23:41 ID:yfJ2n.4k

………………翌朝 いつもの場所

文乃 「特に心配はいりません」

成幸 「へ……? 開口一番なんだそれは、古橋」

文乃 「だから、りっちゃんに関しては心配いらないよ、って。むしろこれから心配なのはうるかちゃんかな……」

文乃 (いや、万が一きみがりっちゃんの気持ちを拒絶したら、両方崩れるかもだけど……)

成幸 「うるかが心配? どういうことだ?」

文乃 「……わたしから詳しいことは言えないよ。今日か明日か、少なくとも今週中には分かることだよ」

成幸 「ど、どういうことだ? 俺に分かるように言ってくれ。俺の教え方が悪いのか?」

文乃 「だからそうじゃないんだって……」

文乃 「……あまりにも鈍すぎるのは罪だよ、成幸くん」

成幸 「……うーん、わからん」

成幸 「なんにせよ、俺にできることは、あいつらが頑張れるようにしっかり教材研究をすることだな」

成幸 「そうと決まれば、善は急げだ。早速教室で教材作りだな」

文乃 (だからそうじゃないんだけどな……)

成幸 「古橋、ありがとな。なんのことか分からんが、お前のおかげで危機感が持てたよ」


48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:24:28 ID:yfJ2n.4k

成幸 「じゃあ、俺は教室に向かうから……」

文乃 「あっ……ま、待って!」

コケッ

文乃 「へ……?」 (あ、段差……)

成幸 「あ、危なっ……」

ポスッ

成幸 「……大丈夫か、古橋?」

文乃 「えっ……あ、うん。ありがと、成幸くん……」

文乃 (相変わらず意外とたくましい身体……)

文乃 (わたしまた、成幸くんに抱き留めてもらってるんだ……///)

ギュッ

成幸 「へ……? ふ、古橋? なんで、俺の腕を……?」

文乃 「……ごめん。話を聞いてほしくて。このまま、話を聞いてもらってもいい?」

成幸 「あ、ああ……」 (ち、近い! 良い匂いが! いやそうじゃなくて……!)

成幸 (なんで古橋は俺に抱きついたまま話を続けようとしてるんだ!?)


49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:25:00 ID:yfJ2n.4k

文乃 「あの……あのねっ」

文乃 「これから、きみはひょっとしたらすごく難しい選択を迫られるかもしれない」

文乃 「そのとき、きみがどんな選択をするのか、わたしには分からないし、いまのきみにもわからないと思う」

文乃 「でもね、きみがどんな選択をしても、きっと誰かが傷つく。そしてきっと、きみも傷つくと思うんだよ」

成幸 「古橋……?」

文乃 「でも……でもね。たとえ、きみがどんな選択をしてどんな人に恨まれたり、嫌われたりしても……」

文乃 「わたしだけはきみの味方だからね。それだけ、覚えておいてほしくて……」

ドキドキドキドキ……

文乃 (ああ、ずるい女だ、わたし……)

文乃 (成幸くんがりっちゃんと結ばれても、結ばれなくても、成幸くんの味方でいようとしてる……)

文乃 (こんなの、わたし……)

文乃 (成幸くんのこと、そういう風に思ってるように思われたって、仕方ない……――)


「――何をしているのですか? 文乃? 成幸さん?」


文乃 「えっ……?」


50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:27:36 ID:yfJ2n.4k

文乃 「り、りっちゃん!?」

ハッ

文乃 「ち、違うんだよ! これは、その……わたしがこけそうになって、成幸くんに支えてもらっただけで……」

理珠 「そうですか」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 「まぁ、そんなことどうでもいいですが」

文乃 (めちゃくちゃ怒ってるよーーーーー!!)

文乃 (ひ、ひょっとしてさっきのわたしの言葉も、聞いてたのかな……)

理珠 「そんなことより、成幸さん」

グイッ

成幸 「うおっ……き、急に引っ張るなよ」

文乃 (わたしから成幸くんを奪い取るように露骨な正妻アピール!?)

理珠 「いまなら、勝てる気がするのです。聞いてくれますか?」

文乃 (この場で!? この場で言っちゃうのりっちゃん!?)

文乃 (やっぱりわたしのことを敵だと思ってるから、宣戦布告的な意味でもあるのかな!?)


51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:28:21 ID:yfJ2n.4k

理珠 「………………」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

理珠 (ふふふふふふ……。今なら言えます。絶対に言えます)

理珠 (ケガの功名と言うべきでしょうか。昨日、学校での勉強が捗らなかったため、ほぼ徹夜で勉強をしましたから)

理珠 (現在の私はほぼ前後不覚! 自分がいま何を言っているのかすらあまりわかりません!)

理珠 (いまの私ならば、ノリと勢いで “愛してる” のひとつやふたつ簡単に言えます!)

理珠 (成幸さん、覚悟!!)

成幸 「? 聞いてくれるかって、俺に何か話もあるのか、緒方?」

理珠 「そうです。成幸さんに一言言っておかなくてはならないことがあるのです」

成幸 「な、なんだ? 俺の教育方針への改善要求か? それなら善処するが……」

理珠 「違います。成幸さんは 『教育係』 としてこれ以上ないくらいがんばってくださっています」

成幸 「そ、そうか。それなら嬉しいが……。なら、他に一体何の話があるんだ?」

理珠 「ふふ。よく聞いてくださいね。いきますよ」

文乃 「………………」 ドキドキドキドキ……


52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:29:05 ID:yfJ2n.4k

理珠 「あ……あ……」

成幸 「……?」

理珠 (うぅ……頬が熱い。恥ずかしい。言ってはいけない気もする……)

理珠 (でも、今度こそ逃げたくないです。負けたくないです……!)

理珠 「あ……愛して……あい……」

理珠 (大丈夫、言えます。だって、わたしは成幸さんのこと、嫌いではありませんから)

理珠 (『教育係』 としてがんばってくれてます。尊敬してます。感謝もしてます)

理珠 (……愛していると言って、決して過言ではない気がします)

成幸 「あの、緒方……?」

文乃 「……だめだよ、成幸くん。今は、りっちゃんの言葉を聞いてあげて」

成幸 「あ、ああ……」

理珠 (……大丈夫です。絶対、言えます)

理珠 「………………」

ギュッ

理珠 「……成幸さん。“愛してます”」


53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:29:39 ID:yfJ2n.4k

成幸 「………………」

成幸 「へっ……?」

ボッ

成幸 「なっ、ななななな、何を……////」

成幸 「い、いきなり何を言うんだ、緒方……///」

文乃 (言ったぁあああああああああああ!)

ドキドキドキドキ……

文乃 (言っちゃったよ!? どうなるの!? 怖いけどドキドキする……!)

文乃 (成幸くんは一体どんな返答を……――)


理珠 「――ふふ、照れましたね。私の勝ちです!!」


成幸 「へ……?」

文乃 「え……?」

理珠 「“愛してる” のコールに対して、照れましたね。私の勝ちです、成幸さん!」 バーン!!!


54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:30:19 ID:yfJ2n.4k

成幸 「………………」

文乃 「………………」

成幸 「……緒方。悪い、ちょっとタイム」

理珠 「へ……?」

成幸 「……おい、古橋。ひょっとしてこれは、この前昼休みにやったあのゲームの続きか?」 コソッ

文乃 「わたしにも分からないけど、たぶんそうなんだと思う……」 コソッ

成幸 「昨日様子がおかしかったのもそのせいか?」

文乃 「たぶん……」

文乃 (……昨日のわたしとの話もおかしなところがあったし……)

文乃 (……つまり、りっちゃんは、成幸くんにゲームで勝とうとしていただけだったのかな)

成幸 「……うん。わかった」

成幸 「……なぁ、緒方」

理珠 「はい、なんですか?」

成幸 「ちょっとお説教するから、そこ座りなさい」 ニコッ

理珠 「へ……?」


55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:31:00 ID:yfJ2n.4k

………………

成幸 「いいか、緒方。俺もゲームをするなとは言わないよ?」 クドクド

理珠 「はい」

成幸 「勉強の後に付き合ってやってるだろ? 言ってくれればちゃんとやるよ、俺も。ゲーム」

理珠 「はい……」

成幸 「俺に対抗意識を燃やしてもらってもいいよ? ただ、急にゲームを始めるのはやめなさい」

成幸 「開始したかも分からないゲームに振り回される俺の気持ち、分かるか?」

理珠 「……今考えると、とんでもないことをしていたな、と思います」

成幸 「うんうん。わかってくれて嬉しいよ」

文乃 (結構ガチ説教だね、成幸くん……。まぁ、本当にりっちゃんのこと心配してたもんなぁ……)

成幸 「それから、一番大事なことだけどさ、」

理珠 「……?」

成幸 「誰彼構わず、“愛してる” なんて言うのはやめとけよ。変な奴に勘違いされるぞ」

成幸 「俺だから良かったものの、大森相手だったりしたら、今ごろ……――」

理珠 「――い、言いません!」 ガバッ


56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:31:33 ID:yfJ2n.4k

成幸 「わっ……な、なんだ、急に……」

理珠 「言いません! 成幸さん以外の人に、そんなこと、言うわけないです……」

理珠 「成幸さんだから……言うんです……」

成幸 「お、おう。そうか。それならいいけど……。いや、よくはないけど……」

文乃 (おおう……。ここまでやられて気づかない成幸くんの鈍さも相当だよね……)

文乃 「……まぁ、そのへんにしておこうよ、成幸くん。りっちゃんも反省してるみたいだし」

成幸 「ああ、そうだな」

理珠 「すみません。成幸さん、文乃。私はまた、人の気持ちが分からず迷惑をかけてしまったようです……」

シュン

理珠 「……先日のゲームで、成幸さんに勝てそうだったのが嬉しくて、つい調子に乗ってしまいました」

成幸 「………………」 ハァ 「……ま、いいじゃないか。どうであれ、結果として今日はお前が勝ったんだから」

成幸 「でも、あんなの勝てるわけないじゃないか。お前、顔真っ赤だったし、涙目だったし、俺の手まで握って……」


―――― 『……成幸さん。“愛してます”』


成幸 「っ……///」 (お、思い出しただけで恥ずかしくなってきたぞ……)


57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:32:23 ID:yfJ2n.4k

理珠 「そ、そうですね。初めて成幸さんにゲームで勝ったのですから、結果オーライでいいですね!」

文乃 「………………」

フルフル

文乃 「……ダメだよ、りっちゃん。今日も勝ててないよ」

理珠 「ふ、文乃……!?」 ガーン

文乃 「だってそうでしょ? そもそも成幸くんはゲームの開始すら知らなかったわけだし」

文乃 「そもそもりっちゃん、言う前から照れてたし」

文乃 「それに、“愛してる” じゃなくて、“愛してます” って言ってるし」

理珠 「うっ……」

文乃 「……ってことで、またりっちゃんの負けかな」

成幸 (容赦ないな、古橋……)

理珠 「……ひょっとして文乃、怒ってますか?」

文乃 「……べつに」

プイッ

理珠 (お、怒ってますね……。悪いことをしました……)


58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:34:00 ID:yfJ2n.4k

文乃 「………………」

文乃 (まったくもう。わたしがどれだけきみのことを心配したと思ってるのかな、りっちゃん)

文乃 (昨日なんかりっちゃんとうるかちゃんのことが心配すぎて、結局一睡もできなかったよ!)

文乃 (その結果がゲームだっていうんだから、まったくもう。りっちゃんは……)

ハァ

文乃 「……本当に、仕方ないなぁ、りっちゃんは」 ニコッ

理珠 「あっ……す、すみませんでした、文乃」

文乃 「いいよ。でも、そうだな。少しだけ意地悪しちゃおっかな」

グイッ

理珠 「へ……? ふ、文乃? 近いです……」

文乃 「内緒話だよ、りっちゃん。成幸くんに聞こえないように言うだけ感謝してほしいな」 コソッ

理珠 「内緒話……?」 コソッ

文乃 「りっちゃんは、どうして “愛してます” って言っちゃったのかな?」

理珠 「へ……?」


59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:34:32 ID:yfJ2n.4k

文乃 「まるで、本当に告白するときみたいだよね……なんて」

理珠 「………………」

ボフッ

理珠 「……っ、そ、そんな、ことは……///」

理珠 「ふ、普段から丁寧語だから、つい出ちゃっただけです……」

文乃 (ふーん。まぁ、大森くんのときは “アイシテル” って言ってたけどね)

文乃 「……ま、そういうことにしておきますかね」

理珠 「へ、変なことを言わないでください、文乃」

成幸 「おい、古橋、緒方。何の話をしてるんだか分からないけど、もう行くぞ」

成幸 「そろそろHRが始まるからな。教室に入らないと」

文乃 「……そうだね。ほら、行くよ、りっちゃん」

理珠 「……はい!」

文乃 (まったくもう。ヒヤヒヤさせてくれるよ)


60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:35:04 ID:yfJ2n.4k

―――― 『……ダメだよ、りっちゃん。今日も勝ててないよ』


文乃 (ちょっと厳しかったかな)

文乃 (でも、ダメだよ、りっちゃん)

文乃 (だって、こんなだまし討ちみたいなカタチで成幸くんに勝っても、りっちゃんだって嬉しくないでしょ?)

文乃 (りっちゃんは、いつかきっと、成幸くんに対しての気持ちに気づくだろう)

文乃 (その後、りっちゃんがどうするのかは分からないけれど)

文乃 (……でもきっと、りっちゃんが成幸くんに “勝つ” のはその後のことだから)

文乃 (だからりっちゃん。それまでは)

文乃 (……成幸くんに勝つのはきっと、お預けだよ)

文乃 (いつかりっちゃんが、ゲームでもなんでもなく、心の底から、)

文乃 (“愛してます” と言える、そのときまで)

ズキッ

文乃 「っ……」 (……大丈夫。痛くない。痛くない。痛いはず、ない)

文乃 (わたしはこれっぽっちも、そんなこと、思ってない)

おわり


61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 02:36:09 ID:yfJ2n.4k

………………幕間 「前日の緒方うどん」

親父さん (……文乃ちゃんが店に来た。挨拶に行きてえが、接近禁止命令が出ている以上近づけねえ)

親父さん (せめて物陰からふたりの会話だけでも……)

「成幸さんにですね……」  「うんうん」  「…… “愛してる” と言いたくてですね……」

親父さん 「……!?」 (な、なんだと!? やはり理珠たまはセンセイに……!?)

「わっ、わたしはべつに、だって……成幸くんのことなんて……」

親父さん (この恥じらう声は、文乃ちゃんの声だな!? あのヤロウ! うちの娘だけじゃなく、文乃ちゃんまで……!!)

「ですが、私は行きますよ。明日は無理でも、明後日……いえ、一週間以内には、必ず……」

「成幸さんに “愛してる” と言って見せます!」

親父さん 「ゴフッ……」 (ち、ちくしょう……なんてこった……)

親父さん 「あ、あのヤロウ……!! もう許さねぇ! 息の根を止めてや――」

理珠 「――お父さん。また盗み聞きしてましたね?」 ニコッ 「半径五キロメートル接近禁止です」

親父さん 「パパもう市内にもいられなくなっちゃう!?」

おわり





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