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【ぼく勉】文乃 「ポニーテールは振り向かない」

84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:34:49 ID:yfJ2n.4k

………………朝 唯我家

成幸 「………………」

ガツガツガツ……ムシャムシャムシャ……

和樹 「おー。兄ちゃん朝から早食いだなー」

成幸 「ん……」 ゴックン 「早めに学校に行って、ノートをまとめておきたくてな」

葉月 「さっすが兄ちゃん! 勉強熱心ね!」

成幸 (まぁ、俺のノートじゃなくてあいつらのノートだけどな……)

成幸 「ってことで、ごちそうさま。もう学校行くな!」

水希 「あっ……お兄ちゃん、ちょっと待ってー」

ドタドタドタ

成幸 「どうかしたか、水希?」

水希 「髪がうまくまとまらないのー! お兄ちゃんやってー!」

成幸 「……おいおい、お前中学生だろ。ポニーテールくらいいい加減できるようになれよ……」

水希 「今日は髪が言うこと聞いてくれないの!」


85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:35:47 ID:yfJ2n.4k

成幸 「仕方ないな……。ほら、後ろ向けよ」

水希 「……ぃよしっ」 グッ

成幸 「……? お前今野太い声でガッツポーズ決めなかったか?」

水希 「えーっ、なんのことー?」 キャルン

成幸 「……もういいや。じゃ、櫛入れてくぞー」

スッ……サッ……サッ……

水希 「はうぅ……」 ポワポワ (久々にお兄ちゃんに櫛入れてもらってる……)

水希 (気持ちよくてどうにかなっちゃいそう……///)

成幸 「……っし。じゃ、まとめるぞ、っと」

キュッ

成幸 「……こんなもんでいいだろ。ほら、できたぞ、水希?」

水希 「うふふ……お兄ちゃんの逞しい手が、私の髪を……えへへ……」 ポワポワポワ

成幸 「水希……? おーい、水希ー」

和樹 「あー、これはダメだな。完全にトリップしてるよ」


86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:37:02 ID:yfJ2n.4k

葉月 「こうなっちゃったら水希姉ちゃんはすぐには動けないわね」

和樹 「兄ちゃん学校で勉強するんだろ? 姉ちゃんは俺たちが見てるから、先行きなよ」

成幸 「おう、じゃあ頼んだぞー。いってきまーす!」

葉月&和樹 「「いってらっしゃーい!」」

成幸 (ふむ……)

成幸 (久々に水希の髪をいじったが、まだまだ俺も捨てたもんじゃないな)

成幸 (まぁ、ポニーテールが楽だから簡単だってのはあるけどな)

成幸 (もっと色々な結び方とかできるようになったら、水希も葉月も喜んでくれるかな……?)

成幸 (そういや、古橋ってしょっちゅう髪型変えるような……)

成幸 (ちょっと教えてもらおうかな)


87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:39:06 ID:yfJ2n.4k

………………昼休み 一ノ瀬学園

大森 「なぁ、女子の髪型ってさ、いいよな……」

小林 「……いきなりどうしたの、大森」

成幸 「しみじみ言われるとさすがにキモいぞ」

大森 「女子ってさ、髪型を変えることで変身できるんだよ……」 沁沁

成幸 「どうした、大森。悪いモンでも食ったのか? それとも頭でも打ったか?」

大森 「ってことで、お前らの女子の髪型の好みを聞こう!」

小林 「急に変なこと言いだしたと思ったら、結局ソッチに持ってくのね……」

ヤレヤレ

小林 「俺はショートカットかなぁ。スポーティでかわいいとなお良し!」

成幸 「なんだかんだ、お前ってこういう話題結構好きだよな……」

大森 「っていうかそれそのまま海原さんじゃねーか! ノロケんじゃねー!」

小林 「ははっ、バレた。でも実際、昔からショートカットの方が好きだしさ、俺」


88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:39:56 ID:yfJ2n.4k

大森 「俺は断然ロング派だぞ! カチューシャとかで流してるのが好きだ!」

大森 「お嬢様っぽくおしとやかにまとめてるのも良いな!」

成幸 「……お前たちはどうしてそう自分の性癖を事細かに語れるんだ」

大森 「なんだよー。男しかいねーんだから恥ずかしがんなよ、唯我ー」

大森 「俺たちも話したんだ。お前も話せよー」

成幸 「髪型の好みなんかねぇよ」

成幸 「そういうのはわからないっていつも言ってるだろうが」

大森 「良い子ぶんじゃねー! お前だけ聞き逃げするつもりかー!?」

成幸 「なんだその無茶苦茶な言いがかりは!? お前たちの女子の髪の好みなんかどうでもいいわ!」

成幸 (ああ、ちくしょう。早く飯食ってあいつらの教材作りたいってのに……)

成幸 (こうなったら、もう適当に答えるのが一番か……)


―――― 「……おいおい、お前中学生だろ。ポニーテールくらいいい加減できるようになれよ……』


成幸 「………………」 (……うん。ポニーテールは楽だし、嫌いじゃないな。ウソにはならない)

成幸 「あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい」


89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:41:25 ID:yfJ2n.4k

………………廊下

理珠 「ふふふ……。明日までの宿題を今日提出したら、成幸さんはどんな顔をしますかね」

うるか 「成幸、泣いて喜ぶんじゃないかな。あたしたちの成長を喜んで!」

文乃 「そ、そうだねー……」

文乃 (冷静に考えれば、次の宿題を出すスパンが短くなるんだから、)

文乃 (成幸くんを困らせることになりかねないんだけど、まぁそれは言うまい……)

文乃 (あとで成幸くんに、宿題無理して作らなくていいからね、って言わないと……)


  「ってことで、お前らの女子の髪型の好みを聞こう!」


うるか 「……!?」 (大森っちの声!? 教室の中からだ!)

理珠 (と、いうことは、この髪型のことを聞いている相手は……)

文乃 (成幸くん、だよね……)

うるか 「……ち、ちょっと聞いてかない? この会話。べつに成幸がどーとかじゃないけど……」

理珠 「せ、せっかくですしね。成幸さんの好みを聞いておくのも、今後の関係を考えると有益かと思いますし」

文乃 (……胃が痛いなぁ) キリキリキリ……


90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:42:09 ID:yfJ2n.4k

  「俺はショートカットかなぁ。スポーティでかわいいとなお良し!」


うるか 「こばやんの声だ」 ヒソヒソ 「こばやんの彼女、海っちの髪型そのまんまだよ」

文乃 「微笑ましいねぇ……」 (胃が痛いなぁ。お願いだから成幸くん余計なこと言わないでよ……)


  「俺は断然ロング派だぞ! カチューシャとかで流してるのが好きだ!」

  「お嬢様っぽくおしとやかにまとめてるのも良いな!」


理珠 「………………」 うるか 「………………」

文乃 (大森くんの声には清々しいまでにどうでも良さそうな顔してるね……)


  「髪型の好みなんかないよ」

  「そういうのはわからないっていつも言ってるだろうが」

  「良い子ぶんじゃねー! お前だけ聞き逃げするつもりかー!?」


うるか 「そーだそーだ。もっと言ってやれ大森っち」

理珠 「……そうです。成幸さんは卑怯です」 フンスフンス


91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:42:50 ID:yfJ2n.4k

文乃 「……ほっ」 (よかった。成幸くん、黙り込んじゃったし、このまま何も言わないで終わるのかな)

文乃 (ヘタなこと言われたらりっちゃんたちの勉強に支障が出るからね。よかったよ)

文乃 「……ほら、りっちゃん、うるかちゃん、もう行くよ」

文乃 「成幸くんに宿題見せて褒めてもらうんで――」


「――あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい」


文乃 「……!?」

理珠&うるか 「「………………」」 ジーーーーーーッ

文乃 「な、なんでわたしを見るのかな、ふたりとも……」

ハッ

文乃 (し、しまったぁあああああ!! 今日のわたし、ポニーテールだー!!)

文乃 (そしてりっちゃんは元より、うるかちゃんも今日は髪をそのままおろしてるね!)


92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:44:04 ID:yfJ2n.4k

………………

成幸 「ん……? なんか廊下が騒がしいな……」

理珠 「……し、宿題の提出は後にします! ちょっと用事を思い出しました!」

うるか 「あたしも! ちょっと用事を思い出したから放課後に提出するよ!」

文乃 「ち、ちょっとふたりとも落ち着いて……」

成幸 「……騒がしいと思ったらお前たちか」

理珠 「なっ、成幸さん!」 バババッ

うるか 「成幸、こっち見ちゃダメ!」 バババッ

成幸 「……? おい、古橋。このふたりは手で頭隠して何やってんだ?」

文乃 「わたしが聞きたいよ……」 (かわいいなぁ、ふたりとも……でも胃が痛いなぁ……)

成幸 「ん……」 (古橋、今日はポニーテールか。水希とおそろいだな)

ニコッ

成幸 「古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール」

文乃 「ふぇっ……!?」

文乃 (こ、このバカー! このタイミングでわたしの髪型褒めるかな、普通!!)


93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:44:45 ID:yfJ2n.4k

理珠 「!?」


―――― 『な なんだ いつも通り 普通に元気そうじゃないか よかった』

―――― 『成幸マジで信じらんないッ!!』

―――― 『最低ッ!! 最低ッ!! 最低だよ成幸くん! これだから男子は……!!』


理珠 (わ、私が前髪を切ったときは全く気づいてくれなかったくせに……)

プルプルプル……

理珠 (私が前髪を切ったときは結局最後まで気づいてくれなかったくせに!!)

理珠 (あなたはどれだけポニーテールが好きなのですか!?)

うるか (成幸めー!)

うるか (あたしが胸元開けよーがスカート丈詰めよーが気にしないくせにー!)

うるか (どんだけポニーテールが好きなんだよー! 成幸のポニテ好き変態ー!)

理珠 (こうなったら私も……) ダッ

うるか (あたしもポニテにしてきてやるー!!) ダッ

文乃 「あっ、ふ、ふたりとも……! ……行っちゃった」


94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:45:24 ID:yfJ2n.4k

文乃 (ヘアゴムだったら言ってくれれば予備を貸すのに……)

成幸 「……なんだったんだ? 最後にめちゃくちゃ睨まれたんだけど」

成幸 「俺、なんかしちゃったか……?」

文乃 (無自覚に何かしちゃってるんだよいつもー! 少しは気づいてよ……)

成幸 「……で、結局一体何の用だったんだ?」

文乃 「あっ……えっとね、宿題が早く終わったから、出しに来たんだけど……」

文乃 「ふたりはどこかに行っちゃったけど……」

成幸 「ん、そうか。じゃあ古橋のだけでも預かっとくな。ごくろうさん」

文乃 「いえいえ。いつもありがとうございます、先生」


―――― 『あえて言うなら、ポニーテールかな。長さはべつになんでもいい』

―――― 『古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール』


文乃 「っ……///」

文乃 (でも、そっか……) カァアアアア…… (成幸くん、ポニーテール好きなんだ……)


95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:46:15 ID:yfJ2n.4k

………………放課後

うるか 「………………」 バーン!!!

理珠 「………………」 ババーン!!!

文乃 「おおう……」 (本当にポニーテールにしてきてるよ、ふたりとも……)

文乃 「……ふたりとも、ヘアゴムはどうしたの?」

うるか 「ふふふ、あたしは水泳部だよ? トーゼン、バッグの中には常備だよ」

理珠 「私は持ち歩く習慣はないので借りました」

文乃 「誰に?」

理珠 「……関城さんです」

文乃 「おおう……」 (はしゃぎ回る紗和子ちゃんが目に浮かぶようだよ……)

文乃 (それにしても……)

文乃 (うるかちゃんはいいとしても、りっちゃんは……) ジーッ

理珠 「?」

文乃 (ちょんまげみたいになっちゃってるんだけど、りっちゃん的にはそれでいいの……?)


96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:47:00 ID:yfJ2n.4k

成幸 「悪い、遅くなった。HRが長引いてさ。待たせたな」

うるか 「なっ、成幸……」 サワッ 「おつかれさま! 全然待ってないよ!」

理珠 「え、ええ。我々も今さっき来たところですから!」 ピョコン

成幸 「よーし、じゃあ早速始めるか。ふたりも宿題終わらせてるんだろ? 早速見るからくれ」

うるか 「あ……う、うん……」 理珠 「……はい」

文乃 (胃が痛い……)

文乃 (ふたりの露骨なポニテアピールに対して、成幸くんはまったく目もくれていないよ……)

文乃 (仕方ない。ここは、ふたりの気持ちを鼓舞するためにも、わたしが一肌脱いで――)

成幸 「――ん。そういえば、古橋」

文乃 「へっ……? な、何かな?」

成幸 「お前、髪結ぶ位置変えたのか」

文乃 「えっ……」

文乃 (な、成幸くんが髪の変化に気づいた!?)

文乃 (あの女の子の感情にとんでもなく疎いニブチンの成幸くんが!?!?)


97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:47:52 ID:yfJ2n.4k

文乃 (き、驚天動地だよ……)

文乃 (たしかに、これ以上うるかちゃんとりっちゃんの乙女騒動に巻き込まれたくなくて、)

文乃 (ポニーテールからサイドテールに変えたけど、よく気づいたね……)

文乃 (いや、これもわたしの教えが染みついてきたってことかな……)

ホロリ

文乃 (師匠として鼻が高いよ……でも、成幸くん……)

理珠 「………………」 ジトーッ (……私の前髪には気づかなかったくせに)

うるか 「………………」 ジトーッ (文乃っちの髪型の変化にはすぐ気づくんだね……)

文乃 (このタイミングはやめてほしかったなぁ……!!)

ギリギリギリ……

文乃 (い、胃が……壊滅寸前のダメージを受けてる気がするんだよ……)

成幸 「どうかしたか?」

文乃 「だ、大丈夫。大丈夫だから……」 (きみはもうできるだけ喋らないでくれるかな?)

成幸 「そうか。ならいいけど……」


98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:48:42 ID:yfJ2n.4k

成幸 「でも、サイドテールってのもなかなかいいな」

理珠&うるか 「「……!?」」

文乃 「ふぇっ……?///」 (な、なんでそんな、わたしの髪型ばかり褒めるのかな!?)

成幸 (水希はいつもポニーテールだけど、部活で邪魔にならないならサイドテールにいいんじゃないだろうか)

成幸 (今度結んでやったら喜ぶかなぁ……)

理珠 「っ……」 (成幸さんの中で髪型のトレンドが動いたということでしょうか!?)

うるか (こうなったら、サイドテールにしてくるしかない!!)

ガタッ

理珠 「ちょっと用事を思い出したので一旦抜けます!」

うるか 「すぐ戻るね!」

タタタタタ……

成幸 「えっ……? うるか? 緒方?」

成幸 「なんだ……? そんな急ぎの用事があったのか……?」

文乃 「うん。あのふたりにとっては可及的速やかにこなさなくちゃいけない用事だよ……」


99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:49:34 ID:yfJ2n.4k

………………

理珠 「………………」 ゼェゼェ 「お、お待たせしました……」 ピョコン

うるか 「えへへ……。こ、これでどうだ……」 サワッ

文乃 「………………」

文乃 (……ふたりとも、急ぎすぎて髪の結び方が雑だし)

文乃 (りっちゃんに至っては、ただ横で結んだだけだから、乳幼児みたいな髪型になってるよ……)

成幸 「お、おう。おかえり。宿題は見終わったぞ。この調子で今日も勉強がんばろう」

理珠 「えっ……」 うるか 「そ、それだけ……?」

成幸 「……? 宿題はしっかりとやってるように見えたが、何か分からないところでもあったのか?」

うるか 「いや、そーじゃなくてね……」

理珠 「ほ、他に私たちに言っておいた方がいいこととか、ありませんか?」

成幸 「……?」

ハッ

成幸 「ああ、なるほど。俺としたことが、忘れるところだったよ」

理珠&うるか 「「………………」」 パァアアアアアアアアア……!!!!


100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:50:26 ID:yfJ2n.4k

成幸 「悪い悪い。お前たちが早く宿題を終わらせるから、危うく間に合わないところだったけど」

ドサッ

理珠 「えっ……」

成幸 「お前たちのがんばりに、俺も 『教育係』 として準じなければならないからな!」

成幸 「明日出す予定だった宿題、がんばって今日渡せるようにしたぞ。ふふふ……」

うるか 「あ、あの、成幸……?」

成幸 「今日は宿題がなくなるんじゃないかと不安だったんだろ?」

成幸 「安心しろ」 キリッ 「お前たちの 『教育係』 は、お前たちを手ぶらで返したりはしないからな!」

うるか 「そ、そっか……えへへ、嬉しいな……うれ、しい……な……」 ズーン

理珠 「……ええ。本当に。最高の気分です」 ズーン

成幸 「喜んでくれるなら、多少無理してでも宿題を完成させた甲斐があるよ」

文乃 (……あー、もう。どうしてきみは女の子のことになると心の機微を察する気持ちが皆無になるのかな!?)

文乃 「まったくもう……」 ガシッ 「ちょっとこっち来て、成幸くん」

成幸 「ん? どうかしたか、古橋?」

文乃 「いいから、来て。話があるの」


101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:51:11 ID:yfJ2n.4k

………………物陰

成幸 「話ってなんだ?」

文乃 「……その前に、ひとつ聞きたいんだけど、うるかちゃんとりっちゃんがさっき何をしに行ったかわかる?」

成幸 「えっ……? 用事って言ってたけど、その中身までは俺は知らないぞ?」

文乃 「うん。そうだよね。そう。きみはまったく、そうあるべきなんだよ」

成幸 「へ……? わ、悪い。俺に分かるように言ってくれるか?」

文乃 「うん。まぁ、それはいいんだけど……どうしてきみは、わたしの髪型の変化に気づいたの?」

文乃 「きみは今まで、自他共に認めるくらい、そういう変化に疎かったよね」

成幸 「……ん、まぁ、その通りだけど」

成幸 「古橋の髪型は、(今朝から)ずっと気になってたから……」

文乃 「えっ……」

成幸 「お前の髪型を気にするようにしたら、(水希と葉月が)喜んでくれるかな、って……」

成幸 「もちろん、色々(結い方とか)教えてもらう必要はあるだろうけど……」

文乃 「………………」 カァアアアア…… 「なっ……何を、言ってるのかな、きみは……!?」


102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:51:52 ID:yfJ2n.4k

文乃 (わ、わたしの髪型を気にするようにしたら、わたしが喜ぶかなって……?)

文乃 (つ、つまり成幸くん、きみは……)

文乃 「(わたしを)喜ばせたかったの……?」

成幸 「あ、当たり前だろ! (あいつらの)笑顔を見るために俺はがんばってるんだから!」

文乃 「ふぁっ……///」

文乃 (わ、わたしの笑顔を見るために……?)

文乃 「そ、それって……どういう、意味、なのかな……?」

成幸 「……教えてほしいんだ。色々と」

文乃 「い、色々って……わ、わたしのことを……?」

成幸 「ああ、そうだ。お前の……」


成幸 「……お前の、色々な髪型のセットの仕方を!!」


文乃 「っ……///」

文乃 「……ん?」

文乃 「………………」


103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:52:40 ID:yfJ2n.4k

………………

文乃 「……うんうん。なるほどなるほど。よくわかったよ」

文乃 「つまりきみは、妹さんたちの髪型のバリエーションを増やしたいなーと思って、」

文乃 「毎日髪型を変えるわたしに結い方を教えてもらえたらな、と思っていた、と」

成幸 「あ、ああ。さっきもそう言ったつもりだったけど……」

文乃 「だから、わたしの髪型の変化に気づくことができた?」

成幸 「うん……」

文乃 「そして、ポニーテールが好きだと言ったのは、見た目ではなく機能性の話なんだね?」

成幸 「結いやすいし運動もしやすくなるからな。部活をやってる水希は毎日ポニーテールだし」

文乃 「うんうん、なるほどねぇ……」

シュッ

文乃 「……とりあえず、一発手刀を入れても良いかな?」

成幸 「なんでだ!?」


104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:53:12 ID:yfJ2n.4k

………………

理珠 「………………」 ズーン

うるか 「………………」 ズーン

成幸 「ほ、ほんとだ。よく見たら、かなり凹んでるな……」

文乃 「でしょ? ほら、早く。さっき教えた魔法の言葉をかけてあげて」

成幸 「ほ、本当に言うのか?」

文乃 「……ふふ、おかしな成幸くん」 シュッ 「手刀を入れられたいのかな?」

成幸 「わ、わかったよ! 言うから! 手刀の素振りはやめてくれ!」

成幸 「……うー」 モジモジ

成幸 (ええい、ままよ……!)

成幸 「お、緒方、うるか、ちょっと話を聞いてくれるか?」

理珠&うるか 「「……?」」 モゾリ

成幸 「サイドで結んでる髪型も似合ってるけど……やっぱり普段のふたりが一番……」

成幸 「か、かわ……かわっ……」 カァアアアア…… 「かわいい、と、思う、ぜ……?」

成幸 (こ、こんなんで本当にこのふたりが復活するのか!?)


105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:53:56 ID:yfJ2n.4k

理珠 「………………」 カァアアアア…… 「……そ、そう、ですか」 パッ

うるか 「………………」 カァアアアア…… 「え、えへへ……そ、そっか……」 パッ

成幸 (サイドテールを解いて顔に生気が戻った……。一体何だったんだ……?)

理珠 「や、やっぱり気づいてくれていたのですね、成幸さん……」

うるか 「気づいてたなら、もっと早く言ってくれれば良かったのに……」

成幸 「あ、いや、俺はまったく気づいてなかっもがっ」

文乃 「……お願いだから余計なこと言わないでね、成幸くん?」 ギラリ

成幸 (ヒッ……) コクコクコクコク

理珠 (普段の私が一番、ですか……)

うるか (変に成幸を意識するより、自然のあたしの方がいいってことかな……)

理珠 「ふふ……」

うるか 「えへへ……」

理珠 (嬉しいです、すごく……///)

うるか (成幸、ありがと……///)


106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:54:40 ID:yfJ2n.4k

文乃 「……ふぅ」

文乃 (とりあえず一件落着かな。わたしの胃の安全は保たれたよ……)

成幸 「……悪いな、古橋。またお前に迷惑かけたみたいで」

文乃 「気にしなくていよ。わたしはきみのお師匠様だからね」

成幸 「ああ。いつもありがとうございます、古橋師匠」

文乃 「苦しゅうないぞ、弟子よ」

成幸 「ははは、なんだそりゃ……」

成幸 (……古橋の髪、本当に綺麗だな。一挙手一投足に反応して艶やかに動いてるよ)

成幸 (水希の髪だったら同じようにはいかないだろうなぁ……)

成幸 「古橋は得だよなぁ……」

文乃 「へ……? 得って何が?」

成幸 「古橋はどんな髪型でも似合うからさ。うらやましいよ」

文乃 「……えっ」

カァアアア……

文乃 「そ、そんなことないと思うけど……」


107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:55:11 ID:yfJ2n.4k

成幸 「……? どうかしたか?」

文乃 「な、何もない! 何もないよ……」

文乃 (……まったくもう! なんできみは、ニブチンのくせに……)

文乃 (ときどきこうやって、わけのわからないことを言ってくるんだろう……!)

文乃 「………………」

文乃 (ごめんね。りっちゃん、うるかちゃん、違うからね……!)


―――― 『古橋も今日はポニーテールか。いいよな、ポニーテール』

―――― 『でも、サイドテールってのもなかなかいいな』

―――― 『古橋はどんな髪型でも似合うからさ。うらやましいよ』


文乃 (断じて違うけど……でも、少しくらい、いいよね)

文乃 (男の子に、髪型の変化に気づいてもらって、褒めてもらえることを、嬉しいと思うくらい……)

文乃 (許して、くれるよね……?)

おわり


108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:55:52 ID:yfJ2n.4k

………………幕間1 「ポニーテールでいい」

成幸 (ってことで、勉強会の後に古橋に色々な髪型のセットの仕方を教えてもらったぞ!)

成幸 「水希ー、かわいい髪型にしてやるからちょっとこいよー」

水希 「すぐ行くいま行くもういる」 シュババババッ

成幸 「よし、じゃあ始めるぞ……ふふふ、刮目しろ! これが古橋直伝のヘアセット術だ!」

スカッ

成幸 「……あ、あれ? 水希? なんで避けるんだ?」

水希 「……古橋さんに髪型のこと教えてもらったの?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

成幸 「あ、ああ。そうだ。古橋に聞いたら快く教えてくれたんだ」

水希 「いい」

成幸 「えっ……?」

水希 「ポニーテールでいい」

成幸 「なんでだ!? 古橋に髪まで貸してもらって覚えたんだ。お前をかわいくする自信があるぞ」

水希 「私はもう一生ポニーテールでいい」

成幸 「なぜ!?」


109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2018/11/11(日) 23:56:42 ID:yfJ2n.4k

………………幕間2  「人間として」

紗和子 「………………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

紗和子 (わ、私の目の前にはいま、緒方理珠が返してくれたヘアゴムがある……!!)

紗和子 (それはいま、私の手の中にあって、私がどうしようが自由……!!)

紗和子 (そ、そう。つまり、これを嗅ごうが食べようが、私の自由ということ……!!)

紗和子 「………………」 ゴクリ

ハッ

紗和子 (め、目を覚ましなさい、関城紗和子! あなたそんなことしたら最低よ!?)

紗和子 (緒方理珠の友人として失格というか、そもそも人間としてアウトだわ!)

紗和子 「………………」

紗和子 (……いや、でも、食べるのはダメとして、少し嗅ぐくらいならいいんじゃないかしら?)

紗和子 (いやいやいや、嗅ぐのもダメでしょう!? でも緒方理珠の頭皮を感じるチャンスが今後訪れるとも思えないし……)

文乃 「……? 紗和子ちゃん、ヘアゴムとにらめっこしてどうしたんだろう?」

理珠 「わかりませんし興味もありませんが、なんとなくヘアゴムは新品を買って返して正解だった気がします」

おわり





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