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喪黒福造「サンタクロースになって、世界中の子供たちにプレゼントを配ってみませんか?」 衣料品企業創業者「バ、バカバカしい……」

1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:31:56.846 ID:ZXWmsF4OD

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    富原金吾(60) 衣料品企業創業者

    【サンタクロース】

    ホーッホッホッホ……。」


2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:33:42.669 ID:ZXWmsF4OD

テロップ「2018年12月――」

とある駅と周辺の大型店舗。駅の近くには、イルミネーションツリーが立っている。

街を歩く通行人たち。歩道のいくつかの街路樹も、イルミネーションで彩られている。

数々の大型店舗の一つには、大手衣料品販売店「トミハラ」の店舗も見える。

大勢の客で賑わう「トミハラ」店舗。店内の廊下には、大型のクリスマスツリーが設置されている。


ある大型書店。経営本のコーナーには、「トミハラ」創業者・富原金吾とある経営コンサルタントの対談本が山積みされている。

この本の表紙には、2人の写真が写っている。富原は年齢の割に若々しく、自信に満ちた表情をしている。

テロップ「富原金吾(60) 『株式会社トミハラ』社長」

一方、雑誌売り場のコーナーには例の男――喪黒福造がいる。『週刊文隆』を手にし、雑誌をめくる喪黒。

週刊文隆「連載・トミハラ潜入取材 やりがい搾取とブラック労働の実態」

喪黒「…………」


3: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:35:35.569 ID:ZXWmsF4OD

東京、赤坂。「株式会社トミハラ」本社。玄関前で、記者たちからインタビューを受ける富原。

記者A「『週刊文隆』の記事について、どう思われますか?」

富原「我が社の名誉を著しく傷つけるものであり、悪意に満ちた内容です。場合によっては、法的措置をとることも検討します」

記者B「富原社長。トミハラがブラック企業ではないかとの指摘ついては、どう思われますか?」

富原「私は、トミハラがブラック企業だとは全く思っていません。そもそも、ブラック企業批判自体が風評であると思います」

記者C「富原社長。会社の実態については、どのように考えておられますか?」

富原「トミハラは素晴らしい会社ですよ。悪口を言っているのは、大半が私と会ったことのない人たちです」

トミハラ本社。執務室で、机に向かう富原。机の上には、例の週刊誌が置かれている。

富原(競争の勝者になれなかった人間が、好き放題言いやがって!!悔しかったら、競争に勝ってから俺を批判してみろ!!)
   (こっちは楽をして、今の地位まで上り詰めたんじゃないんだ!!)


夜。道路を走る黒塗りの車。黒塗りの車は運転手つきであり、後部座席には富原が乗っている。

富原「すまんが、ここで降ろしてくれ」


4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:37:23.064 ID:ZXWmsF4OD

運転手「えっ!?」

富原「ちょっと寄りたいところがあるんだ」

黒塗りの車から降りる富原。彼はとある駅の中に入り、コインロッカーへと向かう。

コインロッカーから、ボストンバッグを取り出す富原。彼はボストンバッグを持ち、男子トイレへと向かう。

トイレの個室に入る富原。しばらくした後、個室の中から富原が出てくる。会社にいる時とは変わった身なりで――。

経営者としての姿から、肉体労働者の姿に変装した富原。帽子、眼鏡、ひげ、作業着、スニーカー……これが今の富原の姿だ。

街を歩く富原。通行人たちは、肉体労働者の正体が富原だと全く気付いていない。

コンビニ。レジ前に立つ富原。店員が、コンビニ弁当と発泡酒にレジ打ちをする。


とある公園。ベンチに座り、食事をする富原。彼が口にしているのは、さっき買ったコンビニ弁当と発泡酒だ。

公園の中に入る喪黒。喪黒は、遠くの方のベンチで富原が食事している姿を見つける。富原の方へ近づき、彼の隣に座る喪黒。

喪黒「おいしいですか?」

富原「ええ、まあ……」


5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:39:23.266 ID:ZXWmsF4OD

喪黒「今のあなたは、寄り道がてらに公園へ立ち寄ったのでしょう」

富原「はい」

喪黒「それにしても……。カリスマ経営者として有名なあなたに、こんな趣味があるとは意外でしたよ」

富原「な、何のことですか……」

喪黒「ホーッホッホッホ……。私の目はごまかせませんよ。だって、あなたは肉体労働者には見えませんからねぇ」
   「なぜなら、あなたが身につけている作業着とスニーカー……。これらは、汚れもしわもなくて新品みたいですから……」

富原「くっ……」

喪黒「この眼鏡は伊達眼鏡で、ひげもつけひげでしょう。そうですよね、富原金吾社長」

富原「やれやれ、私の正体がバレてしまいましたか……」

喪黒「おや?自分の正体を見破られても、動じないのですか?なかなか肝が据わったお方ですねぇ」

富原「仕方ないですよ。いつか、この日が来ることは分かっていましたから……。私の変装が、誰かに見破られる日が来ることを――」

喪黒「社長。今のあなたは、自らの地位にストレスと息苦しさを感じているのでしょう」


6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:41:21.420 ID:ZXWmsF4OD

富原「ええ、まあ……。私は大企業の経営者として、これ以上ない地位と富を手にしました。でも、心が休まる暇が全くないんですよ」

喪黒「だから、こんな形で息抜きをしていたのですねぇ。肉体労働者に変装して、街を徘徊することにより――」

富原「そうです。周りの通行人たちが、私を有名な経営者として気付かずに素通りしていく……」
   「これが何とも、気持ちよく感じましたよ。今の地位による窮屈さから解放されたのですから……」
   「でも、変装がバレた時点で、この趣味はもうやめですよ」

喪黒「おそらく……。あなたは内心では、自分の正体がバレることを望んでいたのでしょう?」

富原「はい。『どこの誰が私の変装を見破るのだろう?』『私の正体を見抜いたそいつは、どんな反応をするんだろう?』」
   「……というワクワク感もありましたね。結局、私の変装は、あなたに見破られてしまいましたが……」

喪黒「富原社長。世の中には、あなたを憎んでいる人たちも少なからずいるのですよ」
   「一般人に今の変装が見破られたら、最悪の場合はリンチを受ける恐れだってあったでしょう」

富原「まあ、そうなったとしても仕方がないですよ。私は金と地位を手に入れましたし、競争の勝利者にもなれました」
   「ですが、心の奥底では虚しさを感じているんですから……。だから、いつ死んでも別にいいですよ」
   「もしも、私が変装を見破られて、通行人にリンチされて死んだとしても……。それはそれでいいでしょう」

喪黒「ほう……、これは意外な発言ですなぁ。血も涙もない発言を繰り返し、強者の論理を訴える社長のお言葉とは思えません」


7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 21:43:43.560 ID:ZXWmsF4OD

富原「腕力のない私が、腕力のある人間による暴力沙汰で死ぬ。これもまた、強者の論理の証明なのですから……」
   「それに、私のような守銭奴が死ねば、世間の民衆は拍手喝采するでしょう……」

喪黒「そうですか……。私の仕事柄、あなたを放っておくわけにはいきませんねぇ」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

富原「……ココロのスキマ、お埋めします?」

喪黒「私はセールスマンです。ただし、他のセールスマンとは一味違っていますが……」

富原「あなた、セールスマンなんですか。あなたの観察眼は、どうやら職業柄のおかげのようですね」

喪黒「私のやっていることは、ボランティアみたいなものです」
   「心に何かしらのスキマを抱え、人生が行き詰まった人たちを救うための仕事ですよ」

富原「なるほど……」

喪黒「富原社長にも、心にスキマがおありのようですねぇ」

富原「そうですよ……。そんな私の心を慰めてくれるのは、あれだけなんです」

喪黒「『あれ』とは一体何ですか?」


11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:08:31.290 ID:JA9651bLD

富原「鉄人エックスの人形です。幼いころのクリスマスの贈り物ですよ」

喪黒「幼いころの社長は、鉄人エックスのアニメがお好きだったのですねぇ」

富原「はい。あのクリスマスの夜、私はサンタからプレゼントを貰う夢を見ました」
   「目が覚めると、布団の側に箱が置いてあったのです」

喪黒「ほう……、サンタクロースの夢ですか」

富原「おそらく両親が、私のために買ってくれたのでしょう」
   「もっとも私の両親は、例のロボットを買ったことを否定していましたが……」

喪黒「以来、あのロボットの人形は社長の宝物になったのですよね?」

富原「そうです。私の心の支えは、この世であれだけなんです。人間は全く信用できません」
   「なぜなら私は、人間というものに、何度も裏切られ続けてきたのですから……」

喪黒「そうですか……。12月24日に例の店で会いましょう。場所は名刺の裏に書かれています」

喪黒から貰った名刺の裏を見る富原。名刺の裏には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。


12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:10:12.372 ID:JA9651bLD

深夜。富原邸。机の引き出しから、鉄人エックスの人形を取り出す富原。彼は人形を机の上に置き、心の声で話しかける。

富原(今日、俺は不思議な人と出会ったよ。何でも、心のスキマを埋めるセールスマンだそうなんだ……)


テロップ「12月24日、クリスマスイブ――」

夜。BAR「魔の巣」に入店する富原。店の席には、富原を待つ喪黒が座っている。

喪黒「お待ちしていましたよ。富原社長」

富原が喪黒の隣の席に腰掛ける。

喪黒「ところで、社長。例の変装は今も続けていますか?」

富原「いいえ。前にも言ったように、変装がバレた時点であの趣味はもうやめですよ」

喪黒「ならば、今回は一味違った変装をしてみたらどうですか?」

富原「何ですか、それは?」

喪黒「この鞄の中に入っていますよ」

富原に鞄を渡す喪黒。富原が鞄を開けると……、何やら赤い衣装が見える。


14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:12:09.092 ID:JA9651bLD

富原「これに着替えろって言うんですか」

喪黒「そうです」

スーツを脱ぎ、赤ずくめの衣服に着替える富原。さらに、彼は白髪のカツラと白いつけひげを装着する。

喪黒「お見事です。よく似合っていますよ、社長」

富原「これは、サンタクロースの衣装……。今日がクリスマスイブだとはいえ、こんな服装で街を歩いたら不審者扱いされますよ!」

喪黒「まあまあ……。とりあえず、外へ出てみましょう」

BAR「魔の巣」から外に出る喪黒と富原。喪黒は、いつの間にかラッパを手にしている。ラッパを吹く喪黒。

上空から、そりを引いた2頭のトナカイが現れる。喪黒と富原の前に着陸するトナカイたち。

トナカイのそりには、何かが入った大きな袋が積まれている。

富原「こ、これは……」

喪黒「さぁ、富原社長。サンタクロースになって、世界中の子供たちにプレゼントを配ってみませんか?」

富原「バ、バカバカしい……。何で、私がこんなことをしなくちゃいけないんですか!?」


15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:14:15.878 ID:JA9651bLD

喪黒「社長の心のスキマを埋めるためですよ。私はあの話を聞いて、今のあなたへの解決策を思いつきました」
   「ほら……。あなたが幼いころの、クリスマスの話ですよ」

富原「ああ、あの話ですか……」

喪黒「富原社長は、あの鉄人エックスの人形が心の支えとなりました」
   「あなたからプレゼントを貰うことで、子供たちは心の支えを得ることができるでしょう」

富原「うーーーん、粋なことを言いますね……」

喪黒「ですから、社長……。あなたには約束していただきたいことがあります」

富原「約束!?」

喪黒「そうです。サンタクロースの仕事は、最後までやり遂げてください。プレゼントは一つ残らず、子供たちに配るのですよ」

富原「は、はい……」

喪黒「サンタの仕事を、途中で投げ出すような真似は絶対にしてはいけません。いいですね、約束ですよ!?」

富原「わ、分かりました……」

そりに乗り込む富原。


17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:16:20.891 ID:JA9651bLD

喪黒「いってらっしゃい、富原社長」

手を振る喪黒。富原を乗せたトナカイのそりが、夜の上空へ旅立っていく。

富原(トナカイのそりが、空を飛んでいる……。俺は夢でも見ているのか?)
   (いや、夢なんかじゃない……。今感じている上空の肌寒さは、まさに本物だから……)

ある国。住宅の前に辿り着くトナカイのそり。袋を持ったまま歩く富原。彼の身体が、家の壁をすり抜けて屋内に入る。

金髪の子供がベッドで眠る。袋を開け、数々のプレゼントの箱をかき分ける富原。彼がとある箱を手にすると……。

富原(この子には、この箱を配ればいいのか。どの子に何をプレゼントすればいいか、直感で分かるような気がする……)

富原は、ベッドの側に箱を置く。眠ったままで、彼の存在に気がつかない子供。

さらに、とある国のある家。ベッドの側に別の箱を置く富原。ベッドで眠っている子供は、ラテン系の顔立ちをしている。

別の国では――。上空から、荒廃した街並みを目にする富原。街の建物の多くに、爆撃や銃弾の痕跡が見える。

富原(そういえば、この国は内戦の只中にあったな……)


18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:18:12.466 ID:JA9651bLD

また、他の国でも――。富原は家で眠る子供にプレゼントを配る。あちこちの国を回る富原。

トナカイのそりが、BAR「魔の巣」へ帰還する。そりから降りる富原。トナカイたちが、そりを引いて上空へ去っていく。


BAR「魔の巣」に入店する富原。店の席には、富原を待つ喪黒がいる。

富原「喪黒さん……。私は世界中の国々を回ってきました……。もう、クタクタで……」

喪黒「よく頑張りましたねぇ。では、これを見てください」

富原に、スマホを見せる喪黒。

富原「え!?あれほど多くの国を回ったのに、そんなに時間が経っていない!?」

喪黒「どうです?いい経験になったでしょう……」

富原「何だか不思議な気分ですよ……。夢でも見ているのか、魔法の国にでもいるのか……」

喪黒「あなたがさっき経験したことは、現実ですよ。明日も同じことをやっていただきます」

富原「明日……。ああ、そうか……。明日は12月25日ですよね」


20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:20:18.918 ID:JA9651bLD

テロップ「12月25日、クリスマス――」

夜。BAR「魔の巣」前。サンタクロース姿に着替えた富原。彼の側には、ラッパを持った喪黒がいる。

ラッパを吹く喪黒。上空から現れるトナカイのそり。そりには、大きな袋が積まれている。

喪黒「富原社長。私との約束、覚えていますよね?」

富原「ええ。サンタの仕事は、最後までやり遂げろってことでしょ。私も実業家である以上、仕事は最後までやり抜くつもりですよ」

そりに乗る富原。彼を乗せたトナカイのそりが、上空へ飛び立つ。夜空をかけるトナカイのそり。

熱帯のある国の住居。ベッドで眠る黒人の子供を見る富原。黒人の子供は、痩せ衰えて栄養失調気味だ。

富原(この国のこの子は、飢えに苦しんでいるのに――。こういう子がいることを、俺は考えもしなかった)

上空を飛び回るトナカイのそり。各国の家に行き、子供にプレゼントを配る富原。どの家も、子供は静かに眠ったままだ。

そして――。日本のとある民家の前に辿り着くトナカイのそり。建物の壁をすり抜けて、家の中に入る富原。

布団には、幼い男の子と母親が眠っている。富原がプレゼントの箱を置こうとした時……。男の子が目を覚まし、布団から出てくる。

男の子「あ、サンタさんだ……」


21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:22:22.902 ID:JA9651bLD222222

富原(うっ……、気付かれてしまった……。早くこの場を離れなくては……)
   「メ、メリー……、クリスマス」

男の子「メリークリスマス!」

富原に笑顔を見せる男の子。家を立ち去り、トナカイのそりに乗る富原。トナカイのそりが上空を飛ぶ。

富原(これで俺は、全てのプレゼントを配り終わった。それにしても、さっきの男の子の笑顔は本当にさわやかだった……)
   (俺も、幼いころはあんな時期があったんだ……。幼いころの俺を思い出すような……、あのあどけない男の子……)
   (ま……、まさか……!!そういうことだったのか……!!)

富原は何かに気付いたようだ。


BAR「魔の巣」に帰還する富原。店の席には、富原を待つ喪黒がいる。

喪黒「おかえりなさい、富原社長」

赤い帽子、白髪頭のカツラ、白いつけひげを椅子に置く富原。彼は、喪黒の隣に座る。

富原「喪黒さん……。私はサンタとして、あちこちの国を回ったんですが……。最後の国は日本でした」
   「しかもですよ……。最後の国で、私がプレゼントを配ったあの子供……。あれは、幼いころの私だったんです!!」

喪黒「ほう……、そうですか。社長が幼いころの、クリスマスの夜の出来事の正体はそういうことだったのですねぇ」


22: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:24:40.258 ID:JA9651bLD

富原「はい……。あれは夢の出来事じゃなくて、現実の出来事だったのです……」

喪黒「あの日、幼いころの富原さんが貰った鉄人エックスの人形……。あれは、その後のあなたの宝となりましたねぇ」

富原「ええ……。あの人形を貰った時の気持ちは、本当にうれしかったですよ。カネやモノを超えた何かを感じましたから……」
   「幼いころの私のあの笑顔は、本当にさわやかなものでした。あの頃の私は、人を信じ、人を愛することができたのです……」

喪黒「子供というのは、本当に純粋ですからねぇ……」

富原「はい……!!でも、その後の私は……。悪い方に人間が変わってしまいました!!」
   「中学3年のころ、石油ショックが起こり……。工場の経営に行き詰まった両親は、自殺したんです」
   「高校時代の私は、親戚一家のもとで冷たい仕打ちを受け……。社会に出てからも、仕事でたびたび人間に裏切られました」
   「そういったことが積み重なった結果、私は人でなしになってしまったんです!!人を人とも思わない冷酷非道な経営者に……」

喪黒「富原社長……。あなたの生い立ちにも、複雑な事情があったのでしょう」

富原「私が間違っていました!!私のせいで、どれだけ多くの人間を苦しめてしまったか!!そう思うと、今の私は……」
   「ウオオオオオオオオオオオオッ!!!」

泣き崩れる富原。喪黒は、富原の肩の上に手を置く。


23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/13(火) 22:26:50.248 ID:JA9651bLD

テロップ「翌年――」

記者会見場。カメラのフラッシュを無数に浴びながら、会見をする富原。

富原「今までの私のやり方には、数多くの問題があったことは事実です」
   「これからは従業員たちへの待遇を改善し、一人ひとりが働きやすい職場へと変えていきます」

記者「富原社長。経営方針の転換、ということでよろしいですね?」

富原「はい。経営者としても、人間としても一大転換をするつもりです」
   「その第一歩として、慈善事業を行うための財団を設立することも検討しています」
   「大事なのは人間の尊厳を守ること……。私は、このことに気付かされました」


ある夜。駅の近くの、イルミネーションツリーの前にいる喪黒。

喪黒「毎年12月には、必ずクリスマスが訪れますが……。世の中の人々は、果たしてクリスマスをどう過ごしているのでしょうか?」
   「大人たちの多くは、子供のころは無邪気にクリスマスを楽しんでいましたし……。サンタが来ることを心待ちにしていました」
   「そもそも、サンタクロースの存在は目には見えないものですが……。一人ひとりの心の中にはちゃんと存在しているものです」
   「富原社長が幼いころ、クリスマスの夜に見たサンタクロースもまた……。彼の心の中にずっと存在し続けたのですから……」
   「なぁに……。私だって、たまにはいいことをするんですよ。オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―





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