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喪黒福造「この森は、昆虫の楽園なのですよ」 カメラマン「昆虫の楽園……」

1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:08:48.378 ID:kYwChRf9D

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    朝比奈賢司(46) カメラマン

    【カブトムシの森】

    ホーッホッホッホ……。」


2: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:10:43.064 ID:kYwChRf9D

とある林。湖の上を泳ぐ数羽の水鳥。水鳥たちに向かい、ある人物がカメラのシャッターを下ろす。カシャッ!!

とある原っぱ。地平の奥には、荘厳な山がどっしりとしそびえ立っている。山を撮影するカメラマン。カシャッ!!

また、とある海では、例のカメラマンがボートに乗っている。シャッターチャンスを虎視眈々と待つカメラマン。

海の上から、大型の魚が水しぶきを上げて浮かび上がる。魚を撮影するカメラマン。カシャッ!!

カメラマンが、カメラをゆっくりと顔から下ろす。見えてきたのは、達成感に満ちた表情の素顔だ。

テロップ「朝比奈賢司(46) カメラマン」


冬。とある大型書店。店の前に行列ができている。カメラマン・朝比奈のサイン会が行われているからだ。

行列の中には、朝比奈の本を持った喪黒福造の姿もある。最前列になり、朝比奈に本を渡す喪黒。

喪黒「朝比奈先生、サインをお願いします」

自著にサインを書き、喪黒に返す朝比奈。サイン会はなおも続く。大型書店を後にする喪黒。


4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:12:25.066 ID:kYwChRf9D

ある日。とある出版社。朝比奈は、編集者と仕事の話をしている。数枚の写真を見る編集者。

編集者「朝比奈先生、来週号の表紙はこれにしましょう」

朝比奈「どうも。私も、この写真が割といいなと思っていたところですよ」

編集者「こういう癒される写真が必要なんですよ。うちの雑誌はファミリー向けですから……」

朝比奈「はい……」


線路を走る電車。電車内で、吊り革を持つ朝比奈。彼の隣には吊り革を持った喪黒がいる。

喪黒「あのぅ……、朝比奈先生ですよね?」

朝比奈「あなたは……」

喪黒「私ですか?この間、先生のサイン会に参加したんですよ」

朝比奈「ああ、ファンの方ですか……」

喪黒「はい。実は私、こういう者でして……」


5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:14:11.462 ID:kYwChRf9D

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

朝比奈「ココロのスキマ、お埋めします?」

喪黒「私はセールスマンです。お客様の心にポッカリ空いたスキマをお埋めするのがお仕事です」

朝比奈「ハハーン……。うまいこと言って、私に何か売りつける気なんですか?」

喪黒「先生にいい話があるんですよ。これは、先生の趣味にもつながる話です」

朝比奈「私の趣味……」

喪黒「確か、先生は昆虫がお好きですよねぇ?何しろ、先生の趣味は昆虫採集ですから……」

朝比奈「そ、そうですけど……。そこまで私のことを調べていたとは……」

喪黒「昆虫に関係した話ですよ。ひょっとすると、先生のお仕事にも役立つかもしれません」

朝比奈「昆虫に関係した話……。それならば、あなたを私の自宅に案内しましょう」


7: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:16:13.275 ID:kYwChRf9D

とある街の郊外、朝比奈の自宅。建物の中に入る朝比奈と喪黒。

朝比奈「見てください、これを」

喪黒「ほう……、これはすごい」

自宅のある広い部屋に、昆虫の標本がこれでもかと集められている。昆虫のコレクションを見つめる朝比奈と喪黒。

喪黒「これ、先生が一人でお集めになったのですか?」

朝比奈「そうです。私は小さいころから、昆虫採集が好きでしたから……」

喪黒「なるほど……。先生の昆虫好きは、筋金入りというわけですなぁ」

朝比奈「はい。昆虫好きであるおかげで自然にも興味を持ち、いつの間にか私はカメラマンになっていました」

喪黒「何しろ、先生の写真は自然や動物を扱ったものが多いですからねぇ」
   「美しい風景を撮ることに関しては、まさに第一級の才能を持っていると言っても過言ではありませんよ」

朝比奈「いえいえ……、気が付いたらそうなっていたんですよ」


8: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:18:10.662 ID:kYwChRf9D

喪黒「自分が好きなことを中心に仕事をするというのは、本当に楽しいですからねぇ」

朝比奈「はい。まさに、カメラマンの仕事は天職だったのかもしれません」

喪黒「ですが、先生……。先生がこれまで発表した写真集には、昆虫を中心としたものはまだないでしょう?」

朝比奈「言われてみれば、確かに……。私にとって昆虫は、あくまでも趣味の対象でしたからね……」

喪黒「ならば、先生……。昆虫をテーマにした写真集を発表してみたらどうです?」

朝比奈「まあ、やってみる価値はありますよね……。ことに、自分の趣味の延長だから面白い仕事になるでしょう。しかし……」

喪黒「おや、何か問題でも?」

朝比奈「今は季節的に寒い時期を迎えていますよ。だから、日本国内で昆虫の撮影をするのは難しいですし……」
     「それに、海外の熱帯の地域まで行くのは旅費がかかりますよ」

喪黒「大丈夫です。私が何とかしましょう」

朝比奈「海外へ行くための旅費を負担するとでも言うのですか?」


10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:20:04.309 ID:3MMCHKdND

喪黒「それよりも、もっと手軽な方法があります」

朝比奈「何ですか、それ?」

喪黒「すぐに分かりますよ。私に着いて来てください」


喪黒に誘われ、外に出る朝比奈。2人は住宅街の中を行き、とある地蔵の前に辿りつく。

朝比奈「喪黒さん。一体、ここで何をしようって言うんですか?」

喪黒が地蔵を動かすと……。地蔵が置いてあった場所から、地下道の入り口が見えてくる。

喪黒「さあ、朝比奈先生。入りましょう」

喪黒と朝比奈は、地下道に入る。土でできたトンネルの中を歩く2人。

喪黒「見えてきましたよ、先生」

朝比奈「うっ、まぶしい!」

トンネルを抜ける喪黒と朝比奈。2人の頭上に、太陽の光が差し込む。


11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:22:07.001 ID:3MMCHKdND

朝比奈「こ、この景色は……」

森の中にいる喪黒と朝比奈。ここの植物は日本のものと形がやや違っており、どれも葉が緑に色づいている。

朝比奈「それにしても、異様に蒸し暑い……。今は寒い季節のはずなのに、なぜ……」

顔が汗だくになる喪黒と朝比奈。朝比奈は、今まで着ていた外套を脱いでいる。

喪黒「ここは熱帯雨林だから、蒸し暑いのも当然ですよ」

朝比奈「熱帯雨林だって!?私たちは日本にいたはずですよ!!」

喪黒「さっきのトンネルをくぐり抜けて、私たちは熱帯雨林に行ったのです」

朝比奈「バカな!!そんなことは現実にあり得ません!!まるでSFみたいじゃないですか!!」

喪黒「じゃあ、この蒸し暑さはどう説明するんです?それと、この森の植物の形とか……」

朝比奈「そ、そう言えば……。確かに、ここにある木や葉っぱは、日本にある樹木とは違っているみたいですね……」

喪黒「朝比奈先生。この森は、昆虫の楽園なのですよ」


13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:24:03.785 ID:3MMCHKdND

朝比奈「昆虫の楽園……」

喪黒「見てください、これを!」

とある樹木を指差す喪黒。朝比奈が樹木を見ると……。

朝比奈「おおっ、カブトムシがたくさんいる!一つの木に、カブトムシをこんなに見たのは初めてですよ!!」

喪黒「先生、あの木も見てください」

別の樹木を指差す喪黒。

朝比奈「こ、ここにもカブトムシがかなりいる!それだけでなく、クワガタも一緒に……」

喪黒「どうです、先生?素晴らしい光景でしょう……」

朝比奈「は、はい……。少年時代を思い出しましたよ!夏に山の中を駆け巡り、カブトムシの採集に熱中した日々を……」
     「あのころは本当に楽しかったです!!」

喪黒「ね?ここへ来る価値はありましたよねぇ?」


14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:26:38.589 ID:3MMCHKdND

朝比奈「ええ……!こんな景色が身近にあったなんて!!感動で心が震えていますよ!!」

喪黒「この景色をカメラで撮影して、写真集を発表すればいいんですよ」
   「熱帯の豊かな自然と、森の中にいる昆虫たち……。これらをシャッターに収めるのです」

朝比奈「それはいいですね!!でも……、今カメラを持っていないのがつくづく悔やまれますよ」

喪黒「大丈夫です。次にここを訪れる時に、カメラを持ち込めばいいのですよ」

朝比奈「この森へ、また訪れることはできるんですか?」

喪黒「もちろんです。何度でも訪れていいんですよ。ですが……」

朝比奈「一体どういうことですか?」

喪黒「朝比奈先生には、私と約束していただきたいことがあります」

朝比奈「約束……ですか」

喪黒「そうです。あなたが、この森を何度でも訪れるのは結構……」
   「ただし、森で生きている昆虫たちを持ち帰ってはいけませんよ。いいですね!?」


15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:28:18.284 ID:3MMCHKdND

朝比奈「わ、分かりました……。喪黒さん」

喪黒「約束はちゃーんと守ってくださいよ」

朝比奈「は、はい……」


数日後。例の熱帯雨林の中に、カメラを持った朝比奈の姿がある。彼はこの間とは違い、夏らしい服装をしている。

カブトムシが集まるとある樹木。樹木の近くにカメラを向ける朝比奈。カメラのシャッターを下ろす音。カシャッ!!

別の樹木では、カブトムシたちにクワガタが混じっている。クワガタを撮影する朝比奈。カシャッ!!

朝比奈は森の中を歩き、ある広葉樹を見つける。

朝比奈(おおっ、こんなところにコガネムシがいる!!エメラルドのように輝いていて、実に綺麗だ……)

コガネムシを撮影する朝比奈。カシャッ!!

朝比奈(至るところに昆虫がいる……。まるで夢のような景色だ……)


17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:30:13.575 ID:3MMCHKdND

とある大型書店。ベストセラーのコーナーに、朝比奈の写真集『カブトムシの森』が山積みされている。

書店に入り、朝比奈の写真集を手に取る喪黒。写真集には、彼が撮影した昆虫の写真がいくつも写っている。


夕方。喪黒の名刺を持ちながら、路地裏を歩く朝比奈。

朝比奈「えーーと……。BAR『魔の巣』という店は……」

喪黒の名刺の裏の白字には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。

朝比奈「ここか……」

BAR「魔の巣」。喪黒と朝比奈が席に腰掛けている。

喪黒「朝比奈先生、サインをお願いします」

朝比奈に『カブトムシの森』を渡す喪黒。

朝比奈「いやぁ、私の本を買ってくださってありがとうございます」

本にサインをし、喪黒に返す朝比奈。


18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:32:12.877 ID:3MMCHKdND

喪黒「こちらこそ、先生に感謝しますよ。わざわざ、ここでサインをしてくださって……」

朝比奈「いえいえ。私こそ、あなたに感謝したいですよ」
     「何しろ、あの森を紹介してくださったのは喪黒さんじゃないですか」

喪黒「おかげで、先生は『カブトムシの森』を発表することができましたからねぇ」

朝比奈「はい。大好きな昆虫をテーマにした写真集を発表することができて、本当に感無量ですよ」

喪黒「大好きなことを仕事のテーマにできたのだから、そりゃあうれしいでしょう」

朝比奈「ええ。あれ以来、私は何度もあの森を訪れています」
     「あの森に行って、カブトムシなどの昆虫を目にするのが楽しいんです」

喪黒「どうやら、先生はあの森がさぞ気にいったようですねぇ」

朝比奈「はい。あそこにいると、童心に返ったような気がするんです」
     「子供のころ、夏にカブトムシを集めた日々を思い出して……」


19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:34:17.770 ID:3MMCHKdND

喪黒「まさか、あの森で昆虫採集をやってはいないでしょうねぇ?」

朝比奈「い、いいえ!!そんなことはしていませんよ!!」

喪黒「先生……。私との約束、覚えていますよねぇ?」

朝比奈「ええ。もちろん、覚えていますよ」

喪黒「そうですか……。それならいいんですよ。昆虫だって生きているんですから……」
   「昆虫が好きならば、生き物の命を尊重する気持ちを忘れてはいけませんよ」

朝比奈「はい……」


夜。朝比奈の自宅。広い部屋の中で、昆虫の標本のコレクションを眺める朝比奈。彼の頭の中に、喪黒の言葉が思い浮かぶ。

(喪黒「昆虫だって生きているんですから……。昆虫が好きならば、生き物の命を尊重する気持ちを忘れてはいけませんよ」)

朝比奈(じゃあ、ここにある標本は一体何だというんだ?そんなことを言ったら、俺の趣味の全否定になってしまうじゃないか)

さらに、朝比奈の頭の中にあの森の光景が思い浮かぶ。樹木に集まるカブトムシたちの群れ……。


21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:36:17.797 ID:3MMCHKdND

朝比奈(あの森にいる昆虫たち……。見るだけじゃ物足りない。写真を撮るだけでも物足りない)
     (俺は、あの森の昆虫がどうしても欲しい……。あれだけいるのだから、数匹ぐらい捕まえてもいいだろう)

朝比奈は、昆虫の標本のコレクションを見つめる。

朝比奈(あの森の昆虫を捕まえたら、ここの標本のコレクションに加えよう)


熱帯雨林の中を歩く朝比奈。彼は、虫取り網と透明な籠を持っている。

朝比奈(いたぞ!!)

樹木にいるカブトムシに、朝比奈の虫取り網が覆いかぶさる。カブトムシを籠に入れる朝比奈。

朝比奈(ようし、捕まえた……)

別の樹木へ向かう朝比奈。樹木にいるカブトムシを、朝比奈が虫取り網で捕まえようとした時……。

喪黒「お待ちなさい!!」

朝比奈が後ろを振り向くと、そこには喪黒が立っている。


23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:38:13.172 ID:3MMCHKdND

喪黒「朝比奈先生……。あなた約束を破りましたね」

朝比奈「も、喪黒さん……!!」

喪黒「私は言ったはずですよ。この森で生きている昆虫たちを持ち帰ってはいけない……と。にも関わらず、先生は……」

朝比奈が手にしている透明な籠を指差す喪黒。籠には、カブトムシが数匹入っている。

朝比奈「す、すみません……!!どうしても我慢ができなくて……」

喪黒「約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」

喪黒は朝比奈に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

朝比奈「ギャアアアアアアアアア!!!」

喪黒のドーンを受け、朝比奈の両手から虫取り網と透明な籠が滑り落ちる。それとともに、朝比奈にも異変が起き始める。

身体が茶色になる朝比奈。彼が身に着けていた衣服が破れ、全身がみるみる肥大していく。朝比奈を見つめる喪黒。


25: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/18(日) 15:41:19.163 ID:3MMCHKdND

その後――。例の熱帯雨林。森の木々には、どれも昆虫の姿が目立っている。

とある樹木にもカブトムシが集まっている。この森にありがちな樹木に見えて、一味違った木のようだ。

そう、それは――。朝比奈の顔が浮かんだ人面樹である。人面樹から蜜を吸うカブトムシたち。

朝比奈(これで俺は、カブトムシたちと一緒に暮らせる……。いつまでも、いつまでも……)

安らかな表情をした朝比奈の顔の人面樹。


熱帯雨林の中にいる喪黒。

喪黒「世界には数多くの生き物が生存していますが……。そのうちの70%から80%が昆虫だとされています」
   「ある意味、地球は昆虫が支配しているとも言えますし……。昆虫は地上で最も成功した生き物なのかもしれません」
   「環境や季節によって生存する昆虫は異なっていますし……。その種類の多様性こそが昆虫の魅力と言えましょう」
   「何よりも、大自然の中で間近に接すれば、昆虫の魅力を実感できますよ。そう、人面樹になった朝比奈さんのようにね……」
   「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―





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