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喪黒福造「強くなるために、ボクシングを習ってみたらどうですか?」 法科大学院生「嫌ですよ!!」

1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 18:51:29.354 ID:A4gkzZ+ND

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    白井功一(23) 法科大学院生

    【ボクシング入門】

    ホーッホッホッホ……。」


4: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 18:53:31.489 ID:A4gkzZ+ND

東京。西北大学。教室内で、刑法の講義を受ける学生たち。

教授「……この行為類型を、構成要件と言います。構成要件は、犯罪成立要件の一つに含まれます」

黒板の板書をノートに記すとある大学院生。

テロップ「白井功一(23) 西北大学法科大学院1年」

教授「……構成要件が完全に実現された場合を、既遂と言います。それに対し……」
   「犯罪の実行に着手したものの、構成要件の結果が発生しなかった場合を未遂と言います……」

白井は、教授の話を聞いている。


研究室で、助教とともに本棚や資料の整理をする白井。

助教「ありがとう、白井君。今度のゼミで扱う判例をまとめるための、手間が省けたよ」

白井「どういたしまして、助教」


5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 18:55:16.104 ID:A4gkzZ+ND

夕方。住宅街を歩く白井。道を歩き続ける白井は、左の方の河原で、数人の人間を目撃する。

一人の少年に、殴る蹴るの暴力を振るう不良少年たち。白井は土手を下り、河原へ向かう。

白井「君たち、やめないか!!」

不良少年A「お、何だ?てめえは……」

白井「仲間で群れて、一人の人間をいじめるなんて卑怯だぞ!!」

不良少年B「だって、俺たち群れをなす狼だしぃー」

不良少年C「そう、そう……。俺たちを煽るなんて、お前マジ生意気ぃー」

不良少年A「こいつムカつくから、やっちまおうぜ!!」

不良少年B・不良少年C「おうっ!!」

不良少年たちは、白井に対し暴力を振るう。無抵抗のまま、為すすべもなくやられ続ける白井。


6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 18:57:06.496 ID:A4gkzZ+ND

土手にいる喪黒福造。河原で不良たちにリンチされる白井の姿が、喪黒の目に入る。スマホで通話を始める喪黒。

喪黒「もしもし……」

土手の上の方に停車したパトカー。河原では、不良少年たちが警察官たちに取り押さえられている。

不良少年たちと警察官を見つめる喪黒、白井、被害者の少年。白井の顔は傷だらけになっている。

警察官A「さあ君たち、警察署でゆっくり話を聞くからな……」

不良少年A「は、はい……」

警察官B「本当に助かりますよ。あなたが通報してくれなかったら、今ごろどうなっていたことか……」

喪黒「いえいえ、私は当たり前のことをしたまでです」

警察官C「あと、そこの若いあなた……。正義感が強いのは結構ですが、注意する相手に気をつけるべきですよ」

白井「す、すみません……」


9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 18:59:06.099 ID:A4gkzZ+ND

BAR「魔の巣」。喪黒と白井が席に腰掛けている。

白井「それにしても、さっきはあなたにご迷惑をおかけしました……」

喪黒「まあまあ……。白井さんのような勇気ある人は、今時めったにいませんから……。大したものですよ」

白井「でも、僕はあの不良たちに為すすべもなくやられましたから……。さすがに、さっきは無茶をし過ぎましたね」

喪黒「どうやら、あなたは曲がったことが嫌いなお方のようですねぇ。でも、気をつけてくださいよ」
   「世の中は、いつも正しいことが通るとは限りませんから……」

白井「ええ、それは分かっていますよ……。でも、不正や非道を放置したら世の中は悲惨なままになります」
   「誰かが、それを何とかしなければいけないでしょう!そのために、法律や制度があるんですから……」

喪黒「なかなか、いいことを言いますなぁ。もしかして、白井さんは法律に興味があるのですか?」

白井「はい。僕は現在、西北大学の法科大学院に通っています。東京地検の検事になるのが僕の夢なんです」

喪黒「なるほど、検事になりたいのですか……。正義感の強い白井さんなら、検事に向いていると思いますよ」


10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:01:10.999 ID:A4gkzZ+ND

白井「ありがとうございます……」

喪黒「あなたほど頭のいい人なら、一応分かっているはずでしょうけど……。あえて言いますよ」
   「それはつまり、力に裏打ちされていない正しさは虚しいってことですよ」

白井「確かに……。僕はあの不良たちを叱ったものの、何もできないまま逆にやられましたからね……」

喪黒「あなたも何か、武道とかスポーツでも習っていれば違っていたかもしれませんよ」

白井「武道とかスポーツですか……。まあ、僕は昔から体育が苦手でしたから……」
   「さすがに、今の僕には向いていないでしょう」

喪黒「そんなことを言ってはダメです!武道とかスポーツを習うことで、あなたは自信を持つことができます」
   「『自分には体力があって、腕っぷしもそれなりにある』、『か弱い者や、自分の身を悪人から守れる』……と」

白井「それは言えてるかもしれませんね。ある程度の腕力を持っているというのは、心の支えにもつながりますから……」

喪黒「白井さんに自信をつけるためなら、いくらでも手助けをしますよ。なぜなら私、こういう者ですから……」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。


11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:03:11.689 ID:A4gkzZ+ND

白井「ココロのスキマ、お埋めします?」

喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」

白井「へえ……。珍しいお仕事ですね……」

喪黒「私としては、あなたの心と身体のためにあることをお勧めしたいのですよ」

白井「その、『あること』とは……」

喪黒「ボクシングですよ。強くなるために、ボクシングを習ってみたらどうですか?」

白井「嫌ですよ!!ボクシングなんて習いたくありません!!」
   「第一、僕は腕っぷしが弱いですし……。下手をすれば、怪我や後遺症の恐れだってありますよ!!」

喪黒「大丈夫です。ボクシングのライセンスは、普通の運動神経があれば誰だって取ることができます」
   「1年間、ジムに通っていれば、普通の人でも取得できる易しい資格なんですよ」

白井「そうなんですか……。じゃあ、やってみる価値はありそうですね」

喪黒「そうです!その調子!私は、あなたの挑戦を心から応援しますよ!」


12: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:05:10.878 ID:A4gkzZ+ND

数日後。鬼島ボクシングジム。建物の中に入る喪黒と白井。

喪黒「こんにちは、鬼島会長」

鬼島「こんにちは、喪黒さん!」

テロップ「鬼島義一(63) 鬼島ボクシングジム会長」

白井「喪黒さん、この人と知り合いなんですか?」

喪黒「そうですよ。彼は、ここのボクシングジムの会長です」

白井「この人が、ここの会長なんですか……」

鬼島「喪黒さん。ところで、隣にいるこの若い人は一体……」

喪黒「白井さんですか?実は、彼はボクシングを習いたいそうなんですよ……」

鬼島「君は白井君か。君のような若者が、ボクシングに興味を持ってくれてうれしいよ」

白井「は、はい……」


14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:07:10.481 ID:A4gkzZ+ND

ジムの中を見渡す白井。広い室内で、会員たちがボクシングの練習をしている。

白井(これがボクシングジム……。思っていたよりも、普通の人が多いな……)

ロッカールームに荷物を置き、トレーニングウェアに着替える白井。

喪黒「ホーッホッホッホ……。よく似合っていますよ、白井さん」

白井「いやぁ……」

鬼島の指示で、ストレッチや柔軟体操を行う白井。白井は縄跳びも行う。

さらに、鬼島からボクシングの基本的な構えを習う白井。白井の両手に軍手がはめられる。

鬼島「足を肩幅に広げる!左足を前に出し、膝を曲げろ!」

白井「こ、こうですか……」

鬼島「顎を引いて、正面を見ろ!両手の拳は顔の前へ!」

白井「はいっ……」


15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:09:15.263 ID:A4gkzZ+ND

鬼島「違う!こうじゃない、こうやるんだ!」

白井「は、はい……!」

鬼島に注意され、何度も基本フォームをやり直す白井。


ボクシングジムを出て、街を歩く喪黒と白井。

白井「それにしても、フォームを覚えるだけでも一苦労ですよ……」

喪黒「誰だって、初めのうちはそうですよ。ましてや、白井さんは今日から習うのですから……」

白井「実践向けの練習は、いつやるんですか?ほら、グローブやヘッドギアを付けてやるあれ……」

喪黒「それはかなり先です。基本的な技術講習や模擬試合を、一定期間やってからですよ」

白井「何だか、気が遠くなりそうな話ですね……」

喪黒「スパーリングはきついですから……。ある程度、技術が安定してからやるのですよ」

白井「大変そうだけど、僕にもできますかね……」


16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:11:10.477 ID:A4gkzZ+ND

喪黒「できますよ。1年後には、白井さんは見違えるように強くなっているはずです。ただし、うまくいけばの話ですが……」

白井「そうですか……」


夜。アパート、白井の部屋。コタツに向かいながら、液晶テレビを見る白井。

テレビの画面に、ボクシングの試合中継が映る。対戦をしているのは、チャンピオンの選手と若手の選手だ。

白井(これがボクシングか……。野蛮で危険なスポーツだと思ってたけど、そうでもなさそうだ……)
   (ボクシングって案外、魅力的なスポーツかもしれない……)

若手選手によるパンチが、チャンピオンの頬に命中する。

白井(僕も、あんな風に強くなりたいな……)


鬼島ボクシングジム。会員から、ボクシングのパンチの種類を習う白井。

ジャブ。クロス。ストレート。フック。アッパー……。白井は、ぎこちない様子で腕を振る。


17: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:13:11.853 ID:A4gkzZ+ND

BAR「魔の巣」。喪黒と白井が席に腰掛けている。

喪黒「白井さん。これはあくまでも私の感想ですが……。ボクシングを習ってからのあなたは、以前より貫禄がつきましたよ」

白井「は、はあ……。そう言われてみると、何となく前よりも自信がついたように感じますね」

喪黒「そうですよ、それ!あなたが自信を持つことができただけでも、ボクシングを習う価値はあったのです」

白井「来年にはライセンスを取得して、本当の意味で強くなって見せますよ」

喪黒「その意気やよし!……と言いたいところですが。私としては、あなたに忠告しておきたいことがあるのですよ」

白井「どういうことですか?」

喪黒「私は前にこう言いました。力に裏打ちされていない正しさは虚しいと……。これは逆も然りです」
   「すなわち、正しさに裏打ちされていない力は虚しいということですよ」

白井「なるほど……。ちゃんとした道理のない力は、単なる暴力でしかありませんからね」

喪黒「だから、白井さん。私と約束してください」
   「ボクシングの技術を利用して暴力沙汰を行う真似だけは、絶対にしてはいけませんよ」


18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:15:13.866 ID:A4gkzZ+ND

白井「大丈夫です。僕がそんなことをするわけありませんよ」

喪黒「……だといいのですがねぇ。とにかく、約束はちゃーんと守ってくださいよ」

白井「は、はい……」


夜。とある居酒屋。座敷に座り、飲み会をする大学院生たち。飲み会には白井も加わっている。

酒のおかげで上機嫌となる一同。やがて、白井を含めた大学院生たちが店を出る。


夜道を一人で歩く白井。彼の前に、例の少年が現れる。不良少年たちに暴行を受けたあの少年だ。

白井「やあ、久しぶりだな。君が無事で、本当によかった……」

例の少年――拓哉の側に、2人の別の少年が現れる。

少年A「拓哉、こいつか。地元のヤンキーにボコボコにされてたモヤシ野郎ってのは……」

拓哉「ああ、そうだよ。こいつメチャクチャ弱かったからな。思い出しただけでも、マジ笑えるしー」


19: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:17:31.858 ID:A4gkzZ+ND

少年B「ふーん、そんなに弱いんだ。ちょっと、こいつを脅せば言うこと聞くかもしれないなぁ」

白井「一体、何をしたいんだ……。君たち……」

拓哉「なぁ……。悪いけど、小遣い貸してくれよ。俺たち、遊ぶ金が欲しいんでね」
   「弱っちくて、ボコボコにされたあんたなら分かるだろ。俺たちに逆らったら、どうなるかってこと……」

白井「お、お前はそんな人間だったのか……!!僕はあの時、何のためにお前を助けに行ったんだ……!?」

拓哉「俺を助けに行っただと!?一方的にやられただけのあんたがか……?ギャハハハハハ!!」

白井「てめえ……っ!!」

頭に血が上り、拓哉に拳を向ける白井。白井はボクシングの技を次々繰り出し、拓哉を袋叩きにする。

少年A・少年B「う、うわああっ!!拓哉ああっ!!」

白井「僕はボクシングを習ってるんだ!!お前たち、出直して来い!!」

拓哉と2人の少年が、白井の前から退散する。夜道を歩き続ける白井。しばらくした後、彼の前に喪黒が姿を現す。


21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:19:36.068 ID:A4gkzZ+ND

白井「あ、喪黒さん……」

喪黒「白井功一さん……。あなた約束を破りましたね」

白井「なっ……!!」

喪黒「私は言ったはずですよ。ボクシングの技術を利用して暴力沙汰を行う真似だけは、絶対にしてはいけない……と」
   「それにも関わらず、あなたはついさっき……」

白井「仕方ありませんよ。あいつらが僕を恐喝してきたんですから……。あれは正当防衛ですよ」

喪黒「本当にそうですかねぇ?実際は……、あなたの感情に任せて、あの少年に暴力を振るったのではないですか?」
   「例えば……。あの時、彼を助けに行ったことを馬鹿にされ、頭に血が上って暴力を振るってしまったとか……」

白井「そ、それはその……!!」

喪黒「ほう……、図星ですか。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰わなくてはなりません!!」

喪黒は白井に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーン!!!」

白井「ギャアアアアアアアアア!!!」


22: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:21:24.250 ID:A4gkzZ+ND

喪黒のドーンを受け、疲労困憊した様子で夜道を歩く白井。

彼の前に、少年・拓哉が再び現れる。彼は自分以外に、6人の少年を引き連れている。

拓哉「あんた、なかなかやるじゃん。だから、言われた通り出直してきたよ……」

白井が拓哉の方を見ると……。拓哉を含めた少年たちの手には、金属バットが握られている。

白井「そ、そんな……!!反則だぞ!!大勢の人間が、武器を持って現れるなんて……!!」

拓哉「え?そんなこと聞いてねえよ。俺、とにかくあんたに勝ちたいから。そ・れ・だ・け」

白井に一斉に襲い掛かる不良少年たち。拓哉の金属バットが、白井の頭へと振り下ろされる……。


とある病院。全身が包帯姿となり、ベッドに横たわる白井。ベッドの側には、医者、看護師、白井の両親がいる。

知性を失った表情で、左右をキュロキョロ見渡す白井。


24: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/11/25(日) 19:24:37.640 ID:A4gkzZ+ND

医者「功一様は、幸いにも命が無事でしたが……。あの時、彼は脳に強い打撃を受けました」
   「だから……。功一様は、身体や知能への重い後遺症が今後も残るでしょう」

白井の母「功一は、死ぬまでこのままってことですか……!?」

暗い表情でうなずく医者。母親に顔を向け、何かを話そうとする白井。

白井「オ、オワーアン……(お、お母さん……)」

白井の母「ウッ……。ウウウウウ……、功一いいいいいいっ!!!」

ベッドに横たわる白井の声を聞き、彼の母が泣き崩れる。


鬼島ボクシングジムの前にいる喪黒。

喪黒「世の中は、いつも正しいことが通るとは限りませんし……。むしろ、逆のケースの方が多いのが現実です」
   「得てして、善人はいつも非力な場合が多いですし……。力に裏打ちされていない正しさは、虚しい絵空事です」
   「とはいえ、正しさに裏打ちされていない力は何かと暴走しがちであり……。最後には自滅が待っています」
   「力に裏打ちされた正しさと、正しさに裏打ちされた力……。この両方が同時に実現するのが、理想なのでしょうけど……」
   「何しろ、人間は矛盾だらけですから……。結局、正しさや力を過度に追い求めず、保身に徹した方が無難ですよ。ねぇ、白井さん……」
   「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―





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