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喪黒福造「これは、自分の過去を映すDVDですよ」 元建設会社社員「自分の過去を映すDVD?」

1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:09:05.032 ID:NHLPtn2iD

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    野沢正直(44) 元建設会社社員

    【過去を映すDVD】

    ホーッホッホッホ……。」


5: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:11:15.251 ID:NHLPtn2iD

東京。「晴天建設株式会社」本社ビル。経営陣が、記者会見を行っている。

社長「債権者をはじめとする関係者の皆様に、多大なご迷惑とご心配をおかけする事態となり……」
   「本当に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます」

頭を下げる経営陣。彼らに、カメラのフラッシュが一斉に浴びせられる。晴天建設の倒産を報じる全国紙。

読朝新聞「晴天建設、民事再生法申請へ」

晴天建設の債権者説明会。経営陣に怒号を浴びせる債権者たち。

債権者たち「一体どうなってるんだ!!」「詐欺野郎め、金返せ!!」「何が経営再建だ、ふざけるな!!」


住宅街、とある自宅。門には「野沢」の表札が見える。

家の前に停車した大型トラック。業者たちが、トラックの荷台の中に荷物を次々と運んでいく。業者を見守る中年男性。

野沢(いよいよ、このマイホームともお別れか……)

テロップ「野沢正直(44) 無職・元晴天建設社員」


6: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:13:15.574 ID:NHLPtn2iD

夜。とあるマンション。狭い部屋の中で、一人でコタツに入る野沢。

野沢(ついこの間まで、俺は晴天建設の正社員だった……)


回想する野沢。

とある建設現場。建物の躯体工事(骨組工事)が行われている。

ヘルメットをかぶり、作業用のジャンパーを着た野沢。野沢は設計図を見ながら、部下に何かを指図している。

野沢のモノローグ「数年前の俺は、東北地方で現場監督をしていた。東日本大震災の復興関連の仕事があり、本当に忙しかった」


野沢のマイホーム。居間で会話をする野沢夫妻。

野沢「そうなのか……。どうしても俺と離婚する気なんだな……」

離婚届を野沢に差し出す妻。沈痛な表情で、離婚届にサインをする野沢。

野沢のモノローグ「仕事三昧で家族を顧みなかったせいで、俺は妻と離婚することになった」


9: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:15:23.976 ID:NHLPtn2iD

夜。「晴天建設」本社ビル。机に向かい、パソコンを操作する野沢。

野沢のモノローグ「妻と離婚した後も、俺は会社のために必死で働き続けた」


野沢の回想が終わる。

夜。マンション。一人でコタツに入る野沢。

野沢(しかし、晴天建設は無茶な経営を続けた挙句、とうとう倒産した……)
   (俺は無職になり、今まで住んでいたマイホームを手放すことになってしまった)

リモコンを持ち、液晶テレビをつける野沢。テレビが、晴天建設倒産に関したニュースを報じる。

テレビ「晴天建設は、東京地検から港則法違反で起訴されたことにより……。各地の自治体から指名停止処分を受けていました」
    「新たな公共工事を受注できず、資金繰りが行き詰まったことで……。今回の民事再生法申請に至ったとみられています」

野沢(会社が潰れれば、サラリーマンは一巻の終わり……。俺は、今まで何のために働いてきたんだ……)

テレビを消し、部屋を出る野沢。


10: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:17:15.964 ID:NHLPtn2iD

コンビニ。レジの前に立つ野沢。店員がスキャナを使い、コンビニ弁当をスキャンする。

コンビニ弁当を買い、マンションに戻る野沢。彼がコタツに入り、コンビニ弁当を食べようとした時……。

突然、インターホンが鳴る。ピンポーーン!!

野沢「どなたですかー?」

玄関に向かい、ドアを開ける野沢。玄関の前には、喪黒福造が立っている。

喪黒「おじゃまします……」

玄関を上がり、野沢の部屋に入る喪黒。

野沢「な、何するんですか!いきなり人の部屋に入るなんて……」

コタツの上に置かれたコンビニ弁当を眺める喪黒。

喪黒「これがあなたの夕食ですか?粗末な食事ですなぁ……」

野沢「人の食事にケチをつける気ですか!?金がないから仕方ないんですよ!!」


11: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:19:15.904 ID:NHLPtn2iD

喪黒「でも……。栄養失調の生活が続くと、身体を壊しますよ。さすがに、それは問題です……」

スマホを取り出し、誰かと通話する喪黒。

喪黒「もしもし。うな重弁当2人分、お願いします」

野沢「あなた何のつもりですか!?」

喪黒「出前を取りました。もうすぐ、この部屋に食堂屋の人がうな重弁当を運んできますよ」

野沢「何ですって!?私への嫌がらせのつもりですか!?」

喪黒「いいえ。出前の代金は私が払います」
   「あなたの食事があまりにも貧相だから、栄養のあるものをおごってあげようと思ったのですよ」

野沢「そ、そうですか……」

野沢の部屋のインターホンが再び鳴る。ピンポーーン!!

喪黒「どうやら、出前の人が来たようですねぇ」

玄関に向かう喪黒。


13: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:21:15.634 ID:NHLPtn2iD

出前の人間が去り、コタツでうな重弁当を食べる喪黒と野沢。

喪黒「自己紹介が遅れました。私はこういう者です」

喪黒が差し出した名刺には、「ココロのスキマ…お埋めします 喪黒福造」と書かれている。

野沢「……ココロのスキマ、お埋めします?」

喪黒「実はですねぇ……。私、人々の心のスキマをお埋めするボランティアをしているのですよ」

野沢「聞いたことのないお仕事ですね……」

喪黒「どうやら、あなたも心にスキマがおありのようです。何なら、相談に乗りましょうか?」

野沢「ええ……。実は……」

身振り手振りを交え、事情を説明する野沢。

喪黒「ほう……。野沢さんは、あの晴天建設の社員だったのですか」

野沢「はい。会社のために仕事に明け暮れたことで、私は妻と離婚しましたし……」
   「おまけにその会社が倒産してしまい、私は仕事とマイホームを失ってしまったんです」


14: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:23:17.022 ID:NHLPtn2iD

喪黒「……なるほど。野沢さんも気の毒ですねぇ。あまりにも悲惨ですよ」

野沢「悲惨を通り越していますよ。今の私は、全てを失ってしまった状態なんです」

喪黒「では、これから地道に仕事探しをするしかないでしょう」

野沢「とてもじゃないが、そんな気は起きません。今の私は、精神的に打ちのめされた状態ですから……」
   「仕事を探す意欲どころか、生きる意欲さえ湧いてこないんです……」

喪黒「それはいけませんねぇ。あなたを励ますために、私がいいものをあげましょう」

喪黒は鞄から何かを取り出す。コタツの上に置かれたのは、透明なケースに入った何かのディスクだ。

野沢「何ですか、これ?」

喪黒「特殊なDVDです。これは、自分の過去を映すDVDですよ」

野沢「自分の過去を映すDVD?」

喪黒「そうです。使ってみれば、このDVDがどのようなものか分かるでしょう。では、私はこれで……」

野沢の部屋を去る喪黒。玄関のドアが閉まる。バタンッ……。


15: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:25:26.497 ID:NHLPtn2iD

野沢(行ってしまったか……。それにしても、気味の悪い男だったな……)

喪黒から貰った名刺を見つめる野沢。名刺の裏の白地には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。

さらに、コタツに置かれた得体の知れないディスクを眺める野沢。

野沢(自分の過去を映すDVDか……。どんなものか知らないが、いっぺん見てみるか……)

コタツの上で、ノートパソコンの電源を入れる野沢。野沢の両耳のイヤホンは、ノートパソコンに接続されている。

ノートパソコンに、DVDのディスクを入れる野沢。パソコンの画面が、DVDの再生を始める。


小学校のころ、運動会の徒競走で1等賞になる野沢。中学校の修学旅行の際、客室で同級生たちと枕投げを行う野沢。

高校のころ、クラスの合唱で指揮を行う野沢。大学のころ、サークル仲間とカラオケで歌を歌う野沢。

仕事の受注に成功し、上司に褒められる新人社員の野沢。若き日の野沢と、ある女性の馴れ初め。

そして、野沢とその女性との結婚式。……野沢の人生の過去の映像が、ノートパソコンの画面に次々と映し出される。


16: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:27:15.933 ID:NHLPtn2iD

野沢(懐かしいな……。昔の俺は輝いていたな……。あのころは本当に楽しかった……)
   (俺の人生には、こんなに楽しい出来事がたくさんあったのか……)

ノートパソコンの画面のを眺める野沢。いつの間に、DVDは再生を終える。

野沢(いいものを見せて貰った……。そろそろ寝るか……)


翌朝。コタツでうずくまる野沢。

野沢(お腹がすいた……。でも、俺は金がないから、朝食を我慢するしかない……)
   (テレビは見たくない……。どうせ、晴天建設倒産のニュースをやっているかと思うと気が滅入る……)

例のDVDを手にする野沢。

野沢(そうだ……。このDVDをもう1度見よう。今度は、どんな映像が見られるんだろうか……)

コタツの上にノートパソコンを置く野沢。野沢の両耳のイヤホンが、ノートパソコンに接続される。

ノートパソコンに、DVDのディスクを入れる野沢。DVDの再生を始めるノートパソコン。


18: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:29:21.229 ID:NHLPtn2iD

小学校のころ、冬の裏山で級友と雪合戦を行う野沢。中学校のころ、友人と一緒に夏祭りに行く野沢。

高校のころ、陸上部員として国体に出場する野沢。浪人を経て大学に合格し、父親と抱き合って喜ぶ野沢。

建設を終えた建物を目にし、達成感を覚える建設会社社員・野沢。晴天建設の同僚と一緒に、居酒屋で酒を飲む野沢。

妻や子供と一緒に、仲良く道を歩く野沢。……野沢の人生の過去の映像が、ノートパソコンの画面に次々と映し出される。

野沢(そうだ、今思えばこんな過去もあったんだ……。どれも楽しい出来事だったな……)


昼。メモを持ちながら、路地裏を歩く野沢。

野沢「えーーと……。BAR『魔の巣』という店は……。ここか……」

BAR「魔の巣」に入店する野沢。カウンター席にいる喪黒。

喪黒「お待ちしていましたよ。野沢さん」

カウンター席で、喪黒の隣に腰掛ける野沢。

喪黒「ところで、野沢さん。あなた、ご飯をちゃんと食べていますか?」


20: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:31:27.755 ID:NHLPtn2iD

野沢「まあ、その……。私は金がないので、朝食を抜いて昼食だけにしました」
   「その昼食というのが、さっき、コンビニのイートインで食べたカップ麺だけなんです」

喪黒「そうですか……。あなたのために、何かおつまみでも私がおごりますよ」

カウンター席で、一緒に食事をする喪黒と野沢。

野沢「喪黒さん。昨日は本当にありがとうございました」

喪黒「野沢さん。あのDVD、どうでしたか?」

野沢「何というか、心が温まるような気持ちを味わいましたよ……」
   「私の過去の思い出……、それも楽しかった出来事が次々と映し出されたのですから……」

喪黒「それもそのはずです。あのDVDは、自分の過去の楽しかった思い出だけを映し出すものなのですよ」

野沢「なるほど……。あのDVDの映像は、失業中の私のいい癒しになりましたよ」

喪黒「よかったですねぇ、野沢さん。しかし、私はあなたにどうしても忠告しておきたいことがあります」


21: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:33:19.687 ID:NHLPtn2iD

野沢「どういうことですか?」

喪黒「楽しかった出来事を、一時的に思い出すのはいいことです。辛い時は、それが心の励みになりますから……」

野沢「は、はい……」

喪黒「しかし、大事なのは過去の思い出に溺れ過ぎず……。今をしっかり生きて、明日につなげることなのです」
   「どんなに楽しい思い出も……。のめり込み過ぎると、現実や未来が見えなくなってしまいますからねぇ」

野沢「確かに……。それは言えるかもしれませんね」

喪黒「だから、あなたには約束していただきたいことがあります」

野沢「約束!?」

喪黒「そうです。野沢さんがあのDVDを見るのは、あと1回だけにしておいてください」
   「あのDVDは、次に見終わった後はただちにディスクを処分するべきなのですよ」

野沢「わ、分かりました……」


22: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:35:16.740 ID:NHLPtn2iD

喪黒「私があのDVDを野沢さんに与えたのは、あくまでも、あなたを精神的に励ますためですから……」
   「あなたが過去の思い出に溺れて、現実逃避をするためにDVDを与えたのではありませんよ。いいですね!?」

野沢「は、はい……」


マンション。玄関に入り、部屋に戻る野沢。野沢はコタツに入り、ノートパソコンを操作する。

野沢(俺の次の就職先は……)

ノートパソコンの画面を眺める野沢。画面には、再就職情報がいくつも並んでいるが……。

野沢(何だか、胡散臭そうな再就職先ばかりだな……。どうせ、これらはブラック企業なんだろう)

さらに、再就職情報を探す野沢。

野沢(今の俺の年齢で、再び正社員になれるんだろうか……?下手すりゃ、非正規雇用になる可能性もありそうだ)

野沢の表情は、次第に憂鬱そうなものになっていく。


23: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:37:15.050 ID:NHLPtn2iD

野沢(仕方ない……。DVDをもう1度見よう……。今の俺の心を励ましてくれるのは、このDVDだけだ……)

DVDディスクを手にする野沢。野沢の両耳のイヤホンが、ノートパソコンに接続される。

ノートパソコンに、DVDディスクを入れる野沢。パソコンの画面が、DVDの再生を始める。


会社員だったころ、上司から昇進を告げられる野沢。妻と一緒に、赤ん坊だった我が子のハイハイを眺める野沢。

大学4年のころ、就職の内定が決まって喜ぶ野沢。高校のころ、球技大会で活躍する野沢。

中学のころ、卒業式で答辞を読む野沢。小学校のころ、自分が描いたポスターが県大会で入賞する野沢。

保育園児のころ、家族と一緒に誕生パーティーを行う野沢。……野沢の人生の過去の映像が、ノートパソコンの画面に次々と映し出される。

野沢(このDVDを見ていると、辛い気持ちも一時的に忘れそうだ……。何度でも見たくなる……)

そして、DVDの映像はある場面に切り替わる。


26: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:39:17.621 ID:NHLPtn2iD

とある総合病院。産婦人科のベッドに横たわる野沢の母。出産を控え、彼女の腹は大きく膨らんでいる。

彼女を見守る医者、助産師、野沢の父。一同は心配そうな表情をしている。

野沢(こ、この映像は何だ……!?)

母親は苦痛に耐えた挙句、ようやく野沢を産み落とす。病室に響く野沢の産声。

野沢(そうか……。これは、俺が産まれた日の映像なのか……)

野沢を抱きかかえる助産師。笑顔を浮かべる野沢の父母。

野沢(俺は、みんなに歓迎されてこの世に産まれてきたんだ……。あのころの俺には、無限の可能性があったんだ……)


DVDの再生を終え、デスクトップの画面になるノートパソコン。野沢の目には、次第に涙が浮かんでいく。

野沢「ウッ……、ウオオオオオオオオオオオオッ……!!!」

目から大粒の涙を流し、泣き崩れる野沢。


27: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/12/06(木) 19:43:11.910 ID:NHLPtn2iD

ある程度時間が経った後……。野沢は、例のDVDディスクを両手で真っ二つに割る。割れたディスクをゴミ箱に捨てる野沢。

部屋のバルコニーに立ち、外の景色を眺める野沢。外は、真っ赤な夕日が沈んでいこうとしている。

野沢(俺は決めたぞ……。生まれ変わったような気持ちになって、もう1度人生をやり直すんだ……)

うるんだ目で、清々しい表情をした野沢。彼の顔が、夕日に照らされている。


野沢が住むマンション前にいる喪黒。

喪黒「一人の人間の生い立ちは……。過去の出来事の積み重ねでもありますし……。それによって、現在の自分が作られています」
   「私たちが経験した出来事は、思い出として記憶に残りますし……。思い出には、楽しいものも辛いものも含まれているものです」
   「人間は、年を取るとともに過去の思い出を美化しがちですが……。いくら思い出に溺れても、過去が戻ってくることはあり得ません」
   「従って、大事なのは思い出に溺れて現実逃避するのではなく……。思い出を今日に生かし、明日へとつなげていくことなのですよ」
   「ところで、野沢さんが約束を守ったのは意外でした。果たして、彼は自らの思い出を、どんな風に明日へとつなげていくのでしょうか?」
   「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―





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