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武内P「笑顔です……変身ッ!」

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 20:52:00.03 ID:DGO9eBi1o

「はぁ……! はぁっ……!」


 走る。
 ひたすら、走る。


「っく……! はぁ……!」


 心臓が、痛い。
 足は、もうとっくに限界を超えている。


「っ……!」


 だけど、立ち止まる訳にはいかない。
 アタシ――北条加蓮――は、追われているから。



「GRRRRRUUUOOOOOOO!!」



 正体不明の……化物に。


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 21:06:45.81 ID:DGO9eBi1o

https://www.youtube.com/watch?v=X2QhlXiV9kA


「ふぅっ……! っく……!」


 走る。
 ただ、走り続ける。


「あっ!?」


 道路の、ほんの少し……本当に、ほんの少しだけの段差。
 普段だったら、意識しなくても通り過ぎてしまう程度のもの。
 走ってきた疲れからか、足が上がってなかったんだと思う。
 それに、躓く――


「ふうっ!」


 ――けど、倒れてる暇なんか、無い。
 今は、出来るだけ遠くに行かなくちゃいけないから。
 ステップを踏む要領で、躓いたのとは反対の足を前に出し、踏ん張る。
 ダンスはそんなに得意じゃないんだけど、何とか倒れずに済んだ。


「くっ……!」


 今ので、化物に距離を詰められちゃった……本当、最悪。
 そもそも、アタシってこういう風に走るの苦手なんだよね。
 体力も無いし……化物にやられる前に、倒れて死にそう。


 でも――



「GRRRRRRUUUOOOOO!!」



 ――アタシは、倒れても……死んでも、走り続ける。


「はぁ……! はぁっ……!」


 凛と奈緒から、あの化物を引き離すために。


 それこそガラじゃないって?
 うん、アタシもそう思うよ。


 アタシは、アタシが思っていた以上に友達思いだったみたい。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 21:24:58.21 ID:DGO9eBi1o

「はっ……! ふぅっ……!」


 こんな事になるなら、もっとランニングしておけば良かったな。
 なんて、思いもしたけど……わかる訳無いじゃん?
 それに、焼け石に水ってやつだったと思う。


「っ!?」


 ……あーあ、今日はツイてないなぁ。
 ダンスレッスンでは、普段はしないミスをしちゃったし。
 それを偶然、凛のプロデューサーさんに見られちゃったし。
 帰りに寄った店のポテトも、一本も食べずじまい。


「っく……!」


 極めつけは――逃げ場のない、行き止まりに迷い込んだ事。



「GRRRRRRUUUOOOOO!!」



 化物の叫び声は、すぐ後ろまで迫って来ている。
 今更、入り込んだ路地を戻る事も出来やしない。
 だからアタシは、ビルの谷間の奥へと進む事を選んだ。


「……はあっ! はっ……! はぁっ……!」


 冷たいコンクリートの壁に背中を預けると、一気に汗が吹き出してきた。
 呼吸をする度に肺は悲鳴を上げ、足はガクガクと震えている。
 アタシ、どれだけ走ったんだろう。
 なんだ……やれば、結構出来んじゃん。


「はっ……! はっ……!」


 震える手で、逃げる時からずっと手に握りしめていた携帯を操作する。
 不幸中の幸い、ってやつかな。
 逃げ出す時、思わず手に取ったのがお財布じゃなくて良かった。
 携帯だから――



「GRRRRRRUUOOOOOO!!」



 ――凛と奈緒に、最期のメッセージを残せるもんね。


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 21:39:54.37 ID:DGO9eBi1o

「はぁっ……! はっ……!」


 ホームボタンを押して、画面を起動。
 パスコードを打ち込んで、ロックを解除してLINEのグループを開く。
 通話……は、やめとこ。
 だって、



「GRRRRRRRUUUOOOOOO!!」



 最期に二人に聞かせるアタシの声が、ひどいものなのは嫌だから。


「ふっ……! はぁっ……!」


 アタシと化物の距離は、もう十メートルも無い。
 化物も、アタシにはもう逃げ場が無いとわかってるんだろう。
 唸り声を上げながら、ゆっくりとこちらに向かってきている。
 どうせだったら、追う時もそのスピードだったら良かったのに。


「はぁ……はぁ……」


 左手で、汗でおでこに張り付いた前髪を整える。
 こんな時に何をと思われるかも知れないけど、気になるんだもん。


「はぁ……はぁ……」


 打ち間違わないよう、ゆっくりと指を動かす。
 どんなメッセージにしよう……なんて、迷ったりはしない。
 二人に、最期に言いたい事。



 ――ありがと。



 これで、オッケー。



「GRRRRRRUUUUOOOOOO!!」



 ありがとう、じゃないのは……なんか、らしくないじゃん?
 アタシは、最期までアタシで在り続けたい。


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 21:58:44.90 ID:DGO9eBi1o

「はぁ……はぁ……」


 化物が、もうすぐそこまで来ている。
 飛びかかられたら、アタシは終わる。
 両手の鋭い爪か、それとも、大きく裂けた口に並ぶ牙かわからないけど。


「GRRRRRRR……!」


 あんまり怖くないのが、不思議かな。
 怖くない訳じゃないんだけど、それよりも、達成感の方が強い。


 だって、凛と奈緒を逃がす事が出来たから。


 出来ることなら、あの二人と一緒にアイドルを続けたかった。
 ううん、別に、アイドルって形じゃなくたって良い。
 そりゃ、アイドルに越したことは無いけど……って、何言ってんだろ、アタシ。


「……じゃあね」


 アタシは、ゆっくりと目を閉じた。



「GRRRRRRRUUUUOOOOO!!」



 一際大きな咆哮が、路地裏に響く。




「――待ってください」




 低い……低い、声。
 アタシは、この声の主を知っている。
 背が高くて、無表情で、よく見ると後頭部に寝癖がある。



「アイドルの方に、手を触れないでください」



 凛の――シンデレラプロジェクトの、プロデューサー。


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 22:13:13.58 ID:DGO9eBi1o

「えっ……?」


 どうして? なんで?
 頭の中で、疑問が次々に浮かび上がる。


 アナタは、どうしてそんなにいつも通りでいるの?


 それに、



「「加蓮っ!!」」



 なんで、凛と奈緒も其処に居るの!?



「GRRRRRRRUUUOOOOOO!!」



 馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿っ!
 アタシが、どれだけ頑張ったと思ってるの!
 二人のために、どれだけ必死で走ったと思ってるの!


「っ……!」


 なのに、意味無いじゃん!
 意味、無くなっちゃうじゃん!



「北条さん」



 低い声が、アタシに届いてくる。



「貴女の頑張りは、決して無駄にはしません」



 黒いスーツの上着が翻ると、その腰元では、
大きな銀色のベルトが、輝きを放っていた。


9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 22:33:03.29 ID:DGO9eBi1o

「北条さん」


 プロデューサーは、右のポケットからスマートフォンを取り出した。
 ホームボタンを素早く三回押し、画面を起動。
 画面を見ず、流れるように暗証番号をに打ち込んでいく。



 ――3――4――6!



「笑顔です」



『LIVE――』



 スマートフォンから、女の人の声が二人分聞こえた。
 そして、スマートフォンを銀色のベルトにかざし、



「変身ッ!」



 言った。



『――START!』



 プロデューサーの大きな体を光が包み込んでいく。
 光の粒子は、形を成していき――鈍く輝く、鎧を纏わせた。


「……」


 鎧は黒を基調としたもので、所々白い箇所がある……スーツみたいな感じ。
 全身を覆う鎧の胸元では、ピンク、ブルー、イエローの宝石が輝いている。
 頭は、目つきの悪いぴにゃこら太のフルフェイスに覆われている。
 だけど、



「仮面ライダー……プロデュース」



 その仮面の下は……きっと、いつもの無表情なんじゃないかな。


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 22:56:39.92 ID:DGO9eBi1o

「GRRRRRUUUOOOOOO!!」


 化物は、変身したプロデューサーに勢い良く飛びかかった。
 両腕を広げ、その口を大きく広げた怪物は、


「善処します!」


 振り上げられたプロデューサーの右拳によって軌道を変えられ、


「GYAAAAAAOOOO!?」


 遙か後方へと、撥ね飛ばされるように吹き飛んだ。


「「加蓮っ!」」


 凛と奈緒が、アタシに駆け寄ってくる。
 その表情はとても必死で、今まで見たことがないもの。
 それが……おかしくて、嬉しくて。
 アタシは、その場にへたり込んだ。


「大丈夫!? 怪我、してない!?」
「馬鹿! なんで囮になるような真似したんだよ!」


 二人同時に質問されたって、答えられる訳ないじゃん?
 でも、アタシは……とりあえず、やる事があるから。


「……」


 凛と奈緒に詰め寄られながら、携帯を操作する。
 既読は……よし、ついてない。
 メッセージ削除、っと。


「「っ!」」


 凛と奈緒に、抱き締められた。
 だから、アタシもお返しに質問をする事にした。


「アタシ達、汗臭くない?」


 二人の肩が震えているのは、きっと泣いているから。
 あー……制服、グショグショになってるよね、これ。


11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 23:15:11.02 ID:DGO9eBi1o

「GRRRRRUUUOOOOOOO!!」


 化物の咆哮が、アタシの鼓膜をビリビリと震わせる。
 思わず、凛と奈緒を抱き締め返す腕に力が入る。
 今になって、ようやく恐怖が湧き上がってきたのかも。
 でも、きっと……もう、大丈夫。



「……」



 怪物とアタシ達の間には――あの人が、立っているから。


「……すみません、あまり大声を出さないで頂けますか?」


 右手を首筋にやりながら、プロデューサーは言った。
 あの人が困った時にする、いつもの癖。
 たまに、凛が真似して、アタシ達はそれで笑ったりしてる。
 あ、本人には内緒だけどね?



「アイドルの方の笑顔が、強張ってしまいますから」



 …………。


「……ぷっ!」


 理由が、それ?
 何それ、今みたいな状況でも……笑顔なの?


「ちょっ、ちょっと加蓮!?」
「わ、笑うこと無いだろ!?」
「だ、だって……ふ、ふふふふっ!」


 笑える状況じゃないのに、笑いが止まらない。


「か、加蓮、ちょっと……ふ、ふふっ!」
「おい! り、凛まで……は、はははっ!」


 ついさっきまで、こうやって三人で笑うことは無いって思ってたけど。
 こんなにもすぐに、笑い合う機会が来るなんて。


12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/08(土) 23:33:00.78 ID:DGO9eBi1o

https://www.youtube.com/watch?v=SkAyJDA7idI



「皆さん――」


 プロデューサーが、こちらを振り返った。
 右手は未だ、首筋に当てられている。
 でも、ごめん。
 何か、止まらなくなっちゃったんだよね。



「――良い、笑顔です」



 首筋に当てられていた右手が、振り下ろされた。



『Triad Primus!!!』



 黒い鎧が、その形を変えていく。
 スライドした装甲の下は、ブルーに輝いている。
 その輝きは、まるで地の様に鎧を縁取り、白い箇所もブルーに染めていく。
 胸に輝いていた三つの宝石は、全てブルーに。



「GRRRRUUUOOOOOOO!!」



 背中を向けて、無防備なプロデューサーに怪物が再度飛びかかった。
 その速度は、最初の時よりも明らかに速い。
 怪物が繰り出した、右の巨大な爪で突き刺そうとする突進は、



「すみません、身だしなみを整えていました」



 ブルーの光を纏う左足に、難なく受け止められた。


13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 00:00:00.35 ID:DGO9eBi1o

「GURRR……OOO……!!」
「……」


 怪物が押しても、プロデューサーはその場から全く動かない。
 両腕の筋肉が大きく膨れ上がっているのに、ビクともしない。
 片足で立ってるあの人の方が不安定な筈なのに。


「GRRRROOOOOO!!」


 しびれを切らしたのか、怪物は反対の――左の腕を振り下ろした。


「……」


 しかし、プロデューサーはそれを躱し、


「ハアッ!!」


 左足を滑らせ、がら空きになった怪物の頭部へキックを放った!


「GGYUUUOOOOAAAAA!?」


 完全に予想外の反撃だったのか、怪物は大きくのけぞる。


「企画――」


 ブルーの光を纏う左足を地面に……まるで、靴を履く時のように、トントンと、二回。
 すると、左足を包んでいたブルーの光が、一際大きな輝きを放った。
 そして、プロデューサーは、離れた距離を一気に詰め、


「――進行中です!!」


 ブルーの光の軌跡を描きながら、


「GYU!? OOO!? GYUAA!?」


 何発も、何通りもの、


「おおおおおおおっ!!」


 左のキックを怪物に叩き込んでいく!


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 00:31:26.57 ID:gatLc7Fho

「はあっ!!」
「GRUUUOOOOOOAAAAA!?」


 振り上げられた左のキックで、怪物は空へと跳ね上げられた。



『Trinity Field!!!』



 そして、ブルーの光がその体を空中で縫い止める。
 光に包まれた怪物は、身動き一つ取れないようだ。


「……」


 プロデューサーは、腰を低く落とした。
 左足を纏っているブルーの光が、鮮やかな波紋となって周囲を照らす。



『Trancing Pulse!!!』



「せめて!」


 掛け声と共に、プロデューサーは空へと跳び上がった。
 鮮やかなブルーの波紋は螺旋になり、怪物を貫いた。
 大きな穴を開けられた怪物の体は、光の粒子になって消えていく。


「……名刺だけでも」


『LIVE SUCCESS!!』


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 00:51:40.13 ID:gatLc7Fho

https://www.youtube.com/watch?v=K8GG7Uu7cyg


  ・  ・  ・

「――ねえ、わからない事があるんだけど」


 いつものファストフード店。
 ……って言うか、ポテトを咥えた同時に言われても、困るんだけど。


「あたしも聞こうと思ってた事があるんだ」


 奈緒まで。
 何? 二人して、そんな変な顔して。


「あの時、どうして携帯いじってたの」
「そう、それ! そんな状況じゃなかっただろ!?」


 あの時。
 怪物……いや――怪人に襲われてた時。
 確かに、二人からすれば、変に思って当然だよね。
 でも、あのメッセージを見られてたら、


「そうだね、奈緒の鼻水が服について大変だったもん」


 こんな風に、


「んなあっ!? しょっ、しょうがないだろ!?」


 いつも通りに、


「……確かに、加蓮の服ベトベトになってたね」
「おぉい、凛!?」



 笑顔になれるか、わからないでしょ?



「――ふふっ!」



 ……なんて、照れ臭いだけなんだけど、ね。




おわり


17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/12/09(日) 00:52:47.54 ID:gatLc7Fho

こんな感じのヒーロー物が、色んな作者によって書かれたら楽しいと思うのです





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603. YOMICOMER2018年12月09日(日) 08:55 ▼このコメントに返信
PCSとポジパとニュージェネフォームで1本ずつ書くんだよあくしろよ(何様)
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