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【ぼく勉】 成幸 「あの日、この境内で」

741: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:12:58 ID:./mOxEco

………………夕方 図書館

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

カリカリカリ……

成幸 「んっ……。もうこんな時間か」

成幸 「先輩、そろそろ帰りませんか? 日が暮れちゃいますよ」

あすみ 「ん? ああ、いつの間にか夕焼けだな。時間経つのはえーなー」

成幸 「それだけ集中できてるってことですね。いいことです」

あすみ 「あんまり問題が解けてないのがアレだけどな。はぁ……」

成幸 「焦っても仕方ないですよ。ちゃんと理科系科目の苦手潰しは進んでるんですから」

あすみ 「……ま、そうだな。今日もありがとよ、センセ」

あすみ 「じゃ、まぁ、帰るとするか」

成幸 「はい! 暗くなるといけないですから、送っていきますよ、先輩」

あすみ 「ん……」 プイッ 「じゃあ、ま、お願いするわ」


742: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:13:54 ID:./mOxEco

………………帰路

成幸 「……なので、その値は無視できます。測定結果に影響を与えない微量ですから」

あすみ 「んあー、そうか。いちいち有効数字で考えないといけないか……」

成幸 「加算と乗算ではそのあたりも意味合いが変わってきますから、」

成幸 「常識の範囲内で、その数字が計算に必要かどうかを判断するといいと思いますよ」

あすみ 「ん、頭に留めとくわ」

あすみ 「ん……?」

成幸 「あ、神社……ここって……」

あすみ 「?」

成幸 「……この神社、なつかしいな。」

あすみ 「なつかしい? この辺、昔来たことあるのか?」

成幸 「……まぁ、そうですね。最近はあまり寄ることもなかったですけど」


743: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:15:46 ID:./mOxEco

あすみ 「ふーん、そっか。偶然だな。アタシも昔はよくここに来てたよ」

成幸 「先輩もですか?」

あすみ 「うちから一番近い神社だからな。それに、思い出の場所でもあるから……」

成幸 「思い出……?」

あすみ 「あ、いや、なんでもねーよ。そんな大した話じゃねーし」

成幸 「そうですか。いや、実は俺もこの神社には思い出……というよりは、思い入れがあるんですよ」

あすみ 「……? 後輩?」

成幸 「……すみません、先輩。少し寄っていってもいいですか?」

成幸 「久しぶりにお参りをしていきたいんです」

あすみ 「……ん、わかった。ついでだ。アタシもお参りしてくとすっかな」


744: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:17:46 ID:./mOxEco

………………神社

チャリンチャリン……パンパン

成幸 「………………」

あすみ 「………………」

チラッ

あすみ (……熱心な顔してまぁ。何をお願いしてるんだか)

あすみ (まぁ、受験生なんだから、当然志望校への合格とかだろうけどな)

成幸 「………………」

パチッ

成幸 「……お待たせしました、先輩」

あすみ 「いやいや、べつに待っちゃいねーよ。何をお願いしてたんだ?」

成幸 「お願いはしてないです。ただ、ありがとうございました、って」

あすみ 「?」

成幸 「あ、いや……」 アセアセ 「すみません、わけ分かんないですよね」

成幸 「大したことじゃないんです。忘れてください」


745: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:18:21 ID:./mOxEco

あすみ 「意味深なことばっか言いやがって。気になるだろ」

あすみ 「……お前がいいなら、教えてくれよ。この神社にどんな思い入れがあるんだ?」

成幸 「あ、えっと……」

成幸 「……ほんとに、大した話じゃないですよ? それに、楽しくもない話だし……」

あすみ 「アタシが気になるから聞いてんだ。もしお前がいいってんなら、」

あすみ 「受験勉強の息抜きだ。ここで少し話してくれよ。お前の昔の話をさ」

ニィ

あすみ 「やっぱりカノジョとしては、気になるだろ? カレシの昔の話なんて」

成幸 「もう、先輩は……」

ハァ

成幸 「……分かりました。じゃあ、話します。あれは、もう五年以上前のことかな」

成幸 「中学に上がってすぐくらいの連休に、高熱を出したんです」

………………………………

………………


746: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:18:56 ID:./mOxEco

………………五年前 春 深夜

水希 「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」

成幸 「あ……ああ、水希……ゴホッ、ゴホッ……」

成幸 「うつるといけないから、離れてなさい……ゴホッ……」

水希 「お母さん! お兄ちゃんすごく辛そうだよ! 熱も全然下がらないし……」

水希 「40度越えてるんだよ!」

花枝 「分かってるわよ。でも、救急車は全部出払っているって言うし、かかりつけのお医者さんもお留守だし……」

花枝 「救急センターの人も、近隣で開いてる病院はないって言うし……」

成幸 「ゲホッ……ゴホッ……」 ゼェゼェゼェ…… 「ごめん、母さん……」

成幸 「父さんがいない、から……俺が、しっかりしてなきゃいけない、のに……」

花枝 「っ……」

花枝 (……そう。あの人はもういない。子どもを守れるのは、私だけ)

花枝 「……水希」

水希 「? 何?」


747: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:19:30 ID:./mOxEco

花枝 「もう五年生よね? ひとりでお留守番できる?」

花枝 「ひとりでお兄ちゃんのこと看ていてあげられる?」

水希 「え……? それは、大丈夫だけど……お母さんは?」

花枝 「私は……」

スッ……スッ……」

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

花枝 「葉月と和樹を連れて、人がいる病院を探してみるわ」

花枝 「閉院していても、人がいれば開けてくれるかもしれないから」

水希 「お母さん……」

花枝 「大丈夫よ、水希。つらい思いをさせてごめんなさいね。お兄ちゃんのことよろしくね」

水希 「………………」 コクッ 「うん! 大丈夫! お兄ちゃんのことちゃんと看てるから!」

水希 「お母さん、気をつけてね。何かあったらすぐ戻ってきてね」

花枝 「ええ。それじゃ、いってくるわ。戸締まりをしっかりね」


748: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:20:05 ID:./mOxEco

………………

ドンドンドン

花枝 「……すみません! どなたかいらっしゃいませんか!」

シーン

花枝 「っ……」

花枝 (……これで五軒目。連休中だからでしょうけど、どこもお留守だわ)

花枝 (まだまだ。何軒回ってでも、お医者さんを探さなくちゃ……)

花枝 (水希が待ってる。成幸がつらい思いをしている。それなら、私がへばってる場合じゃない……)

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

花枝 「……ふふ、あんたたちは良い子ね、葉月、和樹」

花枝 「あんたたちが寝てくれているだけで助かるわ。ありがとう」


749: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:20:46 ID:./mOxEco

………………数時間後

花枝 「………………」

ゼェ、ゼェ、ゼェ……

花枝 (小さな、個人経営の病院……)

花枝 (灯りは、ついていない……)

花枝 (お願い。誰か、いて……)

ドンドンドン

花枝 「夜分にすみません! どなたかいらっしゃいませんか!」

花枝 「………………」

花枝 「っ……」 グスッ 「っ……ふぐっ……うっ……」

花枝 (……どうしよう。どうしたらいいの?)

トボトボトボ……

花枝 (もし、成幸にもしものことがあったら、私は……)

花枝 (とにかく、一度家に戻って、なんとか……――)

――――――カランカラン……


750: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:21:28 ID:./mOxEco

花枝 「へ……?」

花枝 「神社……?」 (いつの間に、こんなところに……?)

花枝 (神社、か……)

花枝 「………………」

パンパン!!!

花枝 「……お願いします! 神様! 助けてください!」

花枝 「お願いします! お願い! お願い……」

花枝 「……お願い、だから……――」



   「――……どうかしたかね?」



花枝 「へ……?」

?? 「こんな夜更けに抱っこひもひとつで小さなお子さんと一緒に歩き回っているとは……」

?? 「何か事情がおありのようだ。私は医者だ。もし力を貸せることがあれば、何なりと言ってほしい」

花枝 「あっ……あの! た……助けてください!」


751: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:22:42 ID:./mOxEco

………………現在

成幸 「……とまぁ、そんな風に、この神社でお医者さんと出会ったんだそうです」

成幸 「それ以来、母さんに連れられて、この神社にお参りすること何度かあったんですよ」

あすみ 「………………」

あすみ 「……えっ、いや、まさか、いや、いやいや……」

成幸 「? 先輩?」

あすみ 「へっ!? あ、すまん。なんでもない……」

あすみ 「にしても、ドラマみたいなことがあるもんだな」

成幸 「俺も母さんから話を聞いただけだからどこまでほんとか分かりませんけどね」

成幸 「まぁ、この神社でそのお医者さんと出会ったのは本当にただの偶然でしょうけど、」

成幸 「でも、母さんにしてみたら、この神社の神様がそのお医者さんと巡り合わせてくれたと思うでしょうね」

あすみ 「……まぁ、だろうな」

あすみ (……五年前の春。アタシも、そんな話を聞いた事がある)

あすみ (他でもない、アタシの親父から。ここで、急患と出会ったと)


752: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:23:25 ID:./mOxEco

………………五年前

あすみ 「……ったく、親父帰ってくるのおせーなー」

あすみ 「飯作っとけって言ったなら、せめて時間通りに帰ってこいっての」

ドタバタドタバタ……

あすみ 「ん、帰ってきたか。おい、おせーぞ、親父――」

小美浪父 「あすみ、急患だ。悪いが、診療所を開けてくれ。それから入院用のベッドの準備も頼む」

あすみ 「はぁ!? この時間からか!?」

あすみ 「っていうかあんた、今時間外の往診行ってきたばっかだろうが!」

小美浪父 「急患を見つけてしまったのだから仕方ないだろう。いいから早くしろ」

小美浪父 「重度の肺炎だ。命に関わる可能性もある」

小美浪父 「奥さん、とりあえずこの毛布の上に寝かせてあげてください」

花枝 「は、はい」

成幸 「……ゴホッ……ゲホッ……」


753: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:23:59 ID:./mOxEco

あすみ 「っ……」 (本当に辛そうだ。ありゃ高熱が出てるな)

あすみ (その上呼吸も満足にできないんじゃきついだろうな)

あすみ (……ったく。お節介な親父だな)

あすみ 「親父、院内処方用の新しい抗生物質、まだ倉庫から出してねーから後で持ってくる」

あすみ 「解熱剤はいつものとこに入ってる」

小美浪父 「む、分かった」

あすみ 「あと、ストレッチャーと点滴カートも用意するけど、他なんかいるか?」

小美浪父 「今はそれだけでいい。もう寝る時間だというのに、いつもすまんな、あすみ」

あすみ 「ほんとにいつものことだから気にしなくていいよ。小遣いさえ弾んでくれればな」

タタタタタ……

あすみ (……ま、文句垂れつつも親父の手伝いしちまうアタシも、相当アレだけどな)


754: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:24:54 ID:./mOxEco

………………

あすみ 「……ふー」 (……さすがにこの時間にドタバタ走り回ると疲れるな)

小美浪父 「奥さん、もう大丈夫ですよ。熱が下がり始めています」

小美浪父 「抗生物質も点滴で投与しましたから、すぐによくなりますよ」

花江 「あっ……ありがとうございます!」

成幸 「………………」 Zzzz……

花江 「よかった……」 ポロポロポロ 「本当に、よかった……っ」

花江 「なんてお礼を言ったらいいか……」

小美浪父 「そんなことは気にしなくていい。奥さんも夜の街を走り回って疲れだろう」

小美浪父 「患者の容態は安定しているから、大丈夫。心配でも隣のベッドで休んでいなさい」

花江 「すみません……。あ、でも、娘たちが……」

あすみ 「ああ、一緒についてきた女の子と双子ちゃんたちですか?」

あすみ 「それならアタシが見ときますし、隣の部屋で寝かせますよ」

小美浪父 「ああ、すまんな。頼むぞ、あすみ」


755: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:25:43 ID:./mOxEco

………………廊下

水希 「………………」

あすみ 「よっ」

水希 「……!? び、病院の方!」 ガバッ 「あの、お兄ちゃんは!?」

あすみ 「ん、もう大丈夫だよ。解熱剤で熱も下がり始めたし、抗生物質も打った。問題ないよ」

あすみ 「でも、肺炎のウイルスは子どもにうつりやすいから、今は病室に入らない方がいい」

水希 「……はい」

あすみ 「ん。心配だろうけど、我慢できて偉いな。よしよし」 ナデナデ

葉月&和樹 「「………………」」 Zzzz……

あすみ 「……この子たちも良い子たちだな。あれだけ騒いでるのに眠りっぱなしだ」

水希 「……はい。本当に。助かってます」

あすみ 「お前も疲れただろ? 隣の部屋のベッド用意しておいたから、寝ろよ」

あすみ 「そのおチビちゃんたちはアタシが見てるからさ」


756: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:26:16 ID:./mOxEco

水希 「………………」

水希 「……いえ、帰ります」

あすみ 「お、おいおい。もう深夜だぞ? さすがにお前たちだけで帰せねーよ」

水希 「……だって、」

水希 「お兄ちゃんの治療費だって出せるか、わからないのに……」

水希 「その上、入院費用とか、わたしたちの宿泊費用なんて……」

水希 「……そんなの、払えるわけないもん」 グスッ

あすみ 「……あー、なるほど」

あすみ 「あんまり裕福じゃないのか、家?」

水希 「……お父さん、死んじゃった、から……」

あすみ 「そっか……。大変なんだな」

あすみ 「……でも、大丈夫。その点は心配いらねーよ」

あすみ 「大変遺憾なことに、うちの親父は、経営のセンスがゼロだからさ」

水希 「……?」


757: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:26:51 ID:./mOxEco

………………翌日

コンコン

小美浪父 「……? どうぞ」

花江 「失礼します……。すみません、お仕事中に」

小美浪父 「構いませんよ。どうかしたかな?」

花江 「あの、その……お世話になっておいて、大変厚かましいというか、恥ずかしいことなのですが……」

花江 「実は、その、あまり……家に、お金がなくてですね……」

花江 「もちろん、お題はお支払いします。入院費も、私や娘たちの宿泊費も含めて」

花江 「……ですが、その、支払いを待っていただくことは、できないでしょうか?」

花江 「割賦にしていただけると、助かるのですが……」

小美浪父 「………………」

花江 「……っ」

小美浪父 「……あっ、しまった! あー、やらかしてしまったなー。困ったぞー、これは」

花江 「えっ……?」


758: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:27:33 ID:./mOxEco

小美浪父 「私はあなたに、息子さんの健康保険証の提示を求めるのを忘れておりました」

花江 「へ? あ、保険証ならここに……――」

小美浪父 「いやいや、医師法によって、保険証の提示は治療前に求めなければならないと規定されているんですよ」

花江 「え? えっと……」

小美浪父 「いやー、しまった。院内処方の薬も、健康保険なしでやってしまったなー」

小美浪父 「あー、これは明確な医師法、薬事法違反だ。まずいぞー。これはー」

小美浪父 「……そこで、奥さん、ひとつ相談なんですがね」

花江 「……?」

小美浪父 「このままでは私は、医者としてしてはいけないことをしてしまったことになる」

小美浪父 「なので、息子さんの診療記録や入院記録、そして娘さんたちの宿泊の記録もつけないことにする」

小美浪父 「……記録がないなら、お金も取りようがないですね?」

花江 「え……?」

小美浪父 「……と、いうことで、ご相談だ。今回の診療、なかったことにしてくれますね?」


759: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:28:45 ID:./mOxEco

………………ドアの外

あすみ 「……な? うちの親父、経営のセンスゼロだろ?」

水希 「………………」

あすみ 「……?」

水希 「っ……ひぐっ……」 ポタッ…… 「ふ……ぐっ……」 ポタポタポタ……

あすみ 「!? お、おいおい、妹ちゃんよ、何も泣くことはねーだろ」

水希 「……ありがとう……ありがとう、ございます……!」

あすみ 「よーしよし。泣くの我慢しなくていいぞー」 ギュッ 「お前もがんばってんだなー」

あすみ 「小さい弟妹がいるから、気抜けないんだよな。その上、お父さんもいないんだもんな」

あすみ 「それで大好きなお兄ちゃんが倒れちまって、怖かったんだよな」

あすみ 「今はアタシがいるから、たくさん泣いていいぞー」 ナデナデナデ

水希 「ひぐっ……うぇ……うぇええええええええええええええん!!」

あすみ 「よしよーし。がんばったなー。えらいなー。大丈夫だぞー」

あすみ (……ったく。またロハで仕事しやがって親父の奴) クスッ

あすみ (ま、でも……そんな親父だからこそ、アタシも……医者になりたいって思うんだけどさ)


760: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:29:55 ID:./mOxEco

………………現在

成幸 「……実際、病院ではそんな感じだったみたいですよ?」

成幸 「って言っても、やっぱり俺は熱のせいであんまり覚えてないんですけどね」

あすみ 「………………」

あすみ (……あー、うん。まさかあのときの急患が後輩だったとは)

あすみ (そういやあんとき肺炎になってた子ども、よく思い出してみるとこいつそっくりだな)

あすみ (……あのとき、本当に感謝してくれる妹ちゃんとお母さんを見て、)

あすみ (医者になりたいと強く決心することができた。アタシにとっても、この神社の巡り合わせは大切な思い出だ)

成幸 「俺はそのお医者さんたちにまだ会ったことないんですよ」

成幸 「でもいつか、俺がお金を稼げるようになったら、お礼をしにいくつもりです」

成幸 「会って、直接、お礼を言いたいし、ちゃんと治療費も払いたいですから」

あすみ 「………………」

クスッ

あすみ 「……だな。いつか、会ってお礼が言えるといいな、後輩」

成幸 「はい!」


761: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:30:32 ID:./mOxEco

………………小美浪診療所

コンコンコン

小美浪父 「? どうぞ?」

花江 「失礼します。お久しぶりです、先生」

小美浪父 「……またあんたか。何度来れば気が済むんですか?」

花江 「何度来ても変わりませんよ。先生がお金を受け取ってくれるまでは」

小美浪父 「何度も言うがね、私はあの日の診療記録も何も持ってない」

小美浪父 「健康保険の診療記憶にも残っていないはずだ」

小美浪父 「だから、奥さんからお金をもらうことはできないんだよ」

花江 「分かってます。だから、三割負担でなく、十割負担の金額を用意してあるんです」 ニコッ

小美浪父 「いや、だから、そういうことじゃなくてだね……」

花江 「ま、いいです。受け取ってくれるのはいつでも」

花江 「今日は普通に診療してもらおうと思って来たんです。来る途中でちょっとこけちゃって……」

小美浪父 「む、それはいけない。さっそく治療を……」


762: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 00:31:42 ID:./mOxEco

花江 「その前に、はい、健康保険証。またお代を払えなかったらたまったもんじゃないですからね」

小美浪父 「……奥さん、あんたは私を何だと思ってるんだ?」

小美浪父 「……ん? んんん???」

花枝 「? どうかされました?」

小美浪父 「…… “唯我” ? 唯我さん、とおっしゃるのか」

花枝 「……あれ? 名乗ってませんでしたっけ?」

小美浪父 「……唯我、成幸、くん。ああ、そうか。なるほど。あのときの子が……」

花枝 「? 先生?」

小美浪父 「……奥さん。いや、唯我さん。ひとつだけお願いがあるんだが、」

花枝 「何ですか?」

小美浪父 「……うちの娘を、息子さんの嫁にもらってやってくれないだろうか?」

花枝 「!?」 キラン 「その話、詳しくお聞かせ願えます!?」

おわり

次回! 暴走する小美浪家の父! 唯我家の母!
唯我家・小美浪家、結納編突入!
うそです。





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