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【ぼく勉】 文乃 「手に入れたかったのなら」

770: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:36:17 ID:./mOxEco

………………問94直後

文乃 「……はぁ」


―――― 『わーっ 大っきいドハっちゃん!』

―――― 『じゃあ 古橋にやるよ』

―――― 『ええっ!! いいの!? ありがとー!!』

―――― ((また…… 成幸くんからプレゼント……)) ぎゅ……

―――― 『そんなに…… 好きなのか?』

―――― 『ぜ……ッ 全然っ ちがいますけどっ!!!』

―――― 『じゃあさ…… ぶしつけで悪いんだが…… アタシがもらっても……いいか?』


文乃 (あの大っきいドハっちゃん、本当だったらわたしがもらっていたのにな……)

モヤモヤモヤモヤ

文乃 (……一回、わたしにくれたのに)

文乃 (成幸くんの、バカっ……)


771: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:37:28 ID:./mOxEco

文乃 「………………」

文乃 (……なんて、ね)

文乃 (あれは元々成幸くんのもので、誰にあげるかを決めるのは成幸くんだもんね)

文乃 (小美浪先輩は、ドハっちゃんが大好きなんだもんね)

文乃 (そんな先輩に、ドハっちゃんをあげるのが、自然だよね……)

文乃 (そう。それでいい。それでいいはずなんだ)

文乃 (本当に好きな人が、好きなものを手に入れた方がいいに決まってる)

文乃 (手に入れたいのなら、欲しいと思わなくちゃいけない……)

文乃 (だから……)


―――― ((うん 大丈夫 絶対ない))

―――― ((絶対好きになんてなるはずがない 友達が 好きな人のこと))

―――― 『もー先輩…… そんなに好きなら最初から素直に言ってくれればいいのに……』


文乃 「っ……」 ズキッ


772: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:38:00 ID:./mOxEco

………………翌日 一ノ瀬学園

うるか 「でね! 例の友達がね、やっぱりあきらめたくないって!」

うるか 「本気で、一番を取りたい……本当に、成ゆ――男の子の一番になりたいんだって」

うるか 「そのために、がんばる。本気で、一番になる。ずっと、自分のことを見ていてもらいたいから!」

うるか 「えへへ、それで、文乃っちにお礼を言ってほしいって言ってたから、代わりに言うね?」

うるか 「ありがとう、文乃っち!」

文乃 「……うん。どういたしまして。そのお友達によろしくね」

文乃 (ふふ、相変わらずバレバレだけど、可愛いなぁうるかちゃん)

文乃 (とうとう、気持ちを固めたんだね)

文乃 (成幸くんの一番になるって、決めたんだね)

文乃 (そっか……)

うるか 「ん、もうこんな時間! 今日は部活に顔出す約束だからもう行くね!」

うるか 「じゃーねー、文乃っち!」

文乃 「うん。練習がんばってね。また明日、うるかちゃん」

文乃 「………………」 ハァ 「……今日は勉強会の約束もないし、帰ろっかな」


773: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:38:31 ID:./mOxEco

理珠 「おや、文乃ではないですか」

文乃 「あ、りっちゃん。今帰り?」

理珠 「はい。今日はお店のお手伝いなので」

文乃 「そっか。じゃあまっすぐ帰らないとだね」

文乃 「………………」

文乃 「……もしよかったら、わたしも一緒に帰ってもいいかな」

文乃 「久々にりっちゃんの家でうどんが食べたいな、って」

理珠 「本当ですか。嬉しいです」 フンスフンス 「一緒に行きましょう!」

文乃 「うん!」

文乃 (なんか昨日からモヤモヤして落ち着かないけど!)

文乃 (りっちゃん家のおうどん何杯か食べればきっと落ち着くよね!)


774: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:39:02 ID:./mOxEco

………………帰路

理珠 「ふむふむふむ……」

ペラ……ペラ……

文乃 「もー、りっちゃん。歩きながら参考書読んだら危ないよ」

文乃 「成幸くんじゃないんだから……」

理珠 「……あっ、すみません、つい」

理珠 「たしかに今のは、成幸さんみたいでしたね……」

文乃 「まったくもう。りっちゃんは成幸くんに影響受けすぎだよ」

文乃 「ほんとに……」

文乃 (……ほんとに、成幸くんのこと、大好きなんだね、りっちゃん)

理珠 「………………」

理珠 「……そう、ですね」 クスッ 「春に出会って、まだ半年ほどしか経っていないのに、」

理珠 「成幸さんに、どれだけお世話になってるか。だから、つい真似もしてしまいます」

文乃 (あれ……? 少し怒るかと思ったけど……)

文乃 (りっちゃん、なんか嬉しそうだな……)


775: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:39:39 ID:./mOxEco

文乃 「……りっちゃんは、さ」

理珠 「? はい?」

文乃 「成幸くんのこと、どう思ってるの?」

理珠 「へ……?」

理珠 「………………」

理珠 「そうですね……。ときどきヘンなことをしますし、むっつりさんですけど……」

理珠 「尊敬していますよ。成幸さんのこと」

文乃 「そっか……。うん、そうだよね」

ニコッ

文乃 「成幸くん、良い人だもんね」

理珠 「はいっ!」

文乃 (……そっか。そうだよね。りっちゃんは、少なくとも、こうやって素直に言うことはできるもんね)

文乃 (今はまだ、恋心がどういうものか分かっていなくて、成幸くんへの感情を掴んでいないだけで、)

文乃 (きっと、りっちゃんが恋を知ったら、すぐに成幸くんにアプローチし始めるだろうな)

文乃 (……それこそ、うるかちゃんよりも積極的なくらい)


776: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:40:23 ID:./mOxEco

? 「ん? おお、古橋と緒方じゃないか」

文乃 「へっ? 成幸くん!?」

理珠 「小美浪先輩も一緒ですか。こんにちは」

あすみ 「おう。今から一緒にバイトなんだ」

成幸 「ま、今日は勉強メインの日ですけどね」

文乃 (先輩と成幸くん、仲よさそう……)

文乃 (でもまぁ、このふたりはきっと、ただの先輩後輩ってだけの関係だよね)

文乃 (先輩みたいなオトナっぽい性格の人が、成幸くんみたいな男の子に本気になるわけないし)


―――― 『いや? けっこーいいと思ってっけど? カワイーじゃんそいつ』

―――― 『ま ウソだけど』


文乃 (恋人のフリも、お父さんを誤魔化すためのものだって言うしね)

文乃 (先輩はただ成幸くんをからかって遊んでるだけだろうし)


777: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:41:03 ID:./mOxEco

成幸 「古橋と緒方も今から一緒に勉強か?」

理珠 「はい! お店のお手伝いをしながらうどんを食べながら勉強します!」

あすみ 「忙しそうな勉強会だな……」

ポヨン……

文乃 「ん……あっ……!」

あすみ 「ん?」

文乃 「そ、そのバッグについてるドハっちゃん、かわいい~! ちっちゃーい!」

あすみ 「おお、このちっちゃいやつか。へへ、いいだろ」

文乃 「これ、どこで売ってるんですか? こんなの持ってる人初めて見ましたよ」

あすみ 「ん……えっと、まぁ、その、なんだ……」

カァアアアア……

あすみ 「……後輩が、作ってくれたんだよ」

文乃 「え……?」

文乃 (作った? 成幸くんが? 手作り?)


778: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:41:43 ID:./mOxEco

文乃 (いや、いやいやいや、そんなことより……)

あすみ 「……///」

文乃 (何その可愛い照れ顔はーーーーー!?)

成幸 「ほら、前、一度お前に渡した大きいドハっちゃんぬいぐるみがあっただろ?」

成幸 「色々あって、あれがなくなっちゃって、先輩が残念そうだったからさ」

成幸 「作ってあげたんだ。小さくてブチャイクになっちゃったけど……」

理珠 「ほうほう。ドハっちゃん……。クラスメイトがハマってると言っていましたね」

理珠 「でも、意外です。先輩もこういう子どもっぽいものに興味があるのですね」

あすみ 「うぐっ……」

あすみ 「……わ、悪かったな。どうせキャラじゃねーよ。でも……」


―――― 『……キャラじゃなくたって いいじゃないですか』

―――― 『俺…… 素直に喜んでくれる先輩見れて 嬉しかったです』


あすみ 「少なくともアタシは、これが好きだってことを、隠したくないんだよ」

あすみ 「わざわざ手作りしてくれた後輩のためにも、さ……」


779: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:42:25 ID:./mOxEco

理珠 「あっ……」 アセアセ 「すみません。その、バカにしたりするつもりはなかったんです」

理珠 「ヘンな風に聞こえてしまったならすみません。その……」

理珠 「先輩に似合っていて、とても可愛いと思います。ただ、意外だっただけで……」

あすみ 「ん、おお、ありがとな。このブチャイクさが可愛くてさー」

理珠 「たしかによく見ると、ブサイクながらもどことなく愛嬌が……」

文乃 「………………」

文乃 (……ああ、そっか)

成幸 「先輩……」 ジーン 「そんな風に思っててくれてたなんて……」

あすみ 「なっ……! 何涙流してんだ! 恥ずかしいやつだな!」


―――― 『もー先輩…… そんなに好きなら最初から素直に言ってくれればいいのに……』

―――― 『う うるせーな こんなのキャラじゃねーしハズいだろ……』


文乃 (もう、あのときとは違うんだ。きっと、先輩はもう、“好き” から逃げない……)

文乃 (きっと先輩は、成幸くんのことを憎からず想っている。それが、本当に自覚できたとき、きっと……)

文乃 (先輩もまた、成幸くんの心を手に入れようと、がんばるだろう……)


780: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:43:17 ID:./mOxEco

………………緒方うどん

理珠 「かけうどん一杯、お待ちどう、です」 コトッ

文乃 「……ん、ああ、ありがとうりっちゃん」

文乃 「おだしのいい匂い~! 食欲がそそられるよね~。いただきまーす!」

理珠 「では、私も、いただきます」

ズルズルズル……

文乃 「………………」


―――― 『そのために、がんばる。本気で、一番になる。ずっと、自分のことを見ていてもらいたいから!』

―――― 『尊敬していますよ。成幸さんのこと』

―――― 『少なくともアタシは、これが好きだってことを、隠したくないんだよ』


文乃 (……みんな、すごいなぁ)

文乃 (自覚のあるなしに関わらず、たぶん、みんな、成幸くんのことを……)

文乃 (わたし……わたしは……)


―――― 『じゃあさ…… ぶしつけで悪いんだが…… アタシがもらっても……いいか?』


781: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:43:47 ID:./mOxEco

文乃 「っ……」

文乃 (……わたしは、欲しいって言えなかった)

文乃 (だって、欲しいのか、欲しくないのか、わからなかったから……)

文乃 (でも、今さら、やっぱり欲しかったなんて思ってる……)

文乃 (……ほんと、浅ましい女だ、わたし。きっと、これからもそんなことばかりなんだろうな)

文乃 (成幸くんのことも、きっと……――)

理珠 「――……文乃?」

文乃 「へっ!?」 ビクッ

理珠 「大丈夫ですか? ボーッとしていましたけど……」

文乃 「え? あ、あはは、ごめんごめん。うどんがあんまりにも美味しくてさー」

スカッ

文乃 「あ、あれ? もうない……?」

理珠 「無表情でうどんをすすり続けていましたから……」

文乃 「あ……そっか……」


782: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:44:32 ID:./mOxEco

文乃 「………………」

理珠 「……大丈夫ですか、文乃? 元気がないように見えますが」

文乃 「……うん。大丈夫だよ。でも、ちょっとだけ、頭が痛いかも」

文乃 「ごめん、りっちゃん。うどんごちそうさま。今日はもう帰るね」

理珠 「……えっ、一杯だけで大丈夫ですか?」

文乃 「もー、りっちゃん。当然でしょ。女子高生だよ? うどんを何杯も食べたりしないよ」

理珠 (いつもなら軽く三杯は食べていくでしょう……)

文乃 「じゃあ、りっちゃん、お会計よろしく」

理珠 「あ、はい。いま行きます」

理珠 (文乃……)

理珠 (やっぱり、元気がないように見えます……)


783: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:45:05 ID:./mOxEco

………………夜 唯我家

成幸 「………………」

カリカリカリカリカリ……

成幸 (今日は先輩の勉強を見るのがメインだったから、あまり自分の勉強が進まなかったからな……)

成幸 (今日の分だけは少なくとも終わらせないと……)

prrrrrr……

成幸 「ん……? 緒方から電話……?」

ピッ

成幸 「もしもし? 緒方か?」

理珠 『はい、こんばんは、成幸さん。突然電話してしまってすみません』

成幸 「いや、べつに構わないよ。何か分からないところでもあったのか?」

理珠 『いえ、そういうことではなく……ちょっと、相談したいことが』

成幸 「相談? ああ、俺が聞けるようなことなら話したらいいよ」

理珠 『ありがとうございます。助かります』

理珠 『……その、実は、文乃のことなのですが……』


784: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:45:47 ID:./mOxEco

………………古橋家 文乃の部屋

文乃 「………………」

文乃 (……勉強、しなくちゃいけないのに)

文乃 (こんなことで勉強が手につかなくなるなんて、自分が情けないよ)

文乃 (わたしは……)


―――― 『大丈夫 絶対ない 絶対好きになんてなるはずがない 友達が 好きな人のこと』

―――― 『起きてる』

―――― 『ぜ……ッ 全然っ ちがいますけどっ!!!』


文乃 (わたし、は……)

文乃 (好き、なの……?)

文乃 (好きになっても、いいの……?)

文乃 (りっちゃんとうるかちゃんが好きな人のことを、好きになっても……)

文乃 (わたしは……)


785: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:46:26 ID:./mOxEco

………………唯我家

理珠 『……と、そんな様子で。うどんだって一杯しか食べなかったんですよ』

理珠 『いつもだったら軽く三杯食べてカレー丼も食べて帰るのに……』

成幸 (それは食い過ぎだけど、まぁ……)

理珠 『元気もなかったし、体調不良というよりは……その、何かに悩んでいるように見えて……』

理珠 『……心配なんです』

成幸 「……うん。そうだな。大切な友達だもんな。心配だよな」

理珠 『……はい』

成幸 (……緒方の話を整理すると、最初は元気だった古橋が、俺と小美浪先輩と会ってから元気をなくし始めたらしい)

成幸 「………………」

成幸 「……うん、わかった。なんとなく、古橋が元気をなくした理由が分かった気がするんだ」

理珠 『!? 本当ですか!? さすがは成幸さんです!』

成幸 「まぁ、まだ分からないけどな。でも、古橋とは明日話をしてみるよ」

成幸 「大船に乗ったつもり……とは言えないけど、まぁ任せてくれよ」

成幸 「俺はお前たちの 『教育係』 だからさ」


786: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:46:58 ID:./mOxEco

………………

成幸 (……古橋が元気のない原因)

成幸 (心当たりがないわけじゃない。よく考えたら、俺は無神経だった)

成幸 (古橋だって、先輩と同じはずなのに……)

成幸 「……明日の朝まで、数時間。間に合うか。いや、」

成幸 「間に合わせるしかないよな……」

ハァ

成幸 (……まぁ、自分で撒いた種だ。自分で回収するしかない)

成幸 (勉強は……まぁ、明日がんばればなんとかなるだろ!)

成幸 「……っし。今日は久々の徹夜だな!」

成幸 (こんなことが先輩とお父さんにバレたらまた休めって怒られるな……)


787: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:47:41 ID:./mOxEco

………………翌朝 一ノ瀬学園 いつもの場所

文乃 「………………」 ソワソワソワソワ……


―――― 成幸 『おはよう、古橋! ちょっと話があるから、HR前にいつもの場所に来てほしい』


文乃 (……朝起きたら、こんなメッセージが届いてるんだもんなぁ)

文乃 (メッセージの着信時間、すごい早朝だったし。ひょっとして成幸くん寝てないのかな?)

文乃 (でも……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (急に呼び出しなんて、一体何なんだろう。びっくりするからやめてほしいよ……)

成幸 「……お、いたいた。おはよう、古橋」

文乃 「っ……」 ビクッ 「お、おはよう。成幸くん」

成幸 「朝から呼び出して悪かったな」

文乃 「それは、まぁ、べつに、大丈夫だけど……」 ドキドキドキ

文乃 「はっ、話って、何かな?」

成幸 「ああ……実は、ひとつ謝らなくちゃいけないかなって思ってさ」


788: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:48:26 ID:./mOxEco

文乃 「謝る……?」

成幸 「いや、俺も考えが足りなかったかな、って」

成幸 「……っていうか、少し考えれば分かることだよな」

文乃 「? 何の話?」

成幸 「誤魔化すなよ。昨日元気がなかったって、緒方が心配してたぞ」

成幸 「……お前も、欲しいんだよな。当たり前だよな」

文乃 「へ……?」


―――― ((好きになっても、いいの……?))


文乃 「へ……へぇえええええええ!?///」

成幸 「……やっぱりそうか。そりゃそうだよな。お前だって欲しいよな」

文乃 「ち、ちょっと待って! 違うから! 違うよ!?」

文乃 「わたしは別に、欲しいなんて思ってないよ!?」


789: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:49:02 ID:./mOxEco

成幸 「誤魔化さなくていいよ。だって、すごく嬉しそうな顔してたじゃないか」

成幸 「……自分のものになるってときに。本当に、嬉しそうな顔を、してたじゃないか」

文乃 「そ、そんな顔してないよ……」


―――― 『起きてる』

―――― 『だから…… あとほんのちょっとだけ…… このままでもいい……?』


文乃 「……!?」

文乃 (……し、してた、かも。あのときは……)

文乃 (いや、だって、あのときは……しかたないじゃない……)

ドキドキドキドキ……

文乃 (でも……)

文乃 「……じ、じゃあ、成幸くんは、どうにかしてくれるの?」

文乃 「わたしが、“ほしい” って言ったら、くれるの?」

ドキドキドキドキ……


790: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:49:33 ID:./mOxEco

成幸 「……ああ、そのために、今日はお前を呼び出したんだ」

成幸 「古橋が欲しいものを、あげるために」

ギュッ

文乃 「へ……?」

ボン!!!!

文乃 「へぇええええええ……///」

文乃 (手……手! 手、握られて……!!)


―――― 『少しひんやりして…… でも心地よく包み込んでくれる ああ…… これはお母さんの 手の……』

―――― 『……成幸くん 前にもこうして手を握ってくれたよね』


成幸 「……古橋」

文乃 「ひゃ、ひゃい!」 ビグゥ!!!

成幸 「だからこれ、受け取ってくれ。あんまり上手じゃないけど……」

文乃 「へ……?」 モニュッ 「…… “もにゅっ” ?」

文乃 「これ、って……ドハっちゃん?」


791: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:50:15 ID:./mOxEco

成幸 「いやー、緒方からお前が元気がないって聞いたとき、ピンと来たんだよ」

成幸 「よく考えたら、あの大きなドハっちゃんぬいぐるみ、手に入れられなかったのは先輩だけじゃないもんな」

成幸 「お前も先輩のために譲ってくれたわけだし、先輩だけにプレゼントするのは悪いかな、って」

成幸 「それで元気がないのかなーって思ったから、昨日作ってきたんだよ」

成幸 「悪かったな、古橋。もっと早く気づいてあげればよかったよ。ごめんな」

文乃 「………………」

成幸 「……古橋?」

文乃 (……まったくもう)

文乃 (ほんと、成幸くんは成幸くんだね)

クスッ

文乃 「……ありがと、成幸くん。これ、大切にするね」

文乃 「えへへ、実は昨日、小美浪先輩がドハっちゃんのぬいぐるみ持ってて羨ましかったんだ」

文乃 「さすが成幸くん。少しずつ女心が分かるようになってきてるね」


792: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:51:24 ID:./mOxEco

成幸 「!? ほんとか!?」

パァアアアアアア……!!!

成幸 「古橋の問題を解き続けてきた甲斐があったな。俺もとうとう女心の単位修得か……」

文乃 「……ふふ、まだまだだよ。これくらいじゃ単位はあげられないよ」

成幸 「ぐっ……さすがは古橋師匠、厳しいな」

文乃 「……ねぇ、成幸くん」

成幸 「うん?」

文乃 「……わたし、決めたよ。もう迷わないし、恥ずかしいとも思わない」

文乃 「わたしも、一番になりたい。尊敬してるって言いたい。欲しいって、言いたい」

文乃 「だって……、」

成幸 「?」

文乃 (……好き)

成幸 「古橋……?」

文乃 (好き、好き、好き……! 好きだから。君のことが……)

文乃 「――――……大好き、だから……!!」


793: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:52:06 ID:./mOxEco

成幸 「へ……?」

カァアアアア……

成幸 「なっ……す、好きって……」

成幸 「あ、そ、そっか。ドハっちゃんのことだよな。はは……」

成幸 (び、びっくりしたぁ……)

文乃 「………………」

クスッ

文乃 「……うん。そうだよ。今は、それでいいよ」

文乃 「でも、覚悟しててね、成幸くん」

ニコッ

文乃 「いつか、君の全部を、もらっちゃうからねっ」

おわり


794: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:52:36 ID:./mOxEco

………………幕間1 「全部」

成幸 (俺の全部……? あれは一体どういう意味だ?)

成幸 (全部……? もしかして……)


―――― 文乃 『ヒャッハー! 唯我家の土地家財全部差し押さえだー!』

―――― 文乃 『かわいい妹たちも連れてくぜー!』


成幸 「………………」 ガタガタブルブル

陽真 「? 成ちゃん、どうしたの?」

成幸 「ど、どうしよう、小林!」

成幸 「俺の家が古橋に世紀末にされてしまう!!」

陽真 「なんて?」


795: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/03/04(月) 22:53:24 ID:./mOxEco

………………幕間2 「鼻血の会」

文乃 「………………」 ニヘラ 「……えへへ」

文乃 (……成幸くんからもらった、小さなドハっちゃんぬい。かわいいなぁ……)

文乃 (えへへへへへ……)

文乃 「………………」

キョロキョロキョロ

文乃 (だ、誰もいないよね……)

文乃 「………………」

チュッ

文乃 「……っ///」 カァアアアア……

………………物陰

鹿島 「……唯我くんからもらったぬいぐるみに、キス」 ボタボタボタ

猪森 「ふむ。困ったな。尊すぎて鼻血が止まらないぞ」 ボタボタボタ

蝶野 「今回に関してはまったく同意ッス……」 ボタボタボタ

おわり





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