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【ぼく勉】 真冬 「彼は教え子につき」

884: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:53:54 ID:MOT0E4vs

………………週休日 水泳部 部室

うるか 「さー、今日は息抜きがてら、久々に泳ぐぞーっ!」

智波 「あはは、元気だねー、うるか」

あゆ子 「少しわけてもらいたいくらいだよ、まったく」

池田 「あ、先輩! こんにちは!」

池田 「今日は先輩たちも練習に参加してくれるんですか?」

うるか 「うん! 池田っちたちの邪魔にならないようにするからレーン貸してねっ」

池田 「邪魔だなんてそんな! 来てくれて嬉しいです!」

池田 「皆さんに久しぶりにフォーム見てもらいたいです!」

智波 「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいね」

あゆ子 「ほんとに可愛い後輩だなぁ、池田はー」

池田 「可愛いだなんて、そんな……っ」


885: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:54:25 ID:MOT0E4vs

うるか 「あっ、そうだ。池田っち、これ貸してくれてありがとね」

池田 「あっ! 先輩、カレエゴ一巻読み終わったんですね!」

うるか 「めっちゃ面白かったよ! 続きが気になるよ~!」

あゆ子 「? なんだそれ? 漫画?」

うるか 「うん。池田っちが貸してくれたんだ。めっちゃ面白かったよ」

あゆ子 「池田ー? うるかはただでさえおバカなんだから、漫画なんか貸すんじゃないよ」

あゆ子 「せっかく最近まぁまぁになってきた英語がまたぱっぱらぱーになっちゃうだろ」

池田 「うっ……。たしかに、先輩たち受験生ですもんね……」

うるか 「ちょっと、川っち! ぱっぱらぱーってなにー!」

あゆ子 「そのまんまでしょうが。まったくもう……」

智波 「まぁ、息抜きも大事だよね。でも、続きは受験が終わったらにしたら?」

うるか 「うぅ……。海っちの正論が心に刺さるよぅ……」

池田 「あ……じゃあ、受験が終わったら、二巻以降も貸しますね!」

うるか 「うん! 早く借りられるようにがんばるね!」


886: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:54:59 ID:MOT0E4vs

あゆ子 「そんなに面白いのか、その漫画……」

あゆ子 「………………」

コソッ

あゆ子 「なぁ、池田。それ、私が借りてもいいか?」

池田 「!? もちろんです! どうぞ!」

あゆ子 「ん、ありがとう。読ませてもらうな」

池田 「いえいえ、カレエゴファンが増えてすごく嬉しいですから!」

池田 (……あっ、そういえば、)


―――― 『とりあえず10巻まで……』


池田 (桐須先生、カレエゴ買ってたよね……)

池田 (ひょっとして、先生もカレエゴファンになってたりなんて……)

池田 「………………」

クスッ

池田 (まさか、そんなわけないよね)


887: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:55:53 ID:MOT0E4vs

………………真冬の家

真冬 「………………」

バーン!!!

真冬 (……驚愕。まさか私の家に漫画本が並ぶことになるとは)

真冬 (結局最新刊まで買いそろえて読み込んでしまったわ……)

真冬 (まぁ、これは学校現場の物語なのだから、これからの仕事に役立たないこともないでしょう)

ペラッ……ペラッ……

真冬 (……中身は、荒唐無稽としか言いようのないようなシチュエーションばかりだけれど)

真冬 (でも、どこかリアリティを感じてしまうのは、私が似たような経験をしているからかしら)


―――― 『たいした傷じゃないですし もう……』

―――― 『だめよ! 化膿でもしたら……』


真冬 「っ……」


888: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:57:25 ID:MOT0E4vs

真冬 (……まったく、本当に、)


―――― 『先生危ない!』

―――― ((ここで唯我君に受け止められてしまったら……))


真冬 (私は、彼の前だとどうしても、醜態ばかり晒してしまう……)


―――― 『先生 目つぶって……』

―――― 『だ……っ だだ だめよ唯我君……! 私とあなたは教師と生徒!!』

―――― 『でも……っ』


真冬 (……それが、この作品と重なることが多いのね)

真冬 (この作品の主人公、クリスも生徒の結人に助けられることが多いし……)

真冬 (……いえ、もちろん私はこんな生徒にときめくようなダメ教員ではないけれど)


889: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:58:29 ID:MOT0E4vs

真冬 (でも、そんなダメなところばかりのクリスの働きかけで、結人はどんどん成長している……)

真冬 (……実際、これだけリアリティのある描写を描くためにかなりの取材をしたのではないかしら)
※真冬先生個人の感想です。

真冬 (だとすれば、この本を参考にすれば、生徒の教育の一助になる可能性もある……?)

真冬 「………………」

ピンポーン

真冬 (? 新聞の勧誘? それとも通販でも頼んでいたかしら?)

ガチャッ

成幸 「こんばんは、先生」

真冬 「あら、唯我くん。こんばんは。何か用かしら?」

成幸 「おでん作り過ぎちゃって。もしよかったらもらってくれませんか?

成幸 「あと、ついでに……」 ニコッ 「そろそろ掃除が必要かな、と」


890: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:59:11 ID:MOT0E4vs

………………少し前 唯我家

葉月 「ねー兄ちゃん、遊んで遊んでー」

和樹 「遊んでー!」

成幸 「だー! 後で遊んであげるから、今は勉強させてくれー!」

葉月 「だってー! 母ちゃんも姉ちゃんもお台所で忙しそうなんだもん!」

和樹 「兄ちゃんが一番暇そうだもん!」

成幸 「ひどい言い草だなお前たち……」

水希 「こら、葉月、和樹。お兄ちゃんを困らせないの」

水希 「そろそろご飯だから居間においで。お兄ちゃんも、区切りがいいところで来てね」

成幸 「ああ、ちょうどいいから行くよ」

成幸 「……ん、今日の晩ご飯はおでんかな?」

水希 「うん! 大根練り物こんにゃくたまごも特売だったから、たくさんあるよ!」

成幸 「おお、そりゃ楽しみだ」


891: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 17:59:46 ID:MOT0E4vs

花枝 「……とはいえ、」

ドーーーーーン!!!

花枝 「いくら何でも作りすぎたわね」

成幸 「お、おお……」 (大きめの鍋ふたつにおでんタネがてんこもりだ……)

葉月&和樹 「「山盛りおでんだー!!!」」 キラキラキラ……!!!

花枝 「この分じゃ、丸三日はおでんね。もちろんお弁当もおでんよ」

成幸 「そ、それはちょっときつそうだな……」

花枝 「ま、さすがにそれは冗談よ。あとでご近所さんにでもお裾分けするわ」

成幸 「ん……」 (お裾分け、か……)


―――― 『不覚……! 家にエプロンがないんだったわ……!!』

―――― 『不味…… 何かしらコレ 圧倒的に苦くて硬くてしょっぱいわ……』


成幸 (先生、またろくなもの食べてないだろうし、持って行ってあげようかな。ついでに掃除とか……)


892: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:00:27 ID:MOT0E4vs

成幸 (……って、俺とは生徒と教師。あんまりこういうのはよくないよな)


 『それでは、次の特集です。テーマは「若者の孤独死」です』

 『近年、若くして孤独死をするひとり暮らしの若者が増えています』

 『中には、ゴミ屋敷のような部屋でゴミに埋もれて栄養失調で亡くなるようなケースもあるようです』


花枝 「……あら、暗い話題の特集ね。でも、うちとは縁遠い話ね、成幸」

成幸 「………………」

花枝 「……成幸?」

成幸 (……ま、まずい)

ダラダラダラ……

成幸 (桐須先生がそうなる未来が容易に想像できる……!)


893: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:01:56 ID:MOT0E4vs

成幸 (やっぱり今日、様子見がてらおでんをお裾分けに行こう。ついでに掃除もしてあげよう……)

成幸 (でも俺も来年には高校を卒業するわけだし、いつまでも先生のお世話をできるわけじゃない)

成幸 (先生には、最低限の自活ができるようにしておいてもらわないと……)

成幸 (最悪、栄養失調で死ぬことはないとしても、入院なんてことはありえるもんな……)

成幸 「………………」

グッ

成幸 (よし! 決めた! 俺が卒業するまでの間に、先生に家事のノウハウをたたき込むぞ!)

成幸 (俺がいなくなっても、家事で困らないように!!)

成幸 (とりあえず今日は掃除からだな! よーし!)


894: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:02:46 ID:MOT0E4vs

………………現在

成幸 「……まぁ、わかっていましたけど、こうなりますよね」

グッチャアアアァアアアア……

真冬 「……きれいな方だと思っていたのだけれど」

成幸 (先生の場合は、まずこの常人とかけ離れた感覚を矯正する必要があるな)

成幸 (よし。ここは心を鬼にして……)

成幸 「先生。失礼かもしれませんが、ひとつ言わせてください」

真冬 「い、いきなり何かしら?」

成幸 「これできれいと思えるその感覚は、どうにかしたほうがいいと思います」

真冬 「し、辛辣……。もう少し歯に衣着せてほしいわ……」 シュン

成幸 (あっ……し、しまった。今日は厳しく行こうと思ってたけど、さすがに言いすぎか……?)

成幸 (……いや、でも、このままじゃ先生がダメダメな大人になってしまう)

成幸 (最悪、ゴミに埋もれて栄養失調でしんでしまうかもしれない!!)

成幸 (ここは心を鬼にしなければ……!!)


895: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:03:38 ID:MOT0E4vs

成幸 「先生だって言って聞かない生徒には言葉を厳しくしたりするでしょう?」

真冬 「それはそうだけど……」

成幸 「ほら、先生。晩ご飯の前にまず掃除ですよ。今日は先生にもしっかりやってもらいますからね」

ガサゴソガサゴソ……

真冬 (なんだか、今日は唯我くんが刺々しい気がするわ)

ハッ

真冬 (こ、これはカレエゴ5巻で、結人がクリスに反抗するシーンに似てる……!)

真冬 (言葉もどこか刺々しい気がするし、このままでは……)

真冬 (良い子で優しい唯我くんが不良になってしまうかもしれない……)


―――― 成幸 『勉強なんかやってられっかよー! やめだやめだー!』

―――― 成幸 『酒と煙草もってこーい!』


真冬 (なんてこと……!!)


896: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:06:05 ID:MOT0E4vs

真冬 (だっ、だめよ! 良い子の彼がそんな風になるなんて、考えたくもないわ!)

ハッ

真冬 (そういえば、カレエゴでも……)


―――― クリス 『結人君、きみはどうしていつもそう……』

―――― 結人 『うるせーな。あんたには関係ないだろ』


真冬 (そんな風にクリスに心を開こうとしなかった結人に対して……)


―――― クリス 『彼が何を考えているのか分からない。でも、放っておくわけにも……』

―――― クリス 『彼の抱える孤独、悩み……すべて知りたい……』

―――― クリス 『そっか……。私の方から心を開かない限り、彼の心の中なんて分かるはずもないんだわ』

―――― クリス 『なら、彼が私に心を開いてくれるまで……私は彼に、心を開いて声をかけ続けるだけよ』


真冬 (クリスは彼を気にかけ続けた……)


897: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:07:08 ID:MOT0E4vs

真冬 (そして……)

―――― クリス 『ダメよ! ケガをしているじゃない!』

―――― 結人 『だから、うるせーって言ってんだよ! あんたには関係ないだろ!』

―――― クリス 『関係なくなんてないわ! 私はあなたの先生だもの!』

―――― 結人 『先生……』


真冬 (結人はクリスのことを信頼するようになったのだったわね……)

真冬 「………………」

真冬 (……私にもできるかしら)

真冬 (クリスのように、素直に、生徒のために、心を開いて……)

成幸 「……?」 (先生、ボーッとしてどうしたんだろ?)


―――― 『これできれいと思えるその感覚は、どうにかしたほうがいいと思います』


成幸 (ひょっとして、さっき言い過ぎちゃったせいかな……。謝らないと)


898: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:07:48 ID:MOT0E4vs

成幸 「あの、先生」

真冬 (大丈夫。私は教師だもの。できるはずよ)

真冬 (彼に道を誤らせてしまったら、“あの人” に申し訳が立たないわ)

真冬 (素直に。変に強がらず。見栄を張らず。虚飾を排して)

真冬 (できるかどうかじゃないわ。やらなければならないのよ。唯我くんのために!)

成幸 「先生?」

真冬 「………………」

ニコッ

真冬 「……あら? どうしたの、唯我くん?」

成幸 「……!?」 ビクッ

成幸 (なっ……何が起きているんだ、一体……)

真冬 「ん?」 ニコニコニコ

成幸 (あの “氷の女王” 桐須先生が、未だかつて見たことのないような笑顔を浮かべている!?)


899: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:09:08 ID:MOT0E4vs

成幸 「あ……えっと、あの……」

真冬 「ふふ、変な唯我くん。一体どうしたというの?」

スッ

成幸 (うおっ!? ち、近っ!?)

成幸 「な……ななな、なんでもありません! 掃除を始めましょう!」

真冬 「あっ……」

真冬 (やはり、そうすぐにはいかないわね……)

真冬 (焦ってはダメね。ゆっくり、少しずつ進めていくことにしましょう)


900: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:09:56 ID:MOT0E4vs

………………

成幸 「ということで、今日は掃除の基礎をひとつひとつ教えていきます」

真冬 「まぁ、本当に?」 ニコニコ 「助かるわ。ありがとう」

成幸 「っ……」 (調子狂うなぁ……)

真冬 (やっぱり様子が変ね。非行の前兆かしら……) ハラハラ

成幸 「まず、水回りをきれいに保つのは基本です。食器をため込むのをやめてください」

成幸 「キッチンを使ったらすぐに食器を洗う癖をつけてください」

真冬 (キッチンを使ったらすぐ……!? なかなか大変なことを言ってくれるわね……)

真冬 (忙しいとついつい洗い物をためてしまうのだけれど……)

成幸 (心を鬼にして心を鬼にして……) ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 (……そんなことを言える状況ではないわね。これも唯我くんのためよ、真冬)

真冬 「わかったわ。これからはそうするって、約束するわ」 ニコッ

成幸 (っ……) ドキッ (聞き分けがいいのは助かるけど……)

真冬 「では、早速食器を洗ってしまうわね」

成幸 (拗ねたような顔もしないし、まるでまともな大人みたいだぞ!? 一体どうしたんだ!?)


901: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:10:44 ID:MOT0E4vs

………………トイレ

成幸 「次はトイレです! ここも汚れがちですから、少なくとも一月に一回は掃除しましょう!」

真冬 「分かったわ。掃除の仕方も教えてくれると助かるのだけど……」

成幸 「わ、分かりました。今から一緒に掃除しましょう」

真冬 「ありがとう。本当に助かるわ」

成幸 (桐須先生が自分から掃除を教えてくれと言い出すとは……)

………………浴室

成幸 「あー、もう。せっかくきれいなおフロにまたピンクカビが……」

真冬 「ごめんなさい……。水が流れていればきれいになると思ってしまって……」

成幸 「流れがあるうちはいいですけどね、残った水に汚れがつくんですよ」

成幸 「おフロの後に、軽くスポンジで水気を取るだけできれいが長続きしますよ」

真冬 (ちょっと……いえ、かなり面倒だけど……これも、唯我くんのため……)

真冬 「……こっ、これからはそうするわ。約束します」 ニコッ

成幸 (素直すぎて怖い……!!)


902: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:11:39 ID:MOT0E4vs

………………リビング

成幸 「で、やっと部屋の掃除に入れるわけですが……」

グチャア……

成幸 「まず、掃除の基礎とかそういう話の前に、ゴミは定期的に出してください」

成幸 「うちの地区は週に二回は燃えるゴミの収集があるんですから、せめてどちらかだけでも出すようにしてください」

真冬 (ゴミ出し、ついつい面倒になってまた今度、また今度とため込んでしまうのだけど……)

真冬 (まったくもって唯我くんの言うとおりだわ。しっかりしないと……)

成幸 「それから、床に物を放置しないでください。それを徹底するだけで部屋は汚れませんよ」

真冬 (……床に物を放置しない!? そんな生活ができるの!?) ※できます

真冬 (うっ、でも……)

成幸 「………………」 ジーーーッ

真冬 「……わ、わかったわ。約束するわ。物はできるだけ床に置きません」

成幸 (できるだけ、っていうのが不安だけど……)

成幸 (素直に約束してくれてるんだから、信じてあげた方がいいよな)


903: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:12:21 ID:MOT0E4vs

成幸 「それから、使った物はすぐに片付けるくせをつけましょう」

真冬 「わかったわ」

成幸 「週に一度は掃除機をかける癖をつけてください」

成幸 「そうすればホコリもたまらないし、物を片付ける癖もつきますから」

真冬 「……うっ、ぜ、善処するわ」

成幸 「……?」 (色々言いすぎたからかな。段々いつもの桐須先生っぽくなってきたな)

成幸 (よかった。一時は何が起きたのかってくらい別人だったけど)

成幸 (笑顔もいいけど、やっぱりいつもの桐須先生の方が落ち着くな) クスッ

真冬 「あっ……」 (唯我くん、やっと笑ってくれたわ)

真冬 (今日は妙に刺々しくて戸惑ったけど、『カレエゴ』 を参考にしたおかげで元の彼に戻ったみたいだわ)

成幸 「……さ、じゃあ、実際に片付けをやっていきましょう。今日は先生中心ですからね」

真冬 「わ、わかっているわ。しっかりとやってみせるわ」


904: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:13:07 ID:MOT0E4vs

………………

成幸 「あらかた終わりましたね」

真冬 「ええ。いつも本当にありがとう。あなたのおかげで助かっているわ」

ニコッ

真冬 「今日あなたに教わったことをしっかりと実践していくように、がんばるわね」

成幸 「あ……は、はいっ」

成幸 (うぅ……。また笑顔だ……。今日の先生は妙に素直で、緊張するなぁ……)


―――― 『中には、ゴミ屋敷のような部屋でゴミに埋もれて栄養失調で亡くなるようなケースもあるようです』


成幸 (はっ! い、いかん! 緊張している場合じゃない! 厳しく、心を鬼にして……)

成幸 「で、でも、まだまだですからね! 先生は他の家事もダメダメなんですから!」

成幸 「掃除だけじゃなくて、家事全般、しっかりできるようになってもらいますからね!」

真冬 「………………」

成幸 「……あ」 ハッ (しまった。さすがに言いすぎだろうか……)

成幸 (これ、絶対怒られるやつだ……) ガタガタブルブル (とんでもなく失礼なことを言ってしまった)


905: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:13:42 ID:MOT0E4vs

真冬 「………………」

真冬 (唯我くん、また刺々しい感じだわ……。やはりこれは、非行の兆候かしら……)

真冬 (唯我くんがどうして刺々しいのか、まったく分からないわ……) シュン


―――― 『なら、彼が私に心を開いてくれるまで……私は彼に、心を開いて声をかけ続けるだけよ』


真冬 (……そう。そうよね、クリス。私には、彼に心を開いて、接することしかできないわね)

成幸 「あ、あの、先生? す、すみません。さすがに言いすぎ……――」

真冬 「――……ごめんなさい。私、まだまだよね。いつも君に迷惑をかけてばかりだわ」

成幸 「!?」 (あ……あれだけ言ったのに!? 先生がむくれてもいない!?)

成幸 (それどころか、しおらしい顔をしている!?)

真冬 (素直に。本当に、思っていることを……)

真冬 「君がいなかったらどうしようもなかったことも、今まで何度もあったわね」

真冬 「虫が出たときとか、海でのこととか、美春のことだって……」

真冬 「今だって、こうやって私に掃除を教えてくれたし……」

真冬 「だから、本当に君には感謝しているのよ」


906: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:14:32 ID:MOT0E4vs

成幸 (い、一体何が起きているんだ……)

真冬 (恥ずかしい、けど……)

真冬 (決して、嫌な気持ちではない……)

真冬 「……厚かましいお願いだとは思うけど、君がいいのなら、今後もよろしくお願いします」

真冬 「私に、色々と教えてくれると助かるわ」

真冬 (……そう。素直に。心の中で思っていることを、そのまま、)


真冬 「……これからも、ずっと。私のそばにいて、私が知らない色んなことを、教えて」


成幸 「っ……///」

成幸 「ず、ずっと、ですか……?」

成幸 (あっ……でも、そっか……)

成幸 (俺が、高校を卒業してもずっと先生のそばにいて、先生の代わりに家事をしてあげれば、全部解決じゃないか?)

ハッ

成幸 (い、いやいやいや……/// 何考えてるんだ、俺……)


907: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:15:12 ID:MOT0E4vs

成幸 「だ、ダメですよ、先生。俺がずっと先生のそばにいられるわけじゃないんですから」

成幸 「先生が自分で家事を覚えないと……」

真冬 「ダメ……」 シュン 「そうよね。あなたは、私のそばにはいたくないわよね……」

真冬 「こんなダメダメな私なんかのそばには……」

成幸 (なんでそんな悲しそうな顔をするんだー!?)

成幸 「いや、そういう問題じゃなくて……っていうか、そもそも先生が嫌でしょう?」

成幸 「俺が、高校を卒業した後もずっと、先生の家にお邪魔することになるんですよ?」

真冬 「私は全然構わないわ。むしろ……それは、とても嬉しいと思うもの」

成幸 「っ……」

真冬 (素直に……素直に……)

真冬 「あなたみたいな素敵な男の子に助けてもらえるって、とても幸せなことだと思うの」

成幸 「あっ……/// い、いや、俺は……その……」

成幸 (な、なんだ? 今日の桐須先生はやっぱりヘンだぞ? で、でも……)

成幸 「……お、俺は……俺も……――――」

――――prrrrrr!!!!!


908: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:15:57 ID:MOT0E4vs

成幸&真冬 「「!?」」 ビクッ

成幸 「あっ……で、電話……。すみません、出ます……」 ピッ

成幸 「もしもし? 水希? あ、ああ、もう帰るよ」

成幸 「ごめんごめん、ちょっと話し込んじゃってさ……。すぐ帰るよ」

成幸 「……ん、悪かったって。じゃ、切るな」 ピッ

成幸 「……すみません」

真冬 「……べつに」

成幸 「………………」 (……改めて冷静になると、)

真冬 「………………」 (なっ、何を……)


―――― 『あなたみたいな素敵な男の子に助けてもらえるって、とても幸せなことだと思うの』

―――― 『……お、俺は……俺も……――――』


真冬 (一体何を口走っていたのかしら私はーーーー!?)

成幸 (一体何を口走ろうとしていたんだ俺はーーーー!?)


909: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:16:43 ID:MOT0E4vs

………………

成幸 「な、なるほど。俺が刺々しいからグレたのかと思って……」

成幸 「それで、優しくすれば元の俺に戻るのかと思った、と?」

真冬 「あなたは、私がゴミに埋もれて孤独死を遂げるのではないかと心配になり……」

真冬 「私に家事を習慣づけさせるために厳しく接した、と……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!

真冬 「へぇ……なるほどね……?」

成幸 (あ、完全にいつもの桐須先生だ)

成幸 「失礼なことを考えてしまったのは、本当にすみません。でも……」

成幸 「心配だったんです……」

真冬 「……はぁ。分かっているわよ、そんなこと」

真冬 「あなたが善意しか持ち合わせていないことなんて、ずっと前から知っていますからね」

真冬 「私の普段の生活が、あなたにそれを想起させるに足るだけのものだということでしょう?」

真冬 「それは私の責任だわ」


910: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:17:31 ID:MOT0E4vs

真冬 「ごめんなさい、受験生に無為に時間を使わせてしまったわね」

真冬 「さっきの電話、ご家族からでしょう? もう遅いし、早く帰りなさい」

成幸 「そうですね。そうします。長々と居座ってしまってごめんなさい」

真冬 「私の部屋の掃除に付き合わせてしまったのだから、謝る必要はないわ。ありがとう」

成幸 「あっ……」 クスッ 「ふふ……」

真冬 「? 何か可笑しなことを言ったかしら?」

成幸 「あ、すみません。そうじゃなくて……」

成幸 「さっきの先生を思い出してしまって、つい……」

真冬 「っ……」 カァアアアア…… 「わ、忘れなさい。あんな姿……」

成幸 「でも、お世辞って分かってても嬉しかったですよ? 先生が褒めてくれて、俺はとても」

真冬 「……べつに、お世辞ではないわ。全部本心よ」

真冬 「普段なら絶対に言わないけれど、君に助けられているのは事実ですからね」

成幸 「えっ……」 ボフッ 「あっ……そ、そうですか……///」

真冬 「?」


911: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:18:52 ID:MOT0E4vs

成幸 (全部、本心……? ってことは……)


―――― 『……厚かましいお願いだとは思うけど、君がいいのなら、今後もよろしくお願いします』

―――― 『……これからも、ずっと。私のそばにいて、私が知らない色んなことを、教えて』

―――― 『そうよね。あなたは、私のそばにはいたくないわよね……』

―――― 『私は全然構わないわ。むしろ……それは、とても嬉しいと思うもの』


成幸 (あれも、本心ってことか……?)

成幸 (“ずっと私のそばにいて” って言葉も……?)

成幸 (い、いやいや、そんなわけない。あれはさすがに、本心じゃないはずだ)

成幸 (……それに、俺も人のことは言えないよな。だって、)

真冬 「?」


―――― ((俺が、高校を卒業してもずっと先生のそばにいて、先生の代わりに家事をしてあげれば、全部解決じゃないか?))


成幸 (……それもアリかな、なんて思っているんだから)

おわり


912: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:19:47 ID:MOT0E4vs

………………幕間1 「彼女は妹につき」

水希 「………………」 (お兄ちゃん、帰ってくるの遅いなぁ……)

ピキューン!!!!

水希 「はっ!? お兄ちゃんが大人の女性にプロポーズされた気がする!?」

葉月 「和樹」

和樹 「ほいさ」


913: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:20:22 ID:MOT0E4vs

………………幕間2 「彼女はミーハーにつき」

池田 (川瀬先輩、『カレエゴ』 気に入ってくれたかな……)

池田 (まぁ、先輩も受験生で忙しいだろうし、まだ読んでないかな)

あゆ子 「あ、いたいた。池田ー!」

池田 「川瀬先輩……?」

あゆ子 「これ面白かったよ! 二巻貸してくれ! 頼む!」

池田 「もう読んだんですか!?」

池田 (……まぁ、川瀬先輩結構ミーハーなところあるからなぁ)


914: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/04/04(木) 18:20:59 ID:MOT0E4vs

………………幕間3 「彼は律儀につき」

成幸 (……いや、でもよくよく考えてみたら、)

うるか 「ん? どったの、成幸?」 ←勉強と部活の頑張りすぎでぶっ倒れた奴

理珠 「成幸さん?」 ←うどんばっかり食べていて将来生活習慣病になりそうな奴

文乃 (成幸くんまたろくでもないこと考えてるね) ←超料理下手で食べるの大好きな奴

成幸 「………………」

成幸 (……桐須先生に限らず、こいつら全員のマネジメントをする必要があるな)

おわり





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