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【モバマスss】Topological number

1: 令和まで@27:36:39 平成31年 04/29(月)20:23:21 ID:LBD

アイドルマスターシンデレラガールズのssです。
三船美優と神谷奈緒、通称(これがあんまり通じてないから困ってる)なおみゆの波動を感じて書きました。
もっと盛り上がって欲しいな、なおみゆ!
個人設定で美優さんの両親も登場しますので、オリ設定が苦手な方は申し訳ありません。

よろしければ、ぜひ。それとシンデレラガール総選挙で三船美優と神谷奈緒をヨロシクゥ!!

過去にこんなん書いてます。↓

【モバマスss】Goodbye, Happiness.
https://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1555941918/l10
【モバマスss】青より蒼い群青【かこほた】
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1555764477/
【モバマスss】けれどきみはとおいとおい
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1555829527/


2: 令和まで@27:36:08 平成31年 04/29(月)20:23:52 ID:LBD

「────え、いいのか!?」

「ええ。奈緒ちゃんさえ良ければ、私はぜひ。」

「マジかーーーー!!行く行く!!絶対行くよーーー!!ありがとう美優さん!」

「ふふ。奈緒ちゃんが喜んでくれて嬉しいわ。私は、母と父に連絡するから、奈緒ちゃんもお母様やお父様に一言連絡しておいてね?」

「うん!任せろー!へへっ。いやーーー楽しみだなーーー!!」



「岩手の雪景色!!!」


3: 令和まで@27:35:53 平成31年 04/29(月)20:24:07 ID:LBD



昔は、どうしてだろうか、この景色が嫌いだった。
正確には、この季節の、この坂道から見える、この色が嫌いだった。
昔からこの色は純粋で、穢れがない色だと思われてきたのだろう。
清純さの象徴。美しさの象徴。幸せの象徴。
そういった世間のイメージとは私は考えを異にする。
この色は、全ての光を反射する色。
何にでも染まるようで、その実、全てのものを拒絶する色。

自分のことを色に例えるとしたら、きっと私はこの色だ───もちろん、自分が世間からこう見られたいとか、あまつさえそんなように見られているだろう、なんてことでは一切無い。

誰にでも愛想よく振る舞うくせに、本当の自分が何なのかなんて自分でもわからない。
どうせなら私は、透明になりたかった。誰からも期待されない、その代わり、誰かが私に干渉してきても、私は変わることがない。

私は、この色が嫌いだった。


4: 令和まで@27:35:41 平成31年 04/29(月)20:24:19 ID:LBD

人が見たいように見た私は、きっと何かの鋳型にはめられたかのような姿なのかもしれない。
誰にでも優しく、人の言うことを素直に聞き、協調性がある子。
良い子だね、と何度か言われたことがある。最初は、そう褒めてくれるだけで嬉しかった。
お父さんやお母さん、先生、先輩、友達。みんなが望む私になれば、みんなが喜ぶ。期待に答え続ければ、そうやって私を褒めてくれる───良い子だね、と。

あの頃の思いは、どこで変わったのだろうか。あの頃の私と、どこが変わったのだろうか。
丘の上の学校に登る途中、自転車をはた、と止める。視線を上に逸らすと、木の葉が一枚、木枯らしに抱かれて見えなくなっていく。
代わりに空からは、ああ。

「また、雪かぁ。」

何も変わらない三船美優の、16歳の冬が始まろうとしていた。


5: 令和まで@27:35:24 平成31年 04/29(月)20:24:36 ID:LBD



「美優はさー、東京行って何するのぉー?」

卒業証書をもらい、あと数日で私は生まれ故郷であるこの地を発つ。
誰かが企画した、友人同士で最後に集まって遊ぼうという機会に、私も参加させてもらっていた。そんな中、ある一人の友人からこんな質問を受けた。
しかし、何気無い質問だが、私は答えに窮してしまう。
困惑する私を見かねて、級友たちが助け舟を出してくれる。

「まぁ、美優なら何したってきっとうまくいくよ!悪い男に引っかかるなよー?」
「なんか寂しいこととか辛いこととかあったら、いつでも連絡してきてね!」
「そうそう!美優はもっとさ、おりゃー!てもっとパッションしても良いと思うよ!でも、」


「それが美優のいいところだもんね!」


6: 令和まで@27:35:07 平成31年 04/29(月)20:24:53 ID:LBD

それが私のいいところ。これが私のいいところ。これが、それが、あれが、どれが。

「ありがとう」と返し友人たちに笑みを見せる私を、冷めた目で見るもう一人の私が窓に反射していた。

私は何がしたいんだろう。私は何を大事にしているんだろう。私は何を愛しているんだろう。

「ちょ、美優泣くなし!」
「寂しいのは私たちも一緒だからね。」
「はぁーーー。ホント、ほんともっと一緒に遊びたいよなー。」

純粋に涙を流す友人たちが、本当に羨ましい。この人たちは、こんな自分を友人と呼んでくれる。なんにもない私を、なんにもできない私を大切に思ってくれる。
血の繋がりもないのに。私と仲良くする義務なんてないのに。私と仲良くしたって、何もいい事なんかないのに。
それでも彼女たちは私のことを「友人」と呼んでくれる。
私も、彼女たちのことを心からありがたいと思う。得難い人たちだと思う。素晴らしい人たちだと思う。

そんな彼女たちを友人に持てて、私は───本当に幸せだと思う。
これは私の偽りのない真実。

だけど。

彼女たちが私の「何」を見てくれていたのか、その時の私には終ぞわからなかった。


7: 令和まで@27:34:43 平成31年 04/29(月)20:25:17 ID:LBD



「お疲れ様!美優さん!わたし、すっっっっっごい感動した!!!」


プロダクションが主催する、年に二度の大型ライブ。
真夏に行われるサマーフェスティバルと、年末に行われるクリスマスライブ。
どちらも、プロダクションの威信をかけた大規模のイベントであり、ここから人気に火がついたアイドルも少なくない。そのため、プロダクションに所属するアイドルにとっては、まず「これ」に参加することが、最初の目標となる。
ありがたいことに、私は今回で2回目の出場である。
夏はユニットで歌う「命燃やして恋せよ乙女」という曲と、全員で歌う「Goin」、そして「お願いシンデレラ」に参加させていただいた。
そして2回目となる今回は、恐れ多くも私自身初のソロ曲となる「Last Kiss」を歌う機会をいただいた。

「お疲れ様、三船さん。素晴らしいステージでした。」

私のソロステージが終わり舞台裏にはけた後、プロデューサーさんがわざわざ声をかけに来てくれた。

「ありがとうございます、プロデューサーさん。でもまだ、お願いシンデレラが残っていますから、引き続き気を引き締めて頑張ります。」

「うん、その気迫、その調子です。この後も期待していますよ。頑張ってください。」

プロデューサーさんにはああ言ったけど、彼の激励に、大人気なく心が跳ねる。
頭の中はメリーゴーラウンド。
心の中はジェットコースター。

「私って、少し単純になったのかしら……」

プロデューサーと出会ってからの私の変化は本人から見てもわかるくらいには顕著だった。
アイドルを始めてからできた友人たちにもからかわれたことがある。
「運命の人ってことね」
などと言われて顔を真っ赤にした姿が随分お気に召されたようで、私が秘めていた気持ちもすらすらと彼女たちには知られてしまった。
そしてそれを少し嬉しいとさえ感じてしまう私は、やっぱり少し変わったんだと思う。
あの人はみっともなく思っていないかしら。

そんな乙女な考えに思考が支配されていた時、ふと背後に気配を感じる。
振り向くと、そこには一人のアイドルがいた。
どうやら感極まった様子で、目に涙をいっぱいに溜めながら、ほとばしる感情を抑えきれないという感じでに握った手を胸の前で小さく上下させていた。

「美優さん!!!」

「お疲れ様!美優さん!わたし、すっっっっっごい感動した!!!」

神谷奈緒───トップアイドルグループ、トライアド・プリムスの一角を担う超人気アイドルの姿が、そこにはあった。


8: 令和まで@27:34:15 平成31年 04/29(月)20:25:45 ID:LBD



「奈緒ちゃん、ありがとう。奈緒ちゃんたちの出番も終わったのかしら?」

「うん!今ちょうど終えてきたところ!」

どうだったかしら?などと聞く必要はない。目の前の彼女を見ればわかる。彼女たちのステージを見ることは出演者の入れ替わりの都合上叶わなかったけど、それでもあの歌声と歓声は耳に届いていた。

「お互いさ、まだお願いシンデレラがあるけどさ、わたしやっぱり、すぐに美優さんに伝えたいなって……!新曲のLast Kiss、すっごく良かった!大人の女性って感じでさ、なんっつーのかな、こう……妖艶……な感じ?とにかく、大人っぽくてかっこよくて、綺麗だった!!」

「な、奈緒ちゃん…!その、褒めてくれるのはすごく嬉しいんだけど、その…は、恥ずかしいから……!」

「あ、ああっ、ご、ごめん……わたし興奮するとちょっと早口になっちゃう癖があってさ。でも、わたしの気持ちは本当だよ。すっげー感動したんだ!」
「あ、ありがとう、奈緒ちゃん。奈緒ちゃんが褒めてくれると、私も少し自信になるわ。少しはうまくやれたのかなって。」

「いやいや、美優さん、お客さんたちもすっげー感動してたと思うよ!美優さんは歌ってたから見えなかったかもだけど、会場のカメラに泣いてた人映ってたしな!」

「えっ、そうなの。それは本当に……嬉しいわ。」

「もぅーーーー本当にすごかったんだからな!美優さん、自分で気づいてないかもしれないけどさ。へへっ……でもわたしは、美優さんも知らない美優さんのすごいところ知ってるんだ!」

目の前にいる彼女の言葉を聞いて、ふと昔のことを思い出す。
私の友人たちは、私の何を見てくれていたのだろうか。
あの時見つけられなかった答えは、今なら見つかるのだろうか。
それとも、まだ見つからない───もう見つからないのだろうか。
もしかしたら、でも。見つける必要だって、ないのかもしれない。

「───奈緒ちゃん。」

「ん?どうした?美優さん。」

「私、その……いいえ、これはライブが終わってから話すわ。今は、まだあのステージが残っているものね。」

「……そうだ。わたしたちを待っている人たちが、まだいるもんな。じゃあ、これから最高のライブをして、その後一緒に帰ろうよ!わたしも今日はホテルに泊まるし。」

「…うん。じゃあ奈緒ちゃん、お互い、頑張りましょう。」

「ああ!」

差し出した手と手が結ばれる。
繋いだその手は、離さないで。
一瞬の現実に、永遠の魔法を乗せて。

お願い、シンデレラ。


9: 令和まで@27:33:53 平成31年 04/29(月)20:26:07 ID:LBD




ライブの後。
私と奈緒ちゃんは連れ添って帰り、奈緒ちゃんが宿泊するホテルの最寄りの駅までたどり着いた。
駅の周りにたむろするタクシーが光を連れていく。
一台、二台。続いて三台、もう一台。
車の顔についた二つのライトが方向を変え、そしてまた新しいライトが私たちを照らす。
冬のこの時間にもなれば、そうそう用事もなければ出歩かないはずだが、駅の周りにはまだ人が散見される。
風景に、人が溶けていく。ライトに人が混じり、赤、青、黄色。
黒いキャンバスにまあるいパステルカラーが並ぶ。

「なあ、美優さん。少しなんか食べてかないか?私、少し小腹が空いてさ」

そう提案する奈緒ちゃんの頬は少し紅く色づいていた。それもそうだ、この寒さの中にいるのだ。
年上なのに少しも気を遣えなくて申し訳ない気持ちになりつつ、私たちは近くのファミリーレストランに入った。


10: 令和まで@27:33:32 平成31年 04/29(月)20:26:28 ID:LBD

ファミリーレストランの中は暖かい光が辺りを包んでいた。店員さんに通された、本来なら4人がけであろうテーブル席。その席に向かい合って座る。
メニューを開き、さあ、何を食べようかと目を輝かせる年下の少女の姿に、なぜだろうか、微笑みが零れる。───そういえば、ファミリーレストランなんて、いつぶりに入っただろう。

ここは私が出すから、奈緒ちゃんは食べたいものを食べて、と告げると、いやそんなの悪い、そういうつもりじゃなくて、などと慌てふためく姿が、やはり私の微笑みを誘う。
結局折れた奈緒ちゃんが、店員さんに静々と注文をする。私は二人で食べるには少し多めの、でもきっと食べきれるであろうシーザーサラダ。

注文を終えたら、二人だけの反省会。もっとこうすればよかった、もっとこういうパフォーマンスもありだった、という話から、やはりお互いがお互いを褒める方へ話がシフトしていく。
奈緒ちゃんが私を手放しで褒めてくれるのが嬉しくて、私の方も奈緒ちゃんの好きなところを次々と口にする。

友達を大事にできる優しさ。しかし馴れ合いではなく、規律を保つ姿勢。そして自分を持ち続ける強さ。

そう言った「かっこいい」部分が、私に取っても憧れなのだ、と。本音が口をついて出てくる。
お互いがお互いを赤面させたのち、注文した食品が運ばれてくる。

熱いチーズがたっぷりかかったドリア。ホクホクのポテトフライ。そして薄い生地の上に、少しスパイスを効かせたマルゲリータ。

満面の笑みでチーズを口から伸ばす奈緒ちゃんは、どうにかしてこのままこの瞬間が続いてくれないかな、と思わせてくれるくらいに、その、なんというか。
こういう思いを、年下とはいえ先輩でもある、何より世間を魅了するトップアイドルの少女に抱いてしまうのは失礼なのかもしれないけど。
でも、そう思ってしまったのだから仕方ない。このことは、楓さんたちには絶対に内緒にしなければいけないけど、そう思ってしまったのだから仕方ないのだ。

「奈緒ちゃん、可愛い……」


11: 令和まで@27:33:15 平成31年 04/29(月)20:26:45 ID:LBD



そうして時間が進む中、奈緒ちゃんがなんの気なしにつぶやいた一言。

「雪っていいよな。冬ーって感じがするし、冷たくてワクワクするし、何より綺麗でさ。」

という一言が、ハッと私の意識を回復させた。

「な……なら、奈緒ちゃん。その、今度、私の実家に来てみない?私の実家は岩手だから、この時期は雪景色が広がっているわよ?」


「────え、いいのか!?」
「ええ。奈緒ちゃんさえ良ければ、私はぜひ。」
「マジかーーーー!!行く行く!!絶対行くよーーー!!ありがとう美優さん!」
「ふふ。奈緒ちゃんが喜んでくれて嬉しいわ。私は、母と父に連絡するから、奈緒ちゃんもお母様やお父様に一言連絡しておいてね?」
「うん!任せろー!へへっ。いやーーー楽しみだなーーー!!岩手の雪景色!」

ともすると、この会話は他の人に聞かれたら少しまずいかもしれない。
でも、お互いの合意があってのことだし、保護者の方からも許可をいただけるのなら、その。
と、とにかく!私は単純に奈緒ちゃんに喜んでもらおうと思ってのことなので……

「そ、そうそう奈緒ちゃん。まだお腹空いてない?」
「ん?あ、えーと……うん、大丈夫だぞ!たくさん注文させてもらったしな!」
「でも、だいぶ前に食べちゃってからは、ドリンクバーに何回も行っているから、まだ足りないのかなって……」
「……えーと、その…」
「?」
「だ、だってさ…!いっぱい食べる、と思われるの、恥ずかしいじゃんか……」

誰かが私の中で鐘を鳴らした気がした。その鐘は福音であったかもしれないし、警鐘であったかもしれない。
とにかく、そういったわけで、私は奈緒ちゃんを実家にお誘いすることに成功してしまったのである。


12: 令和まで@27:32:48 平成31年 04/29(月)20:27:12 ID:LBD



「ただいま、お母さん。」

「おかえり、美優。そして、いらっしゃい、神谷さん。」

「こんにちは!お世話になります。これ、千葉からのお土産です。良ければ、どうぞ!」

「あらあら、ご丁寧にありがとうございます。何にもないところだけど、ゆっくりしていってな。」

「はい!ありがとうございます!」

12月31日。走る師も仕事納めの、今年最後の一日。
少女を伴い、久々の帰省を果たした私は、母に簡単な挨拶をした後、父の書斎へと向かう。


13: 令和まで@27:32:33 平成31年 04/29(月)20:27:27 ID:LBD

母にはアイドルをしていることが知られてしまったが、私から正式に父に伝えたことはなかった。
なんのために大学に行かせたと思っているのか。
親にも相談しないで、勝手に大事なことを決めて。
そう叱責されるものとばかり思っていたけど。

「──ただいま、お父さん。」

「ああ、おかえり。」

「お父さん、私……」

「ああ、いい顔をするようになったね、美優。」

「──え?」

「いい顔をするようになった。うん、アイドル、楽しくやっているみたいだね。」

「え、ええと、お父さん……怒って、いないんですか?」

「なぜだい?娘が楽しく人生を送っているんだ。応援こそすれ、それを叱る親なんていないさ。」
「で、でも……!私、お父さんにもお母さんにも相談せずに、勝手に……!」

「そうさ。自分の人生を、自分で決められたんだ。素晴らしいことじゃないか。」

その言葉が聞きたかったわけではないのに、その言葉を聞いた途端、目に涙が溢れてきた。
涙が止まらない。二の句が継げない。体が少し震えている。
でも、決して寒くはない。辛くもない。悲しくもない。

「まあ、一つ怒っていることがあるとしたら、やっぱり母さんには伝えてあげなさい、ということだね。誰よりも何よりもお前を愛してくれて、何があっても味方でいてくれるのは、」母さんなんだからね。」

塞きが外れた感情をなんとか押しとどめ、小さく、はい、と返事をする。
こうして私、三船美優は。

ようやく、故郷に戻ってきたのである。


14: 令和まで@27:32:05 平成31年 04/29(月)20:27:55 ID:LBD



それから数日、わたしはとても楽しい日々を過ごさせてもらった。

美味しいご飯に綺麗な布団。立てかけてある家族写真は、なぜだかわからないけど、どこか懐かしくて。

そして噂に違わぬ、雪景色。
夢の中で兎が跳ねる月、というのはこういう景色なんだろうか。
蘭子と珠美が雪にダイブしてたけど、ああ、気持ちはわかるよ。


美優さんと一緒に雪合戦をして、かまくらを作って、雪だるまを作って。
シャワーを浴びて、貸してもらった半纏を着たら、お餅を食べよう。
お正月特番に出るわたしたち。自分が出演するテレビ番組を見るのはいまだに慣れないけど、こうやってワイワイ言いながら過ごすのは悪くない。

でも、奈緒ちゃんがすごく可愛くて、なんて自慢げに私のことを喋るのにはちょっと困った。だ、だって、は、恥ずかしいじゃんか。
そんなことないって反論したいけど、反論するより前にみかんを私の口に突っ込まれる。
なんとかみかんを消化すると、今度はお母さんが芋煮汁を持ってきてくれる。
本場は山形?仙台?らしいけど、各家庭にそれぞれの味があるらしい。
美優さんの家の芋煮汁は醤油ベースで、でも少し甘めの味付けにしてあって。
一口飲むと、体の中からぽかぽかする。
み、美優さん…そんなニコニコしながら私が食べてるところを見てなくても…

あ。

そういえば美優さん、美優さんのプロデューサーと良い感じなんだよな。

と、そういうことを「ふと」「偶然」「思いがけず」こぼしてしまった。
その後は美優さんが赤くなる番だ。美優さんのお母さんは根掘り葉掘り聞こうとするし、お父さんは興味がないようなふりをしていても、耳だけは会話に参加している。

ちょっと美優さんには申し訳ないよなぁ、と思っていたけど、その後美優さんからも反撃があったから、それはおあいことして良いだろう。


15: 令和まで@27:31:49 平成31年 04/29(月)20:28:11 ID:LBD



そんなこんなで1月3日。
今日は日帰りで温泉に行った後、そのまま二人で東京(私は千葉だけど)まで帰る予定だ。

温泉には美優さんのお父さんとお母さんが車を出してくれた。温泉から歩いて行ける距離に駅があるみたいなので、そのまま帰ると伝えたら、お土産をいっぱい持たせてくれた。
「いつだって遊びに来てくれて良いからね。」
という言葉に少しの寂しさと、たくさんのありがとうを思い起こさせる。


お湯の温度はやや熱め。
髪をお湯につけないように、軽く縛る。
手に取るひとかけらの冷たさがお湯の中で溶けていく。

「はぁーーーーーーーーーーーーー。極楽。」
「奈緒ちゃん、ちょっとおじさんみたいですよ。」
「いやーでもこれはもうそうとしかいえないでしょー。 雪見露天風呂って、人生で一度やってみたいことの一つだったんだけど、叶っちゃったよー。」
「ふふふ。喜んでくれたなら何より。」
「はぁーーー…最高すぎる…」

そのままどれくらい時間が経ったのだろうか。
雫が木から湯へと垂れる。
広がる波紋は同心円状。一つの中心を共有する、円形波。
つう、と指をさして形を崩す。
崩れた位相が、強めあっていた波を消し去っていく。───今度は。


16: 令和まで@27:31:16 平成31年 04/29(月)20:28:44 ID:LBD

「奈緒ちゃんは───」

ん、と目線だけ私に向ける。その頬が紅潮しているのは、今度こそ火照りだろうか。

「奈緒ちゃんは、どうして私と一緒に来てくれたんですか?」
「ん、ん?どうしてったいうか、美優さんが誘ってくれて、私が来たかったから、かな?」
「そ。そうですよね……」

ぴちゃ、と。今度は私の髪から雫が垂れる。
その音が聞こえるくらいに静かな雪中の昼。

沈黙が続く瞬間を破ってくれたのは、やはり奈緒ちゃんだった。

「んー、どうしてかよくわかんないけど、わたし、美優さんといると安心するんだよな。」
「普段の美優さんはさ、物静かっていうか、落ち着いてるっていうか……大人の女性って感じなんだよ。」
「でも、あの時ステージに立つ美優さんはさ、ちょっと違ったんだ。」
「もちろん、前にもいったけど、すげー大人っぽくて、綺麗で、かっこよかった。」

「でも、さ。」

「こういうこと、年上の美優さんにいうのは失礼かもしれないけど。」


「あの時の美優さん、すげー可愛かったんだ。」


「ライトが輝いてさ、真っ白な風景が、見えたんだ。」


「すごく可愛く笑って、歌って、踊ってさ。わたし、ああなりたいなって、本気で思ったんだ。」

だから、と。奈緒ちゃんはわたしの手を取り、目をまっすぐ見つめ、こういうのだ。


「わたしの憧れ、なんだ。美優さんは。」


言い切った奈緒ちゃんの顔が、みるみる赤くなっていく。
でも、きっとそれはわたしも同じだ。

顔が熱い。身体よりも。
降り始めた雪が頬に触れ、熱を奪っていく。
でも、この雪全部が降り終わったとしても。
私たちの熱は、きっと奪いきれないだろう。


17: 令和まで@27:30:50 平成31年 04/29(月)20:29:10 ID:LBD



お互いにそそくさと温泉から上がり、帰り支度をする。
その間、予定の確認くらいの会話はあったけど、とても普通の会話なんかこなせるわけはなかった。
温泉疲れだろうか、奈緒ちゃんは電車に入るやいなや、眠り込んでしまった。

一人無言の、帰りの電車の中。

がたん。
雪景色が、横に流れていく。

がたん。
無限に続くかと錯覚しかねない平地に、境界が訪れる。

がたん。
日が沈み、山際に見える二筋の光の帯が、雪を橙色に染める。

がたん。


18: 令和まで@27:30:15 平成31年 04/29(月)20:29:45 ID:LBD



あの頃の私と、今の私。
何かが変わったかといえば、そうではない。
でも何も変わっていないかといえば、そうでもない。
私は三船美優という存在で、それは昔から変わっていなくて、でも。
プロデューサーさんと出会った。
楓さんや、心さんに出会った。奈緒ちゃんに出会った。

今日(いま)の私は、昨日(かこ)からずっと続いている。
だから、そう。
私は、私を作っている連続的な要素から導かれる。
私という存在の対称性を崩されることがなければ、私が生まれ変わることなんて決してない。
私が急になくなって、わたしが生まれるという不連続な変化が起きることはない。

私は、私でしかないのだ。

だから、今日の出来事だって。
昨日の出来事だって、明日のことだって。
全てが私につながっている。

あの日、ステージに立った私も。
あの日、一歩を踏み出した私も。
あの日、答えを見つけられなかった私も。
あの日、落ちる木の葉に自らを重ねていた私も。

───白無垢だった私も。
───染められるばかりだった私も。

───誰かの憧れになれた、輝く舞台に立った私も。

「奈緒ちゃん。」
「私きっと、奈緒ちゃんが思ってくれているような、かっこいい大人ではないのだけど。」
「でも、私、昔の自分をちょっと認められるようになったの。」
「奈緒ちゃんのおかげ。ありがとう。」

その声が届いたかどうかは、定かではない。
夕日が、窓から差し込む。

その色は、橙色。


19: 令和まで@27:28:29 平成31年 04/29(月)20:31:31 ID:LBD

以上です。
シンデレラガール総選挙も佳境ですが、皆さんの担当がシンデレラガールになれるよう、お祈りしています。
そしてもしよろしければ、三船美優、そして神谷奈緒にもご投票よろしくお願いします!





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