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卯月「961プロでもがんばります!」

1: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:18:26.93 ID:Qe6qnj5no

卯月「CGプロから移籍してきた島村卯月ですっ。これからよろしくお願いします!」

北斗「チャオ☆ こちらこそよろしくね、エンジェルちゃん」

翔太「やっぱり女の子がいると華やかになっていいよねぇ」

黒井「フン。前の事務所でどう扱われていたかは知らんが、ここでの甘えは許さんからな」

卯月「はい、がんばりますっ!」

冬馬「…………」


3: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:29:10.50 ID:Qe6qnj5no

北斗「それにしても、まさかCGプロがいきなり経営破綻するとはね……」

黒井「無計画にアイドルを雇いすぎた弊害だ。愚民は愚民なりに努力していたようだが、所詮は愚民だな」

卯月「うう……愚民でごめんなさい……」

翔太「で、でもさ! 卯月ちゃん自身は悪くないっていうか、黒ちゃんに拾ってもらえたワケだし?」

卯月「は、はいっ。黒井社長には感謝してます!」

黒井「ウィ。もっともその分、馬車馬のように働いてもらわねば困るがね」

冬馬「……けど、CGプロのアイドルって100人以上いたんだろ? 他の奴等はどうしたんだ?」

卯月「えっと……私と同じで移籍した人もいるんですけど、ほとんどのアイドルは……」

冬馬「辞めちまったのか……」

黒井「ハッ! この業界では珍しいことではない。いちいち感傷に浸るんじゃない!」

卯月「すっ、すみません……」


4: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:30:39.24 ID:Qe6qnj5no

黒井「フン、まあいい。くだらん話はその辺にして、今後の予定についてだが」

卯月「はいっ」

黒井「当分はジュピターに付き合ってトレーニングだ。その他は追って指示する」

卯月「わかりました!」

冬馬「オッサン。俺、今日は朝からトレーニングだけど……それにも付いてこさせんのか?」

黒井「無論だ。961プロの一員となった以上、無駄な時間を過ごさせる訳にはいかん!」

卯月「が、がんばります……」

黒井「あと、移籍直後では右も左も分からんコトが多いだろう。誰かに面倒を見させるか……」


5: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:33:13.96 ID:Qe6qnj5no

冬馬「――で、当分は俺がアンタをサポートすることになった。よろしくな、島村」

卯月「こちらこそ、よろしくお願いしますね! 鬼ヶ島羅刹さん!」

冬馬「……そのボケにも慣れたし、もう突っ込まねーぞ」

卯月「あれ? 城ヶ崎美嘉さんでしたっけ?」

冬馬「それはテメーんトコのアイドルだろ!」

卯月「えへへっ。ちょっとした冗談ですよ、天ヶ瀬冬馬さんっ」

冬馬「わ……分かってんなら最初からそう言えよ! ったく……」


6: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:35:31.87 ID:Qe6qnj5no

冬馬「それにしても意外だったな。オッサンがアンタを引き取ったのは」

卯月「こういうのって珍しいんですか?」

冬馬「オッサンは完璧主義者だしな。倒産した事務所のアイドルを雇うなんて未だに信じられねぇ」

卯月「じゃあ、どうして私なんかが……」

冬馬「さぁな。女性アイドルを増やすとか、黒が似合うとか、それくらいの理由じゃねーのか」

卯月「黒が似合うなんて言われたこと無いですよ?」

冬馬「例えばの話だっての。オッサンも大概変人だから、何考えてるかなんて分かんねぇし」

卯月「……私より、凛ちゃんや未央ちゃんの方が凄いと思うんだけどなー」


7: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:39:01.51 ID:Qe6qnj5no

公園――


卯月「はぁっ、はぁっ……疲れたぁぁ~」

冬馬「ふぅ……今のランニングで、午前のトレーニングは終了だぜ」

卯月「ジュピターさんって、いつもこんなキツい練習してるんですか?」

冬馬「慣れれば大したことねぇよ。それより、島村も意外とやるんだな」

卯月「はい?」

冬馬「途中でヘバったりしなかっただろ。CGプロ最古参アイドルは伊達じゃねえな」

卯月「そ、そうですか? えへへ……」


8: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:40:28.14 ID:Qe6qnj5no

グゥゥゥゥ……

冬馬「なんだ? 今の音」

卯月「す、すみませんっ……私のお腹の音です……」

冬馬「……そういや、もう昼だな。俺も腹減ってきたし、一息入れるか」

卯月「あっ! それなら天ヶ瀬さん、一緒にお昼に行きませんか?」

冬馬「……なんでだよ?」

卯月「せっかく同じ職場で働くんですから、仲良くしといて損は無いですよ!」

冬馬「いや、悪いけど遠慮するぜ。女とメシ食ってもいまいち盛り上がらねーしな」

卯月「あっ……もしかして、男の人の方が好きとか……」

冬馬「おい待て。絶対誤解してるだろアンタ」


9: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:43:45.63 ID:Qe6qnj5no

冬馬「結局、一緒に来ちまった……」

卯月「近くにファミレスがあって良かったですね! 私、オムライスとレモンティー!」

冬馬「カルボナーラとクリームソ……アイスコーヒー」

卯月「……今、クリームソーダって言いませんでした?」

冬馬「言ってねぇ」

卯月「天ヶ瀬さんって甘い物好きなんですか?」

冬馬「言ってねぇって言ってるだろ!」

卯月「私、美味しいジェラートのお店知ってますよ!」

冬馬「…………」


10: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:45:36.37 ID:Qe6qnj5no

事務所――


卯月「午後は何をするんですか?」

冬馬「ビデオでライブの研究だ。こうして勉強しとかないと、すぐ新鋭に追い抜かされるからな」

卯月「ニュージェネレーションのビデオもあるかなぁ」

冬馬「事務所には無い。ピンキーキュートもな」

卯月「えっ……」

冬馬「前に探したんだよ。自撮りのヤツなら俺ん家にあるけど、ブレまくりで参考にならねぇし」

卯月「……そっか。残念……」


11: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:48:54.32 ID:Qe6qnj5no

北斗「チャオ☆」

卯月「あっ、伊集院さん」

北斗「北斗でいいよ、エンジェルちゃん。ビデオの研究なら俺も混ぜてもらおうかな?」

冬馬「そうしろよ。そろそろ翔太も営業から帰ってくる頃だしな」

卯月「あ、私ジュピターのライブ映像が見たいですっ」

北斗「残念、エンジェルちゃんは社長からお呼び出しだよ。午後はそっちの予定で埋まるだろうね」

卯月「えぇ~っ?」

冬馬「呼び出しって……ああ、アレか。そりゃ午後は埋まっちまうだろうな……」

卯月「……?」


12: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:51:29.45 ID:Qe6qnj5no

ガチャッ


卯月「失礼しまーす。社長、私にお話があるって聞いたんですけど……」

黒井「ウィ。まずは座るがいい」

卯月「は、はいっ」ガタッ

黒井「移籍初日ということで、今日は我がプロダクションの理念について話しておく」

卯月「理念……ですか?」


13: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:55:07.49 ID:Qe6qnj5no

黒井「今のお前は961プロのアイドルだ。今後、CGプロでの記憶は一切捨て去ってもらう」

卯月「…………」

黒井「961プロの理念を正しく理解し、それに則った活動をしろ。それが王者への道と知れ」

卯月「……はい」

黒井「そこで、これから3時間かけてお前に961プロの理念を叩き込む」

卯月「さっ……3時間!?」

黒井「言っておくが、私はお前にそれほど期待していない。途中で寝たら即クビだと思うのだな」

卯月「えええぇぇぇぇぇ!?」


14: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 20:58:54.67 ID:Qe6qnj5no

卯月「――はぁぁぁ。疲れたぁぁ……」

翔太「お疲れっ、卯月ちゃん」

卯月「あれっ、御手洗さん。お疲れ様ですっ」

翔太「やだなー。翔太くんって呼んでよ、同じ事務所の子なんだしさっ」

卯月「そうですね……そうだね、かな?」

翔太「それよりクロちゃんの講義? あれキッツイよねぇ。半分くらいは765プロの批判や愚痴だもん」

卯月「ホント……お弁当を胸で温めるとかセクハラの練習するとか、そんな事務所あるワケないよ……」

翔太「だよねー。世の中広いから、意外とあるかもしれないけどね?」


15: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:02:40.09 ID:Qe6qnj5no

一ヶ月後――


卯月「ふぅ……」

冬馬「元気ねーな。最初の頃の『がんばります』はどうしたんだよ?」

卯月「天ヶ瀬さん……」

冬馬「レッスン疲れか? オッサンが完璧だの王者だのうるさいからな」

卯月「それもありますけど。やっぱり、みんなが傍にいないのは寂しいなって」

冬馬「みんなってのは……一緒にやってきたアイドル達のことか?」


16: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:03:59.87 ID:Qe6qnj5no

冬馬「渋谷や本田とはデビュー前からの付き合いだったんだろ」

卯月「はい。それに美穂ちゃんや智絵理ちゃんともお仕事しましたし」

冬馬「小日向と緒方もCD出せたのは良かったな。やっぱ形になるモンは残しておかないとな」

卯月「………………」

冬馬「なんだよ?」

卯月「い、いえっ! なんでもないです……」


17: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:07:52.26 ID:Qe6qnj5no

冬馬「とにかく、気持ち切り替えてけよ。人の心配してる余裕なんて無いだろ」

卯月「そうですけど……」

冬馬「島村だって将来どうなるか分からないぜ。オッサンの気分次第なトコもあるしな」

卯月「き、気分って……私、社長に拾ってもらえなかったら受験しなきゃいけなかったのに……」

冬馬「受験って、高校受験か?」

卯月「違います! 大学受験ですよっ!」

冬馬「えっ」

卯月「えっ……」

冬馬「し……島村って高3か? だったら俺とタメじゃねーか!」

卯月「いまさら!? もう会ってから一ヶ月も経ってますよ!?」


18: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:12:36.73 ID:Qe6qnj5no

冬馬「中3か高1くらいだと思ってたぜ……だったら、なんで俺に敬語使ってんだ?」

卯月「なんででしょうね。最初に会った時にそうしてたから、なんとなく」

冬馬「タメなら気にすんなよ。別にそうでなくてもゴチャゴチャ言わねーけどな」

卯月「そう? じゃあこれからはもっとフランクに話すね、冬馬くん!」

冬馬「……切り替え早えーな。しかもいきなり名前で呼びやがった……」

卯月「あっ、ごめんね。イヤだった?」

冬馬「べ、別にイヤってワケじゃねーけどよ……」

卯月「良かったぁ! 冬馬くんも、卯月って呼んでくれていいよ?」

冬馬「お、おう……気が向いたらな……」


19: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:16:01.76 ID:Qe6qnj5no

数日後――


卯月「冬馬くん、またおいしいスイーツのお店見つけたよ!」

冬馬「マジかよ! じゃあ今日の仕事あがりにでも……ん? なんだよ、その指の絆創膏」

卯月「これ? ちょっとお料理で失敗しちゃって、えへへっ」

黒井「……おい」

冬馬「げっ、オッサン……!」

黒井「お前達、最近随分と親しげじゃあないか? んん?」

卯月「はい! 私達、とっても仲いいですから!」

冬馬「あ、バカ……!」


20: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:20:56.09 ID:Qe6qnj5no

冬馬「マズい、怒られるぜ……」

卯月「え? どうして?」

冬馬「『王者は孤独なもの』ってのがオッサンの持論でよ。馴れ合いとか大っキライなんだよ……」

卯月「ええぇぇぇ!!」

黒井「…………フン。じゃれあって961プロの品格を下げるようなことだけはしてくれるなよ」


バタンッ


卯月「あれ……?」

冬馬「……オッサンって、あんな寛容なこと言うヤツだったかな」

卯月「きっと一人ぼっちは寂しいって気付いたんだよ!」

冬馬「ねーよ。オッサンに限ってそれは無いって」


21: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:24:06.20 ID:Qe6qnj5no

黒井「………………」

北斗「どうも、社長」

黒井「北斗か。用なら手短に済ませろ」

北斗「では単刀直入に。あのエンジェルちゃんを受け入れたのは、何故ですか?」

黒井「…………」

北斗「俺たち3人が馴れ合うことすら好ましくないと思う貴方が、どうして……」

黒井「…………」



黒井「……冬馬のガキっぽさを改善するためだ」

北斗「…………は?」


22: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:26:46.94 ID:Qe6qnj5no

黒井「冬馬といえば、思い立ったら一直線、熱血漢、子供心を忘れない大人……」

北斗「…………」

黒井「どれも聞こえはいいが、実際はただのガキだ。あのままではトップアイドルにはなれん」

北斗「子供っぽいところもアイツの長所ですよ」

黒井「それを計算で出せるようにしてこそ完璧と言えるのだ! 現に先日のドラマ撮影も……」

北斗「あぁ……女優と見つめ合うシーンやキスシーンで、10回以上NG出してましたね」

黒井「あの童貞臭さはなんとかならんのかと頭を抱えていたのだが……」

北斗「それで、エンジェルちゃんで女性に免疫を付けさせようと?」

黒井「そうだ。冬馬と同い年、しかも人当たりが良いと評判のアイドルだったからな」

北斗「なるほど。CGプロが倒産して彼女がフリーになったのは、社長にとって僥倖だったんですね」


23: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:30:55.06 ID:Qe6qnj5no

北斗「でも、そうすると冬馬の性格が改善されたら……」

黒井「当然、島村はお払い箱だ。ただの一般人に戻ってもらう」

北斗「それは、あんまりじゃないですか?」

黒井「なんだと?」

北斗「彼女はウチのレッスンにもついてきてます。それに、この前のライブだって……」

黒井「それが何だ? ヤツがいるとジュピターの人気にも影響が出る以上、長居させるメリットが無かろう」

北斗「……俺たちの人気って……何の話です?」

黒井「なに? 島村はお前達に話していないのか。チッ、余計な気遣いをしおって……」

北斗「…………」


24: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:35:27.63 ID:Qe6qnj5no

北斗「――ってことらしいんだよね」

卯月「そんな……私、せっかくアイドル続けていけるって思ってたのに……」

翔太「用済みになったから捨てるってこと? さすがに酷くない?」

冬馬「…………」

北斗「……どうしたんだ、冬馬」

冬馬「あのよ……島村って初対面の時から、やけに俺たちに親しげだったよな」

卯月「そ、そうかな? 自分じゃよく分からないけど……」

冬馬「それって最初からオッサンと画策して、俺の性格を治すのが目的だったのかよ?」

卯月「えっ……」

冬馬「ファンとかじゃなくて、本当の自分を見てくれる女がいるって……」

翔太「冬馬くん……?」

冬馬「そう浮かれてる俺を、影で笑ってたんじゃねーのか?」


25: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:38:29.42 ID:Qe6qnj5no

卯月「ちっ、違うよ! 誰に言われたとかじゃない! それに私、そんなに器用じゃないもん!」

翔太「だよねー。卯月ちゃん、どっちかっていうと冬馬くんタイプだもん」

冬馬「……いや待て。どういう意味だ、オイ」

翔太「マイペースで天然入ってるってこと」

卯月「それ、未央ちゃんに言われたことある……」

北斗「自分らしさを失わないっていうのかな。どんな時でも変わらない、見てると安心するタイプだね」

卯月「それは凛ちゃんに言われた……」

冬馬「…………」


26: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:42:10.81 ID:Qe6qnj5no

冬馬「分かったよ……お前に限ってそりゃねーよな。疑って悪かった、卯月」

卯月「……名前で呼んでくれた。えへへっ」

冬馬「う、うるせぇ! そこはスルーしろよ!」

翔太「ちょっとー。そういうの後にしてくんない?」

北斗「そうそう。このままだとエンジェルちゃんがまたクビになっちゃうからね」

卯月「あ……そうでした……」

冬馬「とにかく、オッサンをなんとか説得するしかねぇだろうな」

北斗「俺としては、彼女がいるとジュピターの人気に影響が出る、って言葉が気になってるんだよね」

冬馬「……卯月、何か心当たりとかねぇのか?」

卯月「…………実は……」


28: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:45:23.93 ID:Qe6qnj5no

冬馬「――オッサン! どういうことだよ!」

黒井「何事だ、騒々しい。我が961プロのアイドルとしてもっと品性を……」

冬馬「んなことどうでもいい! 聞いたぜ、ファンレターの話」

黒井「ほう、今頃話したのか、島村。とうに冬馬達に泣きついているものと思っていたが」

卯月「…………」

翔太「ホントなの? 卯月ちゃん宛のファンレターに、カミソリが入ってたって話」

黒井「フン……事実だ。一通や二通じゃなく、大量にな」

冬馬「……あの絆創膏、もしかして」

卯月「うん……封を開けた時にスパッて切っちゃって……」


29: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:49:25.56 ID:Qe6qnj5no

北斗「脅迫まがいの手紙や殺人予告まであったそうですね」

黒井「ああ。島村の移籍や、冬馬との馴れ合いがジュピターのファンには不快だったようだな」

冬馬「だからって卯月をクビにすんのはおかしいだろ! 元々はオッサンの策略が原因じゃねーか!」

黒井「それが何だ? 島村の存在がジュピターのイメージダウンに繋がるのは間違いないのだ」

冬馬「……相変わらず、アイドルを商品としてしか見てねーのかよ」

黒井「冬馬の性格改善という意味では価値ある商品だったぞ。が、不要になった商品は廃棄するものだ」

冬馬「オッサン……」


32: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:52:11.86 ID:Qe6qnj5no

卯月「……わかりました。私、辞めますっ」

冬馬「!?」

卯月「私がいたら冬馬くん達が困ると思いますし。それに辞めたって、夢を諦めるわけじゃありませんから!」

黒井「ほう、冬馬より余程聞き分けがいいな」

北斗「……エンジェルちゃんはそう言うけど。このアイドル戦国時代、簡単には再起できないよ?」

卯月「私もそう思います……でも……」

翔太「ま、待って! じゃあこうしようよ!」

冬馬「翔太……?」

翔太「来月のフェス。僕達が相手に10倍以上の票差を付けて勝ったら、卯月ちゃんをクビにしない!」

黒井「……なんだと?」


34: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:56:20.39 ID:Qe6qnj5no

翔太「卯月ちゃんのせいで僕達の人気が落ちてるとしたら、10倍以上の差なんて無理だよね?」

冬馬「会場の収容人数が5万人だから、4万6千票くらいは必要だな……」

北斗「それに来月のフェスといえば、相手は強豪の765プロ。絶望的と言っていい」

黒井「…………」

翔太「もちろん、宣伝妨害とかの小細工も無し! それで黒ちゃんのメリットが何かって言うと……」

黒井「正当な方法で765プロに圧勝できれば、765プロ人気は一気に地に落ちる、ということだな」

翔太「そうそう。圧勝できなかったら、残念だけど僕達も卯月ちゃんのことは諦めるからさ」

黒井「……ククッ、いいだろう。それでお前らが納得するならば、それに越したことは無い」

翔太「よし、決まりだね!」


35: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 21:58:07.37 ID:Qe6qnj5no

冬馬「翔太……お前すげぇよ」

翔太「いやいやー。黒ちゃん、765プロ大嫌いだからねぇ」

北斗「こういう柔軟な発想は翔太ならでは、だね」

冬馬「とりあえず、そうと決まれば特訓しようぜ。来月となるとあまり時間もねぇしな」

翔太「そだね!」

北斗「エンジェルちゃんを助けるために、少しは頑張らないとね」

卯月「……ありがとう。みんな、ありがとう……!」



黒井「…………」


36: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:01:01.21 ID:Qe6qnj5no

そして、フェスの後――



冬馬「終わったな……」

北斗「いいフェスだったよ。二人とも、お疲れ様」

翔太「お互い死力を尽くしたーって感じだったね!」

冬馬「ああ。俺たちは正面から765プロと戦って……正真正銘、勝ったんだ」



冬馬「25,200票 対 24,800票。たったの400票差……」


37: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:03:40.22 ID:Qe6qnj5no

冬馬「卯月……悪い、全然ダメだった。765プロのヤツら……マジで強かった」

卯月「い、いいよっ、謝らなくて! みんなが頑張ってくれて、私、本当に嬉しかったもん!」

翔太「でも、これじゃあ卯月ちゃんが……」

卯月「だいじょうぶ! 島村卯月、また1からアイドル目指してがんばりますっ!」

冬馬「…………」

北斗「……しょうがないね。社長との約束だ」

冬馬「そういえば、そのオッサンは?」

黒井「おのれぇぇぇ……気に食わんぞ!!」

冬馬「……ん?」


38: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:06:16.05 ID:Qe6qnj5no

黒井「私の想定では、10倍ではなくとも5倍程度の差がつくハズだった! なんたる醜態だ……!」

北斗「……社長も大外れだったんですね」

黒井「やはり近年の女性アイドル人気に押されている! 高木のヤツ、女ばかり集めおって!」

冬馬「逆恨みじゃねぇか。それに、ウチにも女のアイドルは沢山いるだろ?」

黒井「奴等にはスター性が無い! お前らジュピターのような素質がまるで無いのだ!」

翔太「あはは……これ、褒められてるのかな?」

黒井「クソッ、高木めぇぇ…………んん?」チラッ

卯月「?」

黒井「…………」


39: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:08:56.06 ID:Qe6qnj5no

黒井「……これだ! いるではないか、我がプロダクションにも女性の逸材が!」

卯月「え?」

黒井「天然、マイペース、女子高生、豊満な尻! 性格は無個性、故に無個性という個性がある!」

卯月「……無個性……気にしてるのに……」

黒井「いいだろう。島村卯月、お前は女性版ジュピターのメンバー1号だ!」

卯月「は……? え、えぇ~~~~~~っ!?」

翔太「ちょちょちょ、ちょっと待って! 何言ってんの!? 黒ちゃんとの約束は?」

黒井「約束ぅ? なんだそれは? 約束と言うからには契約書の1つでもあるのだろうな?」

翔太「……無いけど……」

黒井「島村には新たな商品価値がある。それはお前達にとっても願ったり叶ったりだろうが」

冬馬「そうだけどよ……アンタ、それでいいのか?」

黒井「フハハハハ! 勝つためには手段を選ばん、それが私のポリシーだ!」


41: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:12:04.36 ID:Qe6qnj5no

後日 天ヶ瀬家――


翔太「じゃあ、今日は祝勝会兼、卯月ちゃんのアイドル続行を祝って」

「「カンパーイ!」」

冬馬「……で、今更なんだけどよ。なんで会場が俺ん家なんだ……?」

翔太「いいじゃん、広いんだからさ」

冬馬「確かに親父は単身赴任だし、母さんは亡くなったから、家には俺1人だけどよ……」

卯月「冬馬くん、お母さん亡くなってるんだ……」

冬馬「気にすんなよ。もう昔の話だしな」

北斗「そういえば……冬馬の家って何度か来てるけど、冬馬の部屋には入ったことないよね」

冬馬「絶対見んなよ! 絶対だぞ!」

翔太「分かってるってー」

冬馬「ホントかよ……ちょっと台所からツマミ持ってくるから大人しくしてろよ?」


42: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:14:58.14 ID:Qe6qnj5no

翔太「ということで、冬馬くんの部屋の前に来ました」

卯月「や、やっぱりやめた方が……」

北斗「と言いつつエンジェルちゃんも来てるよね」

卯月「だ、だって気になるよっ。男の子の部屋って入ったことないし……」

翔太「じゃ、冬馬くんの部屋に侵入開始~♪」


ガチャッ


43: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:17:54.90 ID:Qe6qnj5no

冬馬「お前ら! 俺の部屋には入るなって……」

卯月「…………」ポカーン

北斗「…………」ポカーン

翔太「…………」ポカーン

冬馬「うっ……うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

北斗「CD、グラビア、Tシャツ、うちわ、フィギュア……」

翔太「み、見事なまでにアイドルグッズの山だねぇ……」

卯月「………………」

冬馬「見るな! 見るんじゃねぇぇぇぇ!!」


44: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:20:29.07 ID:Qe6qnj5no

翔太「特に卯月ちゃんのグッズが圧倒的だよ。こんなにいっぱいあるし」

北斗「冬馬、お前……」

冬馬「だから入るなっつったろうが!!」

卯月「…………」ポカーン

翔太「あーあ、卯月ちゃん固まっちゃったー」

冬馬「あっ……いや卯月、これは……」

卯月「…………」

冬馬「……違うんだ」

翔太「何が?」


45: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:23:11.64 ID:Qe6qnj5no

冬馬「よく考えろよ。同じ事務所のメンバーのグッズくらいは持っておくべきだろ?」

卯月「そ……そうなんだ?」

北斗「確かに、俺も冬馬や翔太のグッズはいくつか持ってるしね」

翔太「僕も僕もー」

冬馬「ほらな。それが普通なんだよ」

卯月「そ、そっかぁ……ところで、この私のフィギュアなんだけど」

冬馬「あ? フィギュア?」

卯月「パンツがブルーのストライプだね。でもこれって、初期生産でしか作られてないんだって」

冬馬「えっ」


46: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:24:42.64 ID:Qe6qnj5no

卯月「私のイメージに合わないからって、すぐ白に変更されたから……」

翔太「その初期生産っていつ頃の話?」

卯月「……半年以上前、かなぁ」

冬馬「…………」

卯月「…………」

冬馬「……そうだよ、元からファンだったよ! アイドルがアイドルのファンじゃいけねーってのかよ!?」

翔太「わぁ、盛大に開き直ったね」

冬馬「961プロに卯月が来た時、正直テンション上がっちまったよ……もう責めたきゃ責めろよ……」

卯月「…………」


47: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:28:14.16 ID:Qe6qnj5no

卯月「あの……別に私、イヤじゃないよ? むしろ嬉しいなって思うし!」

冬馬「嬉しい……?」

卯月「うん。冬馬くんが私のこと見てくれてるんだなって感動しちゃった! ありがとうっ」

冬馬「……卯月」

北斗「本物のエンジェルだな。眩しすぎて直視できないよ」

翔太「普通はドン引き物だもんねぇ」

卯月「もともと、冬馬くんがそうじゃないかなっていうのは、ちょっと思ってたから」

冬馬「……気付いてたのか?」


49: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:31:54.82 ID:Qe6qnj5no

卯月「私がCGプロ最古参って言ってたけど、当時のファンじゃなかったら知らないと思うし」

冬馬「…………」

卯月「ニュージェネレーションやピンキーキュートのビデオも、私が来る前から探してたんだよね?」

北斗「…………」

卯月「そのピンキーキュートの美穂ちゃんや智絵理ちゃんがCD出したことも知ってたね」

翔太「冬馬くん、隠す気ないでしょ?」

冬馬「いや、全力で隠してたつもりだ……」

卯月「あはっ! 冬馬くんって面白い人だよねっ」

北斗「ああ、気付いちゃった? 冬馬って本当は面白いヤツなんだよ。普段は無愛想だけどね」


50: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:35:59.22 ID:Qe6qnj5no

翔太「良かったじゃん、秘密の趣味も受け入れてもらえて。これで安心して告白できるね!」

冬馬「…………は?」

卯月「こくはく?」

北斗「それも気付いてなかった? 冬馬のヤツ、エンジェルちゃんにベタ惚れだよ」

冬馬「ちょっ……テメェ、何言ってやがる!」

卯月「え……えぇぇぇ? ウソ、だよね?」

冬馬「………………」

卯月「…………」

冬馬「…………」

卯月「……えええぇぇぇ~~~っ!?」

翔太「卯月ちゃんもたいがいっていうか、この二人ってやっぱり似てるよね」


51: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:38:42.08 ID:Qe6qnj5no

卯月「どっ、どうしようっ……!」

冬馬「落ち着け! どうもしねーよ!」

卯月「ドキドキする……こんなの初めてだよ、助けて凛ちゃん未央ちゃん……!」

冬馬「いいって! 別に俺が勝手にそう思ってるってだけで、何かしてくれってワケじゃねぇから!」

卯月「で、でも! 聞いちゃったんだから、ちゃんとお返事しないとダメだよ!?」

冬馬「いっ……マ、マジかよ……」

卯月「え、えっと……」




卯月「ごっ……ごめんなさい! 私、冬馬くんとはお付き合いできません!」


53: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:42:48.64 ID:Qe6qnj5no

冬馬「だ……だろうな……はは……」

翔太「あ~……ご、ごめんね。僕のせいで気まずい感じになっちゃった」

冬馬「いや、気にすんな。断られるのは分かってたし、むしろスッキリしたぜ!」

翔太「冬馬くん……」

卯月「ごめんなさい……好きな人がいるわけじゃないんだけど、やっぱり私達、アイドルだから」

北斗「ま、自由に恋愛ってわけにはいかないよね」

冬馬「そうだな……」

卯月「せっかくアイドル続けられることになったのに、スキャンダルとかになったら困るし……」

翔太「…………あれ?」


54: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:46:50.79 ID:Qe6qnj5no

翔太「今のさ。アイドルじゃなかったら付き合ってもいい、って聞こえたんだけど」

卯月「あっ……う、うん。そうだよ?」

冬馬「!?」

卯月「冬馬くんは、私にはもったいないくらい素敵な人だと思うんだ」

冬馬「そ……そうか? 大したことねーぜ、俺なんて」

卯月「ううん。私を必死に守ろうとしてくれたし、甘い物も好きだし、グッズも買ってくれてるもん」

翔太「……途中から物欲っぽくなってるけど」


55: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:50:15.12 ID:Qe6qnj5no

卯月「でも……私が引退するまで待ってて、なんて言えないよね……」

翔太「え、なんでさ?」

卯月「いつになるか分からないよ。CGプロには30過ぎてアイドルやってる人もいたし……」

冬馬「なんだよ。つまり、待ってりゃいいのか?」

卯月「え?」

冬馬「じゃあ待つっての。何年でも、何十年でもよ」

卯月「……冬馬くん……」

翔太「大人は色々大変だねぇ。自由に付き合うこともできないなんてさ」

北斗「翔太も、もう少し成長したら分かるようになるよ」


57: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:53:16.05 ID:Qe6qnj5no

翔太「でもこれで卯月ちゃんと仲睦まじくやってれば、冬馬くんは女性に免疫が付きそうだね」

北斗「そうだな。これで冬馬の童貞臭さも無くなるといいんだけどね」

卯月「ど……そ、そうなんだ……」

冬馬「北斗ぉぉぉ! 本当に余計なことしか言わねぇな、お前ら!」

卯月「だっ、だいじょうぶだよ、冬馬くん……わ、私も……だし……」

翔太「卯月ちゃん!? 言わなくていいよ、そういうことは!」

北斗「はは……いいカップルというか、いいコンビだよね。この二人ってさ」



おわり


58: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 22:55:32.97 ID:Qe6qnj5no

読んでくれた人ありがとう
たまにはこういうのもいいよね


65: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/18(火) 23:24:07.73 ID:N+w1Osn9o


なかなか良かった
「豊満な尻!」に笑った





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