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砂塚あきら「餃子、ネバーエンド」

1: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:24:35 ID:uXP

 デレステの夢見りあむは実家で一人ぐらし設定ですが、前作でアパート暮らしとしたのでこのシリーズではこのままアパート暮らし設定で行きます。


2: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:25:02 ID:uXP

【五月二十日午後・某芸能事務所レッスンスタジオ】

砂塚あきら(壁際に座り込んでスマホ確認中)

あきら「うわ、これは……」

辻野あかり「あきらちゃーーーーん!!!(ドバーンとドア開けて登場)」

あきら「わあっ!?」

辻野あかり(以下あかりんご)「あきらちゃんあきらちゃん! 総選挙の結果出てましたよ!!」

砂塚あきら「あ、ああ、出てましたね。それはそれとして突然大声はやめてほしい」

あかりんご「ごめんね! でもりあむさん総合三位! もう学校からここまで走って来ちゃったんご!」

あきら「#なにその体力 ……知ってますよ、速報とか色々みましたから」

あかりんご「だって農家の娘だし、毎日タイヤ引いて走ってるし……すごいですねえ。お祝いしたいねえ」

あきら「#そういう問題か ……あの。あかりチャン」

あかりんご「なしたの?(目キラキラ)」

あきら「い、いえなんでも……まあそうですね。お祝いというか、早めに夢見サンのアパートに行きたいかな」

あかりんご「じゃレッスン終わったら早速行こうよ。ケーキとか色々買ってお祝いしたげなくちゃ」

あきら「いや、たぶんケーキも食べ物もいらないと思いますよ」

あかりんご「え、どうして」

あきら「というか、今日のレッスンはトレーナーさんに頼んで別の日に振り替えてもらおう。同期のお祝いをしたいって行ったらたぶん許してくれるから」

あかりんご「え、でも走り足りない」

あきら「ホントどうなってるのその体力……早くしないと手遅れになりマスよたぶん」

あかりんご「手遅れ?」

あきら「行けば解りマス」


3: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:25:43 ID:uXP

【一時間後/夢見りあむのアパート】

テテーン(餃子の山)

あかりんご「またテーブルに餃子の山が!」

夢見りあむ「やむ(餡をとる)やむ(包む)やむ(ヒダをつける)」

あかりんご「そしてりあむさんが餃子だけを作る機械になってるんご!?」

あきら「あーやっぱり」

あかりんご「やっぱり?」

「りあむサン、りあむサン、ストップ。それ以上作ったら自分ら二人でも食べきれないデスよ」

りあむ「やむ(餡をとる)やむ(包む)やむ(ヒダをつける)」

あかりんご「帰ってこないんご」

あきら「あっ、あんなところに安部菜々ちゃんが」

りあむ「ひいっ!? 苦労も不安も決して表に出さずウサミンをやりとげてきた超推せる第七代シンデレラガール菜々ちゃんが!? ごめんなさいごめんなさい!!」

あかりんご「どうしよう、いつにも増しておかしいんご」

りあむ「ひどいな!! まあそうだけど……ってあれっ、あかりちゃんとあきらちゃん」

あきら「こうなってると思ったんで急いで来ました」

あかりんご「なしたの一体。おめでたい日じゃないですか」

りあむ「なにがおめでたいもんかあ!!」

あかりんご「わあっ!?」


4: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:26:21 ID:uXP

りあむ「あの、なにも解ってないクソ○○○どもが、面白がって、もう、あああもう、ああもう!!」

あかりんご「ちょっと、りあむさん、りあむさん!?」

あきら「#案の定」

りあむ「何がシンデレラガールだよ。なにが3位だよ。ずっとずっと頑張ってきた子がいるじゃん! そういう子が評価されるべきじゃん!まだぼくなんにもしてないじゃん!!」

あかりんご(ぽかーん)

りあむ「知ってるよ! まだぼくがダメダメなことはぼくが一番知ってるよ! 尊くないのもいいとこないのもぼくがいちばん知ってるよ! それをなんだあいつら! 」

りあむ「というか、あかりちゃんたちだってきっとそう思ってるよね!? ぼくみたいなぽっと出がさ、ちょっと目立つだけのダメなぼくがさ、あんな人たちとならんでいいわけが無いって。こんなダメダメなぼくが取っていい順位じゃなかったってさあ!」

あかりんご「え? 全然」

りあむ「 」

あきら「#即答とか」

あかりんご「努力したら必ず豊作になるなんて思ってる農家は居ないんご。努力じゃどうにもならないものに振り回されるのが現実じゃないですか?」

あきら「ご、ごもっともです」

りあむ「あかりちゃんてほんとに15歳かな? かな?」

あかりんご「それに――」

りあむ「そ、それに?」

あかりんご「ううん、それよりまず餃子食べるんご」

りあむ「ぼくより餃子優先!?」

あかりんご「あの美味しいりあむさんの餃子の皮が乾いちゃうなんて耐えられない……!」

あきら「あ、それはちょっと解る」

りあむ「いやちょっと食べる気分じゃないんだけどな!? ぼくとっても傷ついてるんだけどな!?」

あかりんご「食べ物を粗末にするのは許せないです」

りあむ「ひいい!?」

あきら「#眼力」


5: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:26:46 ID:uXP

あかりんご「食べる気ないのに作ったんですか?」

りあむ「や、やだなあそんなわけないじゃん?」

あきら「#眼力」

あかりんご「まあ、とにかく食べちゃいましょうよ。りあむさん、食べてないんでしょ?」

りあむ「う、うん、ずっと作ってたから……」

あきら「このぐらいの量だったら、なんとか三人で食べきれそうデスね。急いで来てよかった」

りあむ「いやあその」

あきら「なんでキョドるんデスか」

りあむ「実は台所にもうちょっと……」

あかりんご「ぎゃー!? 台所にもう一山あるー!?」

あきら「どんだけ餃子つくるの早いんデスかあんたはー!」

りあむ「だって、だってー!!」

あかりんご「これは泊りがけで2ラウンド食べる必要があるんご……!」

りあむ「えっ、泊まってくの?」

あきら「まあ、ちょっとりあむサンが心配だったし。寮には連絡しときます」

あかりんご「たくさん食べて、たくさんお話しましょう! ごはんとか飲み物買ってこなくちゃ」

あきら「りあむサンは餃子焼きながら待っててください」

りあむ「は、はい」

あかりんご「じゃ、いってきまーす!!」

りあむ(ぽかーん)

りあむ「おふとんとかどうしよう……」


6: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:29:07 ID:uXP

【15分後/近所のドラッグストア】

あきら「りあむサンてあの調子だから、SNSでいいオモチャになってるんですよ(買い物籠にコーラを入れながら)」

あかりんご「オモチャ?(買い物籠に山形県産つや姫パックごはんを入れながら)」

あきら「目立つし、つぎつぎ不用意な発言するから面白がられたり、人を怒らせたり。それが収まりようのないぐらい広がって。炎上する――自分の手におえないぐらい騒ぎが大きくなっちゃう」

あかりんご「でも、なんだかんだ言ってりあむさんアイドルには真面目んご」

あきら「ふだんの言動からそういうのが伝わり難いんですね、たぶん。それと」

あかりんご「それと」

あきら「よく言うんだけど、荒らしに一番効くのは無視。これは悪意のある人だけじゃなくてね。わあわあ面白おかしく騒ぎ立てようとする人に一番効果があるのは、無視。だけどりあむさん、そういうのできないでしょ」

あかりんご「あー」

あきら「痛ければ痛いって言っちゃうし、思ったことはそのまま口に出しちゃうし、メンタル弱いくせにへんに攻撃的な言葉使うし。すぐ泣き言言うし――つつけばつつくだけ反応するから面白がられるんデスよ」

あかりんご「それで『面白がって』って?」

あきら「うん……そういう界隈で選挙期間中、盛り上がってたらしい。『夢見がシンデレラガールになったら面白い』って」

あかりんご「……」

あきら「他のアイドル推してるヤツは怒るだろうしあいつはパニックだろうし絶対美味しいって。それ見て『あいつが上位に来たら総選挙の否定だ』って言う人も出てきて――で、実際中間でも今日の最終結果発表でも」

あかりんご「……あ、なるほど。りあむさんは、そういう人たちが票を入れたから自分が凄い順位になった、って思ってる?」

あきら「というか、そういう騒ぎがネットに広がったんでパッと知名度が上がって、面白半分、恐いもの見たさ半分で票を入れた人が沢山いると思ってる――かな?」

あかりんご「うわあ」


7: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:30:15 ID:uXP

あきら「そういう気持ちでいるの、たまらないだろうと思うから――うん。だから早めに会いたくて」

あかりんご「あきらちゃんやさしい……!」

あきら(////)

あかりんご「そしてテレるあきらちゃんが可愛い……ねえ、あきらちゃん」

あきら「な、なに?」

あかりんご「……あきらちゃんも、そうと思う?」

あきら「え?」

あかりんご「面白半分で票を入れた人が、ってやつ」

あきら「どうかな――どうなんだろ」

あかりんご「……」

あきら「自分ら三人はまだ殆ど活動してなくて。ネットってきっかけひとつで信じられないような数の人が動くとこだから……そういうことでもなきゃ、とは思う」

あかりんご「……」

あきら「……ところで、さっきのは何で?」

あかりんご「?(山形県企業蔵王米菓の海老かきもちを買い物籠に入れながら)」


8: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:30:31 ID:uXP

あきら「山形大好きか! いや、どうして餃子優先したのかって。だって今、まさにそこで喚いてるのに。りあむさんだって、声をかけてほしかったみたいだし」

あかりんご「おかあちゃんがよく言ってたんです」

あきら「なんて」

あかりんご「大事な話は飯を食わせてからにしろって」

あきら「ストレートだな!?」

あかりんご「おなか空いてるとすぐ腹がたつし、しぼんだ気分が膨らまないからよくないんだって。ほら、家族の大事な話って、夕食の後にしませんでした?」

あきら「#言われて見れば」

あかりんご「だからまずとにかく絶対食わせるんご。めんどくさい話はそれから!」

あきら「……農家って肝座ってるのかなあ。あかりチャン、さっきの話も凄かったし」

あかりんご「あれは……あはは」

あきら「?」

あかりんご「とにかくまずご飯です! じゃないとお祝いもできないもん(たったか歩いていく)」

あきら「……お祝い、されたくないんじゃないかなあ(とっとこついていく)」


9: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:30:57 ID:uXP

【20分後/夢見りあむのアパート】

あかりんご「というわけで餃子第一ラウンド開始です!」

りあむ「考えてみれば友達が泊まりに来るのって初めてだよ! え、なに? 今日はどういう日? 楽園と谷底がいっぺんに来るのか? 人生最後の日か?(餃子配膳しながら)」

あかりんご「いただきまーす(ぱくり)……はあー、やっぱりりあむさんの餃子はおいしいんご……!」

あきら「どんだけメンタル参ってても餃子はおいしいとか、もはや才能では(ぱくぱく)」

りあむ「えへへ、餃子で食べいくのもいいかなあ……」

あかりんご「餃子やさんってこと?」

りあむ「二人とも僕の餃子、おいしいって言ってくれたよね? ね? やっていけると思わない?」

あきら「まあ、味は間違いなく最高だったデスけど」

りあむ「ねー!?」

あかりんご「でもりあむさんて決定的に対面の客商売に向いてないと思う」

りあむ「反論の余地がない指摘!?」

あかりんご「というか売る算段より今は食べる時んご! りあむさん全然食べてないじゃないですか」

あきら「あ、そういえば」

りあむ「いやほらその―――」

あかりんご「りあむさん」

りあむ「ハイ」

あかりんご「あーんして」

りあむ「あかりちゃんがぼくに餃子を食べさせてくれようとしている!?」


10: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:32:29 ID:uXP

あかりんご「ほら、あきらちゃんも」

あきら「え、自分もやるの?」

あかりんご「もちろん」

「り、りあむさん、あーん?」

りあむ「顔のいいアイドルが2人がかりでぼくに餃子を!? うそだ! ぼくの前世がそんな功徳を積んでるわけがない!」

あきら「ついに自分の前世まで否定しはじめましたよ」

あかりんご「いいからあーん!(ぐいぐい)」

あきら「はい口開けてー(ぐいぐい)」

りあむ「うおあうあえ(ぱくり)」

あきら「#形容しがたい声」

あかりんご「はいもひとーつ(ぐいぐい)」

あきら「次々行きマスよー(ぐいぐい)」

りあむ「ぼくの今日イベント多すぎないかなあ、あっちょっとまっ、むぐううう」


11: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:32:58 ID:uXP

【30分後/同アパート】

あかりんご「はー……(ごろね)」

あきら「食べた食べた……(ごろね)」

りあむ「結局たらふくべさせられちゃった……また胸が太る……(ごろね)」

あきら「微妙に腹立つなあ」

あかりんご「いつもおいしい餃子をありがとうございます!」

りあむ「ま、まあぼくの餃子に惹かれる気持ちはわかるよ?」

あきら「おなかに余裕が出て来たら、あっちの山も片付けないと」

あかりんご「それまでどうしてましょうか。あっ、なんかゲームでも持って来ればよかった」

りあむ「えっ三人でゲーム……い○ストならあるけど」

あきら「友達こないのになんでいた○トあるんですか」

りあむ「そういう残酷なこと聞くなし! 泣くぞ!?」

あかりんご「まあまあ」

りあむ「前に遊ばせてもらったときすごい楽しかったから買ったんだよ。まあ、買ってからやる相手が以内ことに気付いたけどね! ぼくってばか!」

あかりんご「やったことないけどそんな面白いんですか? 楽しみ!」

あきら「そういや自分もずいぶんこういうのやってないや。うん、ちょっと楽しみ」

りあむ「……まあぼくも楽しみだけどさ」

あかりんご「?」

りあむ「気をつかわれてるのがわかりまくりでちょっと楽しむ気になれない……」

あかりんご「ばれちゃってる!?」


12: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:33:40 ID:uXP

りあむ「ぼくだってそのぐらい解るんだぞ? ……あかりちゃんも、どうせもうあきらちゃんからぼくのこと聞いてるんでしょ」

あかりんご「うん、りあむさんは自分をオモチャにしてる人たちのせいでパッと知名度が上がって、面白半分、恐いもの見たさ半分で票を入れた人が沢山いたから、実力もないのに3位になったと思ってるって」

りあむ「  」

あかりんご「りあむさんの呼吸が止まった!」

あきら「あかりチャン加減、加減!」

りあむ「そうだぞ加減してよう! ぼくの心はよわよわだぞ! というかあれじゃん、ここはそんなことないよとか、りあむちゃんは頑張ったし美少女だよって励ます場面じゃないのか! いままでの気遣いはなんだったの!」

あかりんご「言ってあげたいのは山々だけど」

りあむ「山々にこだまするぐらい励ましてよ! ぼくの気持ちを軽くしてくれようとしてるんじゃないのか!」

あかりんご「でも、りあむさんが『そんなことない』って思ってないなら、言ってあげてもちっとも気持ちが軽くならないじゃない」

あきら「ストレートだなあ」

りあむ「うわべだけのやさしい言葉でいいからぼくにおくれよ! ヘラヘラ笑うから!」

あきら「これはひどい」

りあむ「こんばんは今日もクズだよ!」

あかりんご「それに、りあむさんが怒ってたのは、おもちゃにされたからじゃないでしょ」

あきら「ああ、そうか」

あかりんご「りあむさんは他のアイドルが不当に扱われたと思ったから怒ってたんご。その怒りは、すごく素敵だと思うから――そんなことないよって言いたくないなって」

りあむ「そうだよね! ぼくダメダメだよね!」

あきら「今褒めてたじゃん! そういう話じゃなかったじゃん!」


13: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:35:09 ID:uXP

あかりんご「だから、慰めるんじゃなくて、楽しいって思えるお手伝いをして、それからお祝いができたらなあって思ってたんです」

りあむ「お祝いされたくなーい!」

あかりんご「なして?」

りあむ「……」

あかりんご「自分に力がないから?」

りあむ「……」

あかりんご「もっと別の人が選ばれるべきだから?」

あきら(恐いもの知らずだなあ)

りあむ「……あのさ」

あかりんご「あ、はい」

りあむ「ゲームはやめて、ライブ見ようよ。ぼくの好きなアイドルのやつ(本棚ごそごそ)」

あきら「うわっ、なにこのブルーレイの数」

りあむ「物販にだけ力いれちゃうアイドルは好きでないけど、ちゃんとしてる子のは応援してあげたいじゃん。そういう子の物販は、もちろん出来るだけ買うようにしてるんだよ」

あかりんご「あんまり聞いたことないアイドルがいっぱい……」

りあむ「ほとんどは地下の子だもん。地方では全然知名度ないよね――かけるよ」

あかりんご「あ、始まった――可愛い人だなあ」

りあむ「あんちゃんっていうんだぞ。覚えといてよ」

あきら「歌も上手いなあ……でも」

あかりんご「?」


14: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:35:54 ID:uXP

りあむ「遠慮なくいいなよ」

あきら「可愛くて、歌もダンスも上手だけど……なんか地味かな」

あかりんご「た、たしかに……ごめんなさい」

りあむ「いいよ、本当だから。真面目なんだけど、ちょっと華がないっていうか。そんな感じのところはある、よね、うん……でも、次のブルーレイ見てよ」

あきら「ハイ……」

あかりんご「始めに見たのとセトリは変わんない――あ」

りあむ「ふふふ、気がついた?」

あきら「セトリは同じだけど、ダンスとか色々変えてきてマスね」

あかりんご「ほんとだ。ずっと良くなってる」

りあむ「あんちゃんはすごいんだぞ? すっごいがんばってるの」

あきら「……」

りあむ「あんちゃんはステージに全力なんだ。自分のよくなかったとこ探して、毎回成長してくるの。地下の子ってお金にも時間にも余裕ないし、スタッフも少ないから、大変なのに」

あかりんご「うん、解る。これはすごいんご」

りあむ「地味だけどね! ……わかりやすくもっとファンに媚びたら、きっと楽なのにさあ。ずっと頑張ってるの」

あきら「……ハイ」

りあむ「ああいう尊い子がいっぱいいてさ。ずっと応援してた。ぼくはそうなれるわけないって判ってたけど」

あかりんご「りあむさん……」

りあむ「ずっと応援するだけでさ。ぼくは自分が尊くなろうなんてちっともしてこなかったよ。知ってるよ」

あきら「……」


15: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:37:20 ID:uXP

りあむ「だけど、アイドルは尊くなくちゃいけないから。アイドルになったからには、ぼくも尊くなりたい! そう思って頑張りはじめたんだぞ? ほんとだぞ?」

あかりんご「りあむさん、レッスンうんと真面目にやってたの知ってます」

あきら「やれって言われたら、どんな無茶でも絶対やり通しマスよね。弱音ひどいけど」

あかりんご「うんうん。そこは尊敬してるんご」

りあむ「でも、ぜんっぜんたりないよ」

あきら「……あれで?」

あかりんご「……」

りあむ「解ってるんだ。ぼくはぼくがおもう尊いアイドルじゃぜんぜんない。努力もなにもかも、ぜんぜんたりない」

あきら「……ハイ」

りあむ「あんちゃんみたいに毎日頑張ってる子、たくさんいるよね。事務所のセンパイ、みんなめっちゃキラキラしてるよね。目が潰れそうだよ」

あかりんご「前川先輩とか、すごいですものね」

りあむ「だから、そういう人たちが評価されてほしいよ。総選挙に出てるたくさんのアイドルを支援してるファンたちは、きっとそういうの見てるんだと思ってた」

あきら「……」

りあむ「だけど、ぼくなんかが3位になって。いままで他のアイドル推してたオタクどもがみんなが面白がってぼくを推してさ」

あかりんご「……」

りあむ「あいつら、何を見てたんだろう。あんちゃんたちの努力って、なんなんだろう。なんかすごいくやしい。かなしい。かなしい……」

あきら「……りあむサン」

りあむ「アイドルは、使い捨ての、消耗品だよ。それなのにこんなこと思うぼくは、おかしいのか? ぼくがおかしいのか?」

あかりんご「うん、りあむさんはおかしいんご」

りあむ「  」

あきら「あかりチャーーン!?」


16: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:37:44 ID:uXP

りあむ「あかりチャンは今日ぼくのメンタルをどうしたいのさ!? すごいマジマジマのマジだったんだぞ!?」

あかりんご「まいてない種は、芽を出さないんご」

りあむ「え」

あかりんご「畑を耕して、種蒔きをして、水をやって。だから種が芽を出すの。植えてない種が芽を出すことは絶対にない。りあむさんは、少なくとも種を植えたんご」

りあむ「ぼくなんか植えたかあ!?」

あかりんご「三人でレッスンしたんご。アイドルがんばってたんご」

りあむ「だから、あんなの全然たりないって」

あかりんご「その理屈だと、私たち三人は一生がんばっても先輩たちみたいにはなれないです。だって、がんばった時間は絶対おいこせないもん」

りあむ「うぐ」

あかりんご「自分がまいた種が芽を出したこと、こういう実りを迎えたこと。それをちゃんと見ないでこんな実りがあるわけ無いって言ってたら、後にはなんにも残りませんよ」

りあむ「でも……今回は、みんなが面白がって」

あかりんご「それもちょっと違うと思うんです。だって、お客さんは馬鹿じゃないから」

りあむ「ばかだろ、手のひら返してぼくなんかにさ!」

あかりんご「でも総選挙ってめっちゃくちゃお金がかかるんご!」

あきら「滅茶苦茶世知辛い話来た」


17: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:41:27 ID:uXP

あかりんご「私たち初めての総選挙だし、自分でも投票できるって言うから私頑張って色々調べたんです。だけど5票や10票ならともかく、思った子にたくさん投票しようと思ったら大っ変ですよあれ」

あきら「そうなんデスか?」

あかりんご「そうなんデス。公式サイトにアクセスすると毎日一票。だけどたくさん投票しようと思ったらイベントに行きまくったりCD買ったりガチャまわしたり」

あきら「あー」

あかりんご「……お金もかかるけど、とにかくめっちゃくちゃ手間と時間がかかるんご。栄養ドリンク飲んで駆け回る勢いじゃないととても無理です……」

りあむ「た、たしかに」

あかりんご「ちょっと調べたけど、単純にお金で1000票買おうと思ったら30万ぐらいかかるって」

あきら「さんじゅうまん!?」

あかりんご「りあむさんは何票獲ったっけ?」

あきら「ざっと、230万票……」

あかりんご「ねえあきらちゃん、あいつをどうにかしてやろうとか、ちょっと面白そうだとか。そんな理由でそんな大変なことして、凄いお金を出すものかな」

あきら「ちょっと、考えづらい。やかましくしてる奴らって、大半は口はうるさいけど金出さないから」

あかりんご「だから――ねえ、りあむさん」

りあむ「あう、うん」

あかりんご「お客さんは馬鹿じゃないんご。大事なお金や時間を使って何かを選ぶのには、ちゃんとした理由があるんです」

りあむ「……理由」

あかりんご「本田未央でも、島村卯月でも、他の誰でもなく、りあむさんじゃなきゃダメだって、りあむさんが好きだって人が沢山いたから、りあむさんは3位になったんです」

りあむ「……でも、僕のよかったとこってなにさ」

あかりんご「それはさっぱりわかんないです」

りあむ「だからあかりちゃんはぼくのメンタルをどうしたいんだよう! ころしたいのか! 上げて落すのか!」

あきら「りあむサン、どうどう、どうどう」


18: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:42:35 ID:uXP

あかりんご「お客さんがりあむさんのどこを尊いと思ったのかは、これからりあむさんとPさんで確かめていかなきゃいけないんご」

りあむ「……」

あかりんご「収穫は終わりじゃなくて、来年の収穫に向けての始まりです。木の手入れして、土を肥やして、勉強して」


あきら「「どうしたらりんごがよくなるか工夫して。何がよくて、何が悪かったのかを確かめて――努力したら必ず豊作になるなんて思ってる農家は居ないけど、それをしなかったら今年の成果は何も手元に残らない」

りあむ「……うん」

あかりんご「だから、ちゃんと見なきゃ。りあむさんが良いんだって、りあむさんでなきゃダメなんだって言ってくれた人がたくさんいることをちゃんと受け止めなきゃ。そうでないと」

あきら「そうでないと?」

あかりんご「来年その人たちは、りあむさんを見てきっととってもがっかりするんご」

りあむ「それはやだ! ……ぼくはこんなだけど、そういう人がもしいるなら、がっかりさせたくない」

あかりんご「さっきはわからないって言ったけど、私、りあむさんのそういうとこ、凄くいいと思ってます」

りあむ「えっ」

あかりんご「正義感が強くて、他の人の痛みがわかって、アイドルに真剣なところ!」

りあむ「あかりちゃんは誰のはなしをしているの? 幻覚を見ているの?」

あきら「今ぐらい素直に受け止めなさいって」

あかりんご「大変だと思いますよ。来年は私たちも、他のアイドルの人たちも、もっと頑張るはずだから」

りあむ「ううう、やっぱせんぱい達は僕がひょっこり3位なんてとって怒ってるんじゃないかなあ」

あかりんご「怒る? あはは、ないない」

りあむ「なんなんデスかその自信」

あかりんご「となりの豊作を羨んで、今更うちの収穫が増えるわけじゃなし。ゴネて時間が戻るでもなし」

りあむ「まあ、そりゃそうだけど」

あかりんご「それなら来年のために、その次の年のために。木の手入れして、勉強して、どうしたらりんごがよくなるか工夫して。そのほうがずっといいに決まってるんご」


19: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:42:57 ID:uXP

あきら「……それは、いつまで続けるんデスか」

あかりんご「ずっと。いつまでも。アイドルが素敵だって思ってる限りずっと。りんご畑もお客さんも、信頼も。全て投げ出していいと思うまで、ずっと」

あきら「……ずっと……」

あかりんご「そもそも、豊作でいいりんごが沢山とれるのは産地にとっていいことんご。それなら誰かの豊作は喜んでいいことだと思わない?」

りあむ「農家の娘は、肝が太すぎないかな」

あきら「目の前の19歳が子供に見えます」

りあむ「ひどすぎないかな!! その通りだけど! だけど!!」

あかりんご「……だから、お祝いさせてくださいりあむさん。3位になったことじゃなくて。りあむさんがいいんだって言ってくれた人が、たくさんいることを」

りあむ「う……うん」

あかりんご「もちろんこんど私、あかりんごが豊作になったときは、りあむさんにお祝いしてほしいですけど!!」

りあむ「……」

あかりんご「お祝いしてくれないんご……?」

りあむ「いやあかりちゃんもあきらちゃんもメッチャ尊くて推せるし!! ぜったいお祝いするし!!」

あかりんご「よかった!!(パアアア)」

りあむ「ぼく、一生この子にかなわないんじゃないかって気がしてきた」

あきら「奇遇デスね。時々自分もそう思いマス」

あかりんご「じゃあ、そろそろ餃子の第二弾行くんご! りあむさん、もっといろいろアイドルのライブ見せて?」

りあむ「あ、うんうん。わかった! ええとね、これはあんちゃんの夏のスペシャルイベントで……」

あきら「……」

あきら「……」


20: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:44:31 ID:uXP

【翌朝5時/帰り道】

あかりんご「ああ、食べた食べた」

あきら「おいしかったけど、当分餃子はいいデスね」

あかりんご「私達いま、きっと東京でいちばんニンニクくさいアイドルんご!」

あきら「あはは……体重も恐いし、寮まで歩こうか」

あかりんご「賛成です!」

あきら「……」

あかりんご「……」

あきら「あかりちゃん、凄かったね」

あかりんご「え、なにが?」

あきら「りあむさんに言ったこと。全部――自分、あんなふうに考えたことなかったかも」

あかりんご「あはは、あはは」

あきら「なんでそこできまりわるげなの」

あかりんご「実はあれ、全部おとうちゃんの受け売り……」

あきら「えーっ!」

あかりんご「あきらちゃん、声が大きいんご」

あきら「ごめん……え、受け売り? あんな自信満々で『まかない種は芽を出さない(キリッ)』とか『お客さんはバカじゃない(キリッ)』とかいってたのに? けっこう感心したのに?」

あかりんご「素であんなこという15歳女子がたくさんいるんなら、山形県はいまごろりんご生産でトップに立ってるんご」

あきら「まあ、それはそうかもしれない」


21: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:44:56 ID:uXP

あかりんご「……農家って、大変なんです」

あきら「……うん」

あかりんご「どんなにがんばっても、台風でも来たらおしまいで。一年の努力が一夜でパー、なんてよくあることで」

あきら「……」

あかりんご「だから、努力、とか。そういうの、ちょっと。意味があるものかなって思ったりすることがあったの」

あきら「そう、なんだ」

あかりんご「だけど、なんでかな――アイドル目指すことになって、こっちに来たら、おとうちゃんたちが言ってたことばかり思い出すようになって」

あきら「なんか、ちょっと、解る気がする」

あかりんご「隣が良くてこっちはパッとしないなんてよくあることだし。くやしがったり、することもあって――昨日言ったのは、私が父ちゃんにぶつけた弱音の、その時の答えでした」

あきら「――あかりちゃんのお父さんは、すごい人だね」

あかりんご「うん。凄いって思う。だんだん、どんどん、凄いって思うようになったの。おとうちゃんたちの言葉をウソにしないアイドルになりたいって思ったの――だから、りあむさんに言ったことは、自分に言ったことでもあったかな」

あきら「――自分は」

あかりんご「うん」

あきら「スカウトされて、アイドルになって。可愛い服が着られると楽しいとか。そんなんで。勿論真面目にやるけど、今日が大事っていうか」

あかりんご「――うん」

あきら「明日というか、どういうアイドルになりたいって考えたことって、あまりなかったんだ。シロートの自分が考えるより、プロのPさんとかが考えたほうが、ずっと売れるアイドルになるだろうし」

あかりんご「それは、そうかもしれない」

あきら「でも――なんかな、悔しかった」


22: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:45:12 ID:uXP

あかりんご「悔しかった?」

あきら「うん。選挙。自分の順位は、最初だしこんなもんだろうって思ってたけど」

あかりんご「2人そろって『50位』だったね。おそろい。あはは」

あきら「だけど、りあむサンはものすごく真剣にアイドルのこと考えててさ。これからきっと、自分がどういうアイドルになるべきかとか、うんと考えるんだろうね」

あかりんご「きっとそうだと思う。メンタル弱いのは変わらないと思うけど――」

あきら「自分も、考えたらよかったのかなあ、って」

あかりんご「……」

あきら「自分がどんなアイドルになりたいか。どんな風に頑張りたいかって。考えたらよかったかな。考えたいって。りあむサンとあかりちゃんを見て、そう思ったんだ」

あかりんご「……」

あきら「あはは、キャラじゃないかな」

あかりんご「――あきらちゃーん(ぎゅうう)」

あきら「わああっ!? 急に抱きつかないで」

あかりんご「あきらちゃん大好きんご!」

あきら「誤解を招く! 誤解を招く!! ほらあそこのサラリーマンっぽい人がすごいこっち見てる!!」

あかりんご「離さない。だって嬉しいから!」

あきら「なんデスかそれはー!!」


23: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:45:41 ID:uXP

あきら(――口ではわあわあ言ったけど、自分はきっと、嬉しかったんだと思う)

あきら(あかりチャンが言ってたことを思い出す。なにもかも投げ出したくなる日まで、ずっとずっと、よくなるための努力を続けるんだって)

あきら(りあむサンが叫んでたことを思い出す。自分は尊くないって。それは、尊くなりたいって、変わりたいって叫びだった。あんなに素直に『今の自分は嫌だ、変わりたいんだ』って叫ぶ人を、自分は初めて見た、と思う)

あきら(だから――だから、自分も、そうしてみたいって思った)

あきら(そう思えたことが。ずっとずっとよくなっていこう。変わって行こうと思えることが。それをあかりちゃんに受け入れてもらえたことが。自分はそのとき、とてもとても、嬉しかった――)


 (おしまい)


24: ◆cgcCmk1QIM 19/05/30(木)01:45:57 ID:uXP

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。





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