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【ぼく勉】 紗和子 「今週末は発表会の予定なのよ」

282: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:54:21 ID:x0BKGJhc

うるか 「発表会? なにそれ?」

理珠 「あっ、ひょっとして例の、化学部で参加するという発表会ですか?」

紗和子 「さすがは我が親友、緒方理珠ね! その通りよ!」


―――― 『15時間効果を維持する超強力接着剤よ!』

―――― 『え…… だって 今度化学部が発明品を発表会に出展するじゃない?』

―――― 『当然OGとして試作品のひとつでも作りたいじゃない?』


成幸 「ああ、あのときの……」


―――― 『何故全部脱いでいるのですか関城さん!?』

―――― 『え? 脱がなきゃ服が濡れちゃうじゃない こっち見ないでよ唯我成幸』

―――― 『お…… 緒方……!? ちょ……ッ』

―――― ((寝れる…… わけあるかこんなん!!!))


成幸 (あのときのか……///)

文乃 (……その反応、また何かあったんだね、成幸くん) キリキリキリ……


283: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:55:00 ID:x0BKGJhc

成幸 「じゃあ、例の15時間キープする接着剤について発表するんだな」

紗和子 「ええ。『1DAYトレンD』 ね」

成幸 「……で、それをなぜ図書室にまで来て俺たちに言うんだ?」

紗和子 「えっ? だって、部員たちもみんな自分の発明品を発表するじゃない?」

成幸 「フム……」

紗和子 「発表会に、ひとりは知ってる人に来てもらいたいじゃない?」

理珠 「フムフム……」

紗和子 「で、化学部以外でこんなことに呼べる友達、あなたたちしかいないじゃない……?」

文乃 「お、おー!! わざわざ誘いに来てくれたんだね紗和子ちゃん! 嬉しいなぁ! 光栄だよ!」

うるか 「あーもうこりゃ行くっきゃないね! さわちんの晴れブタイを見に!」

紗和子 「……ほ、本当!?」 パァアアアアアア……!!!

文乃 「えっと、今週末は……」  うるか 「えーっと……」

文乃 「あっ……。ごめん、紗和子ちゃん。その日はちょっと鹿島さんたちと用事が……」

うるか 「……ごめん、さわちん。あたしも海っちたちと約束がある……」

紗和子 「そう……そうよね……。みんな、私と違って、他にもお友達がいるものね……」 ズズズズズーン


284: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:55:32 ID:x0BKGJhc

成幸 「あ、だ、大丈夫だぞ関城! 俺はその日空いてるぞ! せひ見に行かせてくれ!」

成幸 (本当は勉強したかったけど!!)

理珠 「わ、私も空いていますよ、関城さん! ぜひ見に行かせてください!」

理珠 (本当は成幸さんと勉強会の予定でしたけど!!)

紗和子 「あなたたち……」 キラキラキラ……!!!!

紗和子 「これ、パンフレットよ! 私の勇姿、とくとその目に焼き付けるといいわ!」

成幸 「お、おう、ありがとな」

成幸 (……まぁ、関城には世話になってるし、これくらいはな)

理珠 「……あ、あの、関城さん」

紗和子 「? 何かしら、緒方理珠」

理珠 「楽しみです。がんばってくださいね!」

紗和子 「あ……」 カァアアアア…… 「え、ええ! ありがとう、がんばるわ!」

成幸 (……緒方もまんざらでもなさそうだしな) クスッ


285: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:56:08 ID:x0BKGJhc

………………週末

成幸 「………………」

成幸 (んー、緒方のやつ遅いな。そろそろ待ち合わせの時間だけど……)

ピロン……

成幸 (ん? 緒方からメッセージ……?)

 『すみません、成幸さん。お店に急に大口の出前が入って、手伝いをしなければならなくなりました』

 『関城さんの発表時間には絶対に間に合うように行くので、先に会場に入っていてください』

成幸 「あー……」 (お店が急に忙しくなったんじゃ仕方ないよな……)

成幸 (関城の発表には間に合うみたいだし、緒方の言うとおり、俺は先に入ってるとするか)


286: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:56:40 ID:x0BKGJhc

………………会場内

ガヤガヤガヤガヤ……

成幸 (へー、色んな学校が発表に来てるんだな)

成幸 (小さなホールと廊下に展示物がいっぱいだ)

成幸 (各学校のブースで、今日の発表物の展示をしてるんだな)

成幸 (で、発表会は、大きなホールでやるんだな。ふむふむ……)

成幸 (高校生の展示なのに、結構面白そうな発明品が並んでるな。あとでゆっくり見てみようかな)

成幸 (とりあえず、一ノ瀬の化学部のブースは、と……)

紗和子 「……」 イソイソイソイソ……

成幸 (……探すまでもなかったな。制服の上に白衣を着てるようなやつ、ひとりしかいないもんな)

成幸 「よ、関城。精が出るな」

紗和子 「あら、唯我成幸。早いわね。発表会はまだよ?」

成幸 「ああ、緒方とふたりでちょっと早めに待ち合わせしてたからさ」

成幸 「あ、そうだ。緒方が店の手伝いで少し遅れるってさ」

成幸 「発表会には間に合うみたいだから、心配しなくていいってさ」


287: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:57:32 ID:x0BKGJhc

紗和子 「そう。それは良かったわ」

紗和子 「……っと、ごめんなさい。実はブースの設営を急いでやらなくてはいけなくて」

成幸 「ああ、悪い。邪魔しちゃったみたいだな」

成幸 「……ん? っていうか、他の化学部の部員はどこに行ったんだ?」

紗和子 「ああ、それなら……」 スッ 「ほら、向こうで来てくれた保護者の相手をしてるわ」

ワイワイワイワイ……

成幸 「ああ、あれか……」 ハッ 「いやいや、だからOGのお前ひとりで大忙しなんだろ。何でこんな……」

紗和子 「だって仕方ないじゃない。あの子たちには、晴れ舞台を見にきてくれる家族がいるんだから」

紗和子 「その相手をさせてあげられないようじゃ、化学部元部長、関城紗和子の名が廃るというものよ」

成幸 「お前が保護者のところに行けって言ったのか。でも、お前だって……」

紗和子 「私の親、今日も仕事だから。元々、来てくれるはずもないからパンフも渡してないけどね」

成幸 「あっ……」 シュン 「すまん……」

紗和子 「……気にしなくていいわよ。湿っぽい話して、こちらこそごめんなさいだわ」

紗和子 「一般開場の時間までにブースを仕上げないといけないの。悪いけど、別の学校でも見ていてちょうだい」

ガチャガチャ……トン……ポン……


288: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:58:04 ID:x0BKGJhc

成幸 「………………」


―――― 『うちの親は放任主義だし 共働きであまりいないから 一晩ぐらい問題ないわよ』


成幸 (そういえばそうだ。前、そんなことを言ってたな……)


―――― 『だって仕方ないじゃない。あの子たちには、晴れ舞台を見にきてくれる家族がいるんだから』


成幸 (あのときと同じ、寂しそうな声だった。やせ我慢してるような、声……)

成幸 (引退したくせに、部員がやるべき仕事を買って出て、ひとりで無理して……)

成幸 (まったく……)

紗和子 「……ん、これ、どう設置しようかしら。こうした方が見栄えがいいかしら」

成幸 「………………」

スッ

成幸 「こっちのほうがいいんじゃないか。この小さいのは全部、台の上に乗せようぜ」

紗和子 「へ? 唯我成幸……?」

成幸 「手伝うよ。俺は部外者だから、お前が気にする必要もないだろ」


289: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:58:40 ID:x0BKGJhc

成幸 「それに、他校のブースも、完成してから見たいしな。それまで、暇つぶしさせてくれよ」

紗和子 「唯我成幸……」

紗和子 「し、仕方ないわね! 手伝わせてあげるわ!」 プイッ

成幸 「はいはい。感謝するよ、関城」

成幸 「これ、台の上に置いちゃっていいか?」

紗和子 「え、ええ。お願いするわ」

紗和子 「………………」

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「ん? なんだ?」

紗和子 「……あっ、ありがとう」

成幸 「………………」

クスッ

成幸 「……おう。どういたしまして」


290: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 22:59:11 ID:x0BKGJhc

………………一般開場

ザワザワザワザワ…………

成幸 (ふー、なんとか開場に間に合ったな。よかったよかった)

紗和子 「……唯我成幸、はい」

成幸 「ん? 缶コーヒー?」

紗和子 「手伝ってくれたお礼よ。受け取りなさい」

成幸 「……ん、ありがとう。じゃあ、いただくな」

プシュッ……

紗和子 「……ふぅ。一仕事終えた後の缶コーヒーはたまらないわね」

成幸 「おっさんみたいなこと言うなよ」

成幸 「……俺と一緒にいていいのか? ブースの店番とかはないのか?」

紗和子 「さすがにその辺の本業は現役部員にやらせるわよ。じゃないと育たないしね」

紗和子 「私は、発表会以外は裏方に徹することに決めてるの」

成幸 「……ふーん。そっか」

成幸 (……なんだかんだ、しっかり部活や部員のこと考えてるんだよなぁ、こいつ)


291: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:00:18 ID:x0BKGJhc

成幸 「………………」

成幸 「……なぁ、関城」

紗和子 「何かしら?」

成幸 「……ご両親のことだけどさ」

成幸 「今からでも、メッセージとか、送れないかな」

成幸 「ひょっとしたら、来られるかも、とか……」

紗和子 「………………」

紗和子 「ありえないわ、そんなの。仕事だもの。来られるはずがないわ」

紗和子 「……何を勘違いしているのか知らないけど、唯我成幸」

紗和子 「私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない」

成幸 「ん……そっか。ならいいんだけどさ」

  「あ、お父さんお母さん! 来てくれたの!?」

  「当然だろ~! 発表会、全部ビデオ撮っておくからな!」

紗和子 「………………」 フッ 「……でも、いいものよね、ああいうの」

紗和子 「ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの」


292: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:01:07 ID:x0BKGJhc

成幸 「関城……」

紗和子 「ふふ、ごめんなさい。なんかガラにもないこと言っちゃったわね」

紗和子 「……じゃあ、そろそろ発表会の準備があるから、私はもう行くわね」

成幸 「ああ、発表、がんばってな。緒方とふたりで見てるからな」

紗和子 「ええ。ありがとう」

トトトトト……

成幸 「………………」


―――― 『私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない』

―――― 『ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの』


成幸 「関城……」

成幸 (寂しくないって言うなら、もっとどうでもよさそうな顔しろっての)


―――― 『当然だろ~! 発表会、全部ビデオ撮っておくからな!』


成幸 「……ビデオ、か」


293: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:02:01 ID:x0BKGJhc

………………発表会場

理珠 「……はっ、はっ……」

トトトトト……

理珠 「まっ、間に合いました……」

成幸 「ん、緒方。ぎりぎりだな。間に合ってよかったよかった」

理珠 「すみません。配達に手間取ってしまって……」

成幸 「そろそろ関城の番だぞ。ほら、隣座れよ」

理珠 「はい。ありがとうございます」

理珠 「……あの、ところで成幸さん?」

成幸 「ん?」



理珠 「携帯電話を構えて、一体何をしているのですか?」


295: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:02:39 ID:x0BKGJhc

………………

 『無事間に合いました! 客席に座っています。がんばってくださいね!』

紗和子 「……ふふ」 (緒方理珠、急いできてくれたみたいね)

紗和子 (大親友が応援してくれている。私は、それだけで十分だわ)


―――― 『私ももう高三よ? 親が来てくれないから寂しい、なんて思ってるはずないじゃない』


紗和子 (……そう。だから、何の問題もない。緒方理珠と唯我成幸が見にきてくれているだけで、)

紗和子 (私は大満足だわ。他に何を望む必要もない)

  『続きまして、一ノ瀬学園化学部、関城紗和子さんの発表です!』

紗和子 (……私は、私のためにきてくれたふたりのために、がんばるだけよ)

紗和子 (ふたりに恥じないような、最高の発表を見せてあげなくてはね!)


296: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:03:13 ID:x0BKGJhc

………………発表後

紗和子 (……はぁ。さすがにちょっと緊張したわね。でも、手応えもあったし、これは賞も狙えるんじゃないかしら)

紗和子 (ふふ、楽しみだわ)

紗和子 (さて、私も観客席で後輩たちの発表でも見てあげようかしら)

紗和子 「ん……」

理珠 「あ、関城さん」 コソッ 「発表、お疲れさまでした。堂々としていて、いい発表でしたよ」

紗和子 「あっ……」 カァアアアア…… 「あ、ありがとう。緒方理珠」 コソッ

紗和子 (と、友達に……大親友に褒められるって、こんな気持ちなのね……///)

紗和子 「……あら?」

紗和子 「ねえ、唯我成幸は? 一緒じゃないの?」

理珠 「ああ、成幸さんなら、関城さんの発表が終わった瞬間、会場を飛び出していきましたよ」

紗和子 「へ……?」


―――― 『悪い、緒方。やることができたから、関城によろしく伝えてくれ!』


理珠 「……とのことです」


297: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:04:14 ID:x0BKGJhc

紗和子 「そう……」

紗和子 (ひょっとして、唯我成幸、今日は私のために無理してきてくれていたんじゃ……)

紗和子 「唯我成幸、本当は今日、用事でもあったのかしら」

紗和子 「私が無理を言ってしまって、迷惑をかけたんじゃ……」

理珠 「あ、そうではないと思います。そもそも、今日は私と勉強する予定でしたから」

理珠 「それに、やることができた、と言っていました。元々用事があったのならそんな言い方はしないと思います」

理珠 「……だから、そんな言い方しないでください。そんな顔、しないでください」

ニコッ

理珠 「成幸さんも私も、関城さんの発表を見たいから、ここに来たんですから」

理珠 「なんといっても、私も成幸さんも、関城さんの友達、ですからね」 エッヘン

紗和子 「緒方理珠……」 クスッ 「……ごめんなさい。ありがとう」

紗和子 (……少し前まで、こんなことを言えるような子ではなかったのに)

紗和子 (唯我成幸のおかげで、こんなに変わることができたのね。この子は)


298: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:04:58 ID:x0BKGJhc

紗和子 (……そして、きっと私も)


―――― 『手伝うよ。俺は部外者だから、お前が気にする必要もないだろ』

―――― 『それに、他校のブースも、完成してから見たいしな。それまで、暇つぶしさせてくれよ』


紗和子 (私も、唯我成幸のおかげで、きっと……)


―――― 『お前…… 楽しみにしてたんじゃないの? 今日 緒方と出かけるの……』

―――― 『あーあー 楽しみにしてたわよ 何!? 悪い!?』


紗和子 「………………」


―――― 『あーもー とにかく急いで誤魔化すぞ!! そっち持ってくれ関城!』

―――― 『あああ 愛してるわ唯我成幸ーー!!』


紗和子 (……よくよく思い返してみれば、いつも助けられてばかりね、私)

紗和子 (今度、お礼でもしないといけないわね……)


299: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:05:36 ID:x0BKGJhc

理珠 「……? 関城さん」

紗和子 「へっ? な、何かしら、緒方理珠」

理珠 「いえ、大したことではないのですが……」

理珠 「顔が少し赤いですが、大丈夫ですか? 体調でも悪いのでは……?」

紗和子 「!?」 (顔、赤……!? そ、そんなこと……)

ピトッ

紗和子 (……熱いわ。ほっぺ)


―――― 『……なんか最近 少し頼もしくなったわね』

―――― ((ちょっとカッコイイじゃない))


紗和子 「……なんでもないわ。大丈夫よ」

理珠 「? そうですか」

紗和子 (……そう。大丈夫。だって私は……)

紗和子 (私は、この子の大親友だから……)

紗和子 (だから……――――)


300: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:06:06 ID:x0BKGJhc

………………

成幸 「……ああ、小林。急に悪い」

成幸 「今家か? ……ん、そりゃ良かった。今から家に行ってもいいか?」

成幸 「お前、パソコン持ってたよな。ちょっと頼みたいことがあるんだ」

成幸 「……うん。わかった。詳しいことは家に行ったら話すよ。いつも悪いな」

成幸 「ああ、ありがとう。じゃあ、また」

ピッ……

成幸 「………………」


―――― 『そういうの自慢できる友達…… あなたたちしかいないじゃない……?』

―――― 『発表会に、ひとりは知ってる人に来てもらいたいじゃない?』

―――― 『ああいう親子の幸せそうな笑顔って、私から見ても、素敵に見えるもの』


成幸 (……こんなの、ただのお節介だろう。ありがた迷惑だろう)

成幸 (でも……)

成幸 (あんな寂しそうな顔してるやつ、放っておくこと、できないよな)


301: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:07:05 ID:x0BKGJhc

………………夜 関城家

紗和子 「……ただいまー」

紗和子 (緒方理珠と勉強していたら、もうこんな時間だわ)

紗和子 (ギリギリ補導されるような時間ではないけれど、至福の時間というのは早く流れるものね)

紗和子 (でも、今日は本当は唯我成幸と勉強する予定だったらしいし、悪いことしてしまったわね)

紗和子 (……少なくとも、勉強面では役に立てたならいいのだけど)

紗和子 「ん……?」

「おかえりなさい、紗和子」

紗和子 「……お、お母さん!? お父さんも……」

紗和子 (ふたりそろって出迎えてくれるなんてめずらしい。何かあったのかしら……)

「今日は発表を見に行ってあげられなくてごめんね」

「その代わりといってはなんだが、これ、一緒に見ないか?」

紗和子 (……? どうしてお母さんとお父さんが発表会のことを知っているのかしら)

紗和子 (それに、それって……)

紗和子 「DVD……?」


302: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:07:56 ID:x0BKGJhc

………………翌週 登校時

成幸 「………………」

ヨミヨミヨミ……

紗和子 「……唯我成幸」

成幸 「……へ? あ、関城」

紗和子 「おはよ。いくら受験が近いと言ったって、歩きながらの参考書は感心しないわよ」

成幸 「ああ、悪い。つい、な……」

紗和子 「まったく。本当にガリ勉ね」

成幸 「そんなところでどうしたんだ? 誰か待ってるのか?」

紗和子 「ええ。待っていたの。あなたをね」

成幸 「……俺を?」

紗和子 「……週末はどうもありがとう。設営の手伝いや、発表を見てくれたりして」

成幸 「あ、ああ。なんだ、そんなことか。何かやらかしたかと思ったよ」

成幸 「どういたしまして。気にしなくていいよ。片付け手伝えなくてごめんな」

紗和子 「それこそ謝られるようなことではないけどね」


303: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:08:40 ID:x0BKGJhc

紗和子 「……それから、」

成幸 「ん?」

紗和子 「これ。あなたね? うちの両親に渡したの」

成幸 「……なんだ、それ? CDか?」

紗和子 「私の発表が録られたDVDよ。分かってるくせに、とぼけちゃって」


―――― 『紗和子の友達だって言う男の子が届けてくれたのよ』


成幸 「へ、へぇ。親切なやつがいたもんだな」

紗和子 「言っておくけど、私の男友達なんて、あなた以外いないわよ?」

成幸 「………………」

紗和子 「……ん?」

成幸 「……はぁ。悪かったよ、余計なマネして。良かれと思ってさ」

紗和子 「謝れなんて言ってないわよ。悪いとも言ってない。ただ……」

成幸 「ん?」

紗和子 「……どうしてそんなことをしてくれたのか、教えてほしいだけよ」


304: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:09:27 ID:x0BKGJhc

成幸 「どうしてって……。言わせるのか、それを」

紗和子 「何よ。気になるから聞いてるんだから、教えなさいよ」

成幸 「っ……まぁ、いいけどさ……」

成幸 「………………」

成幸 「……――に、見えたから……」

紗和子 「……? よく聞こえないのだけど……」

成幸 「いや、だから……」 カァアアアア…… 「……お前が、寂しそうに見えたから」


―――― 『私の親、今日も仕事だから。元々、来てくれるはずもないからパンフも渡してないけどね』


紗和子 「へ……?」

成幸 「……お前がどう思ってるかなんて分からなかったから、余計なお世話だったかもしれないけど」

成幸 「お前ががんばってきたものを、お前のお父さんとお母さんにも見せてあげたいと思ったんだよ」

成幸 「化学部で三年間がんばってきたこと、ご両親が全然知らないなんて、寂しいだろ」

紗和子 「唯我成幸、あなた……」 カァアアアア…… 「は、恥ずかしい人ね。そんなこと考えてたの……」


305: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:10:22 ID:x0BKGJhc

成幸 「悪かったな。仕方ないだろ。そうしたいと思ったんだから」

紗和子 「……まったく。あの後、家に帰ってから大変だったんだから」

成幸 「? 何かあったのか?」

紗和子 「自分が発表している姿を延々とリピートされる様を想像してみなさいよ」

紗和子 「しかも両親と一緒に、よ。気恥ずかしくて仕方なかったわ」

成幸 「……ああ、それは確かに恥ずかしそうだな」

紗和子 「それに、あなた余計なこと言ったでしょ」

成幸 「へ?」

紗和子 「『今まで寂しい思いをさせてごめんね』 って謝られたわ」

紗和子 「受験が終わったらどこかに行こうとか、欲しいものはないかとか……」

成幸 「あ、いや、俺は……すまん。お前に迷惑をかけるつもりは、本当になかったんだ……」

成幸 「家庭に口を出すつもりもなかったんだが……つい、口から……」

紗和子 「………………」 クスッ 「……冗談。迷惑とか余計とか、全然思ってないわ」

ニコッ

紗和子 「唯我成幸。私、あの日の夜、本当に嬉しかったのよ。あなたのおかげよ。だから、本当にありがとう」


306: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:11:15 ID:x0BKGJhc

成幸 「あっ……そ、そうか。なら良かったよ」

成幸 (な、なんだろ。なんか、変な感じだ。関城って、笑うと……)

成幸 (……あんなにきれいなんだな)

ハッ

成幸 (あ、アホか俺は。友達相手に一体何を考えてるんだ)

成幸 「……関城、そろそろ行こうぜ。学校に遅れちまう」

紗和子 「……そうね。行きましょうか」

紗和子 「………………」


―――― 『……なんか最近 少し頼もしくなったわね』


紗和子 (きっと、いつもあの子はこんな気持ちなのね)

ドキドキドキドキ……

紗和子 (最近というわけじゃない。きっとずっと前から、あの子は知っていたのね)

紗和子 (唯我成幸という男子が、こういう人だって)


307: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:11:49 ID:x0BKGJhc

紗和子 「………………」

ドキドキドキドキ……

紗和子 (静まりなさい。火照ってはダメよ。顔を赤くしては、ダメ)

紗和子 (私は緒方理珠の親友。親友の想い人に、抱いていい感情ではないから)

紗和子 (……でも、もしも)

紗和子 (唯我成幸、あなたが、緒方理珠の想い人でなかったなら……)

紗和子 「………………」

紗和子 (……バカね、私。何考えてるのかしら)

紗和子 (仮定の話なんて意味がない。あるのは、彼が親友の想い人だという事実だけ)

紗和子 (だから……――)

成幸 「――……あっ、そうだ。関城」

紗和子 「……? 何かしら」

成幸 「発表会の後まっすぐ帰ったから、言えてなかったな」

成幸 「発表、すごくよかったよ。よくあんな大勢の前で堂々と喋れるなって感心しちゃったよ」


308: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:12:37 ID:x0BKGJhc

紗和子 「あっ……///」 ボフッ 「そ、そんなことないわよ。あれくらい、練習すれば誰だって……」

成幸 「いやいや、大したもんだよ。分かりやすかったしさ」

成幸 「一気にお前のファンになっちゃったよ……って、これはちょっと気持ち悪いか」

紗和子 「………………」 プイッ

成幸 「……? 関城? 横向いてどうした?」

紗和子 「……なんでもないわ。なんでもないから、ちょっとしばらく、向こうを向かせてちょうだい」

成幸 「? いいけど……」

紗和子 (……バカ。唯我成幸の、バカ)

カァアアアア……

紗和子 (必死でおさえてたのに、表情がニヤけちゃうじゃない。それに、顔だって……)

紗和子 (鏡を見なくても分かるわ。絶対、真っ赤になってるもの……)

紗和子 (……ああ、もう! やめなさいよ、唯我成幸)

紗和子 (あなたのこと、好きになってはいけないのに、好きになってしまうじゃない……)

おわり


309: 以下、名無しが深夜にお送りします 2019/09/04(水) 23:13:31 ID:x0BKGJhc

………………幕間 『成ちゃんを幸せにしてくれるなら』

陽真 「おや、あれは成ちゃんと……」

陽真 (……週末、DVDに焼いてあげた動画の女子じゃないか)

智波 「むっ……あれは関城さんだね。緒方さんと仲が良い子だよ」

智波 「……でも、唯我くんとふたりだけってめずらしいな。うーん……」

陽真 「どうしたの? 難しい顔しちゃって……」

智波 「いや、これはあくまでも私の女の勘だけど……」

陽真 「?」

智波 「うるかにライバルが増えそうだと思ってさ」

陽真 「……ああ」 クスッ 「……たしかに、そんな顔してるね。関城さん」

智波 「だよね! うるかにうかうかしてられないよって焚きつけてあげないと」

陽真 「俺は成ちゃんを幸せにしてくれるなら、誰とそういう関係になってもいいけどね」

智波 「私は断然うるかを推すよ!」 フンスフンス 「こればっかりは譲れないからね!」

陽真 (……あー、これは、DVDの話は智波ちゃんには内緒にしておいたほうがよさそうだなぁ)

おわり





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