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サイタマ「お前って普段、パンツ穿いてないのか?」タツマキ「おやすみ」

2019/10/24 19:04 | ワンパンマン | コメント(0)
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 20:58:34.28 ID:01arW23NO

「……ただいま」

無人の部屋に自分の声が虚しく響く。
それなりに広いマンションに一人暮らし。
とはいえ、ここには寝に帰るだけだ。
ここが自分の家だという感覚は薄い。

なにせヒーローは忙しい。
昼夜問わず、怪人は現れる。
その度に西へ東へ北へ南へと奔走する毎日。

何の為にと問われれば、自分の為だ。
表向きはストレス発散と言い張っている。
だけど、本当は。

「……お風呂が沸いたわね」

ワンピースを脱いで、湯船に浸かる。
このひとときが唯一、心安らぐ瞬間だ。
怪人共の薄汚い返り血を綺麗に洗い流す。

気まぐれに能力でお湯を中空に浮かしてみた。
球体となって浴室に漂う、お風呂の水。
そこに貧相な自分の姿が映り込んでいた。

超能力のせいか、この身体は老化しない。
子供の頃のまま、成長が止まっている。
今となっては知らぬ者が居ない程、ヒーローとしての知名度を誇る私だが、何も知らない者からしたらただの子供にしか見えないだろう。

「フブキが羨ましいわ」

この時だけは、能力に劣る妹が羨ましかった。
妹のフブキは年相応に成長を遂げている。
そして最近は、精神的にも変わり始めていた。

あの子は目に見えて成長し、強くなっている。

「それに比べて私は……はあ」

溜息と共に超能力を解除する。ちゃぽん。
浮かんだお湯は落下して再び湯船を満たした。
何も変わらない自分が、酷く惨めだった。


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:01:19.25 ID:01arW23NO

「たまにはお酒でも飲もうかしら」

風呂上がりに冷蔵庫を漁りビールを取り出す。
こんな見た目でも私は成人であり、28歳だ。
気分転換にと思い、プルタブを開ける間際。

「あーもう! こんな時に怪人なんて!」

協会からの出動要請で携帯端末が鳴り響く。
やむなくビールを冷蔵庫の棚へと戻して。
着たばかりの寝巻きを脱ぎ捨て、新しい黒のワンピースを頭から被って、準備完了。

玄関なんて私には必要ない。
高層階のベランダから身を翻す。
超能力で飛翔して、現地へと急行した。

「あそこね」

ものの数分で目的地付近まで辿り着いた。
詳しい場所をわざわざ調べる必要はない。
立ち昇る爆炎が、夜空を赤く染めていた。

「随分派手にやってくれたわね」
「むっ!? もうヒーローが来やがったか!」
「この私が来たからにはアンタは終わりよ」
「へっ! このオレ様を甘く見んなよ、戦慄のタツマキ! 貴様への備えは万全だ!」

怪人はまるで、雪だるまみたいな奴だった。
五体は全て真っ黒な球体で構成されており。
そしてその全てから、導火線が伸びていた。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:04:54.24 ID:01arW23NO

「オレ様は爆弾魔ン! その名の通り、爆発物のエキスパート! ちなみにそこら中に地雷が仕掛けてあるから少しでも動けばドカンだぜ!」
「ふん。私には通じないわ」

地雷原をわざわざ歩くつもりはなかった。
超能力で浮かべば地雷など踏まずに済む。
そう考え、身体を浮かせて接近した瞬間。

キンッ!

目を眩ませる閃光が走り、視界を奪われ。
そして高周波が大気を震わせ耳鳴りがした。
どうやらスタングレネードが炸裂したらしい。
怪人が何やら言っているが聞き取れない。
恐らく嘲笑の類いだろう。なんたる失態。

完全に油断した。
視覚と聴覚を奪われてしまった。
三半規管もやられたらしく前後不覚に陥る。

超能力で浮かんでいられず、地面へと落下。
その瞬間、足元が弾け飛んだ。地雷だ。
咄嗟に超能力でガードしたものの、立つこともままならず、無様に転がり、爆発が連鎖した。

「ーーーーーッ!?」

まるでスーパーボールのように跳ね回り。
今の私には自分の叫び声すら聞こえない。
きっとそれは無力な少女のような悲鳴だ。

本来ならばその悲鳴を聞きつけて助けるのが自分の役目なのに、今の私は無力だった。


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:06:35.73 ID:01arW23NO

このまま、負けてしまうのかも知れない。
敗北の二文字が脳裏に浮かんだその時、爆風とは異なる一陣の風が颯爽と吹き抜けて。

「…………?」

不意に、爆発が止んだ。
背中、肩、そしてふとももに感触が伝わる。
それはまるで鍛え抜かれた腕の感触のようで。

「ーー?」

私は思わず、ヒーローの名を口走った。
昔、私を助けてくれたヒーローの名前。
S級ランキング1位の、ブラストの名を。

果たして彼は、答えたのだろうか。
聴覚を失った私には、何も聞こえない。
ただ静かに、優しく、地面へと寝かされた。

そして再び、風が吹き抜けた。

空気の振動が肌に伝わる。
きっと戦闘が繰り広げられているのだろう。
援護しようにも、今の私は無力だった。
爆炎の熱風に晒されて、酷く喉が渇いた。

いずれこんな日が来ることはわかっていた。
S級ランキング2位とはいえ、無敵ではない。
もちろんただでやられるつもりはなかった。

いざとなれば、前後不覚だろうが無差別に周囲を超能力で破壊して怪人を倒すつもりだった。

しかし、そのあとはどうなるだろう。戦闘後。
怪人よりも町に被害を出した私は、どうなる。
ヒーローではなく、怪人に成り下がるのでは。

もしそうなったら、私はきっと憧れのヒーローであるブラストに失望され、そして彼の手で倒されてしまうのではないかと不安になって。

「ぅ……ぁ……」

結局、大人しく地面に横たわり、誰かが怪人を倒してくれることを願って、悔し涙を流した。


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:08:58.87 ID:01arW23NO

「大丈夫か?」

気がつくと、空気の振動が収まっていて。
私はまた、誰かに優しく抱き上げられた。
目は見えないが、耳はいくらか回復して。
無事を確認してきた何者かに私は頷いた。

「あ、なたは……誰?」

私を抱える誰かに問いかける。
彼は名を答えたようだけど、聞こえない。
それでも私は、この腕と胸の感覚を知っているような気がして、半信半疑でその名を呼んだ。

ブラストではなく、最近知ったその名前を。

「サイ、タマ……?」

今度は彼は答えない。沈黙を貫いた。
しかし、ぼんやりと丸い頭が見えた。
サイタマのヒーローネームはハゲマント。
その特徴的なハゲ頭を見て私は確信した。

「どうして……名乗らないのよ」

カッコつけてるつもりかと尋ねると、彼は。

「また変態扱いされたら嫌だからな」

そう言えばそんなことを言ったなと思い出して、ばつが悪くなったので、下ろして貰った。


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:10:45.10 ID:01arW23NO

「もう平気なのか?」
「ええ、もう大丈夫よ」

伊達にS級ヒーローではない。
視覚も聴覚も既に回復している。
自分の足で地面に立つ私を見て、彼は感心したように頷き、踵を返して立ち去ろうとした。

「ちょっと待ちなさいよ」
「なんだよ」
「さっきの怪人、アンタが倒したの?」
「ああ、それがどうした?」
「スタングレネードはどう攻略したわけ?」
「ああ、あの眩しくて耳がキンとするやつか。なんかあれが爆発した瞬間、怪人の方が目をやられたらしくてよ。その間にぶん殴ったんだ」

その返答に、なるほどと納得した。
先述した通り、サイタマはハゲである。
閃光が頭皮に反射して、敵の目を潰したのだ。
ハゲもなかなか捨てたもんじゃないと思った。

「前後不覚でも敵の位置がわかったの?」
「なんとなくこの辺かなってところを殴ったら偶然当たったんだよ。結局、ワンパンだった」

どうやらあの怪人を一撃で仕留めたらしい。
しかしそのことをさして自慢する風でもなく、何故か彼は虚しそうな表情を浮かべている。
とはいえ、地雷には手こずったらしく。
白いマントはところどころ汚れていた。

「そのマント、何の意味があるの?」
「ヒーローって言ったらマントだろ」

聞いて損した。実にくだらない理由だ。
しかし、そう言えばブラストもマントを身につけていたことを思い出して、妙に納得した。


7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:13:59.55 ID:01arW23NO

「マント、随分汚れちゃったわね」
「ああ、帰ったら洗濯しないとな」
「だったら、私が洗ってあげるわ」

というわけで、彼のマントを洗ってあげた。
自宅に戻り、私のワンピースも随分汚れていたのでついでに洗濯機に放り込み、ひと息つく。

「アンタ、ビール飲む?」
「おお、悪いな」

洗濯が終わるまで手持ち無沙汰だったので。
冷蔵庫からビールを取り出して、手渡す。
リビングのソファに彼と横並びに座り。
プシュッと、同時にプルタブを開けた。

「んぐ、んぐ、んぐ……ぷはぁっ」

カラカラに渇いた喉にビールが染みた。
爆風の中を生還した今日は一段と美味い。
ぐびぐび飲んでいたら、彼の視線を感じて。

「なによ」
「ガキの癖に良い飲みっぷりだと思ってな」
「私はこれでも28歳よ」

それがきっかけで、話が弾んだ。
彼が25歳で、年下だということ。
ヒーローを目指したのが3年前だということ。
諦めずに努力を続けて、力を手に入れたこと。

「そして、俺はハゲていたってわけだ」
「なにそれ。全然意味がわからないわ」
「俺だって意味わかんねえよ」

全然意味がわからないけれど、面白かった。
ケラケラ笑うと彼は不貞腐れてしまったので、仕方なくもう1本ビールを取り出し、ご馳走した。


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:16:11.48 ID:01arW23NO

2人で2本目のビールを飲んで。
3本目、4本目のビールを飲み干して。
気がつくと、それなりに時間が経っていて。

「そろそろ洗濯終わったんじゃないか?」
「えっ? あ、うん。そうみたいね……」

いつの間にか洗濯は終わっていたらしい。

「じゃあな。ビール、ご馳走さん」

濡れたマントを羽織り直し、いそいそと帰り支度を始める彼を見て、私は思わず引き留めた。

「待ちなさいよ」
「今度はなんだよ」
「そのマント、まだ濡れてるわ」
「洗ったばかりだから仕方ないだろ」
「風邪引いちゃうわよ」
「じゃあ、どうしろってんだよ」

たぶん、私は酔っている。だからその勢いで。

「……泊まっていけば?」

28年間の人生で初めて私は男を部屋に泊めた。


9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:18:01.82 ID:01arW23NO

「なあ」
「なによ」

初めて男を部屋に泊めて。
初めて男をベッドに招き入れて。
初めて男と一緒に寝てみたのだけど。

「やっぱり俺はソファで寝るよ」

居心地の悪そうな彼に抱きついて阻止する。

「ここに居て」
「さっきからどうしたんだよ、お前」
「いいから」
「もしかして俺のこと好きなのか?」

何を馬鹿なことを。
この間の意趣返しのつもりか。
ジロリと睨みつけて、否定する。

「アンタみたいなハゲは好きじゃないわ」
「お前は今、全世界のハゲを敵に回したぞ」
「ふん。束になってかかってきても負ける気はしないし、髪のないハゲは束になれないわよ」
「誰が毛束の話をしたんだよ」

我ながら可愛くない物言いだと思う。
彼はこめかみに血管を浮かせて苛々している。
そんな彼を宥める為に、素直に打ち明けた。

「……怖いのよ」
「はあ? 何が怖いんだ?」
「……怪人」

私は今日、危なかった。ギリギリだった。
あのまま負けるつもりはなかったけれど。
それでも、不覚を取られたことは確かだ。

いずれ、私は負ける。
今回のような敵や、遥か格上の怪人に。
もしもあのガロウのような奴がまた現れたら。

万全の状態でも敵わないと、わかっていた。


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:19:41.03 ID:01arW23NO

「アンタは怖くないの?」

怯える私の手は、震えている。
そんな私にしがみつかれた、彼は。
やはり居心地悪そうにハゲ頭を掻きながら。

「わかんねえよ」

そんな風に頼りない返事をしつつも。

「でも、負けたらその時はその時だ」
「どういう意味?」
「勝てるまで努力し続ければいいだろ?」

あまりにも馬鹿らしい回答に呆れ果てた。
一度でも負けたらそれでおしまいなのに。
どうやら彼は、挑み続けるつもりらしい。

「アンタって馬鹿ね」
「だから先にわかんねえって言っただろうが」
「でも、頼りになるわ」

きっと彼もいつかは敗れるのだろう。
それでも何度でも立ち上がり、そして勝つ。
何も根拠はないけれど、そんな気がした。

「頼りにしてもいい?」
「自分のことは自分でなんとかしろ」
「アンタ、フブキと知り合いなんでしょ?」
「それがどうしたんだよ」
「フブキのこと、よろしくね」
「だから、それも自分でなんとかしろよ」
「私は弱いから無理よ」
「だったら努力すればいいじゃねえか」

突き放す彼にしがみついて、駄々を捏ねる。

「……たまには寄りかかりたいのよ」

もう意地を張って、突っ張るのには疲れた。

「サイタマ」
「なんだよ」
「私とフブキを守って」

彼は答えない。
呆れたように嘆息を吐いて。
雑な手つきで、ぶっきら棒に私の頭を撫でた。


11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:21:14.55 ID:01arW23NO

「あ、そう言えば」
「むにゃ……なによ」

頭を撫でられて、うとうとしていると。
彼は思い出したように、口を開いた。
寝ぼけながら聞き返すと、彼は神妙な顔で。

「お前って普段、パンツ穿いてないのか?」

それまでの良い雰囲気をぶち壊す質問をした。

「おやすみ」
「おい、このままじゃ気になって寝れねえよ」
「ヒーローはそんなこと気にしないわ」
「ヒーローだからこそパンツは穿くべきだろ」
「どうでもいいわ」
「どうでもよくない」

酷い質問だとは思うけど彼だってヒーローだ。
別に他意はないのだろう。純粋な好奇心。
とはいえ、素直に真実を語るのは癪だから。

「……確かめてみれば?」
「は?」
「触って、確かめてみなさいよ」

もう酔いのせいにするのはやめよう。
寝る前に飲んだお酒の味なんて忘れた。
今はただ生唾を飲んでじっと彼の選択を待つ。


12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:22:21.40 ID:01arW23NO

「…………寝るか」
「…………そうね」

長い沈黙の後、彼は諦めたように降参した。

ほっとしたような、残念なような。
悔しいような、腹が立つような。
とても甘いような、酷く苦いような。
泣きたいような、切ないような気持ちになり。

声を出さずに、私は泣いた。

泣きながら、敗因を自覚する。
それは間違いなく、私がちんちくりんだから。
妹のフブキみたいな身体ならば負けなかった。

「ねえ、アンタ」
「なんだよ」
「フブキのこと、好き?」
「別に嫌いではないけど、それがどうした?」
「だったら、大事にしてあげて」

泣きながらそう願うと彼に抱きしめられた。

「お前のことは誰が大事にすんだよ」

そんなことは考えてもみなかった。だから。

「知らないわよ……アンタの好きにして」

そんなよくわからないことを言って。
私は彼の胸で子供みたくわんわん泣いた。
泣きやむまで、彼は私を離さなかった。


13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:23:31.89 ID:01arW23NO

「……ごめん」
「別に、気にしてねえよ」
「……ありがと」

謝罪の言葉も、感謝の言葉も久しぶりだった。
たまにはこうして素直になるのも悪くない。
スッキリした気持ちで、私は彼に甘えた。

「ねえ、サイタマ」
「今度はなんだ」
「前にA市に宇宙船が来たことがあったわよね」
「ああ、そういえばそんなこともあったな」

A市に巨大な宇宙船が襲来したその日。
私はヒーロー協会の呼び出しに応じてS級ヒーローの集会に参加していた。その場に彼も居た。
当時はまだB級の彼が何故あの場に居るのかを不思議に思い、あれこれ尋ねたのを覚えている。

「アンタあの時、宇宙船に何をしたの?」
「乗り込んで、船内を荒らし回った」
「やっぱり。さぞ迷惑だったでしょうね」
「宇宙人共は熱烈な歓迎をしてくれたぞ」

そりゃあそうだろう。侵入者の排除の為だ。
どうにかして彼を止めたかったに違いない。
私はあの時、地上から船底を攻撃していた。

あの時に感じた違和感。となると、やはり。

「あの宇宙船を墜としたのはアンタね」
「ああ、まあな」

ずっと気にはなっていたのだ。不自然だった。
私は宇宙船の攻撃により破壊されたA市の瓦礫を能力で持ち上げ船底にぶつけて攻撃していた。
ある程度の威力と効果はあったのだろうが、いかんせん打撃力不足だとそう感じていた。
しかし、船の上で幾度かの爆発が起こり、そして傾き、ついには宇宙船は地上に落下した。

周りのヒーローは私の攻撃によって宇宙船が堕ちたと言っていたが、彼の仕業だったのだ。

「どうやって墜としたの?」
「なんかバロスだかワロスとかいうボスっぽい奴と戦って、そいつを倒したら堕ちたんだよ」
「何よそれ。弱そうな名前ね」
「いや、あいつは強かったよ」

いつになく真面目な顔で、しみじみとそう語るサイタマの口調には賞賛が含まれていて、私はそのバロスだかワロスに対して嫉妬を抱いた。


14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:25:54.03 ID:01arW23NO

「そいつ、そんなに強かったの?」
「ああ。向こうは俺に負けて悔しがっていたけど、そこまで余裕をもって倒せるような奴じゃなかったことは確かだ。俺もまだまだだな」

彼は淡々と語る。誇るでも自慢するでもなく。

そいつをワンパンでは倒せなかったこと。
敵を煽り、ワザと怒らせて隙を伺ったこと。
蹴飛ばされて、月までぶっ飛ばされたこと。
地球に帰還した後、本気で殴って倒したこと。

「アンタってほんとデタラメよね」
「嘘じゃないぞ」
「わかってるけど、きっと誰も信じないわよ」

彼の語る物語は完全にファンタジーだった。
超能力を扱う私からしてみても異常だった。
だけどどうしてか、不思議とワクワクした。
胸が高鳴る感覚なんて、いつ以来だろうか。

久しぶりにヒーローに出会ったような気分だ。

「その宇宙人はガロウよりも強かった?」
「どうだろうな。宇宙人と地球人は違うからなあ。しかも、ガロウは怪人ですらないただの人間だしな。基準が違いすぎて比較できねえよ」
「強さに基準なんてあるの?」
「宇宙人は宇宙人。怪人は怪人。人間には人間なりの強さがある。だから、それぞれ別物だ」

私にはよくわからない。ニュアンスの違い。
恐らく、他のS級ヒーローもわからないだろう。
そこら辺を理解した上で明確に区別している点が、彼の強さの秘訣なのかも知れない。

「努力以外で力を手に入れた奴は、やっぱりどこかに無理があるように感じるんだよな」
「私みたいに?」
「そうだな。だからお前も限界を超えると鼻血出してぶっ倒れちまうだろ? そういうことだ」

後天的に能力を開発された私は、彼に言わせると無理をしているように見えるらしい。
その自覚はある。近頃は特に顕著に感じる。
自分が怪人よりだという自覚も、あった。


15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:27:52.15 ID:01arW23NO

「アンタから見て、私はどう映る?」
「生意気な糞ガキにしか見えないな」

カチンときた。キレてもいいかしら。
いや、そんな子供じみた真似はよそう。
私は彼より歳上だ。ならばそれを利用する。

「手、貸して」
「なんだよ、いきなり」
「いいから、早く」

急かすと、渋々彼は手を差し出した。
大きくて、こぶしの固いその手を取って。
私は意を決して、ベッドの中へと誘った。

別に、いやらしいことをするつもりはない。
彼はヒーローだし、私だってヒーローだ。
なので卑猥なことは一切なし。だから私は。

「お、おい……」
「ふん。お尻を触ったくらいで動揺しないで」

消去法で彼の手のひらを臀部へと導いた。

「驚いた? 私だってちゃんと女なのよ」
「お、おう……」

私は小柄で、胸も小さい。
フブキの半分もないだろう。
けれど、それでも歴とした女性であり。

脚線美とお尻には、それなりに自信があった。

「やらしいことはなしよ」
「これはセーフなのか?」
「さあ。私にはわからないわ」

経験のない私には、線引きがわからない。
けれど確かに、胸は高鳴り、身体が熱い。
それをいやらしいと表現するのかは不明だ。

ひとつだけ言えるのは、悩ましくも、やましくはないということだけで、それが正義だった。


16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:29:14.02 ID:01arW23NO

「アンタのお尻も触るわよ」

私だけ身悶えするのは不公平なので。
ヒーローらしく公平に彼の臀部を触った。
触れた瞬間、驚愕した。何これ、固い。

鍛え抜かれた彼のお尻はカチコチだった。

「もっと力を抜きなさいよ」
「いや、実はさっきから糞を我慢してて……」
「はあっ!? だったら早く言いなさいよ!」

まったく、この男ときたら。何考えてんのよ。
本当にデリカシーのない奴だ。信じらんない。
仕方がない。ここは私がひと肌脱ぐとしよう。

「私が超能力で排便を促してあげるわ!」
「どうしてそうなるんだよ!?」
「アンタがうんち我慢してたからでしょ!?」
「そっとしといてくれよ、頼むから!!」

何を馬鹿なことを。私を誰だと思っている。
私はS級2位のヒーロー。戦慄のタツマキだ。
困っている者が居るなら助けるのが仕事だ。

「大丈夫よ。優しくしてあげるから」
「マジでやめろって、おい!」
「さあ、サイタマ。盛大にぶち撒けなさい!」

全力で超能力を発動して、糞を引きずり出す。

「ぐぎっ!」
「ちょっと! 抵抗しないでよ!?」
「ぐぎぎぎぎ………っ!!」

サイタマは、歯を食いしばって抵抗した。
彼もヒーローの重荷を背負っているのだ。
自由に糞を漏らすことすら出来ない立場。

そんな重責から、彼を解放してあげたかった。


17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:31:00.26 ID:01arW23NO

「サイタマ、もういいから楽にしなさい」
「馬鹿やろう……漏らしてたまるかよ!」

まったく、まるで子供の駄々のようだ。
頑なに便意に抗う彼は確かに歳下の男であり。
必死な彼がなんだかとても可愛く思えてつい。
私は思わず、彼の唇に自分の唇を重ねた。

「むぐっ!?」

突然のことに驚くサイタマ。
その瞬間、一瞬の気の緩みが命取り。
存在意義を失った括約筋を大便が通過した。

ぶりゅっ!

「ああっ!?」
「フハッ!」

待ちに待った排泄音を耳にして。
腹の底から甘美な愉悦が湧き上がる。
脱糞した彼に足を絡めると快感が増した。
気づくと口角がつり上がっていて、悟った。

やはり私は、怪人よりの超能力者であると。

ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ~っ!

「あ、あああ、ああああああああっ!?!!」
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「くそったれえええええええええっ!!!!」

堰を切ったように響き渡る排泄音。
それに乗じて高らかに私は哄笑し。
そして彼は悪に対する怨嗟を叫ぶ。

よもや私が常勝無敗のサイタマに土ならぬ便を付けることになろうとは、思いもしなかった。


18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/10/20(日) 21:32:28.36 ID:01arW23NO

「あー愉しかった」
「ちくしょう……負けちまった」

やった。勝った勝った。勝っちゃった。
勝利の余韻と優越感に浸る。最高の気分だ。
とはいえ、私は怪人ではなくヒーローだ。

「お尻、拭いてあげる」

だから事後に、敗者へのケアは忘れない。
綺麗にお尻をウエットティッシュで拭いてから、サイタマのハゲ頭を抱きしめてあげた。
そして優しく撫でながら、耳元で挑発を囁く。

「またいつでも泊まりに来なさい」

今回は私の勝ち。けれど彼はきっと諦めない。

「勝つまで努力をし続けるんでしょ?」
「……当たり前だ」
「ふん。愉しみにしているわ」

再戦が待ち遠しい。胸が膨らむ。
次は私が敗北するかも知れない。
けれど、そこに恐怖は一切なく。

「好きよ、サイタマ。愛してるわ」
「……寝る」
「おやすみなさい」

初めて芽生えた、熱くて甘いこの強い想いは。
きっと巷では恋と呼ばれるものだと自認して。
彼に負けないように努力し続けようと誓った。


【ウンパンマン 2撃目】


FIN





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