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姫将軍「儂が怖いか?」

2019/12/04 17:02 | その他 | コメント(0)
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/11/29(金) 23:58:10.55 ID:9vnQWJGFO

「今宵の枕は貴様に決めた!」
「はっ! 有り難き幸せ!」

姫将軍は毎晩違う男と臥所を共にする。
とはいえ、当代の将軍は御歳9つの幼女。
もちろん、夜伽とは名ばかりの添い寝である。

「ほれ、近う寄れ!」
「はっ! 失礼します!」

ぽんぽんと布団を叩いて急かす幼女将軍。
枕に選ばれた侍は一礼して隣に横になった。
そしてその鍛え抜かれた上腕を枕とするのだ。

「ほほう。かなり鍛えておるな」
「いつ如何なる時でも上様をお守りする為に、日頃から鍛錬は欠かしておりません故」
「見上げた心がけじゃな。天晴れじゃ!」

とはいえ、将軍もまた名ばかりではなく。

「どれ、その鍛錬とやらを直々に見てやろう」
「は? う、上様……?」
「何を呆けておる! 木刀を持って中庭にこい」
「は、はっ! た、ただいま!」

寝間着姿のまま、木刀で肩を叩きつつ裸足で中庭の砂利をザクザク進む将軍の後を、本日の枕に選ばれた侍は急いで追いかけた。


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/11/29(金) 23:59:03.73 ID:9vnQWJGFO

「遠慮は要らぬ。かかってこい」
「し、しかし……」
「聞こえなんだか? かかってこい」

先程までの上機嫌から一転して。
月を背負い浮かびあがる表情は冷えており。
ギラつく眼差しに焦った侍は斬りかかった。

「てぇあっ!」
「遅い!」

上段からの振り下ろす前に、胴体を薙がれた。

「お、御見逸れいたしました……」
「もう一本。こい」

したたかに打ち据えられた腹をさすりつつ。

「せあっ!」
「うむ! その意気やよし! じゃが甘い!」

渾身の突きを放つも、完全に見切られて。

「その首貰った!」
「があっ!?」

木刀で首筋を打たれ、堪らず倒れ伏した。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/11/29(金) 23:59:41.75 ID:9vnQWJGFO

「ま、参り申した!」
「どうじゃ? 将軍とは伊達ではなかろ?」
「ははぁーっ!」

月を背にして、木刀を肩に担ぐ姫将軍。
見てくれは幼女であるが、実力は確かだ。
天賦の才を持って生まれた本物の将軍である。

「いつまで這い蹲っておる。面をあげい」
「はっ!」
「まだまだ修業は足らぬが、励むがよい」
「ははぁーっ!」

再び平服する侍にやれやれと首を振りつつ。

「ほれ、早う起きんか」
「はっ! 今すぐに!」

痛む腹や首筋に鞭を入れて侍が起きあがると。

「ん」
「は?」
「抱っこ」

幼女将軍に抱っこと言われて、首を傾げる。

「今宵、そなたは儂の枕じゃろう?」
「は、はあ……それは間違いありませぬが」
「じゃから、抱っこして寝所に運べ」
「……御意」

ようやく合点がいって、恭しく抱き上げた。


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/11/30(土) 00:00:23.98 ID:Yxq0OPtjO

「ふぅ……良い汗をかいたのう」
「稽古をつけてくださり誠に感謝いたします」
「よいよい。戯れじゃ。そんなことより」

布団の中でモゾモゾと幼女の細い足が絡んだ。

「そなたを真の侍と見込んで話がある」
「なんなりと」
「実はさっき、厠に行くのを忘れてしもうた」

侍はズルッとコケそうになったが、堪えた。

「では僭越ながら拙者がお供いたしましょう」
「貴様、儂を幼女とみて侮っておるな?」
「め、滅相もございません!」

ついつい歳の離れた妹にするように馴れ馴れしいことを口走った侍は、死を覚悟した。

「儂が怖いか?」
「……某のこの命は、上様に預けております」
「ふん。ならばその覚悟、試してやろう」

一切動じることなく、身命を賭した侍の上に、ひらりと姫将軍は跨り、冷酷に見下ろした。


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/11/30(土) 00:01:06.98 ID:Yxq0OPtjO

「儂はちと、おかしな趣味があってのう」

侍の整った顔立ちを撫でながら、将軍は語る。

「そなたのような男の上で小便がしとうなる」
「う、上様……?」
「なんじゃ。儂に小便をかけられるのは嫌か」

瞬間、姫将軍は悲しげに目を潤ませた。
侍は慌てた。それはもう大いに慌てた。
将軍を寝所で泣かせるなど、以ての外。
そもそも将軍でなくとも女の涙は尊い。
それが年端もいかぬ幼女となれば尚更。

畏れ多くも天下の将軍の涙を侍は指先で拭い。

「この身に余る、光栄であります……上様」
「ぐすっ……将軍を泣かせるとは、許せん」
「どのような罰でも、お受けする所存です」
「ならば、罰として小便をひっかけてやる」
「謹んで、褒美を賜ります故、平に容赦を」
「馬鹿者。容赦などせんわ。儂の目を見よ」

じっとこちらを見つめる幼女の潤んだ瞳。
侍はなんだか落ち着かない気持ちとなり。
それでも目を逸らせずにいると、不意に。

「ふぁ……っ」

口を半開きにした幼女将軍が身震いをして。

ちょろろろろろろろろろろろろろろろろんっ!

「フハッ!」

涼やかな清流の音をしかと耳にして。
気づけば侍は口角をつりあげ、嗤っていた。
小便をかけられたにも関わらず愉悦を抱く侍の忠義に、将軍は見事と呟き、共に大笑した。

「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

これが将軍。これこそが将軍。
この御方こそが、侍の中の侍。
刀と命を預けるに相応しき姫。

その威光は天下を照らし、太平の世を築く。


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2019/11/30(土) 00:02:53.49 ID:Yxq0OPtjO

「良い夜じゃったな」
「はっ! 思い残すことはございません」

不吉な物言いだがその言葉通り、忍が現れた。

「上様! 申し上げます!」
「何事じゃ!」
「都にて、不穏な動きがございます!」
「あいわかった。馬を引けい!」

呆気に取られる侍を振り向き、冗談めかして。

「どうやら夜伽は終わりのようじゃな」
「……続きは戦場にて果たしてみせましょう」
「ならばそなたもこい。存分に働いて貰おう」
「御意!」

共を許されて、すぐさま自室に戻り戦支度に取り掛かろうとする侍を、将軍は引き留めた。

「その、布団の染みについては……」
「これは某の粗相でございますが、何か?」
「……好き」

勿体無きお言葉だが、いち侍には荷が重すぎた。

「はて、上様のお声はか細くて聞こえませぬ」
「朴念仁。これだから、侍という輩は……」
「侍とは戦場でこそその真価を発揮する兵故」

惚けた侍を睨みつけてから、将軍は破顔した。

「ならば、儂に遅れを取るでないぞ」
「はっ!」

年端もいかぬ幼女の背を守るように、尿が滴る侍は馬に跨り、自らの主戦場へと赴いた。


【姫将軍の秘め事】


FIN





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