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小早川紗枝「繋がる言葉、伝わる心」

1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:35:26.16 ID:i2SVOmg30

カチッ カチッ

時計の針が進む。
手の中のスマートフォンとの睨めっこは続く。
仕事で連絡を取るのに必要だからと、「彼」に持たされたピンク色のそれを、まだ使いこなせてはいない。
あまり機械は得意ではなかったが、今日はずっと手放せないでいた。


2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:37:37.31 ID:i2SVOmg30

カチッ カチッ

時刻はまもなく0時を回るところ。

普段、こんな時間まで起きていることはない。

あったとしても、半分意識は夢の中、というのがほとんどだった。

だけど、今日は別。

眠くなるどころか、目は冴えていく一方だった。


理由は、画面に映る「彼」の連絡先。

かれこれ数時間、このタイミングで電話をかけるべきかどうか、ずっと悩んでいた。


「彼」が、この時間でも起きていることは知っていた。

最近めっぽう忙しく、今日も事務所に泊まり込むのだと聞いていたから。

でも、こんな時間にかけるのは、やっぱり非常識ではないか。

教養のない女だと思われたらどうしよう。

そんな迷いが、発信ボタンを押せずにいた。


3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:39:00.48 ID:i2SVOmg30

カチッカチッ

悩んでいる間にも、時計の針は進んでいく。

もうすぐ、日付が変わる。


「―――うん」


目を閉じて、ひとつ大きく深呼吸。

覚悟を決めよう。

ここで怖気づいては小早川の名折れだ。

いざ。

時計の秒針が頂点を指すのに合わせて、発信ボタンを押そうと―――


4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:40:06.61 ID:i2SVOmg30

プルルルル!!プルルルル!!


「ひゃうっ!??」


初期設定の着信音とともに、スマートフォンがひとりでに震えだす。

驚きで、素っ頓狂な声を上げてしまった。

落ち着けたはずの心臓が、バクバクと激しく暴れる。

せっかく人が覚悟を決めたというのに、いったい誰が―――


『プロデューサー」


画面に浮かぶ文字列を認識した途端、さらに鼓動が激しくなる。

今まさにかけようとした相手から、電話がかかってきていた。


どうしよう。

どうするべき?

思考が追いつかない。

あぁもたもたしてたら切れてしまう。

とにかく出ないと。


5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:41:12.46 ID:i2SVOmg30

「―――もっ、もしもし」

『―――もしもし、紗枝か?』


聞きなれたはずの、聞きたかった声が耳に届く。

顔が熱くなるのを感じる。

これが電話で本当によかった。

とても、見せられる状態ではない。


『悪い、もしかして、寝てたか?』


なんとか落ち着こうとしていたのだけど、黙っていたので不安にさせてしまったらしい。

慌てて否定する。


「うぅん、平気。まだ起きとったから」

『そうか?ならよかったけど……珍しいな、こんな時間まで起きてたなんて』

「う、うちかてたまには夜更かしもするんよ?」

『そうなのか?10時くらいには熟睡してそうなイメージだったんだけど……』

「うっ……」


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:42:07.62 ID:i2SVOmg30

さすが、こういうところはしっかり見抜かれている。

とにかく、誤魔化さないと。


「と、ところでPはん?こないな時間に、どないしたん?」

『あー……ちょっと用事が、な。別に、大した事じゃないんだけど……』

「あら、大したことやないのに、寝てるかもしれないうちに、わざわざ電話かけてきたん?」


照れ隠しに、憎まれ口をたたいてしまう。

悪い癖だと、自分でも思う。


『それを言われると弱いんだけど……』

「じょーだんや、じょーだん。それで、用事って?」

『まぁ、その……なんだ』


7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:42:37.13 ID:i2SVOmg30


『誕生日、おめでとう』


「!!」


8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:43:02.71 ID:i2SVOmg30

『ほら、日付変わって、今日が誕生日だろ?』

「せ、せやけど、なんで、わざわざ……」

『まぁ、メールでもよかったんだけどな。既読がつかないと、少し寂しいかなって思って。それに……』

「……それに?」

『一番に、伝えたいなって』


9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:43:33.67 ID:i2SVOmg30

あぁ、本当に。

この人は、ずるい人だ。

欲しい言葉を、欲しい時にくれる。

そんなことが、こんなにも嬉しくなる。


そもそも、こちらの要件も、似たようなものだった。

誕生日、その一番に、彼の声が聞きたい。

でも、こちらから掛けるのは、なんだか催促しているようではないか。

はしたないと思われないだろうか。

それが怖くて、さんざん悩んでいたのだけど―――


通じているんだと、思ってしまう。

胸の奥が、じわりと温かくなるのを感じた。


10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:44:12.27 ID:i2SVOmg30

「……おおきに、おおきにな。うち、すっごく、嬉しい」

『―――そっか。それなら、よかった』


どこか、気恥ずかしそうな彼の声。

見えなくても、伝わってくる。

きっと照れ隠しで、頬をかいているに違いない。

電話の向こうの彼の仕草が目に浮かぶ。


『それじゃ、長くなると悪いし、明日もあるからな』

「うん、そやね」

『あんまり夜更かしはするなよ』

「はいな。Pはんも、ほどほどにな」

『おう。じゃあ、おやすみ』

「……おやすみなさい」


11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:45:45.95 ID:i2SVOmg30

ピッ

通話が切れる。

もう通じてはいないスマートフォンを、きゅっと胸に抱く。

時間にしては、さほど長くはなかっただろう。

要件も、誕生日を祝ってくれた、一言だけ。

それでも、その一言が、たまらなく嬉しかった。


12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:46:25.73 ID:i2SVOmg30

「おやすみなさい、Pはん」


もう一度呟き、布団をかぶる。

さっきまでとは打って変わって、トクン トクンと心臓が脈打っている。

とても、心地良いリズム。

いまなら、いい夢が見られそうだった。

あっという間に、意識がまどろんでいく。


13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:46:53.32 ID:i2SVOmg30

願わくば、この幸せな時間が。

来年も、この先も。

ずっと、ずっっと。

続いていきますように。


14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/10/18(水) 20:48:18.15 ID:i2SVOmg30

以上になります。

短めですが、紗枝誕SSでした。
紗枝ちゃん誕生日おめでとう!

HTML化依頼出してきます。
ありがとうございました。



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